2017/05/19

INXS『KICK』(1987)

オーストラリア出身のロックバンドINXSが1987年秋に発表した、通算6枚目のオリジナルアルバムにして最大のヒット作。本作からは唯一の全米No.1ヒットとなった「Need You Tonight」のほか、「Devil Inside」(全米2位)、「New Sensation」(全米3位)、「Never Tear Us Apart」(全米7位)といった楽曲がシングルカットされ、アルバム自体も全米3位まで上昇し、600万枚以上のセールスを記録しました。

アメリカでのINXSの評価というと、80年代序盤に「The One Thing」(全米30位)、「Original Sin」(全米58位)という小ヒットがありましたが、本格的なブレイクとなると『KICK』の前作にあたる『LISTEN LIKE THIEVES』(1985年)からシングルカットされた「What You Need」(全米5位)からということになるのでしょうか。どちらかというとニューウェーブ以降の黒人的ダンサブルな楽曲を軸だったINXSが、ワイルドなハードロック色を取り入れた「What You Need」でブレイクしたというのも興味深い話で、『LISTEN LIKE THIEVES』からの他のシングルも「This Time」「Listen Like Thieves」と同系統だったことから、この路線変更はそれなりに成功を収めたと判断できるかと思います。

しかし、『LISTEN LIKE THIEVES』に続く本作『KICKS』は決して前作の延長線上にある作風とは言い難い、どちらかというとINXSの根幹にある「ブラックミュージックをベースにしたダンサブルなロック」をより洗練したものでした。リードシングルとなった「Need You Tonight」のミニマルなビート+印象的なギターリフ+セクシーなボーカルという作風は、ある種80年代のINXSの究極型と言えるかもしれません。またこの曲は続く「Mediate」とのメドレー形式になっており、MVもモノクロベースでセクシーな前半(「Need You Tonight」)とボブ・ディランのパロディ風後半(「Mediate」)とメドレー形態で楽しいものでした(現在YouTubeではそれぞれ別個でアップされてるんですね)。そもそもハードロック調の「What You Need」もベースにはダンスミュージックが見え隠れしますし、そういう意味では「Need You Tonight」が初の全米1位を獲得したのも頷けますよね。

アルバムはINXS版「We Will Rock You」と呼べる「Guns In The Sky」から始まり、そのまま極上のダンスロック「New Sensation」(これこそ「What You Need」をより洗練させた究極型かなと)、「Devil Inside」、「Need You Tonight」へと続きます。さらにディープなソウルバラード「The Loved One」や「Never Tear us Apart」、軽妙な1曲「Mystify」、適度に現代的な「Wildlife」、ひたすらワイルドでダイナミックなロックンロール「Kick」、ファンキーなギターフレーズとラップ調ボーカルが気持ち良い「Calling All Nations」、ラストにふさわしいアップテンポの「Tiny Daggers」と、全12曲でトータル39分という非常にコンパクトで聴きやすい内容。ロックバンドのアルバムとしては完璧すぎる構成、内容ではないでしょうか。

もしROLLING STONESが80年代に誕生していたら、きっとこんなオリジナルアルバムを作ったんじゃないか、なんてことを当時思ったりもしましたが、それくらい当時のINXSは「僕ら世代のストーンズ」と言いたくなる存在(少なくとも自分にとっては)。一時期こんなバンドを作りたいと思ったし、20代前半の自分にとってお手本となっていたのはこのアルバムでした。



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投稿: 2017 05 19 12:00 午前 [1987年の作品, Inxs] | 固定リンク

2004/09/08

とみぃ洋楽100番勝負(20)

●第20回:「What You Need」 INXS('85)

 オーストラリアのバンドっていうと、'80年代はMIDNIGHT OILとこのINXSが一番有名なんでしょうね(ま、一応AC/DCもそうだけど、その後イギリスに移ってるしね)。実際、俺が初めて知ったオーストラリアのバンドがINXSで、その切っ掛けとなったのがこの曲のヒットだったわけですよ。あの写真を切り貼りしたかのようなPVね。あーやっぱりMTV世代で良かった、俺。

 この曲のヒットの前から彼等は既にそこそこ英米でも売れていた存在だったんですが、いきなりこの曲が全米トップ3入りしちゃったもんだから、その勢いでアルバムもそこそこヒットして、続く「KICK」というアルバム及び "Need You Tonight" は共に1位を記録しちゃうんですよね。恐るべし。

 INXSってバンド、ある時期は本気で理想的なバンド像だったんですよ、俺にとって。ROLLING STONES程黒っぽくなくて、適度にハードで都会的。けどそんなにスマートでもなくて、田舎者が頑張ってカッコつけてる「ダサカッコ良さ」‥‥その微妙なラインが出せたのは、やはりオーストラリアっていう土地柄なんでしょうね。彼等がアメリカやイギリスに移住してたら恐らくもっと隙のない音作りをしてたはずだし(そういう意味では大ブレイク後の'90年代の作品にはその香りがするんですが)。

 この曲はひとことで言っちゃえば、ハードロック。続くシングル "Listen Like Thievs" にしろ、同曲を含むアルバム「LISTEN LIKE THIEVES」からのファーストシングルとなった "This Time" にしろ、どこかそういったハードロック的な重厚さを感じるんですね。けど、黒っぽいという。その色がなかなか普通のハードロックバンドには出せないわけですよ。やはりそこは彼等が元々ハードロックバンドではないからなんでしょうね。

 残念ながら'98年頃にボーカルのマイケル・ハッチェンスの自殺によって、事実上活動休止状態となってしまった彼等。現在アメリカにて新人ボーカルのオーディションを行っているなんて噂もありますが‥‥思い出を大切にして欲しいな、と。一度も生で観れなかったから、余計にそう思うんですよ、俺は‥‥



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投稿: 2004 09 08 12:00 午前 [1985年の作品, Inxs, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック