HALESTORM『HALESTORM』(2009)
2009年4月28日にリリースされたHALESTORMの1stアルバム。日本盤は『LOUD PARK 10』での初来日にあわせて、2010年10月27発売。
リジー(Vo, G)&アージェイ(Dr)のヘイルきょうだいを中心に1997年から活動を続けてきたHALESTORMですが、ジョー・ホッティンジャー(G)&ジョシュ・スミス(B)が加わった2003〜4年以降に活動が本格化。2005年には現在も所属するメジャーのAtlantic Recordsと契約し、翌2006年春には5曲入りライブEP『ONE AND DONE』をリリースします。
そこから地味なライブ活動を展開していき、ハワード・ベンソン(HOOBASTANK、DAUGHTRY、IN FLAMESなど)をプロデューサーに迎えてじっくり時間をかけて1stアルバムを完成させます。ミキシングエンジニアにクリス・ロード-アルジ、マスタリングエンジニアにテッド・ジェンセンという一流どころを起用し、ゲストプレイヤーにはのちにBON JOVIに加入するフィル・X(G/「Bet U Wish U Had Me Back」のみ)、楽曲制作のコライトには元EVANESCENCEのベン・ムーディー(G)やSIXX: A.M.のジェイムズ・マイケル(Vo)、現MOTLEY CRUEのジョン・5(G)、SLIPKNOT/STONE SOURのコリィ・テイラー(Vo)、AEROSMITHなどとのコラボで知られるマーティ・フレデリクセンなど著名アーティストが顔を揃えており、いかにレーベルがこのバンドに力を入れているかが伺えます。
そのサウンド的には正当的なアメリカンハードロックが下地になっており、スピードよりもグルーヴ感やヘヴィさを重視したテンポからはすでに大モノ感すら伝わります。アメリカ人、基本的にこういったミドルテンポの楽曲が好きですものね。あと、クレジットを確認するとすべての楽曲はリジーを中心に執筆されているものの、どれも単独で書いたものではなく、より良いものへとまとめ上げるために複数のコライターが名を並べている。かなりいろんな思惑の働いた作品ではあるものの、だからこそデビューアルバムにも関わらず異常に完成度が高い。世が世ならHEARTみたいに産業ロック呼ばわりされそうですよね。
そうそう、僕が初めてこのアルバムを聴いたときの印象が、まさに80年代のHEARTだったんです。心地よいテンポ感でまとめられたアメリカンハードロックに、これまた心地よく響くリジーのボーカルが乗る。全体を通してラジオフレンドリーな作風で、ゆっくり時間をかけて丁寧に売っていこうとする、そういう姿勢が見え隠れしたんです。リスナーによってはそういった作風に嫌悪感を示すのかもしれませんが、捻くれ者な自分はこういう力の入った“売れ線”も大好物なので、当時からよく聴いていた記憶があります。
実際、このアルバムから「I Get Off」「It's Not You」「Familiar Taste Of Poison」「Bet U Wish U Had Me Back」といったラジオヒットが生まれ、アルバム自体も全米40位まで上昇。現在までに50万枚以上を売り上げるヒット作になりました。ここでの地道な成功があったから、続く2ndアルバム『THE STRANGE CASE OF...』(2012年)での大成功(全米15位、ミリオン獲得)へとつなげていけたんでしょうね。
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なお、本作リリースから10年後の2019年12月20日には、10thアニバーサリー・エディションもアナログ&デジタルで発売されています。こちらはCD未発売ということもあり、日本盤も発売されておりません。
本バージョンはアルバム本編11曲に加え、メジャー契約後の2006〜8年に録音された12ものデモ音源をボーナストラックとして収録。その多くが1stアルバム未収録で、音質こそ劣るもののメジャー感の強いアルバム本編とは異なるオルタナメタル/ポストグランジ的なテイストは非常に新鮮に響くはずです。
こうした歴史を踏まえつつこのデモテイクを、時系列に沿って追っていくと、どのような段階を踏んで完成度の高い1stアルバムへと到達していったか、その過程を確認できるはず。本編をしっかり楽しんだあとに、こちらもチェックしてみるといろいろ発見も多いと思いますよ。
▼HALESTORM『HALESTORM: THE 10TH ANNIVERSARY EDITION』
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