2018年11月 7日 (水)

GRETA VAN FLEET『ANTHEM OF THE PEACEFUL ARMY』(2018)

GRETA VAN FLEETが2018年10月末にリリースした、待望の1stフルアルバム。1st EP『BLACK SMOKE RISING』(2017年)が全米182位、2枚組EP『FROM THE FIRES』(2018年)が全米36位と、バンドに対する注目度と比例するように順位を上げてきた彼らですが、このフルアルバムでは全米3位という好記録を獲得。イギリスでも最高12位という順位を残しております。今年8月の『SUMMER SONIC』での初来日は残念ながらキャンセルされてしまいましたが、この力作を携えて2019年1月にはついに単独来日公演も決定。今度はキャンセルしないでね。

さて、1年ぶりの新作となるこのフルアルバム。基本的には過去2作のEPと路線は一緒です。全10曲でトータル46分というトータルランニングも程よくて聴きやすい。過去作でハマったというリスナーなら間違いなく気にいる内容かと思います。

オープニングは「Age Of Man」という6分にわたるサイケデリックなスローナンバー。よく引き合いに出されるLED ZEPPELIN的な豪快ハードロックではなく、意表を突いた始まり方だと思います。もちろんM2「The Cold Wind」、M3「When The Curtain Falls」ではZEP的なロックが展開されているのでご安心を。1stアルバムでここまで思い切ったオープニングを用意するとは、すでに貫禄すら感じられます。

で、「Age Of Man」を聴いて改めて思ったのですが、ボーカルのジョシュ・キスカのハイトーンってロバート・プラントというよりはジョン・アンダーソン(ex. YES)のほうが近いんじゃないかなって。「The Cold Wind」や「When The Curtain Falls」では確かにプラントっぽく聞こえるんだけど、それって節回しだったり歌い方がプラント的なんだろうなと。声質自体は意外とアンダーソンのそれなのかもしれません。だからなのか、「Age Of Man」はどことなく70年代のYESを思い出したりもして……そう感じません?

とはいえ、アルバム全体で表現されているのはZEP以降の土着的なブルース(ハード)ロック。南部的なフレイバーももちろん健在で、そういった意味ではTHE BLACK CROWES的でもある……なんて解説は、今さらいらないですよね。むしろ、こういう新人を前にするとオッサンほどうんちくを語りたくなる傾向が強いので、過去との比較はこのへんにしておきます。

これを純粋に“新しい”と感じられるリスナーが本当に羨ましい。この50数年の間に何度も生まれては廃れ、そして再生されてきたスタイルが2018年に再び“新しい”音楽として浸透し始めている。それって本当に素晴らしいことですよね。実際、40代半ばの自分が聴いてもカッコいいと思えるわけですから、若い子たちにとってはその比じゃないんだろうなあ。

どの曲も良いんだけど、やっぱり個人的にグッとくるのは「Age Of Man」や「Lover, Leaver (Taker, Believer)」といった長尺の楽曲。特に後者は中盤のインストパートがツボです(YouTubeではライブ映像が公開されていますが、インプロヴィゼーションを含む30分近い圧巻のプレイを楽しめます)。この曲、CDでは5曲目というベストなポジションに配置されていますが、配信バージョンはラストに置き換え。代わりに5曲目には配信シングルとして先行リリースされたショートバージョン「Lover, Leaver」が置かれています。個人的にはCDバージョンの曲順のほうが好み。

あと、日本盤CDはボーナストラックとして1st EP『BLACK SMOKE RISING』の4曲が丸々追加されているので、初めてGRETA VAN FLEETに触れるビギナーはこっちを購入するといいんじゃないかな。



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投稿: 2018 11 07 12:00 午前 [2018年の作品, Greta Van Fleet] | 固定リンク

2017年12月25日 (月)

GRETA VAN FLEET『FROM THE FIRES』(2017)

今春デビューし、ここ日本でも夏前後から話題になり始めたアメリカ・ミシガン州出身の4人組バンド、GRETA VAN FLEETが前EP『BLACK SMOKE RISING』に続く新作『FROM THE FIRES』を11月にリリースしました。全8曲から構成される本作、一見フルアルバムのようですが、どうやら“ダブルEP”ということになっているようです。

どういうことかと言いますと、前作『BLACK SMOKE RISING』に収録された4曲に、新たにレコーディングされた4曲を加えた内容……ということで、“ダブル”だと。そういえば『BLACK SMOKE RISING』の単体での配信、ある時期からストップしましたしね。まあ、こっちで全部聴けるから問題ないんですが。

ダブルEPなんて名前が付けられると、4曲入りCD2枚組なのかって話ですが、そんなこともなく、ちゃんと1枚にまとめられ、曲順も新たに考えられたものになっています。ちなみに、新曲はM2「Edge Of Darkness」、M4「A Change Is Gonna Come」、M6「Meet On The Ledge」、M7「Talk On The Street」。このうち「A Change Is Gonna Come」はサム・クック、「Meet On The Ledge」はFAIRPORT CONVENTIONのカバーとなります。このあたりのセレクトも、前回のレビューで書いたようにTHE BLACK CROWESに通ずるものがある気がしませんか?

前作の時点では「Highway Tune」や「Safari Song」などからロバート・プラントジミー・ペイジ……つまりLED ZEPPELINをイメージしたのですが、こうやって8曲通して聴いて思ったのは、ツェッペリン的なインプロビゼーションを前面に打ち出すわけではなく、単純に「良い曲を、うまいボーカリストと味のあるギタリストが表現する」といった方法論なのかなと。確かにツェッペリンっぽさはあるんだけど、それはほんの一部分にすぎず、むしろブルースやソウルをロック的手法で表現しただけ。まあ、現時点でまだライブを生で観ていないので、あまり断言するのもなんですけどね。

最初のEPの時点では過剰な期待を寄せてしまいましたが、本作を聴いて改めて冷静な気持ちになれました。いや、だからといって本作が駄作という意味ではありません。ぶっちゃけ、今年聴いたロックアルバム(正確にはアルバムじゃないけど)の中でも飛び抜けて良いですし。ちゃんとした評価は、いずれ登場するであろう真のフルアルバムまで取っておこうという話です。

余談ですが、このバンドのリリース方法を見ていると、今後はこうやって新曲ができたらその都度EPとして発表して、まとまったら1枚にまとめるという過去の日本のアルバム制作方法に近づいていくのかな……いや、そもそもアルバムという概念自体がなくなるんじゃないか。そんなことをふと考えてしまいました。



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投稿: 2017 12 25 12:00 午前 [2017年の作品, Greta Van Fleet] | 固定リンク

2017年12月 2日 (土)

GRETA VAN FLEET『BLACK SMOKE RISING』(2017)

夏以降、都内のCDショップでよく目にしたジャケット。それがGRETA VAN FLEETに対する第一印象。その音を耳にしたのはもっとあとになってからで、Spotifyでランダム再生していたら、たまたま流れてきたのがこのEPの1曲目「Highway Tune」でした。まあ、皆さんの感想と一緒です。「なんだ、このツェッペリンまんまのバンドは!?」と。

アメリカ・ミシガン州出身の4人組バンドが、2017年春に発表した4曲入りEPが本作。メンバー4人中2人が10代というこのバンド、聴けばいわゆるHR/HMの流れとは異なるシーンから登場したのが伺えます。それは「Highway Tune」のMVに映るメンバーの姿、ルックスからもご理解いただけるんじゃないでしょうか。

彼らは登場する場所やタイミングさえ違えば、アイルランドのTHE STRYPESのようになっていたかもしれない。そう、表現方法こそ異なるものの、そのルーツは意外と近いものがあるんじゃないかと思うのです。それが古き良き時代のブルースやソウル、R&Bであり……ただ、GRETA VAN FLEETの場合は場所柄か、ガレージロックやパブロックからの洗礼を受けていない。その違いなんですよね。

もちろんLED ZEPPELINからも影響を受けているでしょう。しかし、そのままマネするわけではない。そのツェッペリンのルーツを聴いていたら、気づけば自分たちの曲も彼らに近づいていた。ホント、そんな単純な話なのかもしれません。

でも、彼らは単なるツェッペリンフォロワーではない。2017年によみがえったツェッペリンと言いたくなるような「Highway Tune」にみなぎる躍動感と、ジョシュ・キスカ(Vo)の21歳とは思えない存在感の歌声。確かにこの1曲のインパクトはものすごいものがあるけど、続く「Safari Song」は“ツェッペリン meets サザンロック”的な香があり、THE BLACK CROWESっぽいとも言える。3曲目「Flower Power」のアコースティックテイストなんて、まさにTHE BLACK CROWES寄りですしね。そしてラストのタイトルトラック「Black Smoke Rising」は、フォーマットこそロックですけど、もっとソウルの香りが強い。つまり、そういうことなんですね。

ハードロックサイドから語ろうとするならば、当サイト的にはここまでに挙がってきたアーティストに加えBE THE WOLFKADAVARRIVAL SONSあたりが好きな人なら気に入るんじゃないでしょうか。



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投稿: 2017 12 02 12:00 午前 [2017年の作品, Greta Van Fleet] | 固定リンク