2001/08/20

INORAN『Fragment』(2001)

ご存じの通り、INORANは昨年「終幕」したバンドLUNA SEAのギタリストだった男だ。彼はバンドが活動休止中の1997年にも1枚、『想』というソロアルバムを発表している。そこでの彼はあくまで自分はプロデューサー/コンポーザー/ギタリストとして、インスト曲以外の歌モノは1曲を除いて全て女性ボーカリストに唄わせている。楽曲的にも如何にもLUNA SEAを彷彿とさせる"想"(この曲のみ、自身が唄っている)以外は、共同プロデューサーであるDJ KRUSHと共に作り上げた、昨今のクラブシーンに目を向けた実験的作風となっている。勿論、LUNA SEAのコンポーザーのひとりなのだから、どの曲にもそれらしき「匂い」を感じ取ることができたが、他のメンバー(SUGIZOやJといったコンポーザー)と比べれば、最もその色が薄かったと言っていいだろう。

そんな彼が、バンド「終幕」後、一体どういう「音」に向かっていくのかが、実はメンバー5人の中で一番興味深かった。RYUICHI(河村隆一)は完全に読めるし、実際一番リリースが早かった。SUGIZOはまだ音源をリリースしていないものの、大体想像がつく。Jは最も早くライヴ活動に移り、そして先日発表されたシングルも想像通りの作風だった。真矢は‥‥頑張れ、このまま(苦笑)。

ところが、「バンド一寡黙な男」がここにきて一気に作品を発表してきた。シングル「Won't leave my mind」を6月に発表し、そして早くも7月にはセカンドソロアルバムとなるこの『Fragment』を発表した。

まず、その作風に驚く。作詞・作曲・アレンジ・ギター・歌‥‥全て「INORAN」本人なのだ。そしてバンドサウンドに拘り、サポート陣には湊雅史(元DEAD END)と奈良敏博(元サンハウス。ご存じの方もいると思うが、彼は後期LUNA SEAにおいて、ベースサウンド・アドバイザーもしていた)という、豪華なリズム隊を迎えている(その他にもスクラッチで活躍するDJ HUSH、真矢とSUGIZOもゲスト参加している)。

これだけ豪華なメンツで作られたアルバム。これが‥‥もう、LUNA SEAなのだ。いや、語弊があるかもしれない。ドンズバLUNA SEAではない。アルバムタイトル通り、「Fragment(断片、欠落等の意)」を感じさせるLUNA SEAなのだ。その欠落しているモノが他の4人のカラーであり、逆にINORAN自身の断片を継ぎ合わせてできたのが、このアルバムと言っていいだろう。だから、正確にはLUNA SEAであってLUNA SEAではないのだ。そんなの当たり前の話だが。

しかし、楽曲のスタイルやメロディーを聴けば、誰もが安心する「あのメロディー」がここにはある。INORANがバンド時代に書いてきた楽曲は、一癖あるけど判りやすい曲が多かった。シングルとなった「gravity」がその最もたる例だと思うが、ここにはあの世界観がある。ラストアルバム『LUNACY』での彼の曲が好きな人なら、絶対に気に入る1枚だろう。

ボーカルは4年前と比べれば向上が見られ、まぁ決して上手い方ではないが、この音には合っているのではないだろうか? 雰囲気モノだね、この人の歌は。そこで好き嫌いが分かれるかもしれないけど。

リズム隊の主張も凄いもんがあるけど(特にドラムの湊、久し振りに彼のハードロック的プレイが聴けて大満足)、INORANのギタープレイも非常に味わい深い。彼のリズムプレイは、特にLUNA SEA時代後期には非常に複雑なリフやアルペジオ等で定評がある。ここでもサウンド・メイキングを含め、バンド時代以上に幅広い、味わい深いプレイを聴かせてくれている。ただ、面白いことに、このアルバムにはギターソロがどこにも見当たらないのだ。「一ギタリスト」としてではなく、「ひとりのミュージシャン」としてINORANはここに存在しているように見える。

「引きの美学」を追求した結果が、このアルバムなのだ。いや、これはまだ結果ではなく、ほんの第一歩なのかもしれない。「引き」もここまで徹底すれば、立派な攻めとなる。それを証明したのが、このアルバムだ。さぁ、SUGIZOやJがこのアルバムを聴いてどう評価するのか、そしてどんなアルバムを生み出すのかが非常に興味深い。全く、LUNA SEAっていう「集合体」は、バンドがなくなった後も目が離せないメンバーばかりである。



▼INORAN『Fragment』
(amazon:国内盤CD

投稿: 2001 08 20 12:00 午前 [2001年の作品, INORAN, LUNA SEA] | 固定リンク