THE WiLDHEARTS『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE VOL.1』(2008)
2008年5月にデジタルリリースされたTHE WiLDHEARTS初のカバーアルバム。当初は12曲入りで配信されましたが、のちに同年7月に3曲追加した全15曲入りでフィジカルリリースされています。
ジンジャー(Vo, G)、C.J.(G, Vo)、リッチ(Dr)、スコット・ソリー(B, Vo)という編成で制作された前作『THE WILDHEARTS』(2007年)から約1年という短いスパンで届けられた今作は、単にバンドに影響を与えたレジェンドたちのみならず、彼らが敬愛する新旧のバンドたち、楽曲にもう一度耳を傾けてほしいという隠れた名曲などをピックアップ。そのセレクトもかなり多岐にわたる、非常に興味深い内容になっています。
今回はCDバージョンを中心に話を進めますが、まずは収録内容(および原曲アーティスト名)を紹介します。
01. AC Rocket [FOIL]
02. Geez Louise [THE UNBAND]
03. Understanding Jane [THE ICICLE WORKS]
04. The World Comes Tumblin' [THE DISTILLERS]
05. Unsung [HELMET]
06. Waiting Room [FUGAZI]
07. Ice Hockey Hair [SUPER FURRY ANIMALS]
08. Possum Kingdom [TOADIES]
09. Pep Talk [THE DESCENDENTS]
10. Rocket 69 [THE LEE HARVEY OSWALD BAND]
11. Battleship Chains [THE WOODS / THE GEORGIA SATELLITES]
12. Rearrange You [BABY CHAOS]
13. Everyday Formula [REGURGITATOR]
14. The Judge [SOUL ASYLUM]
15. Carmelita [ウォーレン・ジヴォン]
配信バージョン(現行のSpotify海外配信分含む)はここから「AC Rocket」「Everyday Formula」「The Judge」の3曲を省いた12曲で、曲順も異なるものです。
FOILやTHE UNBANDなど初見のバンドも含まれていますが、それ以外は名前をよく知るバンド/アーティストであったり、THE WiLDHEARTSと同時代に活躍したバンド、かつジャンル的にあまり交わりのなかった存在などばかりで、先にも述べたようによくある「ルーツを紹介する」形とは異なり、お気に入りの曲を気楽にカバーしてみたという内容と言ったほうがいいでしょう。
実際、過去のカバー曲と比較してもストレートにカバーしていますし(まあ以前のカバー曲も音像で遊んではいたりするものの、基本的には原曲に忠実でしたが)、「THE WiLDHEARTSならでは」みたいなカラーはそこまで強く感じないかな。曲によってC.J.やリッチ、スコットもリードボーカルを担当していますし、そういう意味では次作『¡CHUTZPAH!』(2009年)への布石も見つけられるかな……まあそれ以上に、メンバー全員が肩の力を抜いて好きな曲で遊んでいる、その程度の1枚なのかな。なので、前作『THE WILDHEARTS』と次作『¡CHUTZPAH!』の間をつなぐ1枚というよりは、バンドとしてのアク抜きを行ったぐらいに捉えて、こちら側も構えず気楽に“お楽しみ盤”として接すればいいのではないでしょうか。
と同時に、本作で取り上げた楽曲の原曲を探して聴いてみることもオススメします。本来、そっちを目的として作られた作品でもあると思うので。それに、本作リリース当時は原曲を探すことが難しかったけど、今ならSpotifyやApple Musicを通じて手軽に原曲を見つけることができますしね(ということで、原曲プレイリストを作成したので、最後に貼っておきます。THE WiLDHEARTSのオリジナル盤が国内でストリーミング配信されていないので、こちらで雰囲気を味わっていただけると幸いです)。
▼THE WiLDHEARTS『STOP US IF YOU'VE HEARD THIS ONE BEFORE VOL.1』
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