THE HELLACOPTERS『GRANDE ROCK REVISITED』(2024)
2024年2月16日にリリースされたTHE HELLACOPTERSのリイシュー作品。
本作は1999年5月に発売された3rdアルバム『GRANDE ROCK』のリマスター盤(フィジカルではDISC 1、配信ではDISC 2)と、本作制作前に脱退し現在バンドに復帰しているドレゲン(G/BACKYARD BABIES)のプレイを追加し、パーカッションとピアノ。新しいバッキングボーカルを加えたリミックス盤(フィジカルではDISC 2、配信ではDISC 1)からなる2枚組作品。旧譜の復刻盤ではあるものの、ある意味では再結成後に制作された8thアルバム『EYES OF OBLIVION』(2022年)に続く“準”新作と受け取ることもできます。
思えば『GRANDE ROCK』制作時はニッケ・アンダーソン(Vo, G)以外のパーマネントギタリストが加入前で、本作の大半でニッケがギター演奏を担っていました(一部でキーボーディストの“ボバ・フェット”ことアンダース・ボバ・リンドストロームもプレイ)。その後、本作を携えたツアーからロバート・ストリングことロバート・ダールクヴィストが正式加入し、2008年の解散までのラインナップが完成することとなります。
ドレゲン在籍時の初期2作(1stアルバム『SUPERSHITTY TO THE MAX!』、2ndアルバム『PAYIN' THE DUES』)とカバー曲のみで構成された7thアルバム『HEAD OFF』(2008年)は現在まで国内ストリーミング未配信。実は本作『GRANDE ROCK』のオリジナル盤も2022年頃までストリーミング未配信および廃盤状態でした。しかし、新作『EYES OF OBLIVION』のリリースを機に『GRANDE ROCK』は現在の所属レーベルであるNuclear Blast Recordsから再発、同時にストリーミング配信も開始されました。
さて、補足はこれくらいにして。本作をこういう形でリイシューした理由に、「もっとギターがヘヴィなミックスにしたかった」というニッケやメンバーの意思があったとのこと(上記のドキュメンタリー映像参照)。確かに、オリジナル盤は前2枚の荒々しさからすると少々落ち着いた、品の良い形にまとめられている印象があります。それが当時の彼らにとってはある意味では正解だったのかもしれませんが、リスナー視点でも以降の作品と比べて本作が若干“弱く”感じてしまう瞬間も多々あり、そういった意味では「曲は良いのにどこか物足りない」1枚だったとも言えます。
そんな問題を解消したのが、本作のリミックス盤ではないでしょうか。ドレゲン自身も過去に自伝で「俺があのアルバムでギターを弾いていたらどうなっていたのか」と発言していたようですし、ゼロから関われてはいないものの多少はそうした夢も実現できているのかなと。ギターの厚みや荒々しさに関しては、新たに制作されたリミックス盤はオリジナル盤とは比にならないほどのカッコよさで、「そうそう、『PAYIN' THE DUES』の“次”ってこれだよね!」と納得できる仕上がり。ギターのみならずボーカルの厚みにも変化が生じており、全体的な“装飾”もより派手になっている。そういう点では「1999年の音」ではなく「2020年代の音」なのかもしれませんが、誰もが夢想した“IFの世界”を“準”新作として楽しめるという意味では、ファンやロックリスナーに幸せを与えてくれる1枚だと思います。
オリジナル盤よりもきめ細やかにバージョンアップされたリマスター盤と、新たに制作されたリミックス盤をこういう形で聴き比べることができるのも非常に興味深いですし、これはなかなかの好企画ではないでしょうか。この調子で『SUPERSHITTY TO THE MAX!』や『PAYIN' THE DUES』も再発していただけないかな……あ、下手なリミックスやリマスターは大丈夫なので(むしろあの2枚はオリジナル盤が完璧すぎますからね)。
▼THE HELLACOPTERS『GRANDE ROCK REVISITED』
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