HARDCORE SUPERSTAR『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』(1998)
1998年10月にリリースされたHARDCORE SUPERSTARの1stアルバム。日本盤未発売。
本作は本国スウェーデンのみで発表されたデビュー作で、現在はサブスク配信なども行われていない貴重な1枚。バンドのセルフプロデュースで制作された10曲(ラストナンバー「So Deep Inside」のあとにシークレットトラック「Fly Away」が含まれているので、正式には全11曲)が収録されており、チープで生々しい音像が初期衝動の塊のようなラフでアグレッシヴな演奏にマッチしています。
本作収録曲のうち6曲(「Hello/Goodbye」「Bubblecum Ride」「Rock 'N' Roll Star」「Someone Special」「Punk Rock Song」「So Deep Inside」)がワールドワイドデビュー作にあたる次作『BAD SNEAKERS AND A PINA COLADA』(2000年)で再録されているのですが、さすがに一度録音した楽曲(およびライブで幾度にわたり披露してきた)だけあって、再録バージョンは実に“整理された”形に整えられています。大手レーベルのMusic For Nationsと契約したこともあり、レコーディングにかける費用もデビュー作の比ではなかったんでしょうね。うん、わかります。
僕はこちらの1stアルバムは完全後追いで、なんならちゃんと聴いたのはここ数年の話。そこそこ手頃な値段で中古盤を手に入れたのですが、買って後悔のない1枚だと今でも思っています。「Hello/Goodbye」や「Rock 'N' Roll Star」の完成度は次作に譲るものの、無軌道なラフさが際立つ今作のバージョンも決して嫌いになれない。それは名曲「Someone Special」も同様で、同系統で2ndアルバム未収録の「Right Here, Right Now」などには3rdアルバム『THANK YOU (FOR LETTING US BE OURSELVES)』(2001年)以降の片鱗を感じ取ることができ、改めて原石以上の可能性が伝わることも確認できます。
にしても、ありきたりのフレーズである「たかがロックンロール」を デビュー作のタイトルに用いた彼らが、そこから20年後に『YOU CAN'T KILL MY ROCK 'N ROLL』(2018年)で「俺のロックンロールを殺せやしねえよ」と再宣言するカッコよさといったら。そういう意味では、ぜひどこかのタイミングで万人が聴けるような環境を整えてもらいたいものです。
▼HARDCORE SUPERSTAR『IT'S ONLY ROCK 'N' ROLL』
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