INXS『INXS: LIVE BABY LIVE WEMBLEY STADIUM』(2019)
2019年11月中旬にリリースされたINXSのライブアルバム。
本作は同時期に公開されたINXSのライブ映画のサウンドトラックとして発売されたもので、内容は1991年7月に実施された英ウェンブリー・スタジアムでの模様を完全収録したもの。実は、1991年に同タイトル(こちらはシンプルに『LIVE BABY LIVE』のみ)のライブアルバム&ライブ映像作品が発売されていましたが、1991年版のCDは同時期のワールドツアーからベストテイクを集め、新曲「Shining Star」を追加したコンピ的内容。一方で1991年版の映像作品はウェンブリーでのライブをほぼ完全収録(1曲のみカット)という、同タイトルなのに内容が異なるというややこしいアイテムでした。
その後、『LIVE BABY LIVE』は廃盤となり、唯一のスタジオテイク「Shining Star」はベスト盤などで補完。2014年にはライブ映像作品(1991年版)の21曲にスタジオテイク「Shining Star」を加えた配信アルバム『LIVE AT WEMBLEY STADIUM 1991』として流通することになります。
そこから5年を経て(オリジナルリリースから28年を経て)、今回発売および公開された新たな『LIVE BABY LIVE』は、これまで未公開だった「Lately」が収録されることで、1991年のウェンブリー・スタジアム公演を完全収録する形に。さらに、音源のリマスタリングや映像の4Kレストア含め、これまで発表されてきたどのバージョンよりも鮮明に、全盛期のINXSのパフォーマンスを堪能することができます。
1991年というと、メガヒット作『KICK』(1987年)に続く意欲作『X』(1990年)リリース直後。セールス的には『KICK』より劣る『X』でしたが、バンドが放つ熱量およびファンの熱量がピークに達した時期でもあり、それがこの7万2000人を動員したウェンブリー・スタジアムでのソールドアウト公演につながったわけです。
セットリストは『X』と前作『KICK』からのナンバーがほぼ網羅されており、それ以前のヒットナンバーは「Original Sin」「I Send A Message」(『THE SWING』収録)と「What You Need」(『LISTEN LIKE THIEVES』収録)の3曲のみと少々寂しいところですが、それでもこれは当時のINXSベストセレクトと言える内容ではないでしょうか。ハードロック的なカタルシスをはらみつつも、そのバンドアンサンブルはブラックミュージックからの影響が強いニューウェイヴ経由のロック。THE ROLLING STONES的スタジアムロック感全開のサウンドと、聴いているだけで自然と体が動くダンサブルなパフォーマンスは、この時期ならではと言えるでしょう。
ライブアルバムとしてはもちろんパーフェクトな作品ですが、本作はできれば映像で楽しんでもらいたいと思う1枚。幸い日本盤Blu-ray&DVDがこの7月24日にリリースされるようですので、ぜひこのタイミングにチェックしてみてください。
▼INXS『INXS: LIVE BABY LIVE WEMBLEY STADIUM』
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