LUCIFER『LUCIFER IV』(2021)
2021年10月29日にリリースされたLUCIFERの4thアルバム。
ドイツ人女性シンガーのヨハナ・サドニス(ex. THE OATH)を中心に結成されたLUCIFER。ANGEL WITCHのアンドリュー・プレスティッジ(Dr)や元CATHEDRALのギャリー・エニングス(G)などが在籍してきましたが、現在はニッケ・アンダーソン(Dr, G, Key/THE HELLACOPTERS、ENTOMBED、IMPERIAL STATE ELECTRIC)、ライナス・ビョークランド(G)、マーティン・ノルディン(G)、ハラルド・ジョットブラード(B, Key)という編成で活動中です。
前作『LUCIFER III』(2020年)から1年7ヶ月という短いスパンで届けられた本作。前作発表直後にコロナ禍に突入してしまったこともあり、同作を携えたツアーを本格的には行えず、結果として彼らは再びスタジオに戻ることでバンドとしてのアイデンティティを維持します。
基本的にヨハナとニッケが大半の楽曲を制作するスタイルは前作と同様ですが、今作では今年新加入のライナスとマーティンもソングライティングに参加。70年代のクラシックロックやガレージロック、ブルースロック、ハードロック、サイケデリックロック、プログレッシヴロックなどからの影響を下地に、ヨハナの気怠くも艶やかな歌声と、ソングライティング面に強く打ち出されたニッケの趣味(KISSやTHIN LIZZYなど)が絶妙なバランス感でミックスされた、古臭くも新鮮という個性的な1枚に仕上がっています。
曲によってはRAINBOWやBLACK SABBATHあたりからの影響も見つけられ、それらがレイドバックすることによって新たな個性を生み出している。かつ、熱すぎず冷たすぎずというヨハナのボーカルが乗ることで、オリジネーターとは異なるものへと進化。このアルバムからは、上記のようなルーツの匂いを漂わせながらも、ド直球で似ている(パクっている)ものは皆無。テイストや方向性がルーツバンドを踏襲してはいても、ヨハナのセンス、ニッケのセンスによって上書き保存されているので、結果先のように「古臭くも新鮮」という作品に仕上がるわけです。
例えば、GRETA VAN FLEETを筆頭とするクラシックロック・リバイバル的スタイルの若手新人バンドと比較すると、もともとキャリアのあるミュージシャンが集まったLUCIFERはちょっと違うのかもしれない。しかし、結果として慣らされている音や生まれてくる楽曲は、GRETA VAN FLEETの対抗馬として十分に通用する個性を備えている。確実に違う枠だってわかってはいるんだけど、むしろGRETA VAN FLEETリスナーにこそ触れてほしいと思わずにはいられない。同バンドに対するヨーロッパからの回答、なんていうのは安直でしょうかね。
怪しげな空気をまとうインスト「The Funeral Pyre」や、ピアノをフィーチャーしたメランコリックな「Nightmare」など変化球が随所に用意されているし、怪しいコード感のバラード「Orion」や初期サバス的なリフワークと伸びやかなメロディラインの相性も抜群な「Phobos」など、アルバム後半に進めば進むほどクセの強い楽曲が増えていく構成も、一度聴いたらドツボにハマってしまう魅力を秘めている。強烈な一撃はないタイプのバンドですが、70年代のピュアなハードロックやクラシックロック・リバイバルの流れに興味を持っている方なら、絶対にドストライクなはず。個人的には過去3作を軽く超える、LUCIFERの最高傑作だと信じてやみません。
だいたい、LED ZEPPELINもBLACK SABBATHもタイトルに“4/IV”が付いた作品(4作目のアルバム)はどれも傑作でしたし、その方程式でいけばLUCIFERの4作目も最高に決まってる。問答無用で気持ちよく楽しめるし、THE HELLACOPTERSなどニッケのロックンロールサイドがお気に入りのリスナーにもうってつけ。2020年代の新たなスタンダードとなるべくして生まれた傑作です(国内ではストリーミング配信されていないことだけが玉に瑕ですが)。
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