2018年12月25日 (火)

IMPELLITTERI『STAND IN LINE』(1988)

1988年にリリースされた、クリス・インペリテリ(G)率いるIMPELLITTERIの1stフルアルバム。前年1987年にバンド名を冠したEPを発表しているのですが、その時点ではロブ・ロック(Vo)がフロントマンを務めていました。が、このフルアルバムではRAINBOWなどでの活躍で知られるグラハム・ボネット(Vo)に交代。といっても、グラハムもこのアルバム1枚ですぐに脱退し、ロブが再加入することになるのですが。

当時のメンバーはクリス、グラハム、チャック・ライト(B/ex. QUIET RIOTなど)、パット・トーピー(Dr/MR. BIG)、フィル・ウォルフ(Key)という布陣。もっとも、パット・トーピーもチャック・ライトもすぐに脱退して、代わりにステット・ホーランド(ex. W.A.S.P.など)やデイヴ・スピッツ(ex. WHITE LION、ex. GREAT WHITEなど)が加入することになったりで、いろいろこの時期の彼らはアレなんですよね……。あー面倒くさい(笑)。

本作リリース当時、その超絶速弾きプレイに注目が集まり、やたらと「イングヴェイより速い」だの何だのと騒がれたクリスですが、アルバム自体も80年代のイングヴェイを彷彿とさせるネオクラシカル系の正統派ハードロックが展開されています。しかも、そのルーツとなるRAINBOWの2代目シンガーのグラハムを迎えてネオクラシカルをやっちゃうわけですから……当時はさぞ、イングヴェイも悔しがったことでしょう(そんなこともないか)。

その恩恵といいますか、本作にはRAINBOW時代のヒット曲「Since You've Been Gone」のカバーと、RAINBOWのライブではオープニングに欠かせなかった名曲「Somewhere Over The Rainbow」のギターインストカバーも収録。前者は正直、原曲をよりモダンにしようと頑張りすぎて失敗しているような気がしないでもありませんが、後者は8分の6拍子にアレンジしたりと工夫が良い方向に作用していると思います。

もちろん、オリジナル曲もなかなかのもので、オープニングを飾るドラマチックな「Stand In Line」はグラハムを含む編成だからこそ作り得た名曲。ネオクラシカル系の「Secret Lover」はエンディングこそ唐突ですが、曲としては非常にカッコいいし、ヘヴィなミディアムチューン「Tonight I Fly」もグラハムのパワフルなボーカルが楽しめて良き仕上がり。その後も「White And Perfect」や「Leviathan」といったメロディアス&パワフルな楽曲、シンセがいかにもなファストチューン「Goodnight And Goodbye」、クリスのプレイを存分にお楽しみいただけるインスト「Playing With Fire」と、良曲目白押しです。

正直、この手の速弾きギタリストにほぼ興味がないのですが、そこで歌う人と楽曲が良ければ純粋にアルバムとしては楽しめる人なので、このアルバムも当時から現在に至るまで「あー、グラハムかっこいいなー」という気持ちで素直に堪能できています。まあ邪道かもしれませんが、そういう人間がひとりくらいいてもいいですよね?



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投稿: 2018 12 25 12:00 午前 [1988年の作品, Graham Bonnet, Impellitteri] | 固定リンク

2017年2月25日 (土)

GRAHAM BONNET BAND『THE BOOK』(2016)

RAINBOWやMICHAEL SCHENKER GROUP、ALCATRAZZ、IMPELLITTERIといったバンドを渡り歩いてきた孤高のシンガー、グラハム・ボネット。彼が近年結成したGRAHAM BONNET BANDの新作として、2016年秋にリリースされたのが本作『THE BOOK』です。

今作は2枚組仕様で、ディスク1にはコンラド・ペシナート(G)、ベス・エイミー・へヴンストーン(B)、マーク・ゾンダー(Dr)、そしてALCATRAZZ時代の盟友ジミー・ワルドー(Key)という現時点での最強布陣で制作されたオリジナル曲11曲を収録。オープニングトラック「Into The Night」での「そうそう、これこれ! こんなグラハム・ボネットが聴きたかった!」と膝を叩きなるような様式美HR/HMに筆頭される、グラハムがこれまで携わってきたバンドのカラーが至るところに散りばめられた、聴き応えのある1枚に仕上がっています。

グラハムのボーカルからは衰えはそれほど感じられず、これが昨年12月に69歳になったばかりのジジイの歌声かよ!?とただ驚くばかり。そしてコンラド・ペシナートのギタープレイも適度にクラシカルで適度にテクニカル、何よりも耳に残るフレーズをたくさん用意してくれるので、親しみやすいプレイヤーではないかと思います。

いやぁ、それにしてもここまで好き放題やっておいて、単なるセルフパロディで終わってないのはさすがだと思います。どれも聴いたことがあるような錯覚に陥るほどに“グラハムらしさ”に満ち溢れている、だけど正真正銘の新曲なんだから。確かに2016年に新たに生み出すような音楽ではないのかもしれないし、80年代からまったく進化していないと言ったらその通りだとも思う。けれど、こういう音楽をここまでストレートに表現できる稀有な存在だけに、彼には無駄にモダンなことに手を出さず、このまま可能な限り自己流のHR/HMを表現していってほしいです。だって「Into The Night」や「Dead Man Walking」みたいな疾走メタルチューンを絶唱できる、70代に手が届くシンガーなんてそうはいないんだからさ。

そしてディスク2。これがある意味問題作であり、人によってはメインディスクになるのかな(苦笑)。こちらはグラハムが過去に携わってきたバンドやソロ時代のヒット曲をGRAHAM BONNET BANDでセルフカバーしたもの。RAINBOW「Eyes Of The World」から始まり「All Night Long」などの代表曲、そしてソロシングル「Night Games」、MSGからは「Assault Attack」「Dancer」など、ALCATRAZZは「Island In The Sun」「God Blessed Video」など1st〜3rdアルバムから、IMPELLITTERIは「Stand In Line」がピックアップされています。

どの曲も基本的なアレンジはそのまま、ボーカルも変に歌メロを崩すことなく、スタジオテイクでの歌唱を軸に歌っています。肝心の演奏もオリジナルに忠実なパートが多く、特にギターのコンラド・ペシナートはリッチー・ブラックモアからマイケル・シェンカー、イングヴェイ・マルムスティーン、スティーヴ・ヴァイ、クリス・インペリテリと、どいつもこいつもクセが強いギタリストなのにしっかり再現&自身の個性を表出させているんだから、さすがとしか言いようがありません。

グラハムのファンや彼が在籍した上記のバンドのファンはもちろんのこと、RAINBOWからの流れにある様式美HR/HMにこれから触れてみようという人にも入門編としてオススメしたい作品集。ディスク2のみならずディスク1もしっかり楽しめたら、あなたも今日から立派なメタラーです。そして、せっかくなので3月に控えたGRAHAM BONNET BAND&ALCATRAZZの来日公演にも足を運んでみてはどうでしょう。



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投稿: 2017 02 25 12:00 午前 [2016年の作品, Alcatrazz, Graham Bonnet, Impellitteri, Michael Schenker, Rainbow] | 固定リンク