2018年7月 4日 (水)

IRON MAIDEN『FEAR OF THE DARK』(1992)

1992年5月にリリースされた、IRON MAIDEN通算9枚目のスタジオアルバム。ヤニック・ガース(G)が加入して2枚目、そして長きにわたりメイデンのフロントマンとして活躍したブルース・ディッキンソン(Vo)の(当時)最後のオリジナルアルバムにあたり、全英1位(通算3作目)/全米12位を記録しています。また、本作からは「Be Quick Or Be Dead」(全英2位)、「From Here To Eternity」(全英21位)、「Wasting Love」(チャートインせず)、「Fear Of The Dark」(ライブテイク/全英8位)というヒットシングルも生まれました。

プロデュースを手がけたのは、初期からバンドとタッグを組んできたマーティン・バーチ。ですが、彼は本作を最後にプロデュース業から引退しており、そういう意味でもメイデンファンには印象に残る1枚かもしれませんね。

これまでのメイデンのアルバムは40分台が基本、長くても51分程度で、そういう場合は曲数も8〜9曲ということが多かったと思います。が、本作ではそういった“お約束”が破られ、全12曲で58分というCD時代らしい長さになっております。かといって1曲が長いものばかりかというとそうでもなく、7分程度あるのは「Afraid To Shoot Strangers」と「Fear Of The Dark」の2曲のみ。ほかは3〜4分程度が中心。そのへんのコンパクトさは前作『NO PRAYER FOR THE DYING』(1990年)に通ずるものがあると言えます。

ですが、本作はそれ以前の作品とちょっと違う印象を受けるんですよね。それは音の質感によるものが大きいのかなと。前作までが80年代の延長にある“ドンシャリ”的なサウンドだとすると、本作はもっとファットで硬質なイメージ。メタルシーン自体がそういう音を求めつつある時代だったというのもあるんでしょうけど、ここらへんに“90年代のメイデン”の軸足を見出せはしないでしょうか。

また、楽曲のテイストも従来のメイデンらしいものから、もっとLED ZEPPELIN的なスタイル、ポップなテイストのものなども増えており、名ソングライターのひとりであったエイドリアン・スミス(G)を失ったマイナス要素はあまり感じられません。いや、人によってはこの新機軸が嫌っていうこともあるのかな。当時、日本では比較的ポジティブに受け入れられていた記憶があるのですが。

ブルース・ディッキンソン脱退は、リリースからしばらく経って発表されたものでしたが、そういった意味でも本作はブルース在籍時の集大成的なものであると同時に、バンドとしての“これから”を示す大事な1枚でした。

ひたすら直線的なファストチューン「Be Quick Or Be Dead」や、メロウな「Childhood's End」「Judas Be My Guide」、シンプルなバラード「Wasting Love」、プログレッシヴな「Fear Is The Key」、そして現在まで歌い継がれるメタルアンセム「Fear Of The Dark」など印象的な楽曲も多く、個人的にも今でも好きな1枚です。



▼IRON MAIDEN『FEAR OF THE DARK』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 07 04 12:00 午前 [1992年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2018年7月 3日 (火)

BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』(2018)

昨年6月に開催された『GRASPOP METAL MEETING』など、海外のメタルフェスに出演したのを機に一部で話題になっていた、女性13人からなるHR/HMの名曲をカバーするコーラス隊BRIDES OF LUCIFERがアルバムをリリースしました。

本作でピックアップされている楽曲たちは下記のとおり(曲名後ろのカッコは原曲アーティスト名)。


01. Burn In Hell [TWISTED SISTER]
02. Walk [PANTERA
03. Warriors Of The World [MANOWAR]
04. Chop Suey! [SYSTEM OF A DOWN
05. Painkiller [JUDAS PRIEST
06. Fear Of The Dark [IRON MAIDEN
07. Roots Bloody Roots [SEPULTURA
08. O Father O Satan O Sun! [BEHEMOTH]
09. Holy Diver [DIO
10. South Of Heaven [SLAYER
11. Futility [SCALA & KOLACNY BROTHERS]
12. Halo [MACHINE HEAD
13. White Moon [SCALA & KOLACNY BROTHERS]


ライブではこのほか、RAMMSTEIN「Engel」あたりもカバーされているみたいですね。

ライブやレコーディングには彼女たちのほか、ドラム/ベース/ギター/ピアノが入り、原曲に比較的忠実なアレンジでカバーされています。もちろん、コーラスがメインになるので、彼女たちの歌声が前面に出るようなアレンジも新たに施されており、曲によってはギターソロパートをカットしていたりもします。

どのバンドの曲もボーカルのクセが強いものばかりで、特にPANTERAやSEPULTURAみたいなスクリームメインの楽曲、SYSTEM OF A DOWNのように変態的なボーカルが耳に残る曲すらも聖歌のようなボーカルアレンジで表現されているので、聴き進めていくうちに「あれ、こんなに聴きやすくて大丈夫?」と不安に陥る瞬間も。メタルファンには数年に1枚は世に産み落とされる“ネタCD”として楽しめば、そこまで不快ではないはず。むしろ、僕は積極的に楽しんでおります。

逆に、普段メタルに疎い人にこそ「ね? 意外と曲自体は悪くないんだよ?」と手に取ってほしい1枚だったりして。まあ、一緒に笑って聴いてみましょうよ。

あ、あと本作で2曲もピックアップされているSCALA & KOLACNY BROTHERSという存在。彼らはこのBRIDES OF LUCIFERの先輩的存在でもある、2000年代前半に90年代〜ゼロ年代のUKロックやグランジの代表曲をピアノ伴奏でカバーしたベルギーの少女合唱隊のこと。グループ名は指揮者&ピアノ伴奏者でもある中心人物となる兄弟の名前から取られています。このグループのオリジナル曲をカバーするあたりに、BRIDES OF LUCIFERの起源が見え隠れするのも興味深いところです。



▼BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』
(amazon:海外盤CD / MP3

投稿: 2018 07 03 12:00 午前 [2018年の作品, Brides of Lucifer, Dio, Iron Maiden, Judas Priest, Machine Head, Pantera, Sepultura, Slayer, System of a Down] | 固定リンク

2018年3月16日 (金)

BRUCE DICKINSON『SKUNKWORKS』(1996)

90年代のロブ・ハルフォードの迷走ばかりに触れるのもかわいそうなので、JUDAS PRIESTと双璧をなすブリティッシュHMバンド、IRON MAIDENブルース・ディッキンソンのソロ活動(の迷走)についても触れておきましょう。

本作『SKUNKWORKS』は1996年2月(日本では1月)にリリースされた、ブルース通算3作目、メイデン脱退後2作目のソロアルバム。ソロとはいいますが、本作は本来“SKUNKWORKS”というバンド名義で発表されるべき1枚でした。

グランジ真っただ中の1994年に正統的ブリティッシュHMに傾倒した『BALLS OF PICASSO』で健在ぶりを示したブルース。アルバムではロイ・Z(G)などが参加したものの、その後のツアーではアレックス・ディクソン(G)という若き才能と組むことで、音楽性もより若々しいものへと変化。それが先のSKUNKWORKS結成につながるわけです。

本作のプロデューサーは、NIRVANA『BLEACH』(1989年)をはじめ、MUDHONEYの諸作を手がけてきたジャック・エンディーノが担当。もうこの時点で何がやりたいのかが見え見えですよね。実際、完成したアルバムは3分前後のコンパクトな楽曲が中心で、その大半はPEARL JAMにも通ずる“シンプルなギターリフを軸にしたミディアムテンポのダークなハードロック”。ブルースのボーカルもハイトーンに頼ることなく、それでいてブルースの楽曲とわかるような歌声をしっかり聞かせる“わかる人にはわかる”1枚に仕上がっています。

オープニングを飾る「Space Race」の浮遊感、アメリカンロック的なストレートさが斬新な「Back From The Edge」など、前作『BALLS OF PICASSO』はおろか、アメリカナイズされた派手なハードロックサウンドも含む『TATTOOED MILLIONAIRE』(1990年)とも違う……単純にカッコいいんですよ。そりゃあメイデン的なプログレッシヴさや仰々しさも嫌いじゃないけど、あの時代にこういうサウンドに積極的に挑戦したブルースの心意気、嫌いじゃないです。「Solar Confinement」とか「Dreamstate」とか、今聴いても全然“アリ”だしね。

例えば、今のブルースがこういうアルバムやサウンドにソロで挑戦したのなら、それはそれで受け入れられると思うんです。メイデンに所属していながら、ソロでも同じことをやってもアーティストとして成長が感じられませんし。だけど、当時メイデンから離れていた彼に求められていたのはヘヴィメタルそのもの。当のメイデンが新しいシンガーと『THE X FACTOR』(1995年)という微妙な作品を発表したあとですもん、そりゃあ期待を裏切ったと言われるわけですよね。そこだけは残念でなりません。

なお、本作は日本盤ではオープニングが「Back From The Edge」なのに海外盤では「Space Race」と、トラックリストが一部異なります。個人的には海外盤のトラックリストのほうが好きなので、手に入れる際には輸入盤をオススメします。

とはいえ、本作は2005年に2枚組仕様で再発されて以降、国内廃盤状態。数年前にHostessから『TATTOOED MILLIONAIRE』と『BALLS OF PICASSO』の2枚組仕様が国内リリースされましたが、残念ながら本作は含まれていませんでした。なので、デジタル配信&ストリーミング配信もなし。ぜひ再評価してほしい1枚なんですけどね……ってあれ、最初に迷走って書いたけど、結局は迷走してないってこと?(笑)


※上記のベストアルバム『THE BEST OF BRUCE DICKINSON』にて、『SKUNKWORKS』収録曲「Back From The Edge」を聴くことができます。



▼BRUCE DICKINSON『SKUNKWORKS』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2018 03 16 12:00 午前 [1996年の作品, Bruce Dickinson, Iron Maiden] | 固定リンク

2018年2月 7日 (水)

IRON MAIDEN『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』(1988)

1988年春に発表された、IRON MAIDEN通算7枚目のスタジオアルバム。おりしも世界的なメタルブームの最中にリリースされたこともあり、同作はブルース・ディッキンソン(Vo)加入後初(通算3作目)のアルバム『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)以来となる全英1位を獲得。しかし、アメリカでは最高12位止まりで、50万枚程度と中ヒットに終わってしまいました。

なぜアメリカでヒットしなかったのか。それは本作が開き直ったと言わんばかりに“Very British”なアルバムだったからかもしれません。確かにシングルヒットを意識したポップな「Can I Play With Madness」(全英3位)のようなが曲が含まれてはいるものの、このコンパクトなポップメタルでさえも非常にブリティッシュメタルそのものな構造を持っている1曲ですし、そりゃあアメリカでウケないのも仕方ないのかなと。

また、本作は全8曲を通して物語が進行するようなコンセプチュアルな構造で、1曲目「Moonchild」からラスト「Only The Good Die Young」までがつながっていて、ラストからオープニングにループするようなプログレッシヴロック的構成もブリティッシュロックそのものと言えるかもしれません。シングル志向の強かったアメリカでウケないのは仕方ないのかなと。

とはいえ、イギリスでは本作から4曲ものシングルヒットが生まれています。先の「Can I Play With Madness」に続いて、「The Evil That Men Do」(全英5位)、「The Clairvoyant」(全英6位)、「Infinite Dreams」(全英6位)とそのどれもがトップ10入り。エイドリアン・スミス(G)ががっつりソングライティングに携わった「Moonchild」「Can I Play With Madness」「The Evil That Men Do」をはじめ全体的にポップでメロウな楽曲が多いですが、しっかりメイデンらしさは保たれており、そんな中にスティーヴ・ハリス(B)の本領発揮な10分にもおよぶタイトルトラックが入ったりとバランスは絶妙。前作『SOMEWHERE IN TIME』(1986年)が好きな人なら間違いなく気に入る1枚だと思います。

ちなみにメイデンは本作を携えたツアー終了後、活動休止期間に突入。ブルースやエイドリアンはソロ活動に突入します。そういうこともあって、本作のジャパンツアーは実現せず。そういうこともあって、作品としての評価は高いものの生で聴いてないぶん、思い入れが薄いファンも少なくないようです。ですが、僕はメイデンの作品中もっとも好きな1枚なんですよね。なにせ、初めて買ったメイデンのCDが本作だったので、そういったところでも思い入れが強い作品です。



▼IRON MAIDEN『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3

投稿: 2018 02 07 12:00 午前 [1988年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2017年8月 2日 (水)

IRON MAIDEN『THE BOOK OF SOULS』(2015)

IRON MAIDENが2015年9月にリリースした、通算16枚目のスタジオアルバム。ブルース・ディッキンソン(Vo)復帰後5作目にあたるだけでなく、現在の6人編成(デイヴ・マーレイ、やニック・ガース、エイドリアン・スミスのトリプルギター編成)になってから5枚目ということにもなるわけで、気づけばこの編成が過去最長という事実にも驚かされます。

前作『THE FINAL FRONTIER』(2010年)から5年ぶりの新作にあたるわけですが、そのブランクを埋めるかのように本作はバンド史上初の2枚組スタジオアルバムとなっております。それだけたくさんの曲が入っているのかと思いきや、そこはこのバンドのこと。全11曲で92分という過去最長のスタジオアルバムをを完成させたわけです。

2006年の14thアルバム『A MATTER OF LIFE AND DEATH』以降、それまで以上に大作主義に移行し始めたメイデンですが、本作では6分台2曲、7分台1曲、8分台1曲、そして10分超3曲(うち1曲は18分超!)と、もはややりすぎ!と突っ込みたくなるほどの内容です。こうなると、シングルカットできる曲も限られてきますし、宣伝的にも困るんじゃないかと思うんですが、そもそも本気でバカ売れさせる気だったら、もうちょっと短い曲を増やすなどコマーシャルな方向に走っても不思議じゃない(それでも「Speed Of Light」みたいに“いかにも”なシングル向け楽曲も用意されてますが)。けど、もはやこのバンドにとってそういう必要がないレベルにまで到達しているわけで(CDが売れなくてもツアーでカバーできるし、そもそも過去のカタログセールスである程度補完できるでしょうし)。

彼らもすでに60歳前後。ニコ・マクブレイン(Dr)に関しては現在65歳だし、最年少のブルースですら現在58歳(8月7日で59歳)なわけでして。ヘヴィメタルアーティストとして彼らに“残された時間”は限られているわけです。場合によっては、今作がラストと言われても別におかしくない状況なわけですよ。だって、本作後にブルースの舌癌が発覚して、リリースが半年近く遅れたわけですからね。昨今の音楽界を考えれば、いつ誰が同じような状況に陥っても不思議じゃない。

そんなですもん、そりゃあやりたい方向性で好き放題やるわけですよね。それが10年くらい前の前々作『A MATTER OF LIFE AND DEATH』から顕著になりだした、と個人的には認識しております。

プログレッシブロック的で何度か聴くにはちょっとキツかった『A MATTER OF LIFE AND DEATH』、新しさも感じられた『THE FINAL FRONTIER』に続く本作ですが、本作はどちらかというと『A MATTER OF LIFE AND DEATH』寄りの作風なのかな。しかも1曲目「If Eternity Should Fail」からいきなり8分半の大作が登場するのですが……これが意外と良い。この曲、ブルースが書いたものなんですよね(他にもブルースはラストの超大作「Empire Of The Clouds」も制作)。てっきりスティーヴ・ハリス(B)かと思ってましたが、違った。つまり、スティーヴ以外のメンバーのクリエイティビティがそれだけ増している時期だった、だったらみんなに好き放題させようと。その結果がこれですよ。

世間的には「長すぎる」「長い曲がダラダラしすぎ」「これが最高傑作とは言い難い」という声をよく耳にします。ほぼ同意です。ただ、ダラダラは言い過ぎでしょ。そこまでダラダラはしてないよ。ただ、最初にアルバムを通して聴いたときは、ちょっと厳しいなとは思いました。だけど、しばらく経ってから聴き返すと、意外と悪くない。さらに何度か聴き込んでいくと、かなり計算されているなと気づかされる。ねえ、これ良いアルバムですよ?

確かに、ここから2〜3曲間引けば全体的に締まりのある作品集になったし、最高傑作に近い内容になったのではないかとも思う。だけど、あえてそれをしないのがIRON MAIDENだって、みんな知ってるんじゃないかな。そんなバンドだから、幾多の困難を乗り越えて40年以上も続いているわけですし。

昨年の来日公演は残念ながら行くことができませんでしたが、ぜひ再び本作を携えたツアーで戻ってきてほしい……いや、本作を携えてなくてもいいので、もう一度日本でその勇姿を見せてください。お願いします。



▼SABATON『THE LAST STAND』
(amazon:国内盤2CD / 国内盤2CDブック仕様 / 海外盤2CD / 海外盤2CDブック仕様 / MP3

投稿: 2017 08 02 12:00 午前 [2015年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2016年12月18日 (日)

IRON MAIDEN『SOMEWHERE IN TIME』(1986)

昨日触れたJUDAS PRIESTの『TURBO』がリリースされたのが、今から30年間の1986年。面白いことにこの年、ほぼ同じタイミングでもう1組のメタル界の王者、IRON MAIDENもシンセサイズドギターを取り入れた作品を発表しています。それが今回紹介する、通算6枚目のオリジナルアルバム『SOMEWHERE IN TIME』です。

メタル界屈指の名曲「Aces High」を含む前作『POWERSLAVE』が名盤として高く評価されたこと、またアメリカでのメタルの盛り上がりにうまく乗ろうとしたこともあってか、味付けとしてシンセや先のシンセサイズドギターが随所に取り入れられ、楽曲もより洗練された印象があります。それこそ、曲によっては若干落ち着いた雰囲気も感じられ(3曲目「Sea Of Madness」あたりが顕著)、『POWERSLAVE』と比較すると全体的に地味なイメージすらあります。また、JUDAS PRIEST『TURBO』での(装飾的)変化に嫌悪感を示した旧来のメタルファンが、ここでも「シンセサイズドギター」というキーワードに敏感に反応。もしかしたらこれがネックになって、当時ちゃんと聴かなかった人もいるかもしれません。

しかし。先行シングルの「Wasted Years」や1曲目「Caught Somewhere In Time」、ライブでのシンガロングでおなじみの「Heaven Can Wait」、疾走感あふれる“Very British”な「The Loneliness Of The Long Distance Runner」、これぞメイデン!と断言できるデイヴ・マーレイ作「Deja-Vu」など、1曲1曲を取り上げるとレベルの高いものばかり。地味だけど妙にクセになる(しかもアルバムからの2ndシングル)「Stranger In A Strange Land」みたいな曲もあるし、ラストを飾る8分半の大作「Alexander The Great」(もちろんスティーヴ・ハリス作)もメイデンじゃなきゃ作り得ない説得力があるし。全体的に地味さは拭えないけど、良曲揃いの素晴らしいアルバムなのは間違いない事実です。

メイデンは続く1988年の7thアルバム『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』でもシンセサイズドギターを使用するのですが、こちらではアメリカを完全に無視した(?)、英国人でなければ作ることができない傑作に到達することになります。それについてはまた別の機会に。



▼IRON MAIDEN『SOMEWHERE IN TIME』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2016 12 18 12:00 午前 [1986年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク

2006年10月26日 (木)

IRON MAIDEN@日本武道館(2006年10月25日)

ホントに新作まるまるやったよ。演奏が完璧すぎてため息出た。緊張の糸が途切れることなく、最後まですごいもん見せてくれたよ。

セットリストはちょっと前に日記に書いた、USツアーのときとまったく一緒。つまりニューアルバムから全曲、同じ曲順で再現するという圧巻の内容。MCらしいMCもほとんどなく(5曲目終わった辺りでようやく長めに喋ったけど、その後また5曲続けて演奏)、ようやく「Fear Of The Dark」で箍が外れたように大合唱。なんかSMで焦らされてるような、そんなイメージがあるなぁ。

さすがに戦車が出てきたときは爆笑したし、軍服着て銃を持って登場したエディも微笑ましかったんだけど、新作の曲を演奏してるときはリズムこそ取っていたけど、ずーっと集中して聴いてた。俺、正直なところ「途中で眠くなるんじゃないか」と思ってたんだけど、全然そんなことなかった。演奏完璧すぎなんだもん、いかにヘタクソなバンドが多いかってことですよね、まったく。

で、考えたんだけど……新作を作って、それをそのままライブでやれるアーティストってどれくらいいるんだろう。OASISでもいいしサザンでもいいしそれこそモーニング娘。でもいいんだけど、作ったアルバムをそのまままるごと、曲順も一緒で表現できて、そして客を飽きさせない……いや、メイデンだって今回のセットリストは賛否両論だと思うんだけど、それさえもひねり潰してしまうような説得力はあったよね。それをできるアーティストが他にどれくらいいるのかな、って単純に思ったんですよ。METALLICAやSLAYER、DIOも過去のアルバムを再現するライブとかやったけど、それってリリース当時にはやってないわけで、逆に現代の新作でそれができるのか?というと、答えはノーなわけじゃないですか。

だからといって、どっちの方が優れてるとか、そういうことが言いたいんじゃなくて。アルバムって本来そうあるべきなんじゃないかな、と思ったもので。

つーかさ、メイデンの場合、バンドの歴史上1、2を争うくらいに地味なアルバムでそれをやっちゃってるんだからね。どんだけ今回が自信作なんだよ、って話ですよ。いや、それがよく理解できるライブだったけどね。

あと、プログレメタルと「プログレッシヴなヘヴィメタル」は似て非なるものだな、と再認識。例えば、前者がDREAM THEATER、後者がIRON MAIDENなのかな。「UKロック」と「ブリティッシュロック」くらいの違い・差があるなぁと思いました。

すべてのロックファン・メタルファンに薦められる内容ではないけど、メイデンがどういうバンドか理解していて、ブリティッシュハードロック/メタルが好きな人は観ておいて損はないと思います。もちろん、ライブに行く前に新作聴いておくとなお良し。


[SET LIST]
01. Different World
02. These Colours Don't Run
03. Brighter Than a Thousand Suns
04. Pilgrim
05. Longest Day
06. Out of the Shadows
07. Reincarnation of Benjamin Breeg
08. For the Greater Good of God
09. Lord of Light
10. Legacy
11. Fear of the Dark
12. Iron Maiden
--encore--
13. 2 Minutes to Midnight
14. The Evil that Men Do
15. Hallowed Be Thy Name

投稿: 2006 10 26 04:50 午前 [2006年のライブ, Iron Maiden] | 固定リンク

2006年9月17日 (日)

IRON MAIDEN『A MATTER OF LIFE AND DEATH』(2006)

 IRON MAIDENの3年ぶりの新作「A MATTER OF LIFE AND DEATH」。これが通算14作目、デビューから26年以上経っちゃったわけですが……相変わらずの作風で、古くからのファンは嬉しくなっちゃうんじゃないかな?

 とはいってもこのアルバム、実は意外と敷居が高いアルバムのような気もします。いきなり冒頭からこんなこと書いちゃっていいのかどうかわからないけど、でも敢えて書かせてもらうと……『very MAIDEN』な1枚。いわゆる "Aces High" や "Wasted Years"、"Run To The Hills" で聴けるようなMAIDENじゃなくて、もっとアルバム・オリエンテッドなノリのMAIDENなんだよね。アルバムは「らしい」疾走チューン "Different World" でスタートするけど、その後はひたすら複雑な構成を持つ長尺ナンバーが目白押し。全10曲中4分台の曲はこれのみで、5分台が2曲、6分台が1曲(ま、ほぼ7分だけど)、7分台が3曲、8分台が1曲、9分台が2曲という、まさにプログレチックな作品なのね。アルバムはどちらかというとモノトーンで冷たい空気感。これまでの彼らを踏襲しているけど、例えば現メンバーによる過去2作とは明らかに違うものを感じさせる。気合い・気迫とは違った冷徹さ……いや、ちょっと違うかな。でもそういう冷たさが全体を覆っているのは確かだと思います。

 アルバムジャケットや各曲のテーマ、シンプルなビデオクリップ(しかもアルバム先行シングルは7分半もある "The Reincarnation Of Benjamin Breeg" なんだから驚き)、等々。そういった要素からクールさというか冷たさが伝わってくる。戦争をテーマにしていることは何となく伝わるし(俺は日本盤よりもひと足先にUK盤を購入したので、対訳なしで歌詞を斜め読みしただけです)、そういったスティーヴ・ハリスによるトータル・プロデュースはしっかり表現されてると思います。ただ、このアルバムからMAIDENに入る人がいたら、ちょっと苦しいかもという気もするけど。これが最初に書いた「意外と敷居が高いアルバムのような気も」というのに繋がるわけです。

 1曲1曲のクオリティは相変わらず。ただ、アルバム通してとなるとダークでモノトーンでヘヴィというイメージの強いアルバムだなぁ。実は最初に聴いたとき、10年以上前にリリースされた10作目「THE X-FACTOR」を思い浮かべたんだよね。あのアルバムに似てる気がするんだわ、全体を覆う空気感と楽曲の存在感、そして全体のコンセプトが。でもアルバムが駄作と呼ばれるひとつの理由として、当時のボーカル、ブレイズ・ベイリーの歌メロの弱さやボーカルの貧弱さが指摘されるじゃない? 誰もが当時「このアルバム(「THE X-FACTOR」)をブルース・ディッキンソンが歌っていたら、スゴい作品になってたはずなのに……」と心の奥底で感じていたと思う。そして今回の新作。そう、実は新作はそういうことなんじゃないかな、と俺は思うんだけど……どうでしょう? そして改めてブルースというシンガーの底力を知らしめる結果となったこのアルバム、俺は大好きですよ。気軽に聴ける作風ではないものの、家でジックリと聴きたい1枚ですよね。ライブじゃこのアルバムから全曲演奏したい、なんていう話を伝わってくるほど、メンバーも大満足のアルバムみたいだし、その辺も含めて10月の来日公演に期待したいと思います。幸い俺も武道館に観に行けることになったしね。

 いろんな意味で賛否両論のある1枚だとは思うけど、世間がモダン・ヘヴィネスだ、シンフォニックだ、ゴスだ、と時代に迎合している中、老舗らしく「うちはこれしかやらないし、できないから」という強いこだわりを示し続けるIRON MAIDENはやっぱりスゴいし、なくてはならないバンドだと再認識しました。あと何年続けられるかわからないけど、ずっと変わることなくこのスタイルを守り通してほしいな。

P.S.
最新のビルボードチャートでこのアルバム、初登場9位にランクインしてるんですね。MAIDENにとってこれが初の全米トップ10入りですよね? なんだかスゴいことになってるような……



▼IRON MAIDEN「A MATTER OF LIFE AND DEATH」
(amazon:海外盤日本盤

投稿: 2006 09 17 01:14 午前 [2006年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク | コメント (0)

2005年12月 7日 (水)

IRON MAIDEN『THE ESSENTIAL IRON MAIDEN』(2005)

 2005年7月に、アメリカ限定でリリースされた2枚組ベストアルバム。レーベルは「SANCTUARY」なんだけど、それを配給してるのが米「SONY BMG」で、本国イギリスや日本(EMI系列)ではリリースされておりません。この「THE ESSENTIAL」シリーズ自体がソニー系アーティストのシリーズものなので、まぁ他所の国じゃいろんな権利関係で難しいかもですね。それにメイデンは過去にも幾つか本国主体のベスト盤出てるし、今更要らないか‥‥って気もするけど。

 この夏、「OZZFEST」に出演するということで、USツアー向けにリリースされたのがこの2枚組だと思うんだけど、内容的には最近作から始まり過去に遡っていくといった構成。各アルバムから2曲ずつ選ばれていて、オープニングが現時点での最新オリジナルアルバム「DANCE OF DEATH」収録の、8分半もある大作 "Paschendale"。しかもシングル曲でもなんでもないし。この感覚がアメリカ人のものなんでしょうか。選曲自体にはメンバーは関わってないはずなので、恐らくは‥‥ね。ただその後はシングル曲やライヴでの定番曲を中心に進んでいくので、これからメイデンを聴こうという人にも優しいセレクトになってると思いますよ。

 個人的に感慨深かったのは、やはりアルバム2枚でクビとなってしまった3代目シンガー、ブレイズ在籍時の4曲。「THE X FACTOR」からはよりによって11分以上もあるアルバムオープニグ曲 "Sign Of The Cross" を選んでるんだよね。他にもっといい曲なかったっけ?‥‥って全然覚えてないんだけど。実はそれに続くオリジナル作「VIRTUAL XI」って俺、聴いてないので "Futureal" や "The Clansman" って曲は非常に新鮮でしたね。ブレイズのボーカルも前作とは比べモノにならない程に成長が伺えるし。なのに‥‥勿体ない、とは思わないけど、結局ブルース・ディッキンソンに戻って正解だったと思うよ。全ての面において。彼が戻ってなきゃ、今もこうやってメイデンが第一線で活躍できてたかどうか危うかったと思うし。

 それ以前の‥‥「FEAR OF THE DARK」より前の楽曲については割愛。だって、それこそ中学時代から20代前半まで散々聴いた曲ばかりだからね。

 そんな中、"Fear Of The Dark" は前のライヴアルバム「ROCK IN RIO」('02年)から、ラストの "Running Free" と "Iron Maiden" はこのベスト盤リリース当時はまだ未発売だった最新ライヴアルバム「DEATH ON THE ROAD」から、それぞれライヴテイクを収録してるんですが‥‥兎に角 "Fear Of The Dark" が凄い。イントロのギターフレーズを数万人のオーディエンスが大合唱、勿論歌が始まったら一緒に歌い、途中のギターソロも大合唱。そういやぁRUSHのリオでのライヴDVDで、やはりインスト曲をオーディエンスが一緒に歌うという場面があって大爆笑したのだけど‥‥実はこの感覚、初めてじゃないよね‥‥例えばOASISのライヴ音源とか。そこでピントひらめいたわけ。というのも‥‥

 これってさ、サッカーの応援に似てない? スタジアムでのサッカー観戦と、メタルのライヴ。いやOASISはメタルじゃないけど。イギリスとリオ(ブラジル)、共にサッカー王国。そう、要するに国民性なんですよね。それだけサッカーやロックが生活に根付いている、と。違うかな?

 とにかく "Fear Of The Dark" のライヴ音源におけるオーディエンスの大合唱を聴く度に、軽いジェラシーをおぼえます。悔しいけど、ここまでのシーンには、ここ日本じゃなかなかお目にかかれないしね。少なくともロックのライヴじゃね(サッカーならあるだろうけどさ)。

 ‥‥って何の話だっけ? あそうか、メイデンね。というわけで、メイデンサイコー!(えぇっ、そんなシメなの‥‥)



▼IRON MAIDEN「THE ESSENTIAL IRON MAIDEN」
(amazon:US盤

投稿: 2005 12 07 12:05 午前 [2005年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005年5月26日 (木)

IRON MAIDEN、最新ベスト盤を北米のみで発売に。

アイアン・メイデン、北米のみで2枚組ベスト盤発表!(CDJournal.com)

 ソニーからリリースされる「THE ESSENTIAL」シリーズの一環で、IRON MAIDENも2枚組ベストが新規でリリースされるそうです。

 ここで「おやっ!?」と思う人もいるんじゃないかな。そう、MAIDENって東芝(EMI)だよね?って。

 ところがね、彼は1990年リリースの「NO PRAYER FOR THE DYING」から北米地区は「Sony/Columbia(当初は「Epic」)」へ移籍したんだよね。理由は、「北米地区のEMIにやる気がみられない(=売ろうとしない)から」なんだそうですよ。実際、彼等のアルバムってアメリカでは1枚もミリオンに達してないんですよね(詳しくは「いかんともしがたい」のこのエントリを参照のこと)。

 過去にも「EDWARD THE GREAT」「BEST OF THE BEAST」「ED HUNTER」といったベスト盤をリリースしてきた彼等ですが、実は黄金期‥‥'80年代には一切その手の企画盤をリリースしてないんですよね。かろうじてライヴ盤「LIVE AFTER DEATH」くらいか。でもこれだってベスト選曲には程遠いしね。

 そう考えると‥‥人気に翳りが見え始めたブルース脱退以降にこの手のベスト盤がリリースされるようになったんですよね。ま、その他にもいろんな事情があるんでしょうけど。

 今回リリースされる「THE ESSENTIAL IRON MAIDEN」は「Sony/Legacy」編集による、北米地区のみのリリースとなる2枚組で、最新作「DANCE OF DEATH」から年代順に遡り、各アルバムから2曲ずつ収録されているんだそうです。ということは、当然ブレイズ時代の2作からも選ばれています(当然ポール・ディアノ時代もだけど)。

 これはこの夏からスタートする「OZZFEST」をサポートするための企画なんでしょうね。ご存知の通り、MAIDENはこの夏、オジー率いるBLACK SABBATHとダブルヘッドライナーとして北米やヨーロッパを回ります(ヨーロッパでは一部参加しない公演あり)。オズフェスに来るような若いファンの中にはMAIDENの過去の偉業を知らない子達も沢山いるわけです。そんな子達が手っ取り早く新作から過去の作品に遡れるようにしたのが、このベスト盤だといえるでしょう(かといって、そこの収録された曲を必ずしも演奏するとは限りませんが)。

 またMAIDENはこのオズフェスに合わせて、ライヴCD&DVDもリリース予定です。北米以外はこのアルバムを引っ提げてツアーするのですね。当然日本でもこのライヴCD&DVDは出ますが‥‥もう1回来ないかしら。前回見逃してるからさ。

 ちなみに、「THE ESSENTIAL IRON MAIDEN」は北米にて7/5に、ライヴCD&DVD「DEATH ON THE ROAD」は今のところ8/29前後にリリース予定です。



▼IRON MAIDEN「ROCK IN RIO」(amazon

投稿: 2005 05 26 12:00 午前 [Iron Maiden] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2004年10月10日 (日)

とみぃ洋楽100番勝負(52)

●第52回:「Can I Play With Madness」 IRON MAIDEN ('88)

 IRON MAIDEN。JUDAS PRIESTと並んでこの頃、『KING OF HEAVY METAL』の称号が最も相応しかったバンド。だけど俺、全然眼中になかったのね。"Aces High" とか "Wasted Years" とか "2 Minutes To Midnight" の良さに気づくの、'90年代に入ってからだからさ。

 で、俺が初めてMAIDENを「おお、これがもしかして良いんじゃないの!?」と思えるようになったのが、この曲から。そして初めて買ったアルバムもこの曲が入った「SEVENTH SON OF A SEVENTH SON」。ギターシンセとかに走ったり、曲がポップになったとかいろいろ言われてた時期だけど、ハッキリ言って名盤。コンセプトアルバムとかそんなのどうでもいいから。捨て曲なし。頭からケツまで捨てるところ、一切ないからさ。

 この曲はアルバムの先行シングルとしてリリースされたんだけど、もうね、ド頭からいきなりサビをアカペラ・コーラスでかますわけですよ。お前はBON JOVIか!?ってくらいに。あのMAIDENがですよ? そりゃコアなファンからは非難されるわけだ。でも、それがあったからこそ俺みたいな敬遠してた奴らが振り向いたんだけどね。Aメロとサビのテンポやリズムが違ってたり、ギターソロになると劇的な展開があって、ツインリードがビシッと決まって、またあのサビに戻るっていう‥‥あー、たった3分半でここまでやれるんだ、って。ポップソングとかメタルとか、そんなカテゴリーはどうでもよくてさ、単純にカッコいいわけですよ。

  そういえば、このアルバムでの来日って実現しなかったんですよね。セットがデカ過ぎて海外に持ち出せないっていう話もあった程だけど、明らかに人気の面ではこの頃がひとつのピークでしたよね。その後短い活動休止期間があって、休止明けにメンバーチェンジがあって‥‥そういう意味でも、重要な1枚なんじゃないかな。

 ヘヴィメタルっていう小難しいカテゴライズを忘れて、純粋に「1枚のロックアルバム」として、そして「1曲の、純粋に良い曲」として接して欲しいですよね。



▼IRON MAIDEN「SEVENTH SON OF A SEVENTH SON」 (amazon

投稿: 2004 10 10 12:00 午前 [1988年の作品, Iron Maiden, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003年12月18日 (木)

IRON MAIDEN『DANCE OF DEATH』(2003)

本当に、心の底から「いいメタルのアルバムだな」と思えたのが、今回の「DANCE OF DEATH」。ブルース・ディッキンソンとエイドリアン・スミスが復帰しトリプルギター/6人編成としての2枚目、通算13作目となるIRON MAIDENのオリジナル・アルバム。制作には前回とほぼ同じメンバーが当たり(ケヴィン・シャーリーがプロデュース)、作風的にも前作の延長線上といえるような内容なんですが、今回の方が遙かに良い出来なのは何故なんでしょうかね?

個人的には前作「BRAVE NEW WORLD」も嫌いじゃなかったんですが、まぁあれですよね、『ブルース&エイドリアン復帰に対するご祝儀』的な甘い評価が目立ったじゃないですか。で、俺もそういった好意的な気持ちで迎えた1枚だったんですよ。ただ、個人的評価としては‥‥'92年のブルース在籍時ラスト作となった「FEAR OF THE DARK」以降のアルバムは、正直「帯に短し~」なんですよね。悪くはないんだけど、決定的な何かが足りない。それは「決めの1曲」とかそういった類のものではなく(「決めの1曲」という意味では、前作には "The Wickerman" がありましたからねぇ)。

今回のアルバム、決して短いアルバムではないですよね。冒頭のシングル曲2連発("Wildest Dreams"、"Rainmaker")で「おおっ、どこから聴いてもMAIDENだ!」って感じで勢いをつけて、3曲目から如何にもな長編がバンバン飛び出すという仕組み。叙情詩的な "No More Lies" からヘヴィなシャッフルナンバー "Montsegur"、そこからアルバムの肝となる長編タイトルナンバー "Dance Of Death" への流れは圧巻だと思うし、如何にもMAIDENらしい "Gates Of Tomorrow" や "New Frontier"(これ、久々に俺内で大ヒット)の後に再び長編の嵐‥‥"Paschendale"、"Face In The Sand"、"Age Of Innocence"、"Journeyman" の4連発。特に "Paschendale" のオーケストラを導入した劇的な盛り上げ方は個人的にはかなりツボ。例えば往年のRAINBOWなんかを彷彿させるノリ、と言えばお判りいただけるでしょうか?

アルバムを通して聴くと‥‥後半にそういった長編が続いてるからってわけじゃないですけど‥‥何となく作風的に「POWERSLAVE」に近いような印象を受けます。これって要するに「バンドとして新しいピークに達しつつある」ってことなんですかね‥‥'80年代のMAIDENは明らかに「POWERSLAVE」というアルバムで、世界的にひとつのピークを迎えてますよね。そしてその後、ある意味迷走とも取れるような「SOMEWHERE IN TIME」や「SEVENTH SON OF A SEVENTH SON」等をリリースし続ける(しかしこういった迷走時期の作品が実は名盤だったりするから侮れない)。そしてエイドリアンの脱退(解雇)~ブルースの脱退‥‥勿論、今後の彼らが再び同じような道を辿るという意味ではないですよ? ただ、こうやって20年以上に渡って活躍してきたバンドとして、今回のアルバムで再び「高み」に到達しそうだな、という気がするというだけ。このアルバムのツアーが10数年振りに大がかりなセットを用いたものになるのも、その表れなんじゃないでしょうか?

最近の若手メタルバンドは一切聴かない、というか昨今のメタルに全くといって興味がない俺なんですが、こうやって往年のバンドが今でも活躍してると応援したくなるというか、聴きたくなっちゃうんですよね、素直に。で、久し振りに聴くから余計に良く聞こえるというね。いやいや、いいアルバムじゃないですか。毎日何時間も聴き込んだり、決して自身の「BEST OF 2003」に入れてしまうようなタイプの作品ではないですが、やっぱりたまにはいいもんですね。ほら、毎日あっさりした食事をしてると、たまに油ギトギトでコッテリした食事がしたくなる時、あるじゃない? あれと一緒。今の俺にとってのヘヴィメタルって、多分そういう存在なんだと思います。

最近のイギリスではTHE DARKNESSの大ブレイクを筆頭に、再びこういったメタルに脚光が当たっています。MAIDENはまぁある意味国民的バンドですから‥‥と思ってたら、まさかそのTHE DARKNESSに1位の座を阻まれるとはねぇ‥‥アメリカでも久し振りにトップ20入りしたそうですし、普段ラウドロックばかり聴いてる人も、たまにはこういった正統派もいいんじゃないですかね?(ただし日本盤はCCCDなのでご注意を)



▼IRON MAIDEN『DANCE OF DEATH』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 12 18 05:05 午前 [2003年の作品, Iron Maiden] | 固定リンク