カテゴリー「Ginger Wildheart」の35件の記事

2019年2月 6日 (水)

THE WiLDHEARTS『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』(1992)

1992年11月(日本では翌1993年1月)にリリースされた、THE WiLDHEARTS通算2作目のEP。同年4月に発売された初EP『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』に収録された4曲を新たにテリー・デイト(SOUNDGARDEN、PANTERA、DEFTONESなど)がリミックスしたものに、新曲4曲を追加した2枚組EP(CDおよびアナログ)となります。ただし、日本ではCD1枚にまとめられていたこともあり、これがデビューアルバムと認識されることもしばしば。正式な1stアルバムは続く『EARTH VS THE WiLDHEARTS』(1993年)となるのでお間違えなく。

2枚組仕様だとDISC 1が『MONDO-AKIMBO A-GO-GO』のリミックス盤で、曲順はオリジナルとは異なるものになっています。彼らの原点的1曲である「Nothing Ever Changes But the Shoes」から始まるオリジナル盤の曲順も気に入っていますが、いかんせん僕自身最初に聴いたのが『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』日本盤なので、フェイドインしてくる「Turning American」始まりの構成が身に焼き付いている。これはもう、卵が先か鶏が先かと同じようなものなので、どれが正解とは言い難いものがありますよね。

オリジナル盤と比べたら、リミックスされた『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』バージョンの4曲はどれも芯が太くなった印象で、新録された後半4曲とのクオリティの差はほぼ感じない。むしろ初期4曲の時点で楽曲の完成度が異常に高いことに改めて気づかされるのではないでしょうか。

DISC 2(日本盤後半)の4曲も捨て曲なしで、彼らが1992年のデビュー年の段階でその個性を確立させていたことに気づかされます。比較的ポップでキャッチーさが際立つ曲が多いのが後半4曲の魅力かな。「Splattermania」はもちろんのこと、のちにライブの定番曲にまで成長する「Weekend (5 Long Days)」、ワイルドなロックンロール調の「Something Weird Going On In My Head」、バラード風でエンディングのアレンジにクスっとさせられる「Dreaming In A」と、どれもメロディのキャッチーさがハンパない。サウンドアレンジのヘヴィさが印象的な前半との対比もしっかり感じられるし、何よりジンジャー(Vo, G)のソングライターとしての非凡さがこの時点ですでに際立っていたことに驚かされるばかり。シンガーとしてはもう一歩ですけどね(笑)。

日本のファンにとっては、すべてはここから始まったと言っても過言ではない重要な1枚。現在は廃盤状態で中古盤をこまめに探すしか入手方法はありません(デジタル配信もされていないし)が、2010年に再発された『EARTH VS THE WiLDHEARTS』リマスターバージョン(2枚組仕様)のDISC 2にまるまる収録されているので、こちらの新品を探したほうが早いかもしれません(曲順は初出EPに沿ったものになっていますのでご注意を)。



▼THE WiLDHEARTS『DON'T BE HAPPY... JUST WORRY』
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2017年6月21日 (水)

MICHAEL MONROE『SENSORY OVERDRIVE』(2011)

先日55歳の誕生日を迎えたばかりのマイケル・モンロー。再生HANOI ROCKS解散を経て、現在彼の活動拠点となるのが自身の名前を冠したMICHAEL MONROEというバンドです。今回紹介するのは、2011年春にリリースされたMICHAEL MONROE名義での1stアルバム(ソロとしては通算6枚目)。当時のメンバーはマイケルのほか、ジンジャー・ワイルドハート(G)、スティーヴ・コンテ(G)、サミ・ヤッファ(B)、カール・ロックフィスト(Dr)。ジンジャーは本作に伴う活動途中で、案の定バンドを離れています。

バンド編成になったからといって急激に音楽性が変わるわけもなく、ここで聴ける楽曲やサウンドは過去のマイケル・モンローを知る人なら納得の内容。パンクロックを通過した軽快なロックンロールがたっぷり詰め込まれています。HANOI ROCKSだろうがDEMOLITION 23.だろうが、なんでもあり。どの時代の曲と混ざり合っても違和感のない、普遍的なロックンロールソング集と言えるでしょう。

とはいえ、ソングライティングに携わる人間が変われば、そのテイストが多少異なる楽曲もいくつか含まれるわけで。本作でいえば、ポップなメロディを持つ「Superpowered Superfly」は明らかにジンジャーの手腕によるもの。この曲と「Later Won't Wait」はジンジャーが単独で書き下ろしたもので、「Later Won't Wait」もどこかTHE WiLDHEARTSやその他ジンジャーが携わってきたバンドに共通するストレンジさが含まれており、それがマイケルの個性とぶつかり合うことで生じた化学反応を楽しむことができます。

こういった新境地もいくつか含まれていたことから、個人的には「MICHAEL MONROE、これから面白くなるんじゃね?(但しジンジャーが抜けなければ)」と思っていたのですが……さすがに2枚目はなかったと。ただ、次は次で面白いコラボレーションが生まれるので、また別の意味でワクワクしたわけですが。

ちなみに、ジンジャーの後釜としてバンドに加わったのが、当時BACKYARD BABIESが活動休止中だったドレゲン。マイケルとBYBは過去にコラボ経験があるとはいえ、この邂逅にはさすがに驚きました。

なお、本作の本編ラストに収められている「Debauchery As A Fine Art」は、前年に発表されたライブアルバム『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』に先行収録されていた「Motorheaded For A Fall」を改作したもの。基本構成は一緒ですが、このスタジオテイクにはオリジナルタイトルにその名が含まれていたMOTORHEADのレミーがゲスト参加しています。

2017年のこのタイミングに「マイケル・モンローってどんな人? どれから聴けばいいの?」と質問されたら、まずはこのアルバムをオススメすると思います。そこから新作まで順々に聴いてもいいし、過去をさかのぼってもいい。あるいは、HANOI ROCKSに進むのもアリ。本作を拠点にすれば、マイケルのどのキャリアにもたどり着けるはずです。



▼MICHAEL MONROE『SENSORY OVERDRIVE』
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2017年4月24日 (月)

MUTATION『MUTATION III - DARK BLACK』(2017)

2013年に2枚のオリジナルアルバムをメールオーダーで発表した、ジンジャー・ワイルドハートのソロプロジェクトMUTATION。その後しばらく音沙汰がなかったものの、2016年末に再始動が伝えられます。しかも、今回はジンジャーとスコット・リー・アンドリューズ(EXIT INTERNATIONAL)の2人体制ユニットとして復活。実はこのEXIT INTERNATIONALについては知識がまったくなかったのですが、なにやら“ノイジー・ディスコ・パンク・バンド”とのこと。検索してみると、こんな感じらしく。

なるほど。

さて。約3年ぶりに届けられる通算3枚目のオリジナルアルバム『MUTATION III - DARK BLACK』ですが、基本路線は過去2作と一緒。ただ、今作は過去にも増してシンプルかつコンパクトな仕上がりとなっています。無軌道で先読み不可能な展開というMUTATION当初の魅力が、この3年の間に消え去ってしまったのは残念ですが、相変わらず薄皮が何枚もかかったスピーカーから爆音で鳴らされるノイズは健在。実はこの変化、ジンジャーよりもスコットの色合いが強いのかなと、先のEXIT INTERNATIONALの楽曲を聴いて感じた次第です。このシンプルさ、まさにそれですものね。

また、コンパクトさは楽曲の長さ(ほぼ2分台から3分台前半)がそのままアルバムのトータルランニングに影響し、全10曲で26分半というツッコミどころ満載の長さとなっております。過去2作が同じ10曲入りでそれぞれ38分程度だったことを考えると、いかに今回無駄を削ぎ落としたかが伺えます(いや、あの複雑怪奇な展開はまったく無駄じゃなかったけど)。あと、本作は1曲目「”.”」が7秒というのも大きい要因ですね。これ、曲じゃなくて単なるインタールード(というより話し声)なんですが。

あと、本作にはデヴィン・タウンゼンド、フィル・キャンベル(MOTORHEAD)、ジェイミー・オリバー(UK SUBS)などがゲスト参加しているようです。4曲目「Devolution」にはデヴィンがフィーチャリングされているようですが……まぁ確かにそれっぽい曲かなと。いや、自信ないです。だってノイズまみれだから(苦笑)。他にもゲストが多数参加しているようなので、きっと日本盤が6月に発売された際には、クレジットなどで明らかになるはずです。ちなみに僕は、年明けにPledgeMusicでダウンロード購入したので、音しか情報がない状況でつい最近まで過ごしてきました。

にしてもこのアルバム。終盤に進むにつれてそのノイズ度がどんどん増していくんですよね。曲の切れ目もわからないぐらいだし、ラストの「Deterioration」なんてもう、スピーカーの音割れまくり。正直自分が何を聴いているのかわからなくなります。

しかし、過去2作同様に本作も何度か聴き返すうちにやみつきに……なるんでしょうかね。個人的には2ndアルバムが一番難易度が高いと思ってたけど、ここまでど直球を投げられると逆にこれはこれでハードル高いような気が。ま、過去のアルバムみたいに数年後には理解できるようになるかもしれませんね。

そういえばMUTATIONはこの秋、来日の噂もあるんだとか。耳栓必須ですな、そりゃ。



▼『MUTATION III - DARK BLACK』
(amazon:国内盤CD
(PledgeMusic:配信音源

2017年4月23日 (日)

MUTATION『MUTATION II - ERROR 500』(2013)

THE WiLDHEARTSのフロントマン、ジンジャー・ワイルドハートが2012年に結成したノイズメタルプロジェクト・MUTATION。彼らが2013年、メールオーダーで限定リリースした2枚のアルバムのうち、今回は2ndアルバムにあたる『MUTATION II - ERROR 500』を紹介します。

MUTATIONのアルバムは当時、PledgeMusicを通じてメールオーダー限定で発表されましたが、この『MUTATION II - ERROR 500』のみマイク・パットン(FAITH NO MORE)のレーベル・Ipecaから輸入盤として少数ながら一般流通。当時は日本にほぼ未入荷という話ですが、僕は当時店頭でこのアルバムを購入した記憶があります。Amazonではなく、間違いなく店頭、しかもレコファンあたりだったと思います(CDに貼ってあるポップに「あのジンジャーの新プロジェクト」と記されていたので購入したのですから)。

前回のブログにも書いたように、このメタルノイズユニットMUTATIONはTHE WiLDHEARTSのアルバム『ENDLESS, NAMELESS』で試みた実験に再び挑戦したといえる内容。1曲の中に数曲分のアイデアが混ぜられたような非常に複雑な展開を持ち、ツーバスがドコドコ鳴り続けたかと思えば、急に耳障りの良いハーモニーやメロディが聴こえてくる。言い方が合っているかわかりませんが、プログレをよりモダンに、かつ暴力的にしたものがこのMUTATIONの本質ではないかと思います。

同時リリースとなった『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』(同作のみ一般流通なしで、この6月に日本限定でリマスター盤の流通開始)と比較すると、本作のほうがよりぶっきらぼうで投げっぱなし感が強いイメージ。それもそのはず(なのかどうかわかりませんが)、本作にはNAPALM DEATHのシェーン・エンバリー(B)が全面参加しているほか、日本が誇るMERZBOWが5曲目「Mutations」に演奏で、さらにTHE FALLのマーク・E・スミスが「Mutations」「Relentless Confliction」でリードボーカルでゲスト参加しているのです。

実はMUTATIONのアルバム中、初めて聴いたのは本作だったこともあり、バンドのもっともエクストリームな部分にいきなり触れて拒絶してしまった過去があります。しかし、あれから3年以上経った2016年末、リマスター再発された『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』を聴いたときはすんなり受け入れることができた。で、『MUTATION II - ERROR 500』を久しぶりに引っ張り出して続けて聴いてみたら……以前よりもすんなり楽しむことがでいた。けど、聴きやすさでは『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』のほうが一歩勝るかなと。2枚は同時期に制作されながらも、『MUTATION II - ERROR 500』のほうにゲストアーティストを多数迎えたことにより、ノイズミュージックとしての実験要素が強くなった。それが最初に聴いたときの“よくわからない、聴き手としての拒絶感”につながったのかもしれません。

本作は現在もAmazonで購入できるようですが、リマスターされデモ音源が追加された国内盤が6月21日にリリースされるようなので、ジンジャーの解説含めて堪能したい方はそちらの発売を待ってみるのも良いかもしれません。



▼『MUTATION II - ERROR 500』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

2017年4月22日 (土)

MUTATION『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』(2013)

THE WiLDHEARTSのフロントマン、ジンジャー・ワイルドハートが2012年に結成したノイズメタルプロジェクト・MUTATION。2013年にメールオーダーで限定リリースした2枚のアルバムが新作発売にあわせ、ついにここ日本でも6月に一般流通することになりました。ということで、今回はCDリリースに先駆けてMUTATIONの3作品について連日紹介していきたいと思います。

この『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』はPledgeMusicを通じてジンジャーのレーベルRound Recordsから流通され、すぐに廃盤。昨年末には同作のリマスター盤が再びPledgeMusicにて配信リリースされています。

聴いた順番でいうと、私は2013年にMUTATIONの2ndアルバムにあたる『MUTATION II - ERROR 500』を最初に聴きました。2枚同時にPledgeMusicから発表されたMUTATIONのアルバムでしたが、『MUTATION II - ERROR 500』のみマイク・パットン(FAITH NO MORE)のレーベル・Ipecaから一般流通され、当時店頭にて手に入れることができたのです。

ということで、『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』自体を聴いたのはリマスター盤からで、つい最近のこと。そこを踏まえた上でお読みいただけたらと思います。

“ノイズメタルユニット”と銘打っているとおり、MUTATIONのサウンドは非常にノイジーで耳障りの悪いものです。ジンジャーが過去に携わった作品でもっとも近いものといえば、おそらく1997年発売のTHE WiLDHEARTSのアルバム『ENDLESS, NAMELESS』でしょう。薄皮も何枚も被せたように奥にこもったサウンドと、その先からビリビリと聴こえてくるノイズ混じりの轟音。でもよく耳を澄ませると、そのもっと奥底にあるメロディは実にポップでキャッチー。それが『ENDLESS, NAMELESS』という実験作でした。

で、このMUTATIONで試されていることは、あの実験をさらに数歩押し進めたものと受け取ることができます。楽曲自体はとっつきにくいイメージの強い、変拍子を多用したリズムとギターリフ。そこにヒステリックにシャウトするジンジャーのボーカルが乗り、たまに耳馴染みのよい女性コーラスが登場する。1曲の中にいろんな要素が詰め込まれており、ぶっちゃけアイデア自体は数曲分がミックスされているんじゃないかと思わされるものばかり。でも全10曲ともに1曲3〜4分程度で、トータル39分に満たないという近年のアルバムの中でも非常にコンパクトなもの。なのに聴き終わったときにドッと溢れ出てくる疲労感。これぞ、1997年にジンジャーが目指したものだったのではないかと思わされるわけです。

あのときは、その実験を自身のバンドTHE WiLDHEARTSでやろうとしたことが失敗だった。でも、今は自由の身で、新たにやりたいことがでいたらその都度新しいプロジェクトを作ればいいだけのこと。そんな軽いフットワークのジンジャーが2012年というタイミングにこのプロジェクトに向かっていったのは、とても健全なことなのかもしれません。

そういえば本作のラストナンバー、「Carrion Blue 喜怒哀楽」という日本語混じりの不思議なタイトルになっています(原題表記がこうなっているのです)。また、この曲のハードコアぶり&サビのキャッチーさがたまらないんですよね。最近のユルいジンジャーに疑問を感じていた古くからのファンには、全力でオススメしたい1枚です。

正直、『MUTATION II - ERROR 500』を初めて聴いたときはそこまで良いとは思えなかったのに、2016年末に初めて『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』を聴いたときはすんなり入り込むことができた。単に聴くタイミングの良し悪しもあるでしょうけど、個人的には『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』のほうが少々とっつきやすい印象があります。とはいえ、それもMUTATIONというノイズメタルユニット限定でのお話ですので、初めてジンジャー・ワイルドハーツというアーティストの作品に触れるという方には本作はオススメしません。あくまであの偏屈なアーティストのことを理解できる方限定の勧め方ですので、誤解なきようお願いします。



▼MUTATION『MUTATION I - THE FRANKENSTEIN EFFECT』
(amazon:国内盤CD
(PledgeMusic:配信音源

2017年4月19日 (水)

THE WiLDHEARTS『NEVER OUTDRUNK, NEVER OUTSUNG: PHUQ LIVE』(2016)

本作はTHE WiLDHEARTSが1995年に発表した通算2作目のオリジナルアルバム『P.H.U.Q.』のリリース20周年を記念して、2015年9月に行われた再現ツアーからイギリス国内での複数公演からの音源をコンパイルした2枚組ライブアルバムです。近年はこういったアニバーサリーツアーで年に1回ツアーを行うのみの活動にとどまっているTHE WiLDHEARTSですが、それでもひと昔前や90年代を考えれば「新曲は出さないけどツアーはやってくれる」だけありがたいのかも……と、最近はこちら側も歳をとったせいで(苦笑)、彼らに対して優しく接することができるようになりました。あははは。

ま、冗談はさておき。このツアーの一環でここ日本にも2015年11月に来日しましたが、私自身チケットを取っておきながら体調不良(耳の病気で大音量を禁じられてました)のため行くことができず。彼らのアルバム中、もっとも好きな作品を完全再現するライブだけに足を運びたかったんですけどね。そういう意味ではこのアルバムのリリースは非常にありがたかったです。

お聴きいただけばわかるように、本作はディスク1(14曲)がアルバム『P.H.U.Q.』を頭の「I Wanna Go Where The People Go」からラスト(日本盤ボーナストラック除く)「Getting It」までを完全収録。ディスク2(6曲)はボーナスディスクという扱いで、ライブ当日にアンコールとして披露された5曲(トラック1はディスク1エンディングから続く「Don't Worry About Me」大合唱なので、実質5曲となります)が収められています。アンコールは『P.H.U.Q.』時期に限定されることなく、再結成後の「Stormy In The North, Karma In The South」といった近年のライブ定番曲、「Weekend」「29 X The Pain」といった懐かしのカップリング曲も含まれており、ファンには嬉しいセットリストとなっております。

また、ディスク1には「Jonesing For Jones」の後に、続くアップチューン「Woah Shit, You Got Through」のイントロ的な小楽曲「Up Your Arse You Fucking Cunt」も追加。ライブの流れを途切らせることなく挿入された遊び心といったところでしょうか、単なる完全再現で終わらせないあたりも彼らなりのこだわりというかジンジャー(Vo, G)のひねくれっぷりが伝わってきます。

さて、改めて『P.H.U.Q.』というアルバムをこういう形で聴くと、初期のメタル+パワーポップ感とその後『ENDLESS, NAMELESS』(1997年)で見せたノイジーでラウド、ハードコアな路線との中間に位置する橋渡し的作品だったんだなと気づかされます。もちろんその前後には不幸なアルバム『FISHING FOR LUCKIES』(1994年)の存在があるわけで、そこを含めての『P.H.U.Q.』というのは非常に理解できるのですが、前半のパワーポップ感と後半で見せるシリアスさとの落差には改めて驚かされます。まぁこのへんはジンジャー自身の当時置かれた状況や精神状態(ドラッグや心の病など含め)が大きく影響していたことは理解できるわけですが、それにしてもこのバランス感は本当に絶妙だったなと。あの時期でなければ作れなかった1枚だったんだなと実感させられました。

曲単位では再結成後も演奏される機会のある楽曲がいくつかあるものの、このタイミングで20年ぶりに披露された曲、あるいは当時ライブでも演奏されることのなかった楽曲などもあり、こういったアルバム再現ライブならではの魅力もあるこの作品。バンドのファンのみならず、これからTHE WiLDHEARTSを聴いてみようと思っている初心者にもぜひ聴いてほしいライブアルバムです。そう、もし聴くならあわせてスタジオ盤の『P.H.U.Q.』もチェックすると、なお一層楽しめると思いますよ。



▼THE WiLDHEARTS『NEVER OUTDRUNK, NEVER OUTSUNG: PHUQ LIVE』
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2017年4月12日 (水)

MICHAEL MONROE『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』(2010)

2001年から始まった“再生”HANOI ROCKSが2009年に活動終了し、再びソロアーティストとして音楽活動を続けると思われていたフロントマンのマイケル・モンロー。しかし彼はあくまでバンドにこだわり、“MICHAEL MONROE”というバンドを組むことを決意するのです。あれですね、初期のアリス・クーパーがALICE COOPERという名前のバンドとして活動していたのと一緒で。MARILYN MANSONもある意味一緒だし。

2010年1月、マイケルのもとに集まったのは“再生”HANOI ROCKSには未参加だった旧友のサミ・ヤッファ(B)、THE WiLDHEARTSのシンガーとしてもお馴染みのジンジャー(G)、DANZIGへの在籍経験を持つトッド・ユース(G)、そしてDEMOLITION 23.のメンバーだったジミー・クラーク(Dr)という布陣。しかしリハーサル段階でジミーが脱退し、代わりにカール・ロックフィスト(Dr)が加入。続いて、そのカールを推薦したトッドもバンドを離れ、ある者には再結成したNEW YORK DOLLSのギタリストとして、またある者には菅野よう子とのコラボレーターとして知られるスティーヴ・コンテ(G)が加わり、第1期MICHAEL MONROEの布陣が完成します。

この第1期メンバーで制作したのが、今回紹介するライブアルバム『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』。本作は2010年6月7日にフィンランド・ヘルシンキのクラブでライブレコーディングされたもので、内容はHANOI ROCKSからソロ、DEMOLITION 23.とマイケルのキャリアを総括するオリジナルナンバーのほか、ジョニー・サンダースやTHE DAMNED、THE STOOGES、DEAD BOYSなどマイケルのルーツとして重要なバンドのカバー曲、そして新バンドMICHAEL MONROEとして制作中の新曲2曲を含む、“過去・現在・未来”をつなぐ豪華なセットリストとなっています。

個人的にはHANOI ROCKSと同じくらいTHE WiLDHEARTSのファンでもあるので、あのジンジャーがHANOI ROCKSの名曲たちをプレイするというだけで生唾モノ。楽曲は新曲含め、どれも“いかにもマイケル”といったものばかりなので、悪いわけがない。演奏も名うてのプレイヤーが揃っているので、タイトでカッコいい。“再生”HANOI ROCKS終了から間髪入れずに動いたことも功を奏し、マイケルの状態もベストに近いものと言えます。

まぁ本作は、翌2011年春にリリースされる1stスタジオアルバムへの前哨戦として録音されたもので、ここ日本では2010年8月の『SUMMER SONIC 10』に出演したことから、興奮冷めやらぬうちに出しておこうということで同年9月に先行リリースされたのでした(海外では10月発売)。そこから半年足らずで真の1stアルバム『SENSORY OVERDRIVE』が届けられるわけで、ファンの熱量を保つという意味でもこのライブアルバムは重要であり、“再生”HANOI ROCKSを終えて改めてマイケル・モンローというシンガーのキャリアを振り返るという意味でも非常に意味のある作品なのです。

それと「You're Next」と「Motorheaded For A Fall」と題された、『SENSORY OVERDRIVE』の片鱗を感じさせる新曲2曲の存在も重要です。「You're Next」はDEMOLITION 23.をよりタイトにさせたスタイルのロックンロールで、「Motorheaded For A Fall」はその名のとおりどこかMOTORHEADを彷彿とさせる疾走ナンバー。マイケルがMICHAEL MONROEで何をやろうとしてるのか、この2曲からも存分に伝わるはずです。ちなみに前者は『SENSORY OVERDRIVE』海外盤のボーナストラックとして、後者は「Debauchery As A Fine Art」と改名され、さらにかのレミー(MOTORHEAD)をフィーチャーした形で『SENSORY OVERDRIVE』に正式収録されています。



▼MICHAEL MONROE『ANOTHER NIGHT IN THE SUN: LIVE IN HELSINKI』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

2007年12月12日 (水)

THE WiLDHEARTS『THE WiLDHEARTS』(2007)

もう二度と出ることはないだろうなぁと思っていた、THE WiLDHEARTSのニューアルバムが2007年春に発売されました。今年の頭には来日公演も行い、新編成によるお披露目的な素晴らしいステージを披露したそうです(残念ながら僕は行けませんでしたが)。

気付けば前作「THE WiLDHEARTS MUST BE DESTROYED」から3年半近く経っていたんですね。その後、UKのみのBサイド集「COUPLED WITH」とかUS向け編集盤「RIFF AFTER RIFF」とか複数のライブ盤が出たりで、なんかいろいろ出てる印象はあったんだけど、結局満足させられた作品というとジンジャーのソロくらいだったという。

ドラムが90年代後半に参加したリッチ、ベースがスコット・ソーリー(元AMEN、ジンジャーとはBRIDES OF DESTRUCTIONでも一緒に活動してましたね)、それ以外はジンジャーとCJというおなじみの布陣。ま、21世紀のワイハーは基本この2人がいれば問題なさそうですね。

肝心の内容は、前作をよりハードにして、さらにリフ、リフ、リフの嵐という、これこそ「RIFF AFTER RIFF AFTER MOTHERFUCKER RIFF」というタイトルがふさわしいんじゃねーの?と言いたくなるような仕上がり。素晴らしい。こういうワイハーを待ってたんですよ!

しかし、もうひとつの魅力であるメロディがちょっと弱い。21世紀の彼らはジンジャーとCJによるツインボーカル(含ハーモニー)でメロ自体の質をうまくごまかしているように感じられるんですよね。実はそんなに大したことないメロディなんだけど、それをハーモニーでボカしたり。ちょっとそこだけが勿体ないなぁと強く思うわけです。まぁどんなアーティストにも言えることだけど、オリジナル期(ここで指すのは90年代の彼ら)に思い入れのある人、リアルタイムでその辺を通過しているファンからすると、どうしても要求が高くなってしまうのは仕方ないのかなぁと。続いてくれたことには大感謝なんですが、次の作品にはそれこそ古くからのファンを「俺が悪かった!」と言わせるくらいの傑作に期待したいところです。

でも……これはこれで好きだよ。このアルバムでのツアーも観たいなぁ。早く日本に戻ってきてくださいね!



▼THE WiLDHEARTS『THE WiLDHEARTS』
(amazon:日本盤UK盤

2006年9月26日 (火)

GINGER『VALOR DEL CORAZON』(2006)

 本国イギリスでは今年初頭(限定盤は2005年末だっけ?)にリリース済み、日本では10月の来日決定にあわせて7月にようやく発表されたジンジャー(THE WiLDHEARTS)の「純粋な」初ソロアルバム。タイトルの「VALOR DEL CORAZON」というのは、日本語に訳すと「強い心」とかいう意味らしく……その経緯については、昨年前半のこのブログのワイハー関連の記事を読んでいただけるとご理解いただけるかと。まぁ今更その経緯に触れることはここではしません。今回は「あれ」以降について……純粋にこのアルバムについて話したいと思います。

 本人も語っているように、このアルバムはこれまでみたいにジンジャーというアーティストのある一面だけにスポットを当てた作品ではなく、彼のいろんな要素……それこそロックンロールやメタル、パワーポップだけでなく、カントリーやブルース、'70〜'80年代のポップスだったり。そういった彼のルーツ的なものがこれまで以上に表出しているのが、このアルバムと言えるんじゃないかな。実際2枚組19曲(日本盤は3曲のボーナストラックを追加)を通して聴くと、そのとっ散らかり具合のせいで作品としてのトータル性が希薄な気がするし。それは聴き手によっては「完成度が低い」とか「バランスが悪い」と解釈される可能性も強い。でも俺はそういう風には感じられなくて……ま、ソロとしては「前作」の「A BREAK IN THE WEATHER」もどちらかというと「とっ散らかってる」印象が強かったけど、あちらの方がまだ「THE WiLDHEARTSのジンジャー」という色合いが強調されてるよね。実際、ワイハーやりながら録音した音源だし。あと、もともとがシングルとしてバラバラの時期に録音されたものをまとめたものだし、そのバラツキに関しては聴き手も納得してる部分もあったよね。でも今回は最初っから音楽的にバラバラな要素がひとまとめになってる。だから人によって「?」となる人もいるんでしょう。でもコアなファンはもともとジンジャーというソングライターにはこういう素質があることを知っていた/わかっていたから、そこまでの違和感を覚えないというね。まぁ言い方によっては、ファンが庇護してるようなもんなんだけどさ。

 正直なところ、これをワイハーでやってもらいたいとは思わない。みんなそうじゃない? ワイハーにはワイハーの色があるし、もっとハイパーなロックンロール(って表現もどうかと思うけど)をファンが求めてるだろうし。それと同じことをやるんだったら……それこそ今後二度とワイハーは必要ないということになりかねないし。このアルバムで聴けるようなロッキンでそれでいて甘いポップな面をさらに強調して、それでいてロックとはかけ離れたようなこともやっちゃうような……そんな一筋縄ではいかないひねくれたことをガンガンやってほしいな、と。ファンもそれを望んでいるし、ファンではない人にも「なんだこれ!?」と思われて、それでいて思わず手に取ってしまうような音楽を提供していってほしいしね。

 内容については、こんなもん? いや、ほとんど触れてないに等しいかな(苦笑)。あのね、俺は本当に特に文句いうところもないのよ。確かに曲もバラバラだけど、ひとつひとつは本当によくできていると思うし、「俺はこれが好きなのか否か?」と自問自答すれば、絶対に「好き!」と即答できるような曲ばかりだし。確かにワイハーで聴くことができるようなパンクチューンは皆無だけど、メロディセンスだったり楽曲のアレンジには「ジンジャーならでは」の色をしっかり見出すことができるしね。ギタープレイにしても、例えば "Bulb" でのギターソロに思わず唸ってしまったり、かと思えば "The Man Who Cheated Death" みたいな泣けるバラードもある。なんちゃってマッドチェスターな "G.T.T" の後に、これぞジンジャー!なパワーポップチューン "Yeah, Yeah, Yeah" があったり。ひとまず「これまで」の総まとめなのかな。

 早くも次のアルバムを準備中で、MySpaceでは出来たてホヤホヤの新曲 "Black Windows" の試聴が始まってる。次作は来年の前半には出そうだし、そういう意味では彼のクリエイティビティはまったく落ちてないってことなんでしょう。来週からスタートするGINGER AND THE SONIC CIRCUSのジャパンツアーではこの「VALOR DEL CORAZON」からのナンバーをガンガンやってくれるだろうし……要するに今、俺はすんげー楽しみなんだ!と言いたいわけ。もうアルバムの感想でもレビューでも何でもないんだけどさ。

P.S.
このアルバムの日本盤にはSILVER GINGER 5の "Sonic Shake"、REPLACEMENTSの "Answering Machine"、デヴィッド・ボウイの "Boys Keep Swinging" のカバーが収録されているそうです。俺はUK盤を買ってしまっていて、実はまだ日本盤は買ってないのです。これはマズい……今回の来日を機に、こちらも購入しておきます。実際日本盤はUK盤よりもグンと安いしね。



▼GINGER「VALOR DEL CORAZON」(amazon:UK盤日本盤

2006年9月18日 (月)

THE WiLDHEARTS『GEORDIE IN WONDERLAND』(2006)

 これが最後になるのか、それとも復活への序章になるのか……なんにせよ、久しぶりの「THE WiLDHEARTS」名義のアルバム発表。現時点でのラストライブとなった2005年9月17日のステージを完全収録。フェス出演時のものなので時間自体は短いけど、それでも15曲。もともと彼らのライブはそこまで長いものでもないので、これくらいがほぼフルに近い感じかな。

 何よりもこの日のライブは、ベースのダニーが復帰という貴重な機会。編成はジンジャー、CJ、ダニー、そして後期ドラマーのリッチという4人。この編成は「EARTH VS THE WiLDHEARTS」リリース後のツアー以来かな。日本のファンがギリギリ観ることができなかった編成だよね。個人的には一番好みの編成かも。リッチのズッシリしたドラムが好きだからさ。

 正直に書いてしまうと、このライブ盤はそこまで褒めらるような内容でもないです。演奏のクオリティも高くないし、何よりも一昨年のツアー時よりも声が出てない。そして録音も悪い。曲によってはギタートラブルでギターの音が1本しか聞こえないものもある。生々しいという意味では最もライブ盤ぽいけど、これを最初に聴くことはないよ、初心者ワイハーファンのみんな。殆どのアルバムが廃盤だけど、中古でいくらでも良い録音・良いクオリティのライブ盤が聴けるはずだから。

 珍しい曲も一切ないしね。せいぜいアレか、リッチが叩く "Stormy In The North, Karma In The South" とか "Vanilla Radio" くらいか。特に "Stormy〜" はこれがライブアルバム初収録だから、そういう意味ではレア度が多少ある? そんなでもないか。

 まぁでも……スゴくファンがあたたかいんだよね、ダニーに対して。スタート前のダニーへのかけ声だったり、「Don't Worry About Me〜」の合唱だったり。これぞワイハーのライブっていう臨場感は確かに味わえるので、ファンはそれなりに満足するかも。大体、ジンジャーがこれらの楽曲をソロで歌うこともあんまりないわけで、そういう意味じゃこれは久しぶりにワイハーの楽曲を思いっきり堪能できる1枚なわけですよ。って自分で何書いてるかわかんなくなってきた(苦笑)。

 とにかく、アレだ。音は悪いけど、爆音で聴けと。そしてスピーカーの前で一緒に合唱して聴けばいいよ。これはそういう「記録作品」だから。



▼THE WiLDHEARTS『GEORDIE IN WONDERLAND』
(amazon:US盤UK盤

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