カテゴリー「Heart」の5件の記事

2019年2月28日 (木)

HEART『BRIGADE』(1990)

1990年3月に発表された、HEART通算10作目のオリジナルアルバム。再ブレイクのきっかけとなったメガヒット作『HEART』(1985年)、それをフォローアップする『BAD ANIMALS』(1987年)の流れを汲む“80’s路線”の最終作で、全米3位まで上昇し200万枚を超えるヒット作となりました。また、本作からは「All I Wanna Do Is Make Love To You」(全米2位)という代表曲が生まれたほか、「I Didn't Want To Need You」(同23位)、「Stranded」(同13位)、「Secret」(同64位)がシングルカットされています。

過去2作を手がけたロン・ネヴィソン(オジー・オスボーン、http://www.tmq-web.com/europe/index.html、KISS、SURVIVORなど)から離れ、今作ではリッチー・ズィトー(CHEAP TRICKBAD ENGLISHPOISONMR. BIGなど)がプロデュースを担当。前作『BAD ANIMALS』以上にツルツルにブラッシュアップした産業ロックサウンドで構築された、非常に高品質なロック/ポップアルバムに仕上げられています。

また、恒例となった外部ソングライターの起用もさらに強化され、DEF LEPPARDブライアン・アダムスで知られるジョン・マット・ラングを筆頭に、ホリー・ナイトやアルバート・ハモンド、ダイアン・ウォーレン、トム・ケリー、ビリー・スタインバーグなどそうそうたるメンツが参加。さらに、HEART初期作品からおなじみのスー・アニスにくわえ、メンバーのデニー・カーマッシ(Dr)のMONTROSE時代の盟友であるサミー・ヘイガー(当時はVAN HELEN在籍)や、そのサミーのソロバンドのメンバーであるジェシ・ハームズなどの名前もクレジットに見つけることができます。

先に「非常に高品質なロック/ポップアルバム」と書きましたが、もちろんハードロック的側面を持つ楽曲も残っています。それはオープニングの「Wild Child」やブラスサウンドをフィーチャーした「Talk, Dark Handsome Stranger」、ヘヴィなミドルナンバー「The Night」あたりから感じることができるでしょう。しかし、それも“80年代のAEROSMITH”的範疇に収まるもの、と言えばなんとなくご理解いただけるのではないでしょうか。その“適度さ”や“程よさ”はある一定の枠からはみ出しておらず、そこに物足りなさを感じるリスナーもいるかもしれません。

とはいえ良曲目白押しなので、そういった点では貶しようが一切なし。アン・ウィルソン(Vo)の圧倒的な歌声も健在だし、「All I Wanna Do Is Make Love To You」みたいにロック/ポップス両サイドで完全無敵な存在感を示す1曲も存在する。完全にやり切った感の強い1枚なんじゃないでしょうか。そういった意味では(タイミング的なものもありますが)、僕的にはAEROSMITHの『PUMP』(1989年)と並ぶ傑作だと思っています。



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2018年8月16日 (木)

HEART『BAD ANIMALS』(1987)

1987年6月にリリースされた、HEART通算9作目のスタジオアルバム。ロン・ネヴィソン(オジー・オズボーンEUROPE、SURVIVOR、KISSなど)を迎えた前作『HEART』(1985年)でシングル/アルバムともに初の全米No.1を獲得し、本格的な大復活を遂げたHEARTですが、続く本作ではその延長線上にある非常に高品質かつエレガントなハードロックアルバムを提供してくれました。

80年代半ばに入り、いよいよアメリカでのHR/HMブームが本格化していく中、HEARTはロン・ネヴィソンという“わかっている”人をブレインに、適度なハードさと適度な甘さ、ポップさを兼ね備えたバランスの良いヒット作を作り上げましたが、いよいよブームに突入した1987年、バンドはそのハードさと甘さ/ポップさの両軸のうち後者へと傾倒し始めます。

その結果が、先行シングルにして最大のヒット曲となった(全米1位のみならず、この年のBillboard年間チャート2位に君臨した)「Alone」や、「Who Will You Run To」(全米7位)、「There's The Girl」(全米12位)、「I Want You So Bad」(全米49位)といったポップサイドの楽曲群ではないでしょうか。この4曲すべてが外部ライターの手によるもの(「There's The Girl」のみ、この曲を歌うナンシー・ウィルソンの名もクレジット)であり、アルバム全体でも10曲すべてに職業作家がソングライティングに携わっています。

もちろん、バンドがメインになって書いたであろうヘヴィな「Bad Animals」なども含まれており、こういった楽曲がアルバム内でも良いアクセントにはなっているものの、本作の軸は間違いなくポップでメロウな楽曲たち。そこにクリアで高品質なサウンドが組み合わさることで、いよいよCDを中心としたデジタル時代へと足を踏み入れた音楽業界において、かなりクオリティの高いハードロックアルバムを完成させた……そういった意味で、本作の果たした役割は非常に大きなものがあると思います。特に本作と同じ年に発表されたKISSの『CRAZY NIGHTS』と、翌年リリースのEUROPEの4thアルバム『OUT OF THIS WORLD』(1988年)は、80年代後半のロン・ネヴィソン・ワークスにおける重要作と言えるでしょう。

ですが、激しさを求めるリスナーには本作はちょっと不向きかもしれません。ドラマチックな「Alone」や「I Want You So Bad」、アルバムラストを飾るにふさわしい「RSVP」などバラード系楽曲にばかり耳が行き、疾走感のあるハードロック皆無な本作は、前作を気に入った人にはちょっとインパクトは弱いかも。もちろん、アルバムとしての完成度は異常に高いので、今聴いても存分に耐えうる内容なのですが……。このバンドに何を求めるかでその評価が大きく逆転する、ある種の問題作かもしれませんね。



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2017年8月13日 (日)

V.A.『SINGLES: ORIGINAL MOTION PICTURE SOUNDTRACK』(1992/2017)

1992年秋に全米公開された映画『シングルス(SINGLES)』のサウンドトラックアルバム。日本では先にサントラがリリースされ、映画は翌1993年春に公開されました(単館ではなかったものの公開劇場数は少なく、どこも小規模劇場での公開だったと記憶しています)。

シアトルを舞台にしたラブストーリーなのですが、当時のシアトルといえばグランジブームまっただ中。主人公のひとりであるクリフ(マット・ディロン)がロックバンドをやっていることなどもあり、劇中にはALICE IN CHAINSやクリス・コーネル(SOUNDGARDEN)、エディ・ヴェダー(PEARL JAM)なども登場します。

サントラは映画公開に先駆けて1992年6月にUS発売(日本では9月発売)。内容は当時人気のグランジバンドやシアトル出身のレジェンドたちの楽曲で大半が占められ、全13曲中11曲が当時未発表曲でした。リードトラックとしてALICE IN CHAINSの新曲「Would?」(同年9月発売の2ndアルバム『DIRT』にも収録)が公開されるやいなや、大反響を呼んだのをよく覚えています。

ALICE IN CHAINS、PEARL JAM、SOUNDGARDEN、MUDHONEYSMASHING PUMPKINSといった当時ど真ん中のバンドから、SCREAMING TREES、MOTHER LOVE BONEというグランジ黎明期のバンド、THE REPLACEMENTSのポール・ウェスターバーグ、HEARTのアン&ナンシー姉妹の別ユニットTHE LOVEMONGERS、ジミ・ヘンドリクスといったレジェントたちまで。さらにはクリス・コーネルのソロ曲まで含まれているのですから、当時のグランジシーンを振り返る、あるいはシアトルのロックシーン(メタルは除く)に触れるという点においては非常に重要な役割を果たすコンピレーションアルバムだと思います。

そのサントラ盤が、発売から25年を経た2017年に、未発表テイクや劇中で使用されたもののサントラ未収録だった楽曲を集めた2枚組デラックスエディションで再発。ディスク1は当時のままで、ディスク2にその貴重な音源がたっぷり収められています。

ここには、マット・ディロンが劇中で所属していたバンド・CITIZEN DICKの楽曲「Touch Me, I'm Dick」(MUDHONEY「Touch Me, I'm Sick」のパロディカバー)や、のちにSOUNDGARDENの楽曲として発表される「Spoonman」のクリス・コーネルソロバージョン、ALICE IN CHAINやSOUNDGARDENのライブ音源、TRULYやBLOOD CIRCUSの楽曲、マイク・マクレディ(PEARL JAM)のソロ曲などを収録。おまけ感の強いものから本気で貴重なテイクまで盛りだくさんの内容で、ここまでを含めて映画『シングルス』をしっかり振り返れるのかな?と改めて思いました。

映画自体は観ても観なくても大丈夫ですが(笑)、1992年という時代の節目を追体験したいのなら、NIRVANAやPEARL JAMのオリジナルアルバムだけではなく、ぜひ本作も聴いていただきたいと、あの当時をリアルタムで通過したオッサンは強く思うわけです。サントラと思ってバカにしたら、きっと痛い目を見るよ?

ちなみに、本作のデラックスエディションが発売されたのが5月19日(海外)。クリス・コーネルが亡くなったのがその前々日の17日ということもあり、真の意味での“グランジの終焉”を実感させる1枚になってしまったことも付け加えておきます。



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2017年5月12日 (金)

HEART『HEART』(1985)

アン(Vo)&ナンシー(G, Vo)のウィルソン姉妹が中心のロックバンド、HEARTが1985年に発表した大ヒット作品。プロデューサーには70年代にTHIN LIZZY、UFOなどを手がけ、80年代に入るとSURVIVORやMICHAEL SCHENKER GROUPの諸作で知られるロン・ネヴィソンを迎えた、バンドの立て直しを図って制作された1枚です。アルバムタイトルにバンド名を冠するところからも、その覚悟が感じ取れますしね。

70年代後半にブレイクするものの、80年代に入ってからは大きなヒットに恵まれず、メンバーも脱退。そんな中訪れたHR/HMブームに便乗……というわけではなかったでしょうが、結果として当時のMTV主流の売り方やHR/HMブームにうまく乗ることができ、結果として初の全米No.1を獲得。現在までに500万枚以上を売り上げており、また本作からは「What About Love」(全米10位)、「Never」(全米4位)、「These Dreams」(全米1位)、「Nothin' At All」(全米10位)、「If Looks Could Kill」(全米54位)と5枚のシングルヒットも生まれています。

ロン・ネヴィソン特有のリヴァーブの効いた質感とアリーナロックを彷彿とさせるドラムサウンド、ハードだけど耳障りの良いギター、適度に採用されたシンセ、そしてあくまでボーカルが軸というミックス。ハードロックを基盤にしながらもポップスとしても通用する作風は、ときに「産業ロック」と揶揄されたりもしますが、リリースから30年以上経った現在聴いても色褪せることのない名作であることは否定しようがありません。

ドライブ感の強いHRナンバー「If Looks Could Kill」から始まり、ヒットシングル3連発(「What About Love」「Never」「These Dreams」)へと続く流れも良いし、そこからまたヘヴィな「The Wolf」へと戻り、後半(アナログB面)もポップさとハードさをミックスしたバランスの良い楽曲が並ぶ。アン・ウィルソンのボーカルも絶好調だし、その合間に登場するナンシー・ウィルソンの癒し度が高い歌声も箸休め的にちょうど良い(その箸休めのはずだった「These Dreams」が初の全米No.1シングルになってしまうわけですが)。楽曲自体もバンドメンバーが軸になって書いたもののみならず、ジム・ヴァランスやホーリー・ナイト、マーティン・ペイジ、バーニー・トーピンなど外部ライターによる楽曲も多数収録。そういった外部ライターによる楽曲がシングルヒットしてしまうというのも、まぁ皮肉っちゃあ皮肉ですけどね。

これだけ素晴らしい作品なのに、いまだにリマスター化されていないのが残念。質感や録音レベルが当時のままということもあって、CDやデジタルで聴いたときに若干の迫力不足は否めません。続く『BAD ANIMALS』(1987年)以降の作品含め、ぜひリマスター盤の発売をお願いしたいところです。



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2017年1月 8日 (日)

個人的に気になるメタル系職業作家15選

先日KIX『BLOW MY FUSE』を紹介した際、知人が文中に登場したテイラー・ローズやボブ・ハリガンJr.といった職業作家に興味を持ったらしく、「デズモンド・チャイルドやホリー・ナイトあたりは調べたことあるんですが、メタル職業作家の存在すごく気になります」というコメントをいただきました。

実際、80年代後半以降、特にBON JOVIやAEROSMITHの大ヒット以降こういった職業作家の存在はメタル系アーティストにとっても欠かせない存在になっています。90年代に入ると、SCORPIONSやオジー・オズボーンといった大御所ですら採用し始めるわけですからね。それまでバンドの力だけですべてをまかなおうとしていたところ、「もっといい曲を!」というバンド自身の姿勢から積極的に、もしくはレコード会社からの圧力からイヤイヤこういったアクションに行動を移すようになったのかもしれません。

また、職業作家の楽曲をアーティストが取り上げるケースには幾つかのパターンがあり、


①作家が以前発表した楽曲をカバー。
②作家とアーティストが共作(アーティストが書いた楽曲をテコ入れする、あるいは逆のケース)。
③プロデューサーとして制作に加わり、楽曲制作にも携わる。
④作家が書いた新曲をそのまま取り上げる。


の4つが考えられるかと。現在のメタルシーンでは多くの場合②が主流だと思いますが、まれに③で大ヒットを飛ばすケースも見受けられます(AEROSMITHの「I Don't Want To Miss A Thing」など)。

そこで今回は、CDのブックレットでよく目にする作家さんをピックアップしつつ、その中から個人的にピンとくる方々をここで紹介。作家の特性を上記の①〜④で分類し、代表曲な楽曲を紹介していきたいと思います。


<70年代〜>

●ラス・バラード(特性:①②)
この人の場合は楽曲提供というよりも、彼が自身のバンドや他のアーティストに提供した曲をメタル系アーティストがカバーしたことにより、その名が知られるようになったと言ったほうがいいかもしれません。きっかけはグラハム・ボネット期のRAINBOWがカバーした「Since You Been Gone」ですよね。RAINBOWは続くジョー・リン・ターナー期にも「I Surrender」をカバーしてますし。そのRAINBOWの数年前に、当時KISSのエース・フレーリーもラス・バラッド作「New York Groove」をカバーして全米トップ20入りのヒットを記録。KISS自身も90年代に「God Gave Rock And Roll To You」を「God Gave Rock And Roll To You II」と改題してカバーしてますしね。それと今回いろいろ調べて初めて気づいたのですが、NIGHT RANGERが最初の解散前に発表したアルバム『MAN IN MOTION』からのリード曲「I Did It For Love」もラス・バラッド作。加えて、これも全然気にしてなかったんですが、BAD ENGLISHのラストアルバム『BACKLASH』収録曲「So This Is Eden」はジョン・ウェイト(Vo)、ジョナサン・ケイン(Key)との共作曲。時代的に90年代に入ってからの作品なので、世の中的に職業作家との共作が当たり前になった時期にそれまでのカバーとは違った形でのコラボレーションが実現したわけです。

代表作品:ACE FREHLEY「New York Groove」「Into the Night」、BAD ENGLISH「So This Is Eden」、GRAHAM BONNET「Liar」「S.O.S.」、KING KOBRA「Dream On」、KISS「God Gave Rock And Roll To You II」、NIGHT RANGER「I Did It For Love」、PETER CRISS「Let Me Rock You」「Some Kinda Hurricane」、RAINBOW「Since You Been Gone」「I Surrender」


●リチャード(リッチー)・スパ(特性:①②④)
AEROSMITH「Chip Away The Stone」の作者として知られる彼は、もともとソングライター兼ギタリストとして活動していたアーティスト。ソロアーティストとして70年代にアルバムも発表しており、この中からジョニー・ウィンターが「Stone County Wanted Man」をカバーしています。また、エアロにはその後も楽曲提供を幾つかしているだけでなく、ジョー・ペリーが脱退した際にはレコーディングにも参加(1979年のアルバム『NIGHT IN THE RUTS』収録の「No Surprize」「Mia」)。それ以外に目立った共演は、元BON JOVIのリッチー・サンボラの2ndソロアルバム『UNDISCOVERD SOUL』での共作ぐらい。メタル系以外では、P!NKやMIKAといったアーティストにも楽曲提供しています。

代表作品:AEROSMITH「Chip Away The Stone」「Lightning Strikes」「Amazing」「Pink」、OZZY OSBOURNE「Back On Earth」、RICHIE SAMBRA「Hard Times Come Easy」


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