GOTTHARD『G.』(1996)
スイスの4人組ハードロックバンド、GOTTHARDが1996年初夏にリリースした3rdアルバム。日本ではデビューアルバム『GOTTHARD』(1992年)の時点でそこそこ人気を集めていましたが、個人的にどハマりしたのがこの3作目から。単にアルバム発売後のツアーから元KATMANDUのマンディ・メイヤー(G)が加入したから、というのも大きかったのかもしれませんね。
オープニングの「Sister Moon」のブルージーなハードロックサウンドが特にツボで、かと思えば「Mighty Quinn」(ボブ・ディランのカバー)みたいなスタジアムロック的なアレンジの楽曲もある。そして「Let It Be」みたいにしっかり聴かせるミディアムバラードや、「Father Is That Enough?」のようなスローバラード、「One Life, One Soul」みたいなアコースティックナンバーもある。
当然それだけじゃなくて、ハードロックバンドらしいガッツにあふれた「Fist In Your Face」や、疾走感に満ちたマイナーコードの「Ride On」、ブギーのリズムが心地よい「Lay Down The Law」、VAN HALEN的なハードブギー「Hole In One」もある。そう、アルバムとしてのバランス感が非常に優れているんです。
ただハードなだけではなく、しっかり聴かせる要素も強い。その“聴かせる”側の比重が急激に大きくなり出したのが、このアルバムなのかなと。1曲1曲がしっかり練られていて、B級っぽさ皆無。スティーヴ・リー(Vo)というシンガーの力量も幅広い楽曲群によってより発揮される結果となったし、ソングライターにしてギタリストのレオ・レオーニの才能も突出していることが伺える。貶すところが一切ないんですよね。
ちょうどWHITESNAKEタイプのバンドに飢えていた時期でもあったので、そこにこのアルバムが飛び込んできたらストライクだった……たったそれだけの理由かもしれませんが、あのタイミングに出会ってなかったら気に入っていなかったかもしれない。正直、彼らの作品でここまでどハマりしたのはこれ1枚のみ。そこが不思議なんですよね。そう思うと、出会いのタイミングって本当に大切なんだなと思うわけです。
スティーヴ・リーは2010年、交通事故で帰らぬ人となってしまいましたが、バンドはオーディションの末、新ボーカリストを迎えて活動を継続中。機会があったら近作にも手を出してみようと思います。もしかしたら、タイミング的に再びどハマりすることもあるかもしれませんしね。
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