2004/03/02

HEATWAVE『LONG WAY FOR NOTHING』(2004)

  おかえりなさい‥‥そう言わずにはいられない気持ちになっちゃうよね、このアルバムを前にしたら。ずっと待ってたんだ、いつか絶対に戻ってくるって。そう思い始めてから2年半、ようやく帰ってきてくれた。顔見知りの仲間と、そして新しい仲間を引き連れて。

  俺がHEATWAVEの音楽と初めて接した時、既に彼らはその活動を停止した後でした。SOUL FLOWER UNIONの演奏をバックに山口洋が歌う "トーキョー シティー ヒエラルキー" や "ガーディアンエンジェル" に胸を打たれたのが切っ掛け。その後、アルバムを買い漁る日々。けど彼らはもういない。後々、ヤポネシアン・ボールズ・ファンデーションやSFUのサポートで山口の姿を見かけたけど、やはり「僕は僕のうたを歌おう」の言葉通り、山口洋というソングライターが書いた歌を、自ら歌って欲しい。そしてそれを聴きたいし、観たい‥‥ずっとそう願ってた。そして、それが現実のものになった、と‥‥

  「LONG WAY FOR NOTHING」と名付けられた新作。ラスト作となったベスト盤「LONG LONG WAY -1990-2001-」から、ずっと続いていたかのようなタイトルにまずグッとくる。そして中身は‥‥いきなり "STILL BURNING" って高らかと宣言してるし。またここから始まるんじゃなくて、あの時からずっと続いてたんだ、終わってなかったんだってことに気づかされて、また涙。楽曲自体も、そして歌詞も本当にいい。解散前も勿論良かったけど、更に深みが増した気が。30代に突入して数年経つけど、だからこそ余計に、痛いくらいに伝わってくるんだな、山口の歌詞が。そして時に強く、時に優しく、時に切なく響くメロディー。ホント、これ以上説明を付けたくないくらいに良過ぎるんだもん。

  復活したHEATWAVEのメンバーは山口と、オリジナルメンバーの渡辺圭一(現在はJUDEのベーシストとしても活動中)、過去HEATWAVEのレコーディングにも参加した経験を持つキーボーディストの細海魚、そして元ROOSTERS、現ROCK'N'ROLL GYPSIESのドラマー・池畑潤二(過去、渡辺とJUDEで活動を共にしていたことも)という4人。豪華過ぎる。だけど、全く違和感がないのね、この顔ぶれ。実際にアルバムから聴こえてくるサウンドも、この4人だから‥‥というような切迫感とか強烈な凄みってのは控えめで、それ以上にもっとこう‥‥あくまで「歌」ありきで、それを下から支えるような演奏というか。勿論、各プレイヤーの力量は半端じゃないし、それは聴いていて存分に伝わるんだけど‥‥やっぱり歌なのね。言葉を大切にした歌。それが全て。

  あーもう、これ以上何を書こうか‥‥本当に、まずは聴いて欲しいのよ。特に俺と同年代のロックファンは必須事項ですから。これ読んだら会社の帰りにCD屋に酔って、このアルバムを手に取ってみて。あるいはこれ読み終えたらすぐにネット通販出来るサイトから注文するとか。あ、何なら右隣のリンクからでも‥‥(ってさりげなく強制してるな、これ)

  冗談はさておき、本当にさ、こんな駄文読む前に、まずはCDを手に取って欲しいのよ。そして歌詞をじっくり読みつつ、その音に耳を傾けて欲しいな、と。決して派手でラウドなロックンロールが繰り広げられてるわけじゃないし、「夢を見ていこうぜ!」みたいな前向きさが沢山詰まってるわけでもない。酸いも甘いも噛み分けた「大人」だからこそ伝わる、いや、そこを通過していない10代、20代の子達にも伝わるはず‥‥そんな等身大のリアル・ロックンロール。それがHEATWAVEというバンドであり、このアルバム最大の魅力だと思っています。壁にぶつかり、痛い目をみたり、裏切られたり、失恋したり(あるいは離婚したり)、仕事でヘマしたり‥‥そんな悪い事続きの日々。だけど最後には "それでも世界は美しい" と歌うこのアルバム。是非この曲の歌詞を読んで、あなた自身の心で感じて欲しい‥‥そう願って止まない、そんな傑作です。

  最後に。このアルバムに出会えたことに感謝。このアルバムを作ってくれたHEATWAVEに、山口洋に感謝。来月、直接「ありがとう」と言いに行きたいと思います‥‥。



▼HEATWAVE『LONG WAY FOR NOTHING』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2004 03 02 01:41 午前 [2004年の作品, HEATWAVE] | 固定リンク

2001/10/01

HEATWAVE『LONG LONG WAY -1990-2001-』(2001)

  今年(2001年)の3月に22年に渡るその歴史に幕を降ろしたHEATWAVEの、1990年のデビューから解散時までの歴史を総括した2枚組ベストアルバム。彼らは1995年までエピックに在籍し、その後ポリドールへ移籍している。このベスト盤はレーベルの枠を越え、ディスク1がエピック時代、ディスク2がポリドール時代という風に編集されている。レコード会社別にディスク分けした意味合いがあるのか?と問われれば、大いにあると言った方がいいだろう。

  HEATWAVEは元々トリオバンドとしてスタートしている。ボーカル/ギターの山口洋、ベースの渡辺圭一(最近再び山口と共に、加えてSOUL FLOWER UNIONの中川とサポートドラマーのコーキの4人で「ヤポネシアン・ボールズ・ファウンデーション」という新バンドを結成した)、ドラムの藤原慶彦の3人でデビューするわけだが、セカンドアルバムリリース後にドラムの藤原が脱退。その後5th「1995」まで山口と渡辺の2人にサポートメンバーを加える形で活動を続けるものの、エピックとの契約切れと共に渡辺が脱退する。続く移籍後1作目「TOKYO CITY MAN」リリースまでの2年間、山口はあくまでバンドに拘り、その後再び3人組バンドとして(或いはそこにキーボーディストとして元MOTT THE HOOPLEで、最近はTHE BOOM等のサポートで活躍するモーガン・フィッシャーを加えた4人編成で)2001年3月まで不動のメンバーで活動を続ける。山口が全楽曲を手掛けてきたし、ある意味「山口さえいればHEATWAVE」とも言えるのだが、当の本人には「いちバンドのメンバー」という拘りが最後の最後まであったようだ。

  まぁバンドの説明はこんなもんでいいだろう。

  10月のオススメ盤として、実は昨日まで別の作品を取り上げようと思っていた。9月末に若くて活きのいい日本のバンド達が、素晴らしいアルバムをリリースしている。In the SoupだったりMO'SOME TONEBENDERだったり‥‥そういった「NEW GENERATION」に脚光を当てよう思っていたのだが、本日帰宅すると、土曜にネットで注文したこのベスト盤が届いていたのだ。実はHEATWAVEをちゃんと聴くのは今日が初めて。6年前の「1995」というアルバムは、ずっと気になっていて聴きたいとは思っていた。佐野元春プロデュース曲("BRAND NEW DAY/WAY" や "オリオンへの道")があったり、ソウルフラワーとの共作 "満月の夕" が入っていたりで、最近もずっと探していた(現在、エピック時代の全5作は廃盤のようだ)。そして先週の金曜(9/28)にソウルフラワーのライヴで初めて聴いた "トーキョー シティー ヒエラルキー" と "ガーディアンエンジェル" という2曲、そして山口のぶっきらぼうで男臭いボーカルに感銘を受け、ちゃんと聴いてみたいと思ってすぐに注文したのだった。

  全32曲、トータルで約160分にも及ぶ長丁場だが‥‥ディスク2枚、すんなり聴けてしまった。いや、すんなりって表現はどうかな‥‥歌詞に目をやりながらじっくり聴いていたのだが‥‥胸が熱くなってきた。何ていうか‥‥最近、こういうロックと出会ってなかったんじゃないかな?と。

  ズバリ言う。これは「30代以上の、男の希望と哀愁と苦悩の日常を唄ったロックンロール作品集」だ。フォークの世界にはこういった作品はいくらでもある。けど、ことロックの世界になると‥‥せいぜい浜田省吾くらいだろうか? しかし、それ以降に登場したアーティスト‥‥少なくとも'90年代にこの手のアーティストはいただろうか? 佐野元春は近年、確かに歳相応の歌を唄い始めた。けど、30代後半に突入する頃(つまり約10年前)、彼は「SWEET 16」と唄った(それがその言葉以上の意味合いを持つ事は重々承知しているが、あえてこう書かせてもらう)。エレファントカシマシのような表現もあるだろう。優等生的だがMR.CHILDRENのような表現もあるだろう。けど、それらが足下に及ばない程の「リアルさ」をこのHEATWAVEの楽曲/歌詞から見出した。

  山口の声質は低音域がどことなく浜田省吾に似ていて、熱くなりすぎない唄い方や節回しが佐野元春を彷彿とさせる。いや、というよりもボブ・ディラン的というべきか。歌を聴いているというよりは、むしろポップな詩の朗読を聴いてるような錯覚に陥る瞬間が何度かあった。音楽的には伝統的なアメリカンロックを彷彿させるものが多く、それも大いに影響してるのだろう。ところが、1995年の "満月の夕" で何かが変わる。ご存じの通り、この曲はソウルフラワーの中川との共作なのだが、HEATWAVEバージョンにもソウルフラワーから中川と伊丹が三線とお囃子で参加している。その後、"ガーディアンエンジェル" 等にも彼らは参加していて、更にはソウルフラワーファンにはお馴染みのアイリッシュ・ミュージシャン、ドーナル・ラニー・バンドが全面的に参加している。アメリカン・ルーツ・ロックからアイリッシュ・ルーツ‥‥この辺はニューエスト・モデルがソウルフラワーへと進化していく流れに何となく似ている。更にはソウルフラワーもモノノケ・サミットでカヴァーしている "竹田の子守歌" をも取り上げ始める。元々バンド指向でありながらも「歌」を中心にしてきた山口洋の中で、この辺りで何かが「弾けた」のかもしれない。これが「バンドへの拘り」に変化をもたらし、バンド解体へと繋がった‥‥というのは、考えすぎだろうか?

  年齢的には俺よりも5~6歳上の山口だが、彼が30歳を過ぎた頃に書いた楽曲には、その年齢に達した人間にしか書けない「リアルな言葉」が多い。ロックミュージシャンの視点から書かれた歌であるが、ロック的な生き方をしている30代の「すべての野郎ども」に当てはまる/共感できる言葉ばかりではないだろうか。

  リアルなバンドは確かにここ日本にも幾つか存在する。そしてリアルな歌を唄うアーティストも。しかし、山口洋の「リアルさ」は他のどのアーティストとも違う。何故彼が、HEATWAVEというバンドが、多くの現役アーティスト(佐野元春やソウルフラワーの面々、THE BOOMの宮沢、ミスチルの桜井、PEALOUTの近藤等)から支持されているのかが、この2枚組を聴く事によって理解できた気がする。10代~20代前半の若い方々には完全に伝わるのか判らないが、是非俺と同世代~30代のサラリーマン諸君にこそ聴いて欲しい、そんな「歌」が沢山詰まった作品集だ。



▼HEATWAVE『LONG LONG WAY -1990-2001-』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 10 01 01:38 午前 [2001年の作品, HEATWAVE] | 固定リンク