2002/11/29

GRAPEVINE『another sky』(2002)

  GRAPEVINE通算5作目のオリジナルアルバムとなる「another sky」は、ある意味『最も「GRAPEVINE」らしいアルバム』になっていると思う。特に革新的なことをやっているわけでもなく、逆に時代に逆行してるようにも感じられる‥‥だけど、これだけ自信を持って「己の信じた道」を突き進み、そして深く表現することができるってのは尊敬に値するし、正直羨ましいよ。

  個人的には前作「CIRCULATOR」が地味だけど傑作だっただけに、それに続くオリジナルアルバムってことでかなり期待してました。勿論、この半年の間にリリースされたシングル曲"ナツノヒカリ"と"BLUE BACK"がこれまたすこぶる好調だっただけに、必要以上に期待してたんだなこれが。ところが‥‥いざ出来上がったアルバムを聴くと‥‥「‥‥へっ!?」って程に地味、地味、地味。前作よりも更に派手さが後退し(いや、前作だって決して派手ではなかったけどね)、もしかしたらこれまでのアルバムで一番地味かもしれない。確かにここ数作のシングルの中では一番アッパーな"BLUE BACK"なんかは派手な部類に入るだろうけど、音使いが地味‥‥いや、渋いのよ。

  「地味、地味‥‥」ってしつこい程に書きまくってるけど、この地味さ・渋さがいいのよ。楽曲的には確かに地味なタイプの曲が多い。けど、内容的にはこれまでの集大成に近いような作りになっているにも関わらず、過去の作品より高純度。演奏だけに耳を向けると、実はかなりテンションが高かったりするし。そういう意味では「地味」という言葉は不向きなのかもしれないけど‥‥けどね、ここで言う「地味」って、ある意味「唯一無二」と同意義だと思ってください。それくらい、誰にも真似できないレベルにまで到達してると思うのね、今のGRAPEVINEって。

  思うに今回のアルバム、ここまで高純度な作品集となったのには、外部ゲストを一切交えず、バンドのメンバー4人+前作のツアーにも参加したサポートキーボーディスト、そしてプロデューサー兼ベーシストの根岸孝旨(Dr.Strangelove)の6人で作られたからだろうな。腱鞘炎から復帰したベースの西原はまだ完全復帰とはいかず、曲によっては根岸やボーカル&ギターの田中がベースを弾いていたりするんだけど、基本的には気心知れたメンツで作った「ホームメイドなアルバム」という印象が強い。例えば前作ではキーボードやドラム/パーカッションにゲストミュージシャンを迎えたり、アルバムの殆どを西原抜きで制作していたりするし。通常なら「西原復帰したし、ここで一発気合いの入ったのを‥‥!」ってなるんだろうけど、そこはバイン。完全に肩の力が抜けきった、ホントに味わい深い1枚を作ってくれた。

  フォーキー且つブルージーでサイケな"マリーのサウンドトラック"からアルバムは緩くスタート。そのままアッパーな"ドリフト160(改)"~"BLUE BACK"と勢いをつけ、如何にもバインらしいファンキーな"マダカレークッテナイデョー"、男泣きバラード2連発の"それでも"~"Color"で前半戦終了。後半はバイン濃度が非常に高いミドルチューン"Tinydogs"~"Let me in ~おれがおれが~"から、俺の2002年夏のテーマソングとなった爽やかなポップチューン"ナツノヒカリ"へと続く。この曲が後半でいいアクセントになってるんだな、うん。そのまま如何にもバインらしい(ってその例えばっかだな俺)"Sundown and hightide"~"アナザーワールド"~"ふたり"でアルバムはしっとりと終了。これといった超山場を迎えぬまま、適度な高揚感と適度な潤いを我々にもたらし、50数分・12曲収録のこのアルバムは終了するんだけど‥‥そのままエンドレスでまた"マリーのサウンドトラック"に戻ってたりするんだよね。そういう意味では本当に飽きさせない、「かっぱえびせん」のようなアルバムだと思います、これは。

  GRAPEVINEというバンドは常に「自分達なりのブルーズ」を鳴らしてきたバンドだと思います。確かにバンドのタイプとしては「ブリットポップ/OASIS以降」なのかもしれません。しかし、今やブリットポップを通過して生き残った英国産バンドも数少なく、あのムーブメントに触発されて結成された日本のバンドも今では音楽性を変えたり姿を消してしまったり。そんな中、バインは劇的な変化や成長をすることなく、常にマイペースで等身大の自分達を表現してきました。ひとつの型を持ち、それをアルバム毎、ツアー毎に追求し、更に深い表現力・表現方法を身に付け、周りから地味だと言われながらもそれに相反するようなライヴを繰り広げる。セールス的には決して大成功しているとは言えないだろうけど、「バンド」という生き物としてみれば、ここまで成功している存在はそうはいないんじゃないでしょうか? ホント、羨ましいと思います。

  未だにこのバンドを「女子供がギャアギャア言う、アイドルバンド」という色眼鏡で見る洋楽信者が多いみたいですが、もうそんなのどうでもいいや。ホント、いいバンドがリラックスして作った、いいアルバムですよこれは。前作で彼等に入った人は更に気に入るんじゃないかな。ただ‥‥このアルバムを最高傑作とは呼びたくないな、俺は。なんていうか、これよりももっと凄いアルバムは彼等なら作れるんだろうけど、これよりももっと濃くて深いアルバムは、今みたいなリラックスの仕方じゃないと作れないんじゃないだろうか‥‥と思うのね。だから俺はこれを最高傑作とは呼びません。だけどこれまでの作品の中ではダントツで一番好きなアルバムであります。回りクドイ言い方だけど、そういうことでいいじゃない?



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投稿: 2002 11 29 01:57 午前 [2002年の作品, Grapevine] | 固定リンク

2001/08/22

GRAPEVINE『CIRCULATOR』(2001)

  たまたま買った1枚が大当たりだったって経験、時々あると思う。視聴機が大量に置かれている都会なら聴いてから手に取るなんてことも可能だが、こと田舎に住んでいるとそうもいかない。視聴機がある店もあるにはあるが、大体が売れ線ばかりだ。ジャケット買いやインスピレーションだけで購入を決めてしまったことなんて昔はよくあったが、最近はCD屋に行っても漁るのは旧譜や中古盤ばかり。

  そんな中、たまたま手にしてしまったのが、このGRAPEVINEの4作目となる「CIRCULATOR」だった。先行シングルとなっていた"discord"や"風待ち"はTVのヒットチャート番組でチラッと聴いた程度だったが、かなり好印象だった。そこへこのアルバムと偶然CD屋で出会う。決してイチ押しされていたわけでもなく、店頭にたまたま1枚、置かれていただけ。けど、何故か手にしてレジまで行ってしまった。

  前作「HERE」は未聴だった。今考えてみると、何故なのか思い出せない。きっと金がない時とリリースタイミングが合ってしまったのと、中古盤をあまり見かけなかったことが原因だろう。それまでのアルバムはちゃんと聴いていたし、個人的にはセカンド「LIFETIME」は気に入っていて、今でもたまに聴いている。その後に出ていたシングル曲もちょっと耳にする程度。だから、俺の中では一昨年の春以来‥‥約2年振りにちゃんと聴く新譜ということになる。

  はっきり言って、これは地味な作品だ。しかし、2度、3度と聴きたくなる作品集である。基本的にはミディアム~スロウテンポの曲がメイン。よく「OASIS以降」なんて形容詞が使われることがあるが、このバンドは正しくその形容詞が相応しいバンドだ。勿論、ただの「OASIS以降」では終わっていないが。

  マーヴィン・ゲイの曲名から取ったと言われるそのバンド名から想像できる、非常に黒っぽい、グルーヴィーで腰の据わったサウンドを聴かせるバンド。曲は決して派手ではなく、ブルーズを基調としながらも、そこに現代的な彩りを重ねることにより、自分達らしさを追求してきたバンドだ。メンバー全員がソングライターとして確立した個性を持っていて、プレイヤー/シンガーとしてのアビリティーも高い。一歩間違えば「玄人受け」止まりなのだが、この数年、契約を切られることもなく地道なヒットを飛ばしてきて、現在は中堅に届きそうなポジションといえる。

  そんなこのバンドの決定打となるであろう作品。これは間違いなくその「一手」となるはずだ。軽いショックを受けたよ‥‥「GRAPEVINEって、こんなにすげぇバンドだったっけ?」と。常々、このバンドは渋いけどカッコイイ、男受けするバンドでは‥‥なんてことを話したりしていたが、このアルバムがそれを全て証明してくれている。濃くて渋くて、それでいてカッコよくて、男の心を惹くバンド。海外にもいたよ、そんなバンドが‥‥OCEAN COLOUR SCENEっていうんだけどね。決して派手ではないけれど、誰もが認める庶民派バンドだけど、気づけばいつもそこにいる。両者に共通する点ではないだろうか?

  とにかく、今回のアルバムは各楽曲がこれまで以上に際立っている。シングルとして発表されていた上記以外の2曲("ふれていたい"、"Our Song")の完成度もさることながら、それ以外の新曲も激渋でありながら、男の色気を感じさせるファンキーな曲満載だ。アルバムのトップを飾る"Buster Bluster"、従来の彼らの魅力を存分に発揮する"lamb"、CMソングにもなっている"(All the young) Yellow"、既に昨年からライヴで披露されていた"B.D.S."等はその最もたる例だろう。勿論、先の"discord"もしかり。

  更にそれだけではない。およそ20代のバンドが出す音とは考えにくい、濃すぎるくらいに濃いヘヴィブルーズ"壁の星"、THE POLICE的レゲエからサビで一転するメロウな"フィギュア"、サイケデリックに響くブルーズ"アルカイック"、夏の終わりをイメージさせる"波音"、BEATLES的コーラスが印象的なロッカバラード"I found the girl"‥‥って全曲挙げてしまったが、とにかく捨て曲なし。この手のギターロックから離れつつあった自分だったが、これは購入後3週間経った今でも、ヘヴィローテーションだ。

  これだからロックって面白い。嗚呼、もうOASISも前みたいに売れてないし、他のバンドも消えてるのが多いし、ヘヴィロックは苦手でヒップホップはもってのほか、テクノに手を出す程勇気もないしなぁ‥‥と最近元気がない、そんなあなたにこそ手にしてもらいたい1枚。日本にだっていいバンドは沢山いる。切っ掛けがないだけで、出会えてない素敵なバンドがまだまだいる。ここまで書いてきたことにピンときた人、是非これからCD屋に出かけて、このアルバムを手にして欲しい。気に入るはずだ。そしたら旧譜も聴いてみるといい。「何故もっと早く出会わなかったんだろう」と思うはずだから。

  最後に‥‥男性諸君、もっとこのバンドを応援しようじゃないか? ボーカル・田中のルックス等からどうしても女性ファンが多い彼らではあるが、こいつらは間違いなく「男の為の」バンドなのだから。既に"風待ち"は俺の今年(29~30歳)の夏のテーマソングに決定。毎回聴く度に目をウルウルさせている。ちょっと汗ばむ夏の夜、このアルバムを聴きながら酒飲んでると、好きな人が恋しくてたまらなくなる。ギュッと胸が苦しくなる‥‥30男をも唸らせる、これはそんなアルバムだ。



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投稿: 2001 08 22 01:55 午前 [2001年の作品, Grapevine] | 固定リンク