カテゴリー「Hanoi Rocks」の33件の記事

2024年3月15日 (金)

SAMI YAFFA『SATAN'S HELPERS, WARLAZER EYES & THE MONEY PIG CIRCUS』(2024)

2024年3月8日に配信リリースされたサミ・ヤッファの2ndアルバム。フィジカルは3月15日発売予定、日本盤は現在未発売。

HANOI ROCKSなどでお馴染み、現在は盟友マイケル・モンローのバンドメイトとして活動をともにしているサミ。40年以上におよぶ音楽キャリアにおいて初のソロアルバム『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』を2021年9月に発表しましたが、本作はそれに続く2年半ぶりの新作となります。

レコーディングには前作にも携わったヤンネ・ハーヴィスト(Dr)、リンデ・リンドストローム(G/ex. HIM)、バートン(Key/ex. HIM)といった地元スウェーデンの仲間たちが全面参加。さらにHANOI ROCKSのメンバーでもあるナスティ・スーサイド(G)やマイケル・モンロー(Vo, Sax)、BACKYARD BABIESTHE HELLACOPTERSの一員でもあるドレゲン(G)、そしてマイケル・モンローのバンドメンバーでもあるリッチ・ジョーンズ(G)&スティーヴ・コンテ(G)といった気心知れた友人たちもゲスト参加しています。

前作で得た手応えをもとに、フィンランドやスウェーデン、スペインなどで断続的に、数年かけて制作されたという本作。基本路線は前作の延長線上にあるものの、まずはオープニングのタイトルトラックに驚かされるのではないでしょうか。マカロニウェスタンを彷彿とさせるスローブルースでじわじわと熱量を高めていくスタイルは、インパクトに欠けると受け取られてしまう可能性もゼロではありませんが、独特の世界観を提供するための入り口としてはいい味付けになっていると個人的には感じました。

パンキッシュなアップチューン「Silver Or Lead」や「Shitshow」、HANOI ROCKSやマイケル・モンローの楽曲として披露されても何ら違和感のないマイナーキーの「Hurricane Hank」や「Crashing Down」、レゲエテイストを取り入れた「Death Squad」などいかにもな楽曲が多数収録される中、レイドバックしたアコースティックアンバー「Down Home」、ファンキーさが際立つ「Chemical Life」、スカテイストを強めたダウナーな「Far Star」などはアルバムのフックとして良い方向に作用している印象を受けます。ぶっきらぼうながらも大人の色気が漂うサミのボーカルも前作以上に馴染み始めており、昨年9月に還暦(!)を迎えたにも関わらずミュージシャンとしてなおも進化を続けようとする彼の前向きな姿勢にただただ脱帽するばかりです。

アルバムのクロージングナンバー「Faster Than Time」のアットホーム感も相まって、前作以上にリラックスして楽しんでいる様子が伝わる本作。酒をたらふく浴びながらまったり楽しみたい、そんな空気感の1枚ではないでしょうか。せっかくなので、クラブ規模でのライブも観てみたいなあ。

 


▼SAMI YAFFA『SATAN'S HELPERS, WARLAZER EYES & THE MONEY PIG CIRCUS』
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2024年2月 8日 (木)

MICHAEL MONROE: JAPAN TOUR 2024@Spotify O-EAST(2024年2月6日)

Img_8217 久しぶりのマイケル・モンロー単独ライブ。いつ以来だったか思い出せないほどなんですが、今回は東京2日間あるうち、なぜか初日を早い段階でセレクト。その後、初日にHANOI ROCKSの4thオリジナルアルバム『TWO STEPS FROM THE MOVE』(1984年)、2日目にソロ2ndアルバム『NOT FAKIN' IT』(1989年)を完全再現することがアナウンスされたのですが(それぞれ40周年、35周年の節目)、最初は正直「チケットの売れ行き良くないのかな? 普通に新作『I LIVE TOO FAAST TO DIE YOUNG!』(2022年)中心のライブ見せろよ!」と憤ったももの、時間が経つにつれて「まあ、こういう機会でもないと聴けない曲もあるしな」と気持ちが変わり、気づいたら当日を楽しみに待っていました(なお、2日目の『NOT FAKIN' IT』も観たかったのですが、QUEENS OF THE STONE AGE唯一の東京公演と丸かぶりであることに気づき、泣く泣く断念)。

ライブは2部構成で、第1部が『TWO STEPS FROM THE MOVE』パート、第2部が通常のソロ公演とのことで、フロア上手寄り後方でまったり観ることに。オープニングSEは古くからのハノイファンには懐かしい「Orff: Carmina Burana」。そのから1曲目が「Up Around The Bend」なんですが……なんか慣れないな(笑)。再生ハノイもこの曲は終盤orラストに演奏することが多かったし、マイケルのソロ公演で聴くというのもなんだか変な気分。微妙にノリ遅れていたんですが、続く「High School」で否応なしにテンションが上がり、あとはもうどうにでもなれと。でも、やっぱりマイケルのソロ公演で聴くと(以下略

Img_8230 アルバムの曲順どおりにライブが進行するので、次にどの曲が来るかわかっているものの、イントロを聴くたびに「おおっ!」と気持ちが昂ってしまうのはオールドリスナーの性か。「I Can't Get It」とか「Underwater World」とか、地味に好きな曲なので久しぶりに聴けてうれしい限り。さらに「Don't You Ever Leave Me」ではアンディ・マッコイの語りパートを下手ギターのリッチ・ジョーンズが担当。ちょっと照れくさそうにしていたのが印象的でした。

ここまでは順当に楽しく過ごせたのですが、問題は「Million Miles Away」。キーボード/ピアノをフィーチャーしたこの曲、どうするのかなと思っていたら、今回の来日で知り合ったという日本の友人・Hicoさんがゲスト参加してプレイ。普段音源で聴くぶんにはこの曲もスッと入っていけるんだけど、生で聴くとなると……どうしてもエモーショナルになってしまう。当のマイケルも歌唱の途中で感極まったように見受けられる場面があったし。すごく貴重なパフォーマンスを楽しむことができたものの、否が応でも感傷的になってしまいます。

でも、続く「Boulevard Of Broken Dreams」で再び気持ちを持ち返し、その後は「Boiler (Me Boiler 'n' Me)」「Futurama」「Cutting Corners」という、ライブで聴く日が来るとは……という3連発に歓喜。彼らのキャリアの中および本作の中では比較的地味な3曲だけど、本家ハノイ再生時にも演奏されていなかったであろうこれらを日本で楽しむことができただけで大満足です。50分くらいのコンパクトな第1部を終え、マイケルは「すぐ戻ってくるから!」と笑顔でステージを去っていきました。

Img_8244 短いインターバルを経て、第2部はマイケルソロ公演ではお馴染みのセルジオ・メンデス「Fanfarra - Cabua Le Le」をオープニングSEに乗せて、メンバーが再登場。最新作のタイトルトラック「I Live Too Fast To Die Young」から勢いよくライブを再開し、以降も「Murder The Summer Of Love」「Last Train To Tokyo」など最新作や近作からのキラーチューンを連発してくれます。特に「Last Train To Tokyo」は日本のための1曲という意味合いも強いですし、盛り上がらないわけがない。ある程度新譜からの楽曲を披露したあとは、「78」や「The Ballad Of The Lower East Side」などのキラーチューンの出番。にしても「The Ballad Of The Lower East Side」の“強さ”は改めて尋常じゃないなと、こういう場で強く実感させられます。

第2部も後半に差し掛かると、ハノイ時代の「Motorvatin'」からDEMOLITION 23.「Hammersmith Palais」へとつなげるメドレー、同じくDEMOLITION 23.時代の「Nothin's Alright」を経て、「Malibu Beach Nightmare」「Dead, Jail Or Rock 'n' Roll」の2連発で本編フィニッシュ。強い曲ばかりで休む暇もなく、気づいたらこちらも汗だくに。マイケルはすでに還暦を超えているはずなのに、それを感じさせないほどのアグレッシヴさ。恐ろしいったらありゃしない。

Img_8255 アンコールでは再びHicoを迎えて、なんと意外な「Fallen Star」を披露。昨年、『ORIENTAL BEAT - THE 40TH ANNIVERSARY RE(AL)MIX』(2023年)を発表したこともあっての選曲なのかな。こういうサプライズも悪くないですね。で、そこから「One Man Gang」で再び熱量が高まったところで、マイケルから「パンク界のレジェンドを迎えよう」みたいな口上があり、続いてステージに登場したのがUK SUBSのチャーリー・ハーパー! なんで日本にいるの?と驚くものの、彼がステージに上がったということは次に何を演奏するか一発で予想がつきました……そう、DEMOLITION 23.でカバーした「Endangered Species」ですね。チャーリー、見るからにかなりのおじいちゃんですが、いざ歌い出すとカリスマぶりを遺憾なく発揮していました。そして、チャーリーがステージを去ると、最後の最後に「Oriental Beat」で締めくくり。2時間強におよぶ、かなり尺の長い贅沢なライブを堪能いたしました。

ライブ中、マイケルは新曲の制作に取り掛かること、秋には次のアルバムを発表することを告げましたが、前作から2年ちょっとというスパンを考えると非常に健全かな。となると、来日は来年の前半には実現するのかしら。なんにせよ、体力があるうちにまたすぐ戻ってきてもらいたいです。あと、さすがの存在感を発揮していたサミ・ヤッファ(B)も次はソロ公演とかやってくれてもいいんだよ……ね?

Img_8227

セットリスト

Part 1:『TWO STEPS FROM THE MOVE』40th Anniversary
01. Up Around The Bend
02. High School
03. I Can't Get It
04. Underwater World
05. Don't You Ever Leave Me
06. Million Miles Away [with Hico (Piano)]
07. Boulevard Of Broken Dreams
08. Boiler (Me Boiler 'n' Me)
09. Futurama
10. Cutting Corners

Part 2
11. I Live Too Fast To Die Young
12. Murder The Summer Of Love
13. Last Train To Tokyo
14. Derelict Palace
15. Young Drunkers & Old Alcoholics
16. 78
17. The Ballad Of The Lower East Side
18. Motorvatin'
19. Hammersmith Palais
20. Nothin's Alright
21. Malibu Beach Nightmare
22. Dead, Jail Or Rock 'n' Roll

Encore
23. Fallen Star [with Hico (Piano)]
24. One Man Gang
25. Endangered Species [feat. Charlie Harper from UK SUBS]
26. Oriental Beat

 

2023年3月19日 (日)

HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT - THE 40TH ANNIVERSARY RE(AL)MIX』(2023)

2023年3月17日にリリースされた、HANOI ROCKSの2ndアルバム『ORIENTAL BEAT』(1982年)の40周年記念リミックスアルバム。

もともとは1982年1月に本国フィンランドで発売され、日本でも追って1983年1月に初来日記念盤として発表された代表作のひとつ。本作制作時のメンバーはマイケル・モンロー(Vo, Sax)、アンディ・マッコイ(G, Vo)、ナスティ・スーサイド(G)、サミ・ヤッファ(B)、ジップ・カジノ(Dr)で、のちの黄金期を支えるラズル(Dr)加入前最後のオリジナル作品となります。

本リミックス盤に付属のマイケル・モンローによる解説によると、当初の『ORIENTAL BEAT』のミックスにまったく納得していなかったとのことで、90年代にGUNS N' ROSES経由でUzi Suicide Recordsから再発される際にリミックスを希望したんだとか。しかし、当時はオリジナルのマルチトラックが行方不明になったと聞かされ、泣く泣く断念。しかし、数年前にUniversal Musicの倉庫で本作のマルチトラックが発見され、マイケルを中心に新たな形で本作が生まれ変わることになったのでした。

今回のリミックスに際し、曲順も一部変更。例えばオリジナル盤では8曲目に収録のタイトルトラックが、このリミックス盤では1曲目に配置されていたり、本来は2曲目の「Don't Follow Me」が新たに8曲目に変更されていたりと、聴き慣れたものから若干違和感も残る形に。ただ、これも2、3回と通して聴き返すと慣れてくるので、特に問題はないかな。

で、気になるのがリミックス効果。確かにギターのバランスが良くなったり、リズム体のチープさが少々払拭されたかな。全体的によりモダンなバランス感に調整されていて、80年代に初めて聴いたときとはまた違った心地よさが伝わる内容に生まれ変わっています。80年代にはあのB級感のあるチープなミックスが合っていたし、そこに惹かれたところもあったんだけど、これからHANOI ROCKSに触れるリスナーには確かに少々厳しいと言わざるを得ないかな。そういった点では、今回の改訂はマイケル・モンローが当初イメージしていた音というよりも、今の耳で聴いても耐え得るミックスに調整し直したというのが正しいのかもしれませんね。

また、「Oriental Beat」に顕著だけど、オリジナルバージョンを何百回と聴いてきた耳にも「……あれ?」と感じるボーカルが数ヶ所存在します。これは、マルチトラックに残っていた未使用のボーカルトラックを新たに採用したとのことで、「Oriental Beat」以外にも数曲で新規採用されているようなので、もうちょっと聴き込んで違いを見極めてみたいと思います。

もはやニューアルバムは期待できないと思っていたHANOI ROCKSですが、昨年の1日限りの再結成ライブに続きこのリミックスアルバムの発売など、メンバーが元気でいる限りはこうしたサプライズもまだまだあるのかもそれませんね。

 


▼HANOI ROCKS『ORIENTAL BEAT - THE 40TH ANNIVERSARY RE(AL)MIX』
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2022年8月11日 (木)

ANDY McCOY『JUKEBOX JUNKIE』(2022)

2022年8月5日にリリースされたアンディ・マッコイの4hアルバム。日本盤未発売。

実に24年ぶりのソロアルバムとなった前作『21ST CENTURY ROCKS』(2019年)から約3年ぶりに届けられた新作は、すべてカバー曲で構成された1枚。アンディのルーツとなるアーティストに加え、「Miss Tennessee」のような比較的最近のヒット曲も含まれており、表現者としてのこだわりが伝わる内容に仕上がっています。

収録曲の内訳は以下のとおり。

M-1. I'm Gonna Roll [デイヴ・リンドホルム]
M-2. 54-46 That's My Number [TOOTS AND THE MAYTALS]
M-3. Take Me I'm Yours [SQUEEZE]
M-4. Miss Tennessee [ケイティ・ノエル&オータム・ブルック]
M-5. Hot Night In Texas [ムーン・マーティン]
M-6. I Can Feel The Fire [ロニー・ウッド]
M-7. Shot Full Of Love [ドン・ウィリアムズ]
M-8. Solo In Soho [フィル・ライノット]
M-9. Back To The Wall [DIVINYLS]
M-10. Motorbiking [クリス・スペディング]
M-11. I Couldn't Get It Right [CLIMAX BLUES BAND]
M-12. China Girl [イギー・ポップデヴィッド・ボウイ]
M-13. Funnel Of Love [ワンダ・ジャクソン]
M-14. Countdown [U.K. SUBS]

ロックやパンク、ニューウェイヴのみならず、ロカビリーやレゲエ、カントリーなど幅広いセレクトですね。それらがアンディらしアレンジでカバーされているのですが、すべての曲がアンディ中心で構成されているわけではなく、現在のバンドメンバーやゲスト女性シンガーを前面に押し出すなど、あくまでバンドとしての表現がなされているのが印象的です。

例えば、ケイティ・ノエル&オータム・ブルックによる2020年のカントリーヒット「Miss Tennessee」では、アンディとジェイミー・ハンブリーのデュエットを楽しむことができるし、SQUEEZEのカバー「Take Me I'm Yours」ではアンディに加え元CKYのデロン・ミラーが一緒に歌唱して歌に厚みを加えている。それこそワンダ・ジャクソンの名曲「Funnel Of Love」に関してはソフィア・ジダがソロ歌唱しアンディは裏方に徹してますしね。

ギターに関してはアンディがすべてプレイしているものの、ボーカルに関しては全部自身で歌うことにこだわらず、ゲストを適材適所に配置するというプロデューサー資質も発揮されている。そういった意味では、聴き手側も「アンディの新作!」と肩肘張らず、リラックスしながら楽しむべき1枚かもしれません。

リリース元のCleopatra Recordsに対してあまり良いイメージがなかったこと、そのレーベルからカバーアルバムを出すということで、正直その仕上がりに対して不安を抱えていたのですが、すべて思い過ごしだったようで安心しました。HANOI ROCKSにおけるアンディの役割を理解しているファンはもちろん、前作『21ST CENTURY ROCKS』を聴いて彼の魅力にハマったリスナーなら問題なく楽しめる1枚だと思います。原曲自体が優れたものばかりなので、ここではアンディの演出力/表現力に注目しながら極上のナンバーたちを満喫していただきたいところです。

 


▼ANDY McCOY『JUKEBOX JUNKIE』
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2022年7月29日 (金)

STENFORS『FAMILY ALBUM』(2022)

2022年6月10日にリリースされたSTENFORSの1stアルバム。日本盤は同年6月8日先行発売。

STENFORSとは元HANOI ROCKS、元CHEAP AND NASTY、元DEMOLITION 23.のギタリストであるナスティ・スーサイドことヤン・ステンフォースのソロプロジェクトで、ソロ作品はヤン・ステンフォース名義のアルバム『VINEGAR BLOOD』(1996年)以来実に26年ぶり。そのバンド名/アルバムタイトルからもわかるように本作はヤンの親族が中心となりレコーディングに参加した、文字通りの“ファミリーアルバム”です。

このアルバムに関する今年2月のインタビューで、ヤンは現在前立腺がんの闘病中であることをカミングアウト。化学療法を受けていたとのことで、その影響は本作のレコーディングにも遅延を及ぼしたとのこと。しかし、病状は比較的安定しており、無事このアルバムリリースまで漕ぎ着けることができたようです。

内容は彼の音楽ルーツを追求した、ブルースロックをベースにしたもので、ストレートなロックアルバムというよりはその原点的な、非常に渋みの強い作風。オープニングを飾る「XStopia」からして肩の力が抜けており、非常にレイドバックしたユルめのロックが展開されています。その一方で「Friends」や「Folsom Prison Blues」ではタイトなリズムセクションをバックに、ルーズでソウルフルなロックが鳴らされており、なんとなくですがキース・リチャーズのソロアルバムにも近い印象を受けます。

また、本作には「Sweet Sue」や「Then It's Gone」みたいなカントリーテイストのアコースティックナンバーも含まれていますし、「Boiling My Eggs」のようなストレートなブルースナンバーも用意されている。「Chemo Brain」のジャイブ感も非常に心地よいですし、アルバムを締めくくるギターインスト「Syrenen」も渋くてたまらない。ロックンロールのルーツを追求しつつも、非常にヤン……いや、ここはもうナスティと呼ばせてもらいます(笑)。パンクロック以前のルーツに立ち返った、いかにもナスティらしい地味な1枚に仕上がっています。どんなに渋いことをやっても、芯から放たれる華やかさと毒々しさのせいで比較的派手に仕上がるアンディ・マッコイと比較すると、非常に対照的な仕上がりです。

そして、ナスティのボーカル。これがまた渋いんですよ。すべての曲で彼が歌っているわけではないんですが(彼が歌っているのは「XStopia」「Folsom Prison Blues」「Chemo Brain」「Then It's Gone」の4曲)、「Then It's Gone」あたりで聴ける彼のボーカルはこの手のシンプルなルーツミュージックにピッタリハマっている。CHEAP AND NASTYでも聴くことができたヘタウマボイスが、30年モノのウィスキーのごとく深みを増しているわけです。若い頃のヘロヘロ気味の歌声も好きでしたが、今の好みとしては本作での歌声がドンズバ。いろんな困難を乗り越えてここにたどり着いたんだなと思うと泣けてきます……。

今年はマイケル・モンロー新作があり、来月にはアンディ・マッコイのカバーアルバム『JUKEBOX JUNKIE』も控えている(リリース元がCleopatra Recordsというのが若干不安ですが……)。昨年はサミ・ヤッファ初のソロアルバムを発表しましたし、こうやって元HANOI ROCKS勢がマイペースに音楽活動を続けてくれるのは80年代からのファンにとってはうれしい限りです。予定どおりならアンディは10月に来日するし、おそらくマイケル&サミも近い将来やってきてくれるでしょうから……ナスティも無事寛解してまた日本に来てくれたら、それだけでハッピーですよ。

 


▼STENFORS『FAMILY ALBUM』
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2021年9月24日 (金)

SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』(2021)

2021年9月24日にリリースされたサミ・ヤッファの1stソロアルバム。日本盤は同年9月22日に先行発売。

HANOI ROCKSのベーシストとしてシーンに登場し、バンド解散後はジョニー・サンダース(ex. NEW YORK DOLLS)との活動を経てJETBOYに加入。90年代は盟友マイケル・モンローJERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.といったバンドで活動し、以降はJOAN JETT & THE BLACKHEARTSNEW YORK DOLLSMICHAEL MONROEで活躍してきたサミ。40年以上のキャリアの中でソロ活動を一切行ってこなかった彼ですが、ここにきてついに重い腰を上げてソロアルバムを完成させました。

パンクの洗礼を経て、シンプルで生々しいロックンロール、レゲエやダブ、スカ、ラテンミュージックなどを通過したサウンドは、いかにも彼らしいもの。そこにマイケル・モンローやアンディ・マッコイといったHANOI ROCKS時代の仲間たちとの共通点も見つけられ、またサミならではの独自性も見つけられる。というか、ほかの2人と比べてかなり器用な人なんだなと驚かされました。

とにかく、ここで聴けるロックンロールの多彩さとそのナチュラルさ、そして完成度の高さには舌を巻くばかり。ソングライティング面では現在活動をともにするリッチ・ジョーンズ(G/MICHAEL MONROE、ex. THE BLACK HALOS、ex. AMEN、ex. THE YO-YO'Sなど)のサポートが非常に大きく、彼の手腕によるものもかなりあるようです。実際、マイケルのアルバムでも彼のソングライティング力は非凡なものがありますからね。

レコーディングは地元フィンランドの旧友たち、ヤンネ・ハーヴィスト(Dr)やラネ(G/ex. SMACK)、ティモ・カルティオ(G)、そしてクリスチャン・マルトゥッチ(G/STONE SOURコリィ・テイラーBLACK STAR RIDERS)、マイケル・モンロー(Sax, Harp)、リッチ・ジョーンズ(Cho)などが参加。サミもボーカルやベース以外に、ギターやグロッケン、メロディカとさまざまな楽器に挑戦しています。歌声も意外とサマになっており、この派手すぎない、けど地味すぎもしないサウンドと見事にマッチしています。

彼がこれまでに参加してきたバンドのテイストは随所から感じられるし、またそのルーツもしっかり伝わる仕上がり。2021年に聴くには古臭いと敬遠されそうな音かもしれませんが、裏を返せば時代を選ばないロックンロールサウンドでもあるのかなと。説得力とその重みが、同系統のバンドとはまったく違うものが感じられるのもこの人ならでは。HANOI ROCKSやマイケル・モンローのファンはもちろんのこと、1980年代のバッドボーイズ・ロックンロールや2000年代以降のリバイバル・ガレージロックのリスナーにも間違いなくヒットする、捨て曲ゼロのご機嫌な1枚です。

 


▼SAMI YAFFA『THE INNERMOST JOURNEY TO YOUR OUTERMOST MIND』
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2019年10月 6日 (日)

MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』(2003)

マイケル・モンローが2003年1月に発表した、通算5枚目のオリジナルアルバム。JERUSALEM SLIMDEMOLITION 23.名義のアルバムを含めると、通算7作目のソロ作品ということになります。

前作『LIFE GETS YOU DIRTY』(1999年)発表前後から、再び運気が上昇し始めたマイケル。その勢いはそのままソロに注ぎ込まれるのかと思いきや、なんと2001年にHANOI ROCKS再生(=事実上の再結成)。オリジナルメンバーはマイケルとアンディ・マッコイ(G)のみでしたが、現代的にアップデートされたオリジナルアルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(2002年)をリリースするなど、精力的な活動が展開されました。

今回紹介するソロアルバムは、マイケルがハノイ再生期間に唯一発表したソロアルバム。タイトルの『WHATCHA WANT』は、その再生ハノイの第1弾アルバム『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』の同名収録曲から取られたもの。そもそも、この「Whatcha Want」という曲、ソロ用に作られたものだったみたいですね。

そういう事情もあるのかどうか不明ですが、アルバムは全13曲中オリジナルナンバーが5曲と非常に少ないんです。それ以外はEDDIE & THE HOT RODS、UK SUBS、THE DEAD BOYS、X-RAY SPEX、デイヴ・リンドルム、THE BOYS、レオナード・コーエンとバラエティに富んだアーティストのカバー曲を収録。アルバムとしての勢いは十分に伝わってくるものの……なんとなくですが、雰囲気的には3作目『PEACE OF MIND』(1996年)にも近いものを感じます。ただ、あのときほどネガティヴさは感じられず、むしろ再生ハノイで感じた“違和感”を放出するような“アク抜き”役割の1枚なのかなと。

まあとにかく。カバー曲は文句なしに良いです。当たり前か、原曲が良いんだから。EDDIE & THE HOT RODS「Do Anything You Wanna Do」のパワーポップ感は初期ハノイにも通ずるものがあるし、おなじみTHE DEAD BOYS「What Love Is」は「まだこれやってなかったんだ!」と驚かされるし。アルバムラストを飾るアコースティックナンバー「Hey, That's No Way To Say Goodbye」も、レオナード・コーエンのくどさがまったく感じられない(笑)、非常にさらっとした仕上がりで、このアルバムにぴったりの1曲だと思いました。

また、オリジナルナンバーも同時期のハノイ作品に収録されていたとしても、何ら違和感のない楽曲ばかり。「Right Here, Right Now」の疾走感、どこか後期THE CLASHを思わせる「Stranded」のエモさ、湿り気の強い「Rumour Sets The Woods Alight」や「Life's A Bitch And Then You Live」のセンチメンタルな泣きメロなど、どれもなかなかの出来。それもそのはず、レコーディングにはティンパ(B)&ラク(Dr)といった当時の再生ハノイのメンバーが参加しているんですから(笑)。

前作同様、この時期のソロ作品は日本でもあまり良い扱いを受けていない印象があり、現在もCDは廃盤状態。デジタル配信も行われておりません。せっかくバンド形態のMICHAEL MONROEがここまでちゃんと続いているんだから、(もはやライブでこれらの楽曲を披露しないにしても)ぜひ形として残し続けてほしいものです。

 


▼MICHAEL MONROE『WHATCHA WANT』
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2019年10月 2日 (水)

NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』(2006)

2006年7月下旬に発表された、NEW YORK DOLLSの3rdアルバム。日本盤もほぼ同タイミングでリリースされています。

彼らがスタジオアルバムをリリースするのは『TOO MUCH TOO SOON』(1974年)以来、実に32年ぶりのこと。とはいえ、黄金期メンバーのジョニー・サンザース(G)もジェリー・ノーラン(Dr)も90年代前半に亡くなっているし、アーサー・ケイン(B)も2004年夏に白血病で亡くなっており、前作から残っているのはデヴィッド・ヨハンセン(Vo)とシルヴェイン・シルヴェイン(G)のみ。

そんな彼らをサポートしたのが、元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)、日本では菅野よう子とのコラボレーションでも(一部で)知られるスティーヴ・コンテ(G)、そしてブライアン・デラニー(Dr)にブライアン・クーニン(Key)という編成。この6人で新生NEW YORK DOLLSとして本格的活動再開を果たしたわけです。

このアルバムのプロデュースを手がけたのは、AEROSMITHCHEAP TRICKなどでおなじみのジャック・ダグラス。さらにゲストアーティストとしてイギー・ポップやマイケル・スタイプ(当時R.E.M.)、トム・ゲイブル(AGAINST ME!/のちのトランスジェンダーを告白し、現在はローラ・ジェーン・グレイスと改名して女性として生活)といったシンガーや、ボ・ディドリー(G)などがプレイヤーとして参加。NEW YORK DOLLSの復活に華を添えています。

さて、気になる内容ですが……うん、ちゃんとNEW YORK DOLLSです。デヴィッド・ヨハンセンの声が年相応の老け方をしており、往年のグラマラスさはもはや見る影もありませんが、この年齢じゃないと醸し出せない渋みがこの音楽スタイルと見事に合致し、より説得力の強い音楽を生み出すことに成功しています。

楽曲的には初期の彼らにすでに備わっていたソウルやR&B……要するにモータウンの要素が強いロック/ポップスが中心で、オープニングを飾るハードドライヴィングな「We're All In Love」こそゴリゴリ感が若干強いですが、それでも彼らならではのしなやかさもにじみ出ており、最初から好感触。その後も時代を超越したスタンダードナンバー/ロックンロールが続いていきます。

無駄にスキャンダラスな要素がなくなったぶん、楽曲と演奏で勝負するしかないわけですが、本来このバンドはそっち側で戦うべき存在だったのではないでしょうか……そう思わずにはいられないほどに、32年の空白を感じさせない“つながり”が見出せる素晴らしい内容です。

恐らくですが、本作においてはオリジナルメンバーからしたらガキンチョでしかないサミやスティーヴの演奏面&ソングライティングでの活躍が非常に大きかったと思うのです。そしてそれは、続く4thアルバム『CAUSE I SEZ SO』でさらに強くなります(だからこそ、2人の脱退がバンドの寿命を縮めてしまったとも言えるわけですが)。

 


▼NEW YORK DOLLS『ONE DAY IT WILL PLEASE US TO REMEMBER EVEN THIS』
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2019年9月30日 (月)

ANDY McCOY『21ST CENTURY ROCKS』(2019)

2019年9月末にリリースされた、元HANOI ROCKSアンディ・マッコイによるソロアルバム。ここ数年、ソロ名義でシングルやデジタルリリースが続いていましたが、ようやくフルアルバムというまとまった形での発売にまでこぎつけました。

純粋なソロ名義でのオリジナルアルバムとなると、自身2作目のソロアルバムにあたる『BUILDING ON TRADITION』(1995年)以来、実に24年ぶりということになるのでしょうか。特に2000年代以降はHANOI ROCKS再生やGREASE HELMET、ハノイ前に参加していたPELLE MILJOONA OYの再結成などもありましたが、アンディがメインで曲を書き、ギターを弾き、歌う純粋な“ロック”アルバムは随分と久しぶり……いつ以来だよ?って感覚ですよね。

さて、気になる内容ですが、以前ここでも紹介したデジタルシングル「The Way I Feel」(2016年)にも通ずる、「どこかいなたさがあって、哀愁味があふれんばかりの切ないメロディ」がどの曲にも詰め込まれており、ラフなロックンロール「21st Century Rocks」「Bible And A Gun」からポップでキャッチーな「Undertow」、これぞアンディという泣きメロの「The Hunger」、センチメンタルなバラード「Give A Minute, Steal A Year」、ディスコ色の強い「Seven Seas」、お得意のレゲエロック「Love It Loud」、ロックを飛び越えた完全なるラテンナンバー「Maria Maria」まで、とにかくバラエティに富んだ楽曲をたっぷり楽しむことができます。

これだけ読むと、アルバムとしてはかなり雑多でまとまりがないように感じるかもしれません。が、そこはアンディ・マッコイのこと。かれが歌い、プレイすればアンディ・マッコイ印のオリジナリティあふれる楽曲へと昇華される。なので、ラストの豪快なロックンロールナンバー「This Is Rock 'n Roll」までなんの違和感も感じることなく、スルスルと聴き進められるはずです。

なお、かつての盟友サミ・ヤッファ(B/現MICHAEL MONROE)が「Maria Maria」のみ、レコーディングに参加しているとのこと。かつてのファンには、これもうれしいサプライズですね。

マイケル・モンローがMICHAEL MONROEというバンド名義で、精力的にパンク道を追求し続ける中、アンディはこの10年マイペースで音楽活動を続けてきました。その肩の力の抜け具合はこのアルバムからも十分に伝わるはず。うん、彼はこのくらいでちょうどいいんだな。実は再生ハノイ時代よりも今のほうが、彼にとっては幸せなのかも。そう思わずにはいられない、なかなかの快作です。

なお、本作は今のところ日本盤リリース予定なし(もはや、日本盤がリリースされる海外アイテムなんてたかが知れていますが)。海外でも本国でCDが流通しているようですが、日本ではAmazonやタワーなどでの取り扱いなし。ただ、iTunesやAmazonなどでデジタルで購入できますし、Apple MusicやSpotifyにてストリーミング配信もされているので、まずはこちらでチェックしてみてはどうでしょう。→(※2020年3月追記)来日記念として、2020年3月25日にボーナストラック追加の日本盤がリリースされました!

さらに、このアルバムを携えてアンディの単独来日が2020年4月に決定したとのこと。会場は新宿LOFTとこれまたえらく狭いハコですが、呼び屋があそこなので……本当に来日するのかどうか……すごく観たいんだけど、あそこが呼ぶと知っただけで萎えた自分がいます。残念だけど、今回は見合わせようかなと思います。

 


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2019年6月23日 (日)

JETBOY『FEEL THE SHAKE』(1988)

1988年秋に発表されたJETBOYのデビューアルバム。日本でも同年11月に国内盤がリリースされており、当時日曜深夜にオンエアされていたHR/HMプログラム『PURE ROCK』(TBS系)でもタイトルトラック「Feel The Shake」のMVが頻繁に紹介されていました。

サンフランシスコ出身の彼らはモヒカンヘアのミッキー・フィン(Vo)を中心としたパンク寄りのハードロックバンドで、前任ベーシストのトッド・クルー脱退(その直後にオーバードーズで死去)を受け元HANOI ROCKSのサミ・ヤッファ(B)を迎えた編成でメジャーデビューを果たします。

ビジュアル的には完全にパンクスなんですが、サウンド的には若干ガレージロック色の見え隠れするスリージー・ロックといったところでしょうか。オープニングナンバー「Feel The Shake」のダークな雰囲気はどこか『BACK IN BLACK』(1980年)でのAC/DCを思い浮かべますが、実際本作ではこれ以降展開されていくアップテンポ〜ミディアムテンポの楽曲がすべてAC/DCを彷彿とさせるものばかりなのです。わかりやすくて素晴らしい。

かつ、ミッキー・フィンの“ハイトーンなし”のボーカルスタイルの効果もあって、同時期に多数デビューした同系統バンドの中でも異彩を放つ結果に。ギターもそこまで歪んでいないし、むしろ全体的に音の隙間も多い。だからなのか、聴いていてまったく疲れないんですよね。しかも、このボーカルスタイルだし。悪いところが見つからないんですよ。

ですが、同時に「ここ!」という良いポイントも見つけにくい。言っちゃああれですが、ロックアルバムとしては平均的な完成度なのです。同時代のB級ヘアメタルバンドと比べたら1歩抜きん出ているものの、それでも点数をつければ70点くらい。可もなく不可もなくといったところでしょうか。

その結果、疲れずにスルスルと聴き進められるものの、印象に残る曲が少ない。ぶっちゃけ、オープニングの「Feel The Shake」が一番インパクトが強い曲かも。まあそういう1曲を生み出すことができて、それをメジャーデビューアルバムのオープニングに配置することができただけでも、このバンドは恵まれているほうじゃないかな。

それこそ30年ぶりくらいに真剣に聴きましたが、今の耳だと「Hometown Blues」みたいなスローブルースは良いフックになっていていいと思うんだけど、当時は全然記憶に残らなかったなあ……(苦笑)。なぜサミがこのバンドに加入したのか当時は本当に謎でしたが、ここでの活動があったからこそ、その後ジョーン・ジェットやNEW YORK DOLLSでの活躍があったわけで、そういう意味ではHANOI ROCKSファンはチェックしておいても損はしない1枚かもしれません。

 


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