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2025年7月 6日 (日)

BLACK SABBATH / OZZY OSBOURNE: BACK TO THE BEGINNING(2025年7月5日)

Bttb オジー・オズボーンのステージを最初に観たのは、1991年10月の“引退”ツアー@日本武道館。ちょうどアルバム『NO MORE TEARS』をリリースした直後で、この日本公演から最後のワールドツアーが始まったんですよね。なので、自分にとってこれが最初で最後のオジーになる予定でした。あの時点でオジー42歳。今ならメタルをするには全然若いんですけどね。

で、その後に関してはご存知のとおり。最後の来日は2015年11月の『Ozzfest Japan 2015』になるのか。その2年前の『Ozzfest Japan 2013』BLACK SABBATHでの来日でしたしね。2015年秋は自身がメニエール病の影響で大きな音を浴びることを避ける生活をしていたのですが、無理をして最後のオジーのステージに間に合うように会場へ向かい、かなり後方から無理せぬスタンスで観覧したことを覚えています。

あれから10年。ついにオジーがステージから引退する日が来ました。しかも、ビル・ワード(Dr)を欠いた形でうやむやなうちに終幕したBLACK SABBATHもオリジナル編成で最後のステージを行う。そんな彼らを見送るように、ハードロック/ヘヴィメタル界隈の重鎮/レジェンドたちが一堂に会しする特別なイベントが7月5日、イギリスで行われる。そりゃ行きたかったですよ。チケットも取ろうかと思いましたよ。けど、現実的(仕事的)に無理なのはわかっていたので泣く泣く断念。

そうしたら、配信でも日本から観られることが発覚。ライブ自体は2時間のディレイが発生するものの、日本時間23時から約10時間にわたりほぼノーカットで夢のような“饗宴”を目撃することができ、しかもアーカイヴとして48時間残るので、無理して夜更かしすることもなく最後まで楽しめました。

以下の簡単な観覧メモは、この歴史的イベントを記録に残しておくためのもの。後日映像作品としてリリースされるかもしれないけど、それはそれ。単なる自己満足です(昨年秋以降のレポもまだちゃんとまとめてないのに、これだけ先に公開するというのもどうなのかと)。

目次
MASTODON
RIVAL SONS
ANTHRAX
HALESTORM
LAMB OF GOD
SUPERGROUP A
JACK BLACK, ROMAN MORELLO, REVEL IAN
ALICE IN CHAINS
GOJIRA
DRUM OFF
SUPERGROUP B
PANTERA
TOOL
SLAYER
FRED DURST (LIMP BIZKIT)
GUNS N' ROSES
METALLICA
OZZY OSBOURNE
BLACK SABBATH

 

MASTODON
主要メンバーのひとりブレント・ハインズ(G, Vo)が今年脱退して、新体制でのステージ。正直ブレントの離脱はかなり痛いと思うのですが、この日披露された3曲を観る限りではなんとかやれそうな予感。といっても、自身のオリジナル曲は2曲のみでしたから、ちゃんとした判断は難しいところですが。最後にサバス「Supernaut」カバーは予想外の選曲。途中からダニー・ケアリー(TOOL)、マリオ・デュプランティエ(GOJIRA)、そしてエロイ・カサグランデ(SLIPKNOT、ex. SEPULTURA)というドラマー3名が加わり、かなりパーカッシヴなアレンジで独自性を打ち出していました。うん、良き良き。

セットリスト
1. Black Tongue
2. Blood And Thunder
3. Supernaut

 

RIVAL SONS
個人的には好きなバンドだったけど今回バンド単体で出演する中ではもっとも人気も知名度も低いような気がするし、彼らはどちらかといえばLED ZEPPELIN寄りなのかなと思ったけど、この日演奏したオリジナル曲とサバス「Electric Funeral」カバーの相性も悪くなく、これはこれでアリだったな。

セットリスト
1. Do Your Worst
2. Electric Funeral
3. Secret

 

ANTHRAX
表に「Sabbath Bloody Anthrax」、裏に「666」とサバスにおける各パートのメンバー名が記載されたお揃いのTシャツ姿で登場した彼らは、いきなり「Indians」で自分たちらしいペースで空間を作り込んでいく。持ち時間15分と決して長くはない中、しっかりと“War Dance”でのモッシュパートも確保して暴れ放題。2曲目にひたすらヘヴィなサバスカバー「Into The Void」をお見舞いして、たった2曲という潔さでステージを去っていきました。

セットリスト
1. Indians
2. Into The Void

 

HALESTORM
本日唯一の女性アーティストを含むHALESTORM。リジー姐さん(Vo, G)の華やかさと毒々しさがいい感じで伝わるファストチューン「Love Bites (So Do I)」で場の空気を温めると、8月発売の新作からの「Rain Your Blood On Me」を先行披露。ここで新曲か……と思ったものの、これはこれで今日という日にぴったりな選曲なのかな。で、気になるカバーですが……セッション以外では唯一オジーソロから、しかもマニアックな「Perry Maison」という選曲。で、これがリジー姐さんのパワフルボイスにぴったり。実は密かにザック・ワイルド(G)が飛び入りするんじゃないかと思ってたけど、そういったサプライズなしで終了。

セットリスト
1. Love Bites (So Do I)
2. Rain Your Blood On Me
3. Perry Mason

 

LAMB OF GOD
最初に登場したドラマーを見て「あれ、クリス・アドラーじゃない」と気づく。そうか、クリスってだいぶ前に脱退したんだっけ。いきなり「Laid To Rest」から始まるのでテンション上がるも、その後にステージに姿を現したランディ・ブライ(Vo)のビジュアルに衝撃を受ける。なんでこんな“おとっつぁん”姿に……(苦笑)。しかも、線が細いから音のわりに軟弱に見えてしまう。悲しい。けど、音は最高の一言で、「Redneck」含め「まあこの2曲だよね」という選曲にニンマリ。が、その後のサバス「Children Of The Grave」では“歌う”ことに注力するがあまり……うん。シャウトだけで攻めてもよかったんじゃないかな。ランディの風貌と相まって、ちょっとだけずっこけたのはここだけの話。

セットリスト
1. Laid To Rest
2. Redneck
3. Children Of The Grave

 

■SUPERGROUP A
さあ、お待ちかねのセッションタイム! まずはリジー・ヘイル(Vo)、デヴィッド・エレフソン(B/ex. MEGADETH)、ヌーノ・ベッテンコート(G/EXTREME)、ジェイク・E・リー(G/RED DRAGON CARTEL)、マイク・ボーディン(Dr/FAITH NO MORE)、アダム・ウェイクマン(Key)で「The Ultimate Sin」。ジェイク、元気そうでよかったけど、ヌーノのほうが目立ってた気が。にしても、リジー姐さんはこういうパワフルな曲歌うの合ってるね。続く「Shot In The Dark」ではリジー&ヌーノOUT、デヴィッド・ドレイマン(Vo/DISTURBED)IN。ドレイマン、こういう曲意外と合うんだなと再確認。ソロはヌーノがいない分、ジェイクのプレイをしっかり味わえました。

3曲目「Sweet Leaf」はジェイクOUT、ヌーノ&スコット・イアン(G/ANTHRAX)IN。ジュニア(エレフソン)とスコット・イアンが同じ曲を演奏してるの、個人的にグッときた。にしても、ヌーノはメロウな曲もこういうヘヴィな曲もそつなくこなしながら、しっかり自分色に染めていくのさすがですね。4曲目「Believer」はドレイマン、エレフソン&マイクOUT、ウィットフィールド・クレイン(Vo/UGLY KID JOE)、フランク・ベロ(B/ANTHRAX)&スリープ・トーケンII(Dr/SLEEP TOKEN)IN。これまた不思議な組み合わせですが、SLEEP TOKENのドラムがいいグルーヴ生み出してやんの。いいじゃない。そして、最後の「Changes」はウィットフィールド&スコットOUT、ヤングブラッド(Vo)IN。事前告知されていなかったヤングブラッドの登場に会場沸きまくり。ちょうど新作『IDOLS』が全英1位獲得した直後だけに、すごくいいタイミングでしたね。にしても彼、ここまで声量おばけか!ってくらいに全身で歌いまくってたの、カッコよかったな。バックのメンツとの相性も抜群でした。

セットリスト
1. The Ultimate Sin
2. Shot In The Dark
3. Sweet Leaf
4. Believer
5. Changes

 

 

■JACK BLACK, ROMAN MORELLO, REVEL IAN
転換タイミングにステージ上に2人の少年が登場して、そのまま幕間映像へと続くのですが、これがオジーに扮したジャック・ブラック(映画『スクール・オブ・ロック』の人ね)が「Mr. Crowley」を歌うという映像。ギターをトム・モレロ(G/RAGE AGAINST THE MACHINE)の息子ローマン・モレロ、ベースをスコット・イアンの息子レヴェル・イアン、ドラムを日本人ドラマーYOYOKAが担当し、同曲の有名な映像を見事に(かつ大袈裟に)完全再現していました。これぞ完全に『スクール・オブ・ロック』! 面白かった!

セットリスト
1. Mr. Crowley

 

ALICE IN CHAINS
久しぶりにバンドとして動いている姿を観た。ショーン・キニー(Dr)が先日から体調不良でお休みしていましたが、この日は無事ステージ復帰。いきなり「Man In The Box」から始まったけど、配信におけるサウンドミックスが激悪で、ジェリー・カントレル(G, Vo)のボーカル/コーラスが一切聴こえない始末。しかも、続く「Would?」ではジェリーのリードボーカルから始まるのにまったく聴こえない。途中でうっすら聴こえてきた気がするけど、こんなんじゃ彼らの魅力半減。さらに、サバスカバーでは途中で音声がまったく聴こえなくなる大トラブル。途中で復旧したものの、配信組にとってはAICが軽視されているように映っても仕方ないような扱いでした(その後、ガンズ終了後の幕間映像で音声完全版の「Fairies Wear Boots」が再配信されましたが、にしてもねえ?)。

セットリスト
1. Man In The Box
2. Would?
3. Fairies Wear Boots

 

GOJIRA
「Stranded」のオープニングのあのギターの音色を聴いた瞬間、「あ、GOJIRAきた!」とテンション上がる。が、直前のAIC同様ミックスがダメダメで、ボーカルがあまり聞き取れない。加えて、カメラワークもどんどん悪くなっている印象が強くて、早番(笑)があんないい仕事ぶりだっただけに「遅番、なってねえな!」とぼやき始める自分。「さすがにもうパリオリンピックネタは引っ張らないよね」と思ってたら、3曲目「Mea Culpa (Ah! Ça ira!)」では原曲同様にマリナ・ヴィオッテイを連れてきて(あの映像こそなかったものの)完全再現。イギリスでフランス革命の曲やるの、おもろすぎ。で、最後はサバスカバー「Under The Sun」。これは選曲も演奏もよかったな。いつかスタジオ音源出していただきたい。

セットリスト
1. Stranded
2. Silvera
3. Mea Culpa (Ah! Ça ira!)
4. Under The Sun

 

■DRUM OFF
このあたりからセッションパート2に突入。まずは「Drum Off」と称してチャド・スミス(RED HOT CHILI PEPPERS)、ダニー・ケアリー(TOOL)、トラヴィス・バーカー(BLINK-182)のトリプルドラム、ルディ・サーゾ(B/ex. QUIET RIOT)、トム・モレロ(G)、ヌーノ・ベッテンコート(G)という布陣で「Symptom Of The Universe」インストセッション。随所にドラマー3人がソロをぶち込んでくるスリリングな構成は、非常に贅沢でした。

セットリスト
1. Symptom Of The Universe

 

■SUPERGROUP B
続いて本格的なセッションパート再び。ビリー・コーガン(Vo/THE SMASHING PUMPKINS)、トム・モレロ(G)、アダム・ジョーンズ(G/TOOL)、K.K.ダウニング(G/KK'S PRIEST、ex. JUDAS PRIEST)、ルディ・サーゾ(B)、ダニー・ケアリー(Dr)という布陣で何やるかと思えば、いきなりプリースト「Breaking The Law」! 会場大盛り上がりで〈Breaking The Law!〉連呼しやがるし。サバスやオジー以外のカバー、ありなのか。続いて同じメンツでサバス「Snowblind」。前の曲といい、ビリーのボーカル厳し目だけど、トムが“歯ギター”弾いてる後ろではっちゃけてる絵は面白かった(笑)。

3曲目は「Flying High Again」。メンツはサミー・ヘイガー(Vo)、ヌーノ・ベッテンコート(G)、ヴァーノン・リード(G/LIVING COLOUR)、ルディ・サーゾ(B)、チャド・スミス(Dr)、アダム・ウェイクマン(Key)。ステージ上のアメリカ人率の高さとファンクメタル(死語)率の高さといったら……。こういう曲は確かにサミーの歌にも合うし、このメンツで演奏したらなんだか“VAN HAGAR”っぽく聞こえてきますね。で、ヴァーノンとトムが入れ替わってサミーの持ち曲「Rock Candy」(MONTROSEの代表曲)を披露。さすが自身の持ち曲とあって、サミーはさっきよりも歌えてる。カラッとしたアメリカンハードロックがどんより空気のバーミンガムに響き渡る絵、面白い。

5曲目は名曲「Bark At The Moon」。メンツは“Papa V Perpetua”ことトビアス・フォージ(Vo/GHOST)、ヌーノ・ベッテンコート(G)、ヴァーノン・リード(G)、ルディ・サーゾ(B)、トラヴィス・バーカー(Dr)、アダム・ウェイクマン(Key)。てっきりジェイクが弾くもんだと思ってたら、まだまだ体力的に不安定なのでしょうか、ヌーノがジェイクに敬意を表しながらオリジナルに忠実なプレイを見せてくれます。ここではトビアスのボーカルの存在感(やっぱり80'sカバーは彼に合ってる!)とトラヴィスの躍動感の強いドラミングが見どころだったかな。

最後のブロックは想像を超えたセッションが展開。ヌーノ、トム、ルディ、トラヴィスにアンドリュー・ワット(G/著名プロデューサー。オジーの近作をプロデュース)、ロニー・ウッド(G/THE ROLLING STONES)、そしてスティーヴン・タイラー(Vo/AEROSMITH)という布陣で「Train Kept A Rollin'」を披露。もうなんでもありだな(笑)。スティーヴン、ツアーは引退したものの単発ならまだまだ歌えそうですよね。そして、ロニーとトラヴィスが去り、チャドが再度加わって、ラストは「Walk This Way」〜「Whole Lotta Love」というエアロやスティーヴンソロでよくやるメドレー。本当はロバート・プラント(LED ZEPPELIN)を呼びたかったのかな、とか邪推したけど、まあこれはこれでロック/ハードロック/ヘヴィメタルの50年以上に及ぶ歴史の総括としてアリかもしれませんね。

セットリスト
1. Breaking The Law
2. Snowblind
3. Flying High Again
4. Rock Candy
5. Bark At The Moon
6. Train Kept A Rollin'
7. Walk This WayWhole Lotta Love

 

PANTERA
ライブもいよいよ後半戦。さすがにリアルタイムで起きていると眠気が酷かった(苦笑)。印象的なリフレインSEに導かれるようにフィル・アンセルモ(Vo)&レックス・ブラウン(B)のオリメンにザック・ワイルド(G)&チャーリー・ベナンテ(Dr/ANTHRAX)という再集結後お馴染みの4人で「Cowboys From Hell」からライブスタート。あれ……さっきよりさらに音のミックスが酷くなってる……ほぼザックのギターしか聞こえない(笑)。しかもライン直みたいな音の質感だから臨場感皆無で、ザックの粗が目立ってしまう。これは勿体ない。ラストのサバス「Electric Funeral」カバーでなんとかバランスが形になり、ザックの本領発揮と言わんばかりのプレイを楽しむことに集中できましたが、PANTERAとしてのステージを満喫するまでには至らなかったな。彼らはやっぱり生で楽しんでこそなのかもしれない、と実感しました。

セットリスト
1. Cowboys From Hell
2. Walk
3. Planet Caravan
4. Electric Funeral

 

TOOL
明るい中でのTOOLのライブっていうのも新鮮ですが、こうやって観ると皆さん改めて……歳取りましたね。でも、演奏や歌、パフォーマンスはバキバキで「Forty Six & 2」という長尺曲で見事に惹きつけてくれる。かと思えば、サバスカバーは「Hand Of Doom」というマニアックぶりを見せて、こちらもTOOLらしい解釈が加わっていて好印象。その流れから「Ænema」へと続く構成も非常にナチュラルで、“普通の”TOOLのステージとして楽しめました。が、予想通りとはいえ25分で3曲は多いのか、少ないのか(笑)。

セットリスト
1. Forty Six & 2
2. Hand Of Doom
3. Ænema

 

SLAYER
再始動後、初見。全体的に若干テンポがゆっくりめに感じられたけど、それはスピードよりも重さを取ったと良き方向に解釈しました。トム・アラヤ(Vo, B)、全然声出てるじゃん。シャウトも活休前と変わらず。ブランクをまったく感じさせません。持ち時間30分近くということもあって、ここから一気に曲数が増えます(単にTOOLが長尺曲ばかりだったのもあるけど)。SLAYERのサバスカバーは意外な「Wicked World」。トムが珍しくベースを指弾きして、落ち着いたトーンで歌っているのが面白かった。そこからイントロダクションなしで「South Of Heaven」へとつなぐアレンジも絶妙で、さらにこの曲のエンディングから「Wicked World」へと戻る構成もいろいろ考えられててよかった。ラストは「Raining Blood」「Angel Of Death」の力技でダメ押し。まだまだやれるよ。もっとライブ見せてくれ。

セットリスト
1. Disciple
2. War Ensemble
3. Wicked World
4. South Of Heaven 〜 Wicked World
5. Raining Blood
6. Angel Of Death

 

■FRED DURST(LIMP BIZKIT
SLAYERからガンズへの転換時に映像にて。アコギとチェロを携えたアコースティック編成で、1オクターブ下で歌唱。あれだ、「Home Sweet Home」カバーと同じ手法だ。こういう編成でカバーする以上は、会場で披露するよりも収録はベストだったのでしょうね。

セットリスト
1. Changes

 

GUNS N' ROSES
アクセル・ローズ(Vo)、スラッシュ(G)、ダフ・マッケイガン(B)のオリメンに、リチャード・フォータス(G)、新加入のアイザック・カーペンター(Dr)という最小編成でのステージ。いきなりピアノの前に座ったアクセルが、サバス「It's Alright」からステージ開始。これは以前からライブのみで披露してきたから予想がついたけど、その後の「Never Say Die」「Junior's Eyes」「Sabbath Bloody Sabbath」は意外だったな。ま、前者2曲はガンズっぽさが感じられる選曲だったので納得。「Sabbath Bloody Sabbath」はアクセルのシャウトがビシッと決まればカッコいいんだろうけど、今の彼の歌声はファルセット中心だからどうにもソフトになりがち。かつ、この日はイヤモニの影響だろうか、バンドの音と歌がズレまくり。これはいただけなかった。お客さんも地味なサバス曲が続いたせいか、盛り上がりがイマイチのように映ったけど、ラスト2曲の代表曲連発で帳消しに。まあなんにせよ、アクセル御大がとても楽しそうだったのでよかったです(小学生の作文並み感想)。

セットリスト
1. It's Alright
2. Never Say Die
3. Junior's Eyes
4. Sabbath Bloody Sabbath
5. Welcome To The Jungle
6. Paradise City

 

METALLICA
サバス、オジー前の単体出演としてはトリを務めるのは、当然のようにMETALLICA。SEなしでステージに登場すると、「Hole In The Sky」といういかにも彼ららしい選曲からスタート。新作に入っていても違和感ないくらいに馴染んでた。そこから「Creeping Death」で一気にギアが入り、「For Whom The Bell Tolls」と自分たちらしいモードに引き摺り込んでいく流れもさすがの一言。会場の盛り上がり、一体感も(主役であるその後の2組を除けば)この日一番だったように感じました。今回、彼らはもう1曲サバスカバーを用意したのですが、それが「Johnny Blade」という意外な1曲。ガンズといいMETALLICAといい、こういうときにファンが求める初期曲から“外して”くるのが実にらしくていいです。にしても「Johnny Blade」、こうやって聴くといい曲だなという再発見があってよかった。そして「Battery」「Master Of Puppets」の連発でフィニッシュ。ガンズも彼らも最新モードを無理してねじ込まず、この場にいるメタルヘッズが何を求めているかに100%応えているのがさすがでした。

セットリスト
1. Hole In The Sky
2. Creeping Death
3. For Whom The Bell Tolls
4. Johnny Blade
5. Battery
6. Master Of Puppets

 

OZZY OSBOURNE
いよいよメインアクトの時間。恒例となったオープニングSE「Carmina Burana」に乗せて玉座に座ったオジーが床から迫り上がると、会場の熱量も一気に高まる。オジーの「I can't hear you! Are you ready?」を合図に、ライブは「I Don't Know」からスタート。この日のバンドはザック(G)、トミー・クルフェトス(Dr)、アダム・ウェイクマン(Key)に90年代前半を支えたマイク・イネズ(B/ALICE IN CHAINS)という特別編成。ルディ・サーゾやロバート・トゥルヒーヨ(METALLICA)といった歴代ベーシストがいるんだから、彼らでもよかったのにね。もはやカエル跳びもバケツ水掛けも期待できない御年76歳のオジーですが、それでも今できる全力でステージに臨んでくれているその姿に涙が溢れそうになります。時ににこやかに嬉しそうな表情を浮かべるオジーですが、手拍子を促す際の動きがぎこちなかったりと、いろいろパーキンソン病の症状も表れている中、足をバタバタさせ、今にも立ち上がりそうなその動きからは彼の生命力の強さがしっかり伝わります。

選曲的には1st『BLIZZARD OF OZZ』(1980年)から4曲、6th『NO MORE TEARS』(1991年)から1曲と、2大ヒット作収録曲中心。今のオジーが歌える曲、体力的に最後まで維持できそうな曲と考えるとこの5曲でしょうね。いいんです、散々聴きまくって飽きがきそうな楽曲群ですが、オジーが生で歌うこれらの5曲はこの日が最後でしょうから。「Mr. Crowley」や「Mama, I'm Coming Home」では感傷的な気持ちに浸ってしまい、珍しく涙腺が刺激されましたし、特に後者を歌う際のオジーのどこか感極まっている様子にももらい泣きしてしまう始末。会場のお客さんもしっかり泣いてましたもんね……。ラストの「Crazy Train」ではランディ・ローズ(G)の演奏シーンとザックのソロがリンクして、そこでまた涙腺やられる。まさかオジーのライブでこんな気持ちになる日が来るとはね。自分も歳取ったなあ……(遠い目)。

セットリスト
1. I Don't Know
2. Mr. Crowley
3. Suicide Solution
4. Mama, I'm Coming Home
5. Crazy Train

 

BLACK SABBATH
いよいよ宴も終わりの時間です。空もいい感じに暗くなった中、サバスの歴史を紹介するようなドキュメンタリータッチの映像に続いてバンドロゴが浮かび上がる。そして、デビューアルバム『BLACK SABBATH』のイントロダクションともいえる鐘の音と雨音が会場中に響き、続いて無数ものサイレンの音からステー上にオジー、トニー・アイオミ(G)、ギーザー・バトラー(B)、ビル・ワード(Dr)とメンバー4人の姿が浮かび上がり、ライブは「War Pigs」からスタート。オジーはここでも終始玉座に座ったままですが、先ほど同様いい感じにオーディエンスを煽り続けます。ビルのドラムは多少もたり気味でミスヒットも多いものの、このスウィング感あってこそのサバスだと改めて実感させられます。ギーザーはしばらく見ない間に老けまくったなと思うものの、トニーの容姿は10年前となんら変わらず。この4人だからこそ生み出せる極上のグルーヴに乗せて、オリジナルサバスらしい重々しい「War Pigs」が繰り出されていきます。

この4人だからこそのグルーヴがより活きるのが、2曲目「N.I.B.」。シンプルな8ビートのようで微妙に跳ね気味でスウィングするリズムは、このバンドがジャズやブルースの流れを汲んでることが大きいんでしょうね。なので、普通に演奏したらただただ流れていってしまいがちなんですよ(と変に力説)。この日の演奏も実にオリジナルサバスらしいもので、冒頭のギーザーのベースソロからトニーの若干泣き気味のソロ、随所にキメを取り入れながらブレイクするドラム、単調ながらも耳に残るオジーのキャッチーな歌。この曲が収録されたデビューアルバムの時点で、彼らのスタイルはほぼ完成されていたようなものです(そしてこのスタイルはのちにMETALLICAらに引き継がれていく、と)。

3曲目「Iron Man」ではだらしない半裸(笑)のビルがバスドラでリズムを刻む中、トニーの重々しいリフが重なっていく。今まで聴いた中で一番スローで一番ヘヴィな「Iron Man」かもしれないな。どの曲も原曲に忠実なアレンジで、1音1音を4人が大切にしていることが伝わってくる、そんな演奏でした。あと、最後の曲に入る前、オジーが挨拶をするんだけど、ちょっと涙ぐんでたのが印象的でしたね。

BLACK SABBATHおよびオジーの生涯最後のライブで歌われたラストナンバーは「Paranoid」。わー、この曲でもこんな感傷的な気分になるのかと完全に喰らってしまいました。ビルのドラムはボロボロだけど、なぜか今まで聴いた中で一番響く「Paranoid」だった。そしてエンディング。打ち上がる花火を見上げるオジーのシルエットは、すべてやり切ったという満足感よりもどこか寂しげに映りました。

セットリスト
1. War Pigs
2. N.I.B.
3. Iron Man
4. Paranoid

このほか幕間映像にはマリリン・マンソンジョナサン・デイヴィスKORN)、JUDAS PRIEST、シンディ・ローパー、ドリー・パートンなどの著名人からのメッセージも。そういえば、ジョナサンやフレッド・ダーストは告知ポスターに名前が載っていたものの、結局会場には来なかったんですね。直前にキャンセルとなったウルフギャング・ヴァン・ヘイレンのようにいろいろあったのでしょう(察し)。

さて、約10時間にわたる配信をたっぷり観たわけですが(TOOL以降はアーカイブで視聴)……このジャンルにおいて、今後ここまでの規模感のイベントは今後二度とないんじゃないかな、と思わせられるくらいの最終回感濃厚な1日でしたね。きっとMETALLICAあたりが引退するときは、これに匹敵するようなイベントを開けるかもしれないけど、充実度や多くを納得、圧倒させるという点ではこの世代が最後なのかもしれませんね。そういう意味でも、このイベントは「HR/HMのお葬式」のようにも映りました(ちょっとネガティブすぎか)。

その一方で、事前のフォトセッションで重鎮たちが一同に会すした際、ラーズ・ウルリッヒは「まるでヘヴィメタルのサマーキャンプだな!」と嬉々として発言していたのも印象的で。当事者的にはこれくらいポジティブなお祭り感覚なであり、その温度差がリスナー視点とはまた違っているのも面白かったです。

2022年6月 9日 (木)

COMEBACK KID『HEAVY STEPS』(2022)

2022年1月21日にリリースされたCOMEBACK KIDの7thアルバム。

COMEBACK KIDは2001年に結成された、カナダ出身の5人組ハードコアパンクバンド。2003年に1stアルバム『TURN IT AROUND』を発表したのを機に、ツアーを中心とした音楽活動を展開し続けます。2ndアルバム『WAKE THE DEAD』(2005年)以降はVictory Recordsから作品をリリースし続けますが、前作『OUTSIDER』(2017年)ではメタル系名門レーベルNuclear Blast Recordsへ移籍。本作は前作から約5年ぶりとなる、同レーベルからの2作目となります。

Nuclear Blast Records移籍第1弾アルバム『OUTSIDER』から約5年ぶりの新作。プロデュースはデビュー作『TURN IT AROUND』を手掛けたジョン・ポール・ピーターズ(CANCER BATS、PROPAGANDHIなど)が担当したほか、コ・プロデューサーとしてウィル・パットニー(KNOCKED LOOSESeeYouSpaceCowboyEVERY TIME I DIEなど)が名を連ねています。また、「Crossed」にはフランスのGOJIRAからジョー・デュプランティエ、「Everything Relates」にはJJ・ピーターズ(DEEZ NUTS、ex. I KILLED THE PROM QUEEN)がゲスト参加。異色の共演を繰り広げています。

スピードと同じくらいグルーヴを重視した楽曲の数々は、モダンメタルを愛聴するリスナーの耳にも十分にアピールするものがあり、GOJIRAのジョーがゲスト参加しているからというトピックがなくてもしっかり届く内容だと感じました。かっちりしたギターリフを軸に進行していく楽曲と、キャッチーなシンガロングが随所に用意された曲構成、さらにはブレイクダウンを効果的に用いたアンサンブルなどは、決して新しいものとは言えない。なのに、そういった手練れのスタイルに古臭さがまったく感じられないのもまた事実で、ストリートに根付いたサウンドにも普遍的なものがあるんだなと、再認識することができました。

そういった即効性の強い作品ではありますが、唯一難癖をつけるとするならば、楽曲のバリエーションが思ったよりも広くないこと。もっとも、この手のバンドにそういった類のものを求めるのは非常識かもしれません。しかし、32分程度の尺のアルバムにも関わらず、全11曲を聴き通すのに若干の「かったるさ」を覚えてしまうのは問題ありではないかと思うのですが……。単純に自分の好みの問題かもしれませんが、8曲目あたりで退屈さを感じてしまったのもまた事実で、このへんは今後の課題かもしれませんね。

それでも、ラストナンバー「Menacing Weight」のアンセム感の強さは特筆すべきものがあったので、実は曲順の問題なのでは?とも思えてきました。全体的には悪くないと思えた作品だけに、詰めの部分であともう一歩といったところでしょうか。コラボの部分だけが取り沙汰されることの多いアルバムだけに、ちょっと勿体ない気がしました。

 


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2022年1月27日 (木)

GOJIRA『L'ENFANT SAUVAGE』(2012)

2012年6月26日にリリースされた、GOJIRAの5thアルバム。日本盤は『ランファン・ソヴァージュ〜野性の少年〜』の邦題で、同年6月20日に先行発売。

前作『THE WAY OF ALL FLESH』(2008年)から約3年半ぶりの新作。Roadrunner Records移籍第1弾作品であると同時に、全世界へと彼らを広めるきっかけの1枚に。ここ日本でも本作がデビュー作となりました。

本国フランスでは最高7位、アメリカでも34位という好成績を残した本作。プロデューサーにはメンバーのジョー・デュプランティエ(Vo, G)に加え、ジョシュ・ウィルバー(LAMB OF GODHATEBREEDTRIVIUMなど)を迎えて制作した意欲作は、リリースから10年経った今聴いてもまったく色褪せない、強烈なテクニカル&ブルータルメタルアルバムです。

オープニングを飾る「Explosia」やタイトルトラック「L'Enfant Sauvage」でのクセの強いピッキングハーモニクスやトレモロリフ、グルーヴィーだけどどこか変則的に感じられるリズムワーク、そしてジョーのパワフルな咆哮からは、プログメタルとテクニカルデスメタルを掛け合わせたような魅力が伝わり、この1曲だけでも魅力が十分に伝わるはず。かと思えば、「The Wild Healer」のように浮遊感の強い楽曲で心洗われたり、それに続く豪快な「Planned Obsolescence」で再び後頭部を殴られた気分に陥ったりと、問答無用の殺傷力を誇る1枚ではないでしょうか。個人的には「Liquid Fire」や「Mouth Of Kala」のような、どこかゴシックテイストを漂わせたヘヴィチューンがど真ん中で、ドスの効いたグロウルと淡々としたメロウなボーカルがミックスされた歌唱パートとの相性も抜群です。

序盤は圧迫感の強いヘヴィさが際立ちますが、後半からは「The Gift Of Guilt」や「Pain Is A Master」などメランコリックさが散りばめられた楽曲がその空気感を一変。特に「Born In Winter」に見られるテイストは、どことなくフランスのバンドらしさが伝わってきます。先のゴシックテイスト含め、僕自身はこのダークなメランコリックさが特に大好物なので、序盤のブルータルさとのバランス感含めて最高の1枚と言えるでしょう。

この後半のスタイルは続く傑作『MAGMA』(2016年)や最新作『FORTITUDE』(2021年)でさらに磨きがかけられ、結果彼らは唯一無二の存在へと成長していくことになります。そういった意味では、初期の彼らと現在の彼らとを結ぶ橋渡し的役割を果たした重要な作品と言えなくもないのかな。何にせよ、大きな転機を作った重要作なわけです。

ちなみに彼らは約3年後の2015年10月、(当時)国内最大級のメタルフェス『LOUD PARK 15』出演を通して初来日が実現。同タイミングにSLAYER東京単独公演のサポートアクトも務めました。僕もこの際に初めて彼らのライブを体験して、一発でノックアウト。ライブと前後してこのアルバムの輸入盤(2009年のフランスでのロックフェス出演時のライブ映像DVD付きスペシャルエディション)を購入したのでした。

Roadrunder移籍後の3作中、アグレッシヴさにおいては本作がマックス。まだGOJIRAに触れたことがない方はこの『L'ENFANT SAUVAGE』から入るのもよいけど、別に最新作から入ってもよし。要はどのアルバムも最高なので、どこから入っても何ら問題なくGOJIRAのことを理解できるはずです。

 


▼GOJIRA『L'ENFANT SAUVAGE』
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2021年12月31日 (金)

2021年総括:HR/HM、ラウド編

2017年から2020年まで、「リアルサウンド」にて掲載してきたメタル/ラウド系年間ベストアルバム企画。2021年は同サイトにて同企画を実施されないので、場所をこちらに移して行うことにしました。ただ、無理な順位付けはせず、印象的なアルバム/EP 20枚をアルファベット順に紹介していくことにします。

 

ARCHITECTS『FOR THOSE THAT WISH TO EXIST』(Apple Music)(レビュー

 

THE ARMED『ULTRAPOP』(Apple Music)(レビュー

 

CARCASS『TORN ARTERIES』(Apple Music)(レビュー

 

CONVERGE『BLOODMOON: I』(Apple Music)(レビュー

 

DEAFHEAVEN『INFINITE GRANITE』(Apple Music)(レビュー

 

DREAM THEATER『A VIEW FROM THE TOP OF THE WORLD』(Apple Music)(レビュー

 

EVERY TIME I DIE『RADICAL』(Apple Music)(レビュー

 

EXODUS『PERSONA NON GRATA』(Apple Music)(レビュー

 

GATECREEPER『AN UNEXPECTED REALITY』(Apple Music)(レビュー

 

GOJIRA『FORTITUDE』(Apple Music)(レビュー

 

JINJER『WALLFLOWERS』(Apple Music)(レビュー

 

KHEMMIS『DECEIVER』(Apple Music)(レビュー

 

LEPROUS『APHELION』(Apple Music)(レビュー

 

MASTODON『HUSHED AND GRIM』(Apple Music)(レビュー

 

NEMOPHILA『REVIVE』(Apple Music)(レビュー

 

SeeYouSpaceCowboy『THE ROMANCE OF AFFLICTION』(Apple Music)(レビュー

 

SPIRITBOX『ETERNAL BLUE』(Apple Music)(レビュー

 

TO KILL ACHILLES『SOMETHING TO REMEMBER ME BY』(Apple Music)(レビュー

 

TRIVIUM『IN THE COURT OF THE DRAGON』(Apple Music)(レビュー

 

TURNSTILE『GLOW ON』(Apple Music)(レビュー

 

年明け発売の某雑誌には、この20枚の中から10枚をセレクトして順位を付けて掲載予定です。

2020年初頭から流行拡大しだした新型コロナウイルスは、2021年も引き続き大きな影響を及ぼし続け、ロックダウンによるフィジカル(CD、アナログなど)製造遅延およびそれに伴うリリース順延、さらにはツアーやフェスの翌年以降への順延などが重なります。当然、ここ日本への海外メタル/ラウド勢の来日公演も2年近く実現しておらず(一部、小規模のライブハウス公演は行われたようですが、大規模なジャパンツアーやメジャーアーティストの来日公演に関しては皆無)。この年末にKING CRIMSONのジャパンツアーが行われたのは、奇跡に近いものがありました。

しかし、コロナが及ぼした影響は決して悪いことだけではありません。インターネットを使ったリモート作業が以前よりもやりやすい環境になったこともあり、バンドメンバーがバラバラな場所に住んでいても制作自体は行えるようになり、結果として思いがけずに新作が届けられるなんていうサプライズも多々ありました。今回挙げた20枚の中にも、TRIVIUMのように前作から2年経たずしてニューアルバムが到着するというケースも少なくありません。

日本では夏頃と比べて、若干の落ち着きを見せている昨今ですが、海外ではまだまだ予断を許さない状況。イギリスなどの様子に恐怖を覚える一方で、アメリカでは大規模なライブ/ツアーも再開されている。国によって対策や対応は異なるものの、2020年から続くこの生活はもう少し続くことになりそうです。おそらく2022年も国内での大規模野外フェス開催(特に海外アーティストを多数招聘して実施するケース)は現実的ではないのかもしれません。

僕自身、すべてが元通りに戻るとは思っておらず、むしろ少しずつ元の生活に近づけつつ、新たなスタンダードを確立・浸透させなければ、この文化はどんどん先細りしていくんじゃないかと感じています。送り手も受け手も、この新たなスタンダードを前向きに受け取りつつ、過去の日常生活と並列させていくことでこの文化を維持し、さらに成長・進化させていくはず……僕自身はそう信じています。

さて、明日はジャンル分け隔てなく総括した1年のまとめ記事を公開する予定です。この記事と併せてお楽しみいただけると幸いです。

 

2021年7月 4日 (日)

2021年上半期総括

恒例となった上半期ベスト。昨年はコロナのあれこれで完全に失念していましたが、今年は6月末から続く仕事上のバタバタですっかり忘れていました。昨年は7月3日正午に出していたんですね……(苦笑)。

ということで、年々出し日が遅れつつある上半期ベスト。昨年は特例として「デジタルフォーマットならではのミニアルバムやEPを含む国内外の10作品」という形に変更しましたが、今年はそれ以前の「洋楽5枚、邦楽5枚」を死守しつつ「デジタルフォーマットならではのミニアルバムやEP、単曲を含む10作品」をピックアップしてみました。

 

THE ANCHORESS『THE ART OF LOSING』(amazon)(レビュー

 

THE ARMED『ULTRAPOP』(amazon)(レビュー

 

DANNY ELFMAN『BIG MESS』(amazon)(レビュー

 

GOJIRA『FORTITUDE』(amazon)(レビュー

 

WEEZER『VAN WEEZER』(amazon)(レビュー

 

GASTUNK『VINTAGE SPIRIT, THE FACT』(amazon)(レビュー

 

Little Glee Monster『REUNION』(amazon

 

からあげ姉妹『1・2・3』(amazon

 

楠木ともり『Forced Shutdown』(amazon

 

ドレスコーズ『バイエル』(amazon

2021年5月 3日 (月)

GOJIRA『FORTITUDE』(2021)

2021年4月30日にリリースされたGOJIRAの7thアルバム。

もともとリリース間隔が4年前後を要するバンドではありましたが、本作は全米24位という好記録を残した前作『MAGMA』(2016年)から約5年という過去最長のスパンを経て届けられた1枚。制作には2年近くを要したようですが、そこには昨年からのコロナ禍も少なからず影響し、結果として5年という時間が過ぎていたということなんでしょうね。

昨年夏の時点で、実に4年ぶりの新曲となる「Another World」が突如デジタルリリースされ、「いよいよアルバムも完成か?」とファンを喜ばせること半年。その間には「Born For One Thing」などの先行配信もあり、本作に対する期待値は一段と高くなっていたことでしょう。で、実際に届けられたアルバムはその期待を軽く超える驚きの完成度でした。

先に配信された2つの曲を聴く限りで、前作をさらにスケールアップさせた、ヒリヒリするようなメタルアルバムになるんだろうなと想像していたわけですが、実際に通して聴いてみると、その楽曲の幅、バラエティ豊かさが過去イチという驚きの内容でした。「Amazonia」では祭囃子を彷彿とさせる笛の音が聞こえてきたり、ディジュリドゥなどの民族楽器をフィーチャーしたトライバルなアレンジが施されており(アルバム中盤に配置されたインストナンバー「Fortitude」もその流れにあるのかな)、オープニング曲「Born For One Thing」からの流れもあってどこか90年代半ばのSEPULTURAと重なる部分も見つけられたのではないでしょうか。

かと思えば、宗教音楽にも似たダークさや冷たさが印象的なゴシックチューン「Hold On」や「The Trails」があったり、どことなく60年代後半〜70年代初頭あたりのサイケデリックロックにも通ずる「The Chant」もあるんだけど、これぞエクストリームメタル!と膝を叩きたくなるような「Into The Storm」や「Grind」のような楽曲もしっかり存在する。いわゆるグルーヴメタルの範疇に含まれるスタイルのバンドかと思いますが、その独特のメロディセンスとアレンジのセンスは作品を重ねるごとに磨きがかかり、かつてのプログレッシヴな作風は若干影を潜めるも、1曲1曲の強度や独自性は突出している。本作でひとつの到達点に達したと同時に、早くも新たなフェーズに突入したことが伝わる1枚と言えるでしょう。

独特の空気感はアルバムが後半に進むにつれて濃くなっていき、新たな発見と驚きに出会うことができる。そんな緩急に富んだ流れを持つこのアルバムは、GOJIRAというバンドの代表作になると同時に、2020年代におけるメタル/エクストリームミュージック界における新たなマスターピースとなるのではないでしょうか。そう強く実感させるだけの説得力と勢いが伝わる、驚異的な傑作です。

なお、本作の日本盤にはボーナストラックとして「Silvera」「Backbone」「Pray」のライブテイクを追加収録。10分を超える「Pray」の熱演ぶりは特に圧巻モノなので、ぜひ国内盤CDにてチェックしてみてください。

 


▼GOJIRA『FORTITUDE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年10月15日 (木)

CAVALERA CONSPIRACY『INFLIKTED』(2007)

2007年3月25日にリリースされたCAVALERA CONSPIRACYの1stアルバム。日本盤は同年3月19日に先行発売されています。

その名前からもわかるように、CAVALERA CONSPIRACYはマックス・カヴァレラ(Vo, G/SOULFLYKILLER BE KILLEDNAILBOMB、ex. SEPULTURA)が実弟イゴール・カヴァレラ(Dr/ex. SEPULTURA)と結成した新バンド。名盤『ROOTS』(1996年)を携えたツアーを経てSEPULTURAを脱退したマックスと、以後ほぼ交流のなかったイゴールでしたが、10年ぶりの再会を機に不和が解消され、カヴァレラ姓を冠した新たなサイドプロジェクトが立ち上げられることになります。

当時のレコーディングメンバーはカヴァレラ兄弟のほかSOULFLYでマックスと活動をともにするマーク・リゾ(G)と、フランスのGOJIRAからフロントマンであるジョー・デュプランティエ(B, Vo)が参加。アルバムのプロデュースはマックスと、初期SOULFLYや初期MACHINE HEADのメンバーでもあったローガン・メイダーが担当しており、スラッシュメタル色の強いグルーヴメタルをマックスらしいカラーでまとめあげています。

カヴァレラ兄弟がタッグを組むことで、初期SEPULTURAのスラッシュ/デスメタル路線か、『ROOTS』期やSOULFLYで展開する民族音楽をフィーチャーしたモダンメタル路線のどちらに進むのかが気になりましたが、結果としてはそのどちらでもない、「『ROOTS』期のSEPULTURAやSOULFLYから民族音楽色を排除した、スラッシーなグルーヴメタル」というのが正解でした。

本作を最初に聴いたときは、若干NAILBOMBにも近いかな?と感じたりもしましたが、今聴くとあそこまでの直線的な演奏でもないですし、むしろNAILBOMBの色はインダストリアル調の味付け(「Inflikted」の冒頭など)にとどまるのみ。それよりは、『CHAOS A.D.』(1993年)や『ROOTS』からスラッシーでストレートな楽曲を抜き取り、かつSOULFLYでのグルーヴィーな楽曲からラテンテイストを排除したものをミックスなのかなという気がします。マーク・リゾがソロを弾いている時点でSOULFLYっぽさがにじみ出てしまうものの、イゴールの手数が多い“らしい”プレイやフレーズを織り交ぜることでSOULFLYとの差別化はなんとかできていると思います。

とはいえ、マックスがこのデス声で歌ってしまえば、どれもこれもSEPULTURA的でありSOULFLY的になってしまうんですけどね。こればかりは仕方ない。クセが強いから(「The Doom Of All Fires」の序盤は意外性ありましたけどね)。ただ、「Black Ark」「Ultra-Violent」の2曲にはジョーのボーカリもフィーチャーされているので、一瞬ですがハッとされるかも。もっとフィーチャーしてもよかったのに。

また、本作にはマックスの継子リッチー・カヴァレラやレックス・ブラウン(B/ex. PANTERA)がゲスト参加。とはいえ、それぞれ1曲ずつなので、そこまで大きな話題でもないかな。そもそも、カヴァレラ兄弟の和解という巨大なテーマがある1枚ですからね。

なお、CAVALERA CONSPIRACYは本作以降もコンスタントに活動を継続。2017年までにアルバムを4枚残しており、現在はマックス&イゴール、マークの3人にサポートベーシストという布陣のようです(ジョー脱退後、CONVERGEのネイト・ニュートンが在籍したこともありました)。

 


▼CAVALERA CONSPIRACY『INFLIKTED』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2017年7月20日 (木)

GOJIRA『MAGMA』(2016)

フランス出身の4人組ヘヴィメタルバンド、GOJIRAが2016年初夏に発表した通算6枚目のスタジオアルバム。

前作『L'ENFANT SAUVAGE』(2012年)は日本盤もリリースされ、2015年10月には『LOUD PARK 15』出演およびSLAYER単独公演のゲストアクトとして初来日公演も実現したので、(また、昨年の映画『シン・ゴジラ』公開にあわせてそのバンド名で)記憶に残っている人も多いのではないでしょうか。

もともとヘヴィでプログレッシヴな要素を持ち合わせていたバンドではありますが、4年ぶりの新作となった本作『MAGMA』ではそのプログレッシヴさがより強まっているように感じました。スピードで推し進めつつ豪快なアレンジで起承転結するスタイルではなく、ミディアム〜スローで重々しいサウンドの中で表情を少しずつ変えていくその様は、どこかMASTODONや2000年代後半以降のOPETHにも通ずるものがあります。

特に本作は、クリーントーンの歌声が印象的なオープニングトラック「The Shooting Star」でいきなり驚かされるのですが、曲が進むにつれて従来のGOJIRAらしい要素も登場します。特徴的なエフェクトをかけたギターサウンドが耳に残る「Stranded」、緊張感のあるヘヴィサウンドとメロディアスなギターフレーズ、そしてどこか宗教的な歌メロとの融合が不思議な空気感を醸し出すアルバムタイトルトラック「Magma」、バスドラ連打とギター&ベースリフのユニゾンが気持ち良い「Pray」など、とにかく聴きどころの多い1枚です。

プログレッシヴな作風とはいえ、1曲1曲が連作になっているわけではなく、そのどれもが単体として独立した楽曲で、なおかつ1曲3〜4分程度。最長でも6分台で、それも全10曲中2曲。トータルで44分にも満たないトータルランニングのせいもあって、非常に聴きやすい印象を受けます。プログレッシヴなテイストはあくまで味付けといったところで、それがバンドにとってメインの武器ではない。陰鬱なヘヴィさに加えて、本作ではメロディアスさが少々強まったことで、かつてないほどに個性的な作品に仕上がったように思います。

残念ながら、本作は国内盤未発売。ぜひ『LOUD PARK』での再来日に期待しつつ、そのタイミングでの国内盤リリースにも期待したいところです。

 


▼GOJIRA『MAGMA』
(amazon:海外盤CD / MP3

 

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