I SEE STARS『NEW DEMONS』(2013)
アメリカ・ミシガン州出身のピコリーモ/エレクトロニコアバンド、I SEE STARSが2013年秋に発表した通算4作目のオリジナルアルバム。本作はBillboard 200で28位を記録した、彼らの出世作となった1枚です。事実、僕もこのアルバムで初めて彼らの音に触れたので、非常に印象に残っています。
ポストハードコア/メタルコアサウンドに電子音やサンプリングなどをミックスしたピコリーモ/エレクトロニコアは、ここ日本だとFear, and Loathing in Las Vegasあたりが人気ですが、このアルバムはそういった国内バンドのファンにも存分にアピールする内容と言えます。つい先日、日本のCrossfaithが主催するイベント『ACROSS THE FUTURE』で来日したばかりですが、Crossfaithやcoldrain目当てで来場したオーディエンスにも存分にアピールし、大きな盛り上がりを見せました。
ポップでメロウなクリーンボーカルを主軸にしつつ、重々しくて汚らしい(笑)なグロウルもフィーチャーされており、ギターもエッジの立ったヘヴィなサウンドが気持ち良く、エレクトロ要素が苦手なラウドファンにもとっつきやすいテイストだと思います。
が、このバンドの場合、そこにEDMや8ビット風サウンド、あるいはヒップホップやレゲエなどの味付けが加えられることで、ほかのメタルコアバンドとは一線を画する個性を見せてくれる。そこで好みが分かれてしまうのは仕方ないのですが、そこで敬遠してしまうには勿体ない完成度なんですよね。
例えば、昨日紹介した近年のBRING ME THE HORIZONが気に入っている人なら、意外と入っていきやすいと思いますし、なんなら若干ヘヴィめの音が平気なEDMファンにも受け入れられるであろう要素も豊富に存在する。あるいは、「Murder Mitten」のような楽曲はドラマチックなメタルが好きな人にも響くものがあるかもしれない。そういういろんな可能性を秘めた、全方位に向けたメタルコア/ラウドロックアルバムと言えるかもしれません。
とにかく頭6曲の流れが完璧すぎるし、それ以降も一瞬たりとも気が抜けない完成度の高さ。繊細な音も含まれているものの、まずは限りなく大音量で楽しみたい1枚です。
残念ながら、このアルバムを最後にリズムギターのジミー・グレガーソンとシンセ/スクリーム担当のザック・ジョンソンが脱退。バンドにとってかなりの痛手となりましたが、2016年には5thアルバム『TREEHOUSE』を発表しています。チャート的には最高93位と大きく順位を落としてしまいましたが、ヘヴィさが減退してクリーン&エレクトロ/ダンス色が濃くなった意欲作だと思うので、特にBMTHの『THAT'S THE SPIRIT』が好きな人は試してみてはどうでしょう。