IN FLAMES『FOREGONE』(2023)
2023年2月10日にリリースされたIN FLAMESの14thアルバム。
間に新録テイクを含む名盤『CLAYMAN』(2000年)の20周年記念盤を挟みつつ、オリジナルアルバムとしては前作『I, THE MASK』(2019年)からほぼ4年ぶり。ここ数年は制作、ツアーのたびにメンバーチェンジを繰り返してきた彼らですが、今作にはアンダース・フリーデン(Vo)、ビョーン・イエロッテ(G)といった初期メンバーに加え、クリス・ブロデリック(G/ex. MEGADETHなど)、ブライス・ポール(B)、ターナー・ウェイン(Dr/ex. UNDERMINDED、ex. SCARY KIDS SCARING KIDS、ex. CHIODOSなど)という布陣で制作に臨んでいます。
3作連続でハワード・ベンソン(HOOBASTANK、DAUGHTRY、HALESTORMなど)をプロデューサーに、元IN FLAMESのドラマーでハワード・ベンソンの門下生でもあるジョー・リカルドをミキシングエンジニアに迎えて制作された本作は、前作で復調し始めたメロデス要素がさらに濃くなっています。それこそ売り文句に「90年代メロデス期への回帰を強烈に感じさせる」とありますが、あながち間違いではないのかもしれません。
もちろん、だからといって2000年代以降のモダンメタルへと接近した経験をなかったことにはせず、そういった実験や遠回りが無駄ではなかったことも本作では証明されており、整合感の強さなど無駄を極力排除した作りはそういった経験が見事な形に反映されています。特に連作となるアルバムタイトルトラック「Foregone Pt. 2」や続く「Pure Light Of Mind」あたりは、古き良き時代のメロデスと2000年代以降の王道感がバランスよく配合されている。もちろん、それ以外の「State Of Slow Decay」や「Meet Your Maker」など初期の彼らを彷彿とさせる楽曲にも、しっかりとモダンな質感が備わっており、単なる焼き直しで原点回帰したわけではないことを証明しています。
初期衝動感の強かった90年代の作品は、もちろんそれはそれで素晴らしいのですが、その荒々しさ故に聴き手を選ぶ可能性も高い。そういった意味では、ニューメタル的キャッチーさに重きを置き始めた2000年代半ば前後の作品を通過したことを思い出させつつ、バンドの根っこを大切に捉え直した本作は単なる原点回帰ではなく、何ひとつ取りこぼすことなく前進することを選んだIN FLAMESの強い意志が伝わる“覚悟”の1枚かもしれません。
また、過去にDEPECHE MODEの楽曲をカバーした彼ららしく、アルバム中盤にはそういったゴシック色の強いバンドからの影響もしっかり見つけることができる。そうした湿り気の強さがメタルらしい“泣き”の要素や、メロデスらしい悲哀さにも直結しており、アルバムにダイナミズムも与えている。かつ、スピード感もあれば、ミドルテンポによる重々しさもしっかり備わったバランス感含め、全方位のメタルファンに向けてアピールするモダンメタルの総決算的な1枚ではないでしょうか。
もし、今からIN FLAMESというバンドに触れるのならば、無理して初期の作品から入るのではなく、この新作が入門編でもいいのではないか。そう強く思わせてくれる、“わかりやすい”良作です。
▼IN FLAMES『FOREGONE』
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