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カテゴリー「Hanoi Rocks」の30件の記事

2022年8月11日 (木)

ANDY McCOY『JUKEBOX JUNKIE』(2022)

2022年8月5日にリリースされたアンディ・マッコイの4hアルバム。日本盤未発売。

実に24年ぶりのソロアルバムとなった前作『21ST CENTURY ROCKS』(2019年)から約3年ぶりに届けられた新作は、すべてカバー曲で構成された1枚。アンディのルーツとなるアーティストに加え、「Miss Tennessee」のような比較的最近のヒット曲も含まれており、表現者としてのこだわりが伝わる内容に仕上がっています。

収録曲の内訳は以下のとおり。

M-1. I'm Gonna Roll [デイヴ・リンドホルム]
M-2. 54-46 That's My Number [TOOTS AND THE MAYTALS]
M-3. Take Me I'm Yours [SQUEEZE]
M-4. Miss Tennessee [ケイティ・ノエル&オータム・ブルック]
M-5. Hot Night In Texas [ムーン・マーティン]
M-6. I Can Feel The Fire [ロニー・ウッド]
M-7. Shot Full Of Love [ドン・ウィリアムズ]
M-8. Solo In Soho [フィル・ライノット]
M-9. Back To The Wall [DIVINYLS]
M-10. Motorbiking [クリス・スペディング]
M-11. I Couldn't Get It Right [CLIMAX BLUES BAND]
M-12. China Girl [イギー・ポップデヴィッド・ボウイ]
M-13. Funnel Of Love [ワンダ・ジャクソン]
M-14. Countdown [U.K. SUBS]

ロックやパンク、ニューウェイヴのみならず、ロカビリーやレゲエ、カントリーなど幅広いセレクトですね。それらがアンディらしアレンジでカバーされているのですが、すべての曲がアンディ中心で構成されているわけではなく、現在のバンドメンバーやゲスト女性シンガーを前面に押し出すなど、あくまでバンドとしての表現がなされているのが印象的です。

例えば、ケイティ・ノエル&オータム・ブルックによる2020年のカントリーヒット「Miss Tennessee」では、アンディとジェイミー・ハンブリーのデュエットを楽しむことができるし、SQUEEZEのカバー「Take Me I'm Yours」ではアンディに加え元CKYのデロン・ミラーが一緒に歌唱して歌に厚みを加えている。それこそワンダ・ジャクソンの名曲「Funnel Of Love」に関してはソフィア・ジダがソロ歌唱しアンディは裏方に徹してますしね。

ギターに関してはアンディがすべてプレイしているものの、ボーカルに関しては全部自身で歌うことにこだわらず、ゲストを適材適所に配置するというプロデューサー資質も発揮されている。そういった意味では、聴き手側も「アンディの新作!」と肩肘張らず、リラックスしながら楽しむべき1枚かもしれません。

リリース元のCleopatra Recordsに対してあまり良いイメージがなかったこと、そのレーベルからカバーアルバムを出すということで、正直その仕上がりに対して不安を抱えていたのですが、すべて思い過ごしだったようで安心しました。HANOI ROCKSにおけるアンディの役割を理解しているファンはもちろん、前作『21ST CENTURY ROCKS』を聴いて彼の魅力にハマったリスナーなら問題なく楽しめる1枚だと思います。原曲自体が優れたものばかりなので、ここではアンディの演出力/表現力に注目しながら極上のナンバーたちを満喫していただきたいところです。

 


▼ANDY McCOY『JUKEBOX JUNKIE』
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2022年7月29日 (金)

STENFORS『FAMILY ALBUM』(2022)

2022年6月10日にリリースされたSTENFORSの1stアルバム。日本盤は同年6月8日先行発売。

STENFORSとは元HANOI ROCKS、元CHEAP AND NASTY、元DEMOLITION 23.のギタリストであるナスティ・スーサイドことヤン・ステンフォースのソロプロジェクトで、ソロ作品はヤン・ステンフォース名義のアルバム『VINEGAR BLOOD』(1996年)以来実に26年ぶり。そのバンド名/アルバムタイトルからもわかるように本作はヤンの親族が中心となりレコーディングに参加した、文字通りの“ファミリーアルバム”です。

このアルバムに関する今年2月のインタビューで、ヤンは現在前立腺がんの闘病中であることをカミングアウト。化学療法を受けていたとのことで、その影響は本作のレコーディングにも遅延を及ぼしたとのこと。しかし、病状は比較的安定しており、無事このアルバムリリースまで漕ぎ着けることができたようです。

内容は彼の音楽ルーツを追求した、ブルースロックをベースにしたもので、ストレートなロックアルバムというよりはその原点的な、非常に渋みの強い作風。オープニングを飾る「XStopia」からして肩の力が抜けており、非常にレイドバックしたユルめのロックが展開されています。その一方で「Friends」や「Folsom Prison Blues」ではタイトなリズムセクションをバックに、ルーズでソウルフルなロックが鳴らされており、なんとなくですがキース・リチャーズのソロアルバムにも近い印象を受けます。

また、本作には「Sweet Sue」や「Then It's Gone」みたいなカントリーテイストのアコースティックナンバーも含まれていますし、「Boiling My Eggs」のようなストレートなブルースナンバーも用意されている。「Chemo Brain」のジャイブ感も非常に心地よいですし、アルバムを締めくくるギターインスト「Syrenen」も渋くてたまらない。ロックンロールのルーツを追求しつつも、非常にヤン……いや、ここはもうナスティと呼ばせてもらいます(笑)。パンクロック以前のルーツに立ち返った、いかにもナスティらしい地味な1枚に仕上がっています。どんなに渋いことをやっても、芯から放たれる華やかさと毒々しさのせいで比較的派手に仕上がるアンディ・マッコイと比較すると、非常に対照的な仕上がりです。

そして、ナスティのボーカル。これがまた渋いんですよ。すべての曲で彼が歌っているわけではないんですが(彼が歌っているのは「XStopia」「Folsom Prison Blues」「Chemo Brain」「Then It's Gone」の4曲)、「Then It's Gone」あたりで聴ける彼のボーカルはこの手のシンプルなルーツミュージックにピッタリハマっている。CHEAP AND NASTYでも聴くことができたヘタウマボイスが、30年モノのウィスキーのごとく深みを増しているわけです。若い頃のヘロヘロ気味の歌声も好きでしたが、今の好みとしては本作での歌声がドンズバ。いろんな困難を乗り越えてここにたどり着いたんだなと思うと泣けてきます……。

今年はマイケル・モンロー新作があり、来月にはアンディ・マッコイのカバーアルバム『JUKEBOX JUNKIE』も控えている(リリース元がCleopatra Recordsというのが若干不安ですが……)。昨年はサミ・ヤッファ初のソロアルバムを発表しましたし、こうやって元HANOI ROCKS勢がマイペースに音楽活動を続けてくれるのは80年代からのファンにとってはうれしい限りです。予定どおりならアンディは10月に来日するし、おそらくマイケル&サミも近い将来やってきてくれるでしょうから……ナスティも無事寛解してまた日本に来てくれたら、それだけでハッピーですよ。

 


▼STENFORS『FAMILY ALBUM』
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2021年9月24日 (金)

SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』(2021)

2021年9月24日にリリースされたサミ・ヤッファの1stソロアルバム。日本盤は同年9月22日に先行発売。

HANOI ROCKSのベーシストとしてシーンに登場し、バンド解散後はジョニー・サンダース(ex. NEW YORK DOLLS)との活動を経てJETBOYに加入。90年代は盟友マイケル・モンローJERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.といったバンドで活動し、以降はJOAN JETT & THE BLACKHEARTSNEW YORK DOLLSMICHAEL MONROEで活躍してきたサミ。40年以上のキャリアの中でソロ活動を一切行ってこなかった彼ですが、ここにきてついに重い腰を上げてソロアルバムを完成させました。

パンクの洗礼を経て、シンプルで生々しいロックンロール、レゲエやダブ、スカ、ラテンミュージックなどを通過したサウンドは、いかにも彼らしいもの。そこにマイケル・モンローやアンディ・マッコイといったHANOI ROCKS時代の仲間たちとの共通点も見つけられ、またサミならではの独自性も見つけられる。というか、ほかの2人と比べてかなり器用な人なんだなと驚かされました。

とにかく、ここで聴けるロックンロールの多彩さとそのナチュラルさ、そして完成度の高さには舌を巻くばかり。ソングライティング面では現在活動をともにするリッチ・ジョーンズ(G/MICHAEL MONROE、ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ex. THE YO-YO'Sなど)のサポートが非常に大きく、彼の手腕によるものもかなりあるようです。実際、マイケルのアルバムでも彼のソングライティング力は非凡なものがありますからね。

レコーディングは地元フィンランドの旧友たち、ヤンネ・ハーヴィスト(Dr)やラネ(G/ex. SMACK)、ティモ・カルティオ(G)、そしてクリスチャン・マルトゥッチ(G/STONE SOURコリィ・テイラーBLACK STAR RIDERS)、マイケル・モンロー(Sax, Harp)、リッチ・ジョーンズ(Cho)などが参加。サミもボーカルやベース以外に、ギターやグロッケン、メロディカとさまざまな楽器に挑戦しています。歌声も意外とサマになっており、この派手すぎない、けど地味すぎもしないサウンドと見事にマッチしています。

彼がこれまでに参加してきたバンドのテイストは随所から感じられるし、またそのルーツもしっかり伝わる仕上がり。2021年に聴くには古臭いと敬遠されそうな音かもしれませんが、裏を返せば時代を選ばないロックンロールサウンドでもあるのかなと。説得力とその重みが、同系統のバンドとはまったく違うものが感じられるのもこの人ならでは。HANOI ROCKSやマイケル・モンローのファンはもちろんのこと、1980年代のバッドボーイズ・ロックンロールや2000年代以降のリバイバル・ガレージロックのリスナーにも間違いなくヒットする、捨て曲ゼロのご機嫌な1枚です。

 


▼SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』
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2019年10月 6日 (日)

MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』(2003)

マイケル・モンローが2003年1月に発表した、通算5枚目のオリジナルアルバム。JERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.名義のアルバムを含めると、通算7作目のソロ作品ということになります。

前作『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999年)発表前後から、再び運気が上昇し始めたマイケル。その勢いはそのままソロに注ぎ込まれるのかと思いきや、なんと2001年にHANOI ROCKS再生(=事実上の再結成)。オリジナルメンバーはマイケルとアンディ・マッコイ(G)のみでしたが、現代的にアップデートされたオリジナルアルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(2002年)をリリースするなど、精力的な活動が展開されました。

今回紹介するソロアルバムは、マイケルがハノイ再生期間に唯一発表したソロアルバム。タイトルの『WHATCHA WANT』は、その再生ハノイの第1弾アルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』の同名収録曲から取られたもの。そもそも、この「Whatcha Want」という曲、ソロ用に作られたものだったみたいですね。

そういう事情もあるのかどうか不明ですが、アルバムは全13曲中オリジナルナンバーが5曲と非常に少ないんです。それ以外はEDDIE & THE HOT RODS、UK SUBS、THE DEAD BOYS、X-RAY SPEX、デイヴ・リンドルム、THE BOYS、レオナード・コーエンとバラエティに富んだアーティストのカバー曲を収録。アルバムとしての勢いは十分に伝わってくるものの……なんとなくですが、雰囲気的には3作目『PEACE OF MIND』(1996年)にも近いものを感じます。ただ、あのときほどネガティヴさは感じられず、むしろ再生ハノイで感じた“違和感”を放出するような“アク抜き”役割の1枚なのかなと。

まあとにかく。カバー曲は文句なしに良いです。当たり前か、原曲が良いんだから。EDDIE & THE HOT RODS「Do Anything You Wanna Do」のパワーポップ感は初期ハノイにも通ずるものがあるし、おなじみTHE DEAD BOYS「What Love Is」は「まだこれやってなかったんだ!」と驚かされるし。アルバムラストを飾るアコースティックナンバー「Hey, That's No Way To Say Goodbye」も、レオナード・コーエンのくどさがまったく感じられない(笑)、非常にさらっとした仕上がりで、このアルバムにぴったりの1曲だと思いました。

また、オリジナルナンバーも同時期のハノイ作品に収録されていたとしても、何ら違和感のない楽曲ばかり。「Right Here, Right Now」の疾走感、どこか後期THE CLASHを思わせる「Stranded」のエモさ、湿り気の強い「Rumour Sets The Woods Alight」や「Life's A Bitch And Then You Live」のセンチメンタルな泣きメロなど、どれもなかなかの出来。それもそのはず、レコーディングにはティンパ(B)&ラク(Dr)といった当時の再生ハノイのメンバーが参加しているんですから(笑)。

前作同様、この時期のソロ作品は日本でもあまり良い扱いを受けていない印象があり、現在もCDは廃盤状態。デジタル配信も行われておりません。せっかくバンド形態のMICHAEL MONROEがここまでちゃんと続いているんだから、(もはやライブでこれらの楽曲を披露しないにしても)ぜひ形として残し続けてほしいものです。

 


▼MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』
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2019年10月 2日 (水)

NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』(2006)

2006年7月下旬に発表された、NEW YORK DOLLSの3rdアルバム。日本盤もほぼ同タイミングでリリースされています。

彼らがスタジオアルバムをリリースするのは『TOO MUCH TOO SOON』(1974年)以来、実に32年ぶりのこと。とはいえ、黄金期メンバーのジョニー・サンザース(G)もジェリー・ノーラン(Dr)も90年代前半に亡くなっているし、アーサー・ケイン(B)も2004年夏に白血病で亡くなっており、前作から残っているのはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のみ。

そんな彼らをサポートしたのが、元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)、日本では菅野よう子とのコラボレーションでも(一部で)知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)という編成。この6人で新生NEW YORK DOLLSとして本格的活動再開を果たしたわけです。

このアルバムのプロデュースを手がけたのは、AEROSMITHCHEAP TRICKなどでおなじみのジャック・ダグラス。さらにゲストアーティストとしてイギー・ポップやマイケル・スタイプ(当時R.E.M.)、トム・ゲイブル(AGAINST ME!/のちのトランスジェンダーを告白し、現在はローラ・ジェーン・グレイスと改名して女性として生活)といったシンガーや、ボ・ディドリー(G)などがプレイヤーとして参加。NEW YORK DOLLSの復活に華を添えています。

さて、気になる内容ですが……うん、ちゃんとNEW YORK DOLLSです。デヴィッド・ヨハンセンの声が年相応の老け方をしており、往年のグラマラスさはもはや見る影もありませんが、この年齢じゃないと醸し出せない渋みがこの音楽スタイルと見事に合致し、より説得力の強い音楽を生み出すことに成功しています。

楽曲的には初期の彼らにすでに備わっていたソウルやR&B……要するにモータウンの要素が強いロック/ポップスが中心で、オープニングを飾るハードドライヴィングな「We're All In Love」こそゴリゴリ感が若干強いですが、それでも彼らならではのしなやかさもにじみ出ており、最初から好感触。その後も時代を超越したスタンダードナンバー/ロックンロールが続いていきます。

無駄にスキャンダラスな要素がなくなったぶん、楽曲と演奏で勝負するしかないわけですが、本来このバンドはそっち側で戦うべき存在だったのではないでしょうか……そう思わずにはいられないほどに、32年の空白を感じさせない“つながり”が見出せる素晴らしい内容です。

恐らくですが、本作においてはオリジナルメンバーからしたらガキンチョでしかないサミやスティーヴの演奏面&ソングライティングでの活躍が非常に大きかったと思うのです。そしてそれは、続く4thアルバム『CAUSE I SEZ SO』でさらに強くなります(だからこそ、2人の脱退がバンドの寿命を縮めてしまったとも言えるわけですが)。

 


▼NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』
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2019年9月30日 (月)

ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)

2019年9月末にリリースされた、元HANOI ROCKSアンディ・マッコイによるソロアルバム。ここ数年、ソロ名義でシングルやデジタルリリースが続いていましたが、ようやくフルアルバムというまとまった形での発売にまでこぎつけました。

純粋なソロ名義でのオリジナルアルバムとなると、自身2作目のソロアルバムにあたる『BUILDING ON TRADITION』(1995年)以来、実に24年ぶりということになるのでしょうか。特に2000年代以降はHANOI ROCKS再生やGREASE HELMET、ハノイ前に参加していたPELLE MILJOONA OYの再結成などもありましたが、アンディがメインで曲を書き、ギターを弾き、歌う純粋な“ロック”アルバムは随分と久しぶり……いつ以来だよ?って感覚ですよね。

さて、気になる内容ですが、以前ここでも紹介したデジタルシングル「The Way I Feel」(2016年)にも通ずる、「どこかいなたさがあって、哀愁味があふれんばかりの切ないメロディ」がどの曲にも詰め込まれており、ラフなロックンロール「21st Century Rocks」「Bible And A Gun」からポップでキャッチーな「Undertow」、これぞアンディという泣きメロの「The Hunger」、センチメンタルなバラード「Give A Minute, Steal A Year」、ディスコ色の強い「Seven Seas」、お得意のレゲエロック「Love It Loud」、ロックを飛び越えた完全なるラテンナンバー「Maria Maria」まで、とにかくバラエティに富んだ楽曲をたっぷり楽しむことができます。

これだけ読むと、アルバムとしてはかなり雑多でまとまりがないように感じるかもしれません。が、そこはアンディ・マッコイのこと。かれが歌い、プレイすればアンディ・マッコイ印のオリジナリティあふれる楽曲へと昇華される。なので、ラストの豪快なロックンロールナンバー「This Is Rock 'n Roll」までなんの違和感も感じることなく、スルスルと聴き進められるはずです。

なお、かつての盟友サミ・ヤッファ(B/現MICHAEL MONROE)が「Maria Maria」のみ、レコーディングに参加しているとのこと。かつてのファンには、これもうれしいサプライズですね。

マイケル・モンローがMICHAEL MONROEというバンド名義で、精力的にパンク道を追求し続ける中、アンディはこの10年マイペースで音楽活動を続けてきました。その肩の力の抜け具合はこのアルバムからも十分に伝わるはず。うん、彼はこのくらいでちょうどいいんだな。実は再生ハノイ時代よりも今のほうが、彼にとっては幸せなのかも。そう思わずにはいられない、なかなかの快作です。

なお、本作は今のところ日本盤リリース予定なし(もはや、日本盤がリリースされる海外アイテムなんてたかが知れていますが)。海外でも本国でCDが流通しているようですが、日本ではAmazonやタワーなどでの取り扱いなし。ただ、iTunesやAmazonなどでデジタルで購入できますし、Apple MusicやSpotifyにてストリーミング配信もされているので、まずはこちらでチェックしてみてはどうでしょう。→(※2020年3月追記)来日記念として、2020年3月25日にボーナストラック追加の日本盤がリリースされました!

さらに、このアルバムを携えてアンディの単独来日が2020年4月に決定したとのこと。会場は新宿LOFTとこれまたえらく狭いハコですが、呼び屋があそこなので……本当に来日するのかどうか……すごく観たいんだけど、あそこが呼ぶと知っただけで萎えた自分がいます。残念だけど、今回は見合わせようかなと思います。

 


▼ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』
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2019年6月23日 (日)

JETBOY『FEEL THE SHAKE』(1988)

1988年秋に発表されたJETBOYのデビューアルバム。日本でも同年11月に国内盤がリリースされており、当時日曜深夜にオンエアされていたHR/HMプログラム『PURE ROCK』(TBS系)でもタイトルトラック「Feel The Shake」のMVが頻繁に紹介されていました。

サンフランシスコ出身の彼らはモヒカンヘアのミッキー・フィン(Vo)を中心としたパンク寄りのハードロックバンドで、前任ベーシストのトッド・クルー脱退(その直後にオーバードーズで死去)を受け元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)を迎えた編成でメジャーデビューを果たします。

ビジュアル的には完全にパンクスなんですが、サウンド的には若干ガレージロック色の見え隠れするスリージー・ロックといったところでしょうか。オープニングナンバー「Feel The Shake」のダークな雰囲気はどこか『BACK IN BLACK』(1980年)でのAC/DCを思い浮かべますが、実際本作ではこれ以降展開されていくアップテンポ〜ミディアムテンポの楽曲がすべてAC/DCを彷彿とさせるものばかりなのです。わかりやすくて素晴らしい。

かつ、ミッキー・フィンの“ハイトーンなし”のボーカルスタイルの効果もあって、同時期に多数デビューした同系統バンドの中でも異彩を放つ結果に。ギターもそこまで歪んでいないし、むしろ全体的に音の隙間も多い。だからなのか、聴いていてまったく疲れないんですよね。しかも、このボーカルスタイルだし。悪いところが見つからないんですよ。

ですが、同時に「ここ!」という良いポイントも見つけにくい。言っちゃああれですが、ロックアルバムとしては平均的な完成度なのです。同時代のB級ヘアメタルバンドと比べたら1歩抜きん出ているものの、それでも点数をつければ70点くらい。可もなく不可もなくといったところでしょうか。

その結果、疲れずにスルスルと聴き進められるものの、印象に残る曲が少ない。ぶっちゃけ、オープニングの「Feel The Shake」が一番インパクトが強い曲かも。まあそういう1曲を生み出すことができて、それをメジャーデビューアルバムのオープニングに配置することができただけでも、このバンドは恵まれているほうじゃないかな。

それこそ30年ぶりくらいに真剣に聴きましたが、今の耳だと「Hometown Blues」みたいなスローブルースは良いフックになっていていいと思うんだけど、当時は全然記憶に残らなかったなあ……(苦笑)。なぜサミがこのバンドに加入したのか当時は本当に謎でしたが、ここでの活動があったからこそ、その後ジョーン・ジェットやNEW YORK DOLLSでの活躍があったわけで、そういう意味ではHANOI ROCKSファンはチェックしておいても損はしない1枚かもしれません。

 


▼JETBOY『FEEL THE SHAKE』
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2018年4月12日 (木)

ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』(2017)

昨日のHANOI ROCKSからの続きです。俄然気になるアンディ・マッコイの動向をいろいろ調べてみました。

そういえば、2010年前後にGREASE HELMETというバンドに参加して、2012年にアルバムを1枚発表していましたね。当時、レーベルからしっかりアルバムをいただいていました。DEEP PURPLE「Speed King」のカバーとかやってましたよね。メンバーにAMORPHISのメンバーがいたりと、非常に謎な布陣でしたが、まあアンディのことだし長続きはしないだろうなと思っていましたが……。

で、実は昨年5月にソロ曲「The Way I Feel」をひっそりとリリースしていました。このシングル、CDは300枚限定ですでに完売。現在はiTunesやAmazonでデジタル購入できるほか、Spotifyなどのストリーミングサービスでも聴くことができます。

で、さっそく聴いてみましたが……うん、どこからどう切り取ってもアンディ・マッコイそのもの。HANOI ROCKS時代から彼が発揮してきたメロディセンスがここでも見事に活かされており、一度聴いただけで口ずさめそうなわかりやすい楽曲に仕上がっています。

どこかいなたさがあって、哀愁味があふれんばかりの切ないメロディは、やっぱりこの人ならではのもの。マイケル・モンローのそれともちょっと違うんですよね。初期HANOI ROCKSのレパートリーと言われても不思議じゃないこの曲を聴けば、確実に「ANDY McCOY is back!」と思えるはずです。

この曲でアンディはギターとボーカルを担当。ネット上でいろいろ調べてみると、この「The Way I Feel」はまもなくリリース予定のソロアルバムからのリード曲ということらしいです(当初は昨年秋リリース予定とのことでしたが、どうやら遅れているようですね)。

ちなみに、サックスには元HANOI ROCKSのベーシスト、サミ・ヤッファの実兄Jone Takamäkiが参加しているとのこと。アルバムにはどんなメンツが参加しているのかも気になります。



▼ANDY McCOY『THE WAY I FEEL』
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なお、アンディは2016年末にもHIMのフロントマン、ヴィレ・ヴァロとコラボした「Xmas Song feat. Ville Valo」をリリース済み。こちらも“これぞアンディ・マッコイ!”という仕上がりなので、併せてチェックしてみることをオススメします!



▼ANDY McCOY『XMAS SONG feat. VILLE VALO』
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2018年4月11日 (水)

HANOI ROCKS『STREET POETRY』(2007)

2007年9月にリリースされた、HANOI ROCKS通算7枚目のスタジオアルバム(コンピレーション盤『SELF DESTRUCTION BLUES』を除く)。“再生”(=再結成)後3枚目のアルバムとなりますが、本作を最後にバンドは再解散することになります。

前作『ANOTHER HOSTILE TAKEOVER』(2005年)で固まったマイケル・モンロー(Vo, Sax)、アンディ・マッコイ(G)、コニー・ブルーム(G)、A.C.ことアンディ・クリステル(B)、ラク(Dr)という第二の黄金期と呼べる布陣での2作目(ただし、ラクは2008年に脱退。その後、解散までジョージ・アトラジックが参加)。前作発表後にじっくりツアーを体験したこともあり、本作は過去2作のスタジオ盤と比べるとより肩の力が抜けた、80年代のHANOI ROCKSが持っていた特有の“ユルさ”が復活しているように思います。そう、この感覚こそ我々がこのバンドに求める魅力であり、ソロ活動後のマイケル・モンローの硬派なハードロック的手法と絶妙なバランスでミックスされることで、2000年代のHANOI ROCKSのスタイルがついに完成した、と言い切ってもあながち間違いではないのかもしれません。

リードシングル「Fashion」での、隙間の多い緩やかなロックサウンドはまさに我々がよく知るHANOI ROCKSそのもの。この曲がフィンランドのチャートで1位を獲得したというのも頷ける話です。

もちろん、「Hypermobile」「Highwired」みたいな硬質なハードロックナンバーも多数含まれていますが、それと同じくらい「Power Of Persuasion」「Teenage Revolution」「This One’s For Rock 'N' Roll」「Walkin' Away」「Tootin' Star」といった初期を思わせるロックンロールも混在。こういう曲があることで、アルバム内の緩急の差が非常に面白いことになっている。

さらに、日本盤には「Self Destruction Blues」のセルフカバーも収録。マイケルがソロでカバーしたバージョンに近い、当時のライブテイクをもとにしたバージョンは非常にカッコいいもので、このアルバムにも見事にフィットしています。

良い意味で隙間だらけなのに、ある意味では寸分の隙もない、完璧なまでの“HANOI ROCKSのロックンロールアルバム”。そりゃあこんな究極のアルバムを完成させてしまったら、あとはもうこのクオリティを維持して、同じことを続けるのみになってしまうか……活動終了はメンバーのみならず、古くからのファンにとっても納得の結果だったと言えるかもしれません。

マイケルは今もソロでバリバリ活躍してくれていますが、アンディは……もっと表舞台に出てきてくれてもいいのに。それだけが心残りです。あ、コニー&A.C.は80〜90年代に活動をともにしたELECTRIC BOYSを復活させ、現在もスウェーデンを基盤に活動中。日本デビュー盤『FUNK-O-METAL CARPET RIDE』(1989年)は当時よく聴いたので、ぜひ一度生で観てみたいものです。

 


▼HANOI ROCKS『STREET POETRY』
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2017年11月20日 (月)

HANOI ROCKS『BACK TO MYSTERY CITY』(1983)

初めて聴いたHANOI ROCKSのアルバムが本作『BACK TO MYSTERY CITY』でした。1983年5月に発表された通算3作目のオリジナルアルバム。スタジオアルバムとしては、前作にあたるコンピレーション盤『SELF DESTRUCTION BLUES』(1982年)を含めれば4作目となります。

本作は間違いなく、彼らの名をワールドワイドに知らしめるきっかけとなった第一歩。事実、本作の高評価がのちのメジャー契約けとつながったわけですからね。

で、実際にその内容も過去3作から格段にレベルアップしています。プロデュースを手がけたのは、元MOTT THE HOOPLEのデイル・グリフィンとピート・オヴァレンド・ワッツ(デイルは昨年1月、オヴァレンドは今年1月にそれぞれ亡くなっております。ご冥福をお祈りします)。前作までにあった“バタ臭さ”や“B級臭”が一気に薄らぎ、とても“北欧出身のインディーグラムロックバンド”なんて感じさせない音に仕上げられています。

そして、楽曲自体のクオリティ(主にアレンジ面)が格段に向上。オープニングのアコギ&フルートによるインスト「Strange Boys Play Weird Openings」から名曲「Malibu Beach Nightmare」へと続く構成は、ロック史屈指の名演と断言したいし、なによりその「Malibu Beach Nightmare」の名曲ぶりといったら……グラムロックとパンクの良さを絶妙にブレンドし、さらに自分たちのオリジナルへと昇華させたその技量に、改めて驚かされます。

そのほかにも「Mental Beat」や名バラード「Until I Get You」、ポップでキャッチーな「Ice Cream Summer」、ライブのクライマックスに相応しい「Back To Mystery City」など、今聴いても最高にクールな名曲が豊富。パンクロックのオリジネーターへのリスペクトも込められた「Tooting Bec Wreck」もあれば、どこかニューウェーブテイストの「Lick Summer Love」、ドラマチックなコード進行&アレンジが日本人好みな「Beating Gets Faster」もある。次作にして最初の解散前ラストアルバムとなってしまった『TWO STEPS FROM THE MOVE』(1984年)が第1期HANOI ROCKSの完成形だとすると、本作で表現されているのはそのプロトタイプであり、A級とB級の間にいる彼らのアンバランスさが色濃く表現されているんじゃないでしょうか。そして、そこが味わい深いし、すごく興味を惹かれるんですよね。

ハードロックでもないしパンクロックでもない、グラムロックでもない彼らの微妙な立ち位置がこのアルバムを聴けば理解できる。そんなオリジナリティに満ち溢れた傑作です。

 


▼HANOI ROCKS『BACK TO MYSTERY CITY』
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