カテゴリー「Iron Maiden」の15件の記事

2019年7月 7日 (日)

IRON MAIDEN『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982)

1982年3月にリリースされたIRON MAIDENの3rdアルバム。初期2作で歌っていたポール・ディアノから、元SAMSONのブルース・ディッキンソンが本作から参加しています。

「Run To The Hills」(全英7位)、「The Number Of The Beast」(同18位)といったヒットシングルも生まれ、アルバムは初の全英1位を獲得。アメリカでも最高33位と初のTOP40入りを果たし、100万枚以上を売り上げる大きなヒット作となりました。

粗暴で男臭いディアノのボーカルから一点、ディッキンソンはがなるようなハイトーンが特徴で、彼の個性を活かした曲作りが早くも多数見受けられます。オープニングを飾る「Invaders」のパンキッシュなスピード感は1stアルバム『IRON MAIDEN』(1980年)でも見受けられたものですが、そこに歌い上げるようなハイトーンが加わることで新たな魅力が加わっています。うん、プログレッシヴなパンクアルバムから普通のHR/HMアルバムへとシフトしたような(「普通の」と言いますが、そこはかなりのハイクオリティなんですけどね)。

かと思えば、センチメンタルなアルペジオから始まるヘヴィチューン「Children Of The Damned」、同名ドラマのセリフがそのまま用いられた「The Prisoner」などディッキンソン時代ならではの“らしい”曲が続きます。「The Prisoner」のポップさもなかなかのものがありますよね。

そして、「22 Acacia Avenue」のようなドラマチックなメロディを持つナンバーやポップさが際立つ「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」と、アルバム中盤で大きな山場を迎える。特にシングルヒットした「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」、そしてのちに触れる「Hallowed Be Thy Name」は今でもライブで演奏されており、ディッキンソン・メイデンのパブリックイメージを語る上で欠かせないナンバーと言えるでしょう。

ドタバタしたドラミングが印象的な「Gangland」を経て、「Total Eclipse」へ……あれ、最新リマスター盤(2018年)だとこの曲カットされてる! そうなんです。1998年のリマスター盤ではラスト前にシングル「Run To The Hills」のカップリング曲「Total Eclipse」が追加収録されていたんですが、現行の最新リマスターではオリジナルアナログ盤の仕様に沿った内容に戻されています。まあ、別にないっちゃあなくても平気なんですが、「Total Eclipse」がある曲順に慣れていたのでちょっとした違和感が。

で、ラストに名曲中の名曲「Hallowed Be Thy Name」。最高の締めくくりですね。こういった楽曲がレパートリーに加えられるようになったのも、ブルース・ディッキンソンという稀代のシンガーが加わったからこそ。単なる“第二のデビュー作”という以上に、1stアルバムとは別の意味でメイデンの歴史に、そしてHR/HMの歴史において欠かせない1枚です。

 


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2019年3月 3日 (日)

ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』(2019)

2019年1月に発表された、ARCH ENEMYのカバーアルバム。バンド初期からシングルのカップリングやアルバムのボーナストラックとして収録されてきた歴代のカバー曲を1枚にパッケージした作品で、その内訳も初期3作のヨハン・リーヴァ時代、ブレイクのきかっけを作ったアンジェラ・ゴソウ時代、現在のアリッサ・ホワイト=グラズ時代と3世代にわたる、ある種のオールタイム“裏”ベストアルバムとなっています。

取り上げられているカバーはIRON MAIDENJUDAS PRIESTEUROPEMEGADETH、MANOWAR、QUEENSRYCHEPRETTY MAIDSSCORPIONSKISSなど彼らのルーツにあるHR/HMバンドからG.B.H.、DISCHARGEといったハードコアバンド、SKITSLICKERS、ANTI-CIMEX、MODERAT LIKVIDATIONという地元スウェーデンのハードコア/クラストコアバンド、マイケル・アモット(G)がかつて在籍したCARCASS、そしてTEARS FOR FEARSやマイク・オールドフィールドといったポップ寄りまで、バラエティに富んだもの。JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、EUROPE、SKITSLICKERSはボーカリスト違いで複数選ばれているものもあります。

全24曲中、M-1「Shout」からM-11「City Baby Attacked By Rats」までがアリッサ時代、M-12「Warning」からM-20「Symphony Of Destruction」までがアンジェラ時代、ラスト4曲がヨハン時代としっかりブロック分けされているので、そこまで違和感を感じることはないかと。特にアリッサ時代はM-5「Nitrad」から「City Baby Attacked By Rats」までのパンク/ハードコアのカバーが続く流れで統一感を作るなど、構成も考えられていますしね。

ARCH ENEMYの活動を追っているリスナーには、すべて既出で所持している音源ばかりでしょう。しかし、こういった“ファン”アルバムは出すことに意味があるので、そこに文句をつけるのは野暮というもの。そんな中、M-1「Shout」は昨年発売されたアナログボックスセット『1996-2017』やアナログ7インチ盤「Reason To Believe」に収録されていたものですが、CD化はこれが初めて。原曲をよりヘヴィにしたアレンジはどことなくツェッペリン「Immigrant Song」に似ていて、DISTURBEDのカバーバージョンとは違った味わい深さがあります。

そのほかのカバーに関しては原曲まんまのものから凝ったアレンジのものまでさまざまですが、基本的には原曲に対する愛情が強いものが多い印象です。個人的にはPRETTY MAIDS「Back To Back」、EUROPE「Wings Of Tomorrow」、CARCASS「Incarnated Solvent Abuse」、IRON MAIDEN「Aces High」がお気に入りです。

ちなみに、CDブックレットにはマイケル・アモットによる各曲の解説入り。残念ながら日本盤はおろか、配信&ストリーミングもなしの本作ですが、特にストリーミングに関しては過去作もゼロなので、これを機に動いてほしいものです。



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2018年12月29日 (土)

IRON MAIDEN『IRON MAIDEN』(1980)

1980年にリリースされた、IRON MAIDENの記念すべきデビューアルバム。本国イギリスではいきなりチャート4位まで上昇するなど、早い段階から成功を収めています。

当時のメンバーはポール・ディアーノ(Vo)、スティーヴ・ハリス(B)、デニス・ストラットン(G)、デイヴ・マーレイ(G)、クライヴ・バー(Dr)。現メンバーはスティーヴとデイヴのみですが、この時期このタイミングこの編成でしかなし得なかった“パンクとヘヴィメタルの融合”が見事な形で表現されています。

ご存知のとおり、この時期のイギリスは1977年頃から勃発したパンクムーブメントがひと段落し、新たな波としてのヘヴィメタルブーム……New Wave Of British Heavy Metal(NWOBHM)が押し寄せ始めた頃。IRON MAIDENやDEF LEPPARDといったバンドがメジャーデビューを果たし、MOTÖRHEADのようなパンクとロックンロール、ハードロックの中間にいるバンドもその“枠内”で受け入れられ、大きな成功を残しました。

さて、今やHR/HMシーンにおける最重要バンドのひとつと数えられるメイデンですが、すでにこのデビューアルバムの時点で個性的なスタイルを確立させつつあります。旧来のハードロック、ヘヴィメタルが持つ疾走感と激しいリズム&ギターリフ、プログレッシヴロックからの影響も見え隠れする、複雑な展開を持つ長尺曲。これだけなら、今の彼らとなんら変わりないでしょう。実際、「Remember Tomorrow」や「Phantom Of The Opera」あたりは現在のスタイルの原点と言えるものですしね。

しかし、それだけじゃない。この時期のメイデンには20代前半のバンドらしい勢いの良さと、“パンク以降”を感じさせる荒々しさ、無軌道さが備わっているのです。それがオープニングを飾る「Prowler」や「Running Free」「Charlotte The Harlot」ににじみ出ているのではないでしょうか。

旧規格(1998年リマスター)に追加収録されていた「Sanctuary」もそうですが、このへんのスタイルは先のMOTÖRHEADにも通ずるものがあり、のちのスラッシュメタルにもかなり影響を与えているはずです。この荒々しさはバンドが成長を続けることで、どんどん整理・洗練されていくのですが、80年代初頭、特にこのデビューアルバムにおけるメイデンはパンクとメタルの橋渡しをしていたのではないか……もちろん当時をリアルタイムで通過しているわけではないので想像でしかありませんが、そんな気がしてなりません。

そういう意味では、僕にとってメイデンの1stアルバムはある種の“パンクアルバム”であり、とても大切な1枚なのです。なかなか共感してもらえないかもしれませんが。

なお、本作を含む初期4作品はつい最近、新たにリマスタリング&パッケージした形で再リリースされたばかり。先に書いたように、本作も前規格からボーナストラックが外され、ジャケット含めオリジナルの体裁に戻っています。「Sanctuary」がベスト盤やライブ盤以外で聴けなくなってしまったのは残念ですが、前のジャケットにはずっと違和感が残っていたので、正直この形に戻ってホッとしていますけどね。



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2018年7月 4日 (水)

IRON MAIDEN『FEAR OF THE DARK』(1992)

1992年5月にリリースされた、IRON MAIDEN通算9枚目のスタジオアルバム。ヤニック・ガース(G)が加入して2枚目、そして長きにわたりメイデンのフロントマンとして活躍したブルース・ディッキンソン(Vo)の(当時)最後のオリジナルアルバムにあたり、全英1位(通算3作目)/全米12位を記録しています。また、本作からは「Be Quick Or Be Dead」(全英2位)、「From Here To Eternity」(全英21位)、「Wasting Love」(チャートインせず)、「Fear Of The Dark」(ライブテイク/全英8位)というヒットシングルも生まれました。

プロデュースを手がけたのは、初期からバンドとタッグを組んできたマーティン・バーチ。ですが、彼は本作を最後にプロデュース業から引退しており、そういう意味でもメイデンファンには印象に残る1枚かもしれませんね。

これまでのメイデンのアルバムは40分台が基本、長くても51分程度で、そういう場合は曲数も8〜9曲ということが多かったと思います。が、本作ではそういった“お約束”が破られ、全12曲で58分というCD時代らしい長さになっております。かといって1曲が長いものばかりかというとそうでもなく、7分程度あるのは「Afraid To Shoot Strangers」と「Fear Of The Dark」の2曲のみ。ほかは3〜4分程度が中心。そのへんのコンパクトさは前作『NO PRAYER FOR THE DYING』(1990年)に通ずるものがあると言えます。

ですが、本作はそれ以前の作品とちょっと違う印象を受けるんですよね。それは音の質感によるものが大きいのかなと。前作までが80年代の延長にある“ドンシャリ”的なサウンドだとすると、本作はもっとファットで硬質なイメージ。メタルシーン自体がそういう音を求めつつある時代だったというのもあるんでしょうけど、ここらへんに“90年代のメイデン”の軸足を見出せはしないでしょうか。

また、楽曲のテイストも従来のメイデンらしいものから、もっとLED ZEPPELIN的なスタイル、ポップなテイストのものなども増えており、名ソングライターのひとりであったエイドリアン・スミス(G)を失ったマイナス要素はあまり感じられません。いや、人によってはこの新機軸が嫌っていうこともあるのかな。当時、日本では比較的ポジティブに受け入れられていた記憶があるのですが。

ブルース・ディッキンソン脱退は、リリースからしばらく経って発表されたものでしたが、そういった意味でも本作はブルース在籍時の集大成的なものであると同時に、バンドとしての“これから”を示す大事な1枚でした。

ひたすら直線的なファストチューン「Be Quick Or Be Dead」や、メロウな「Childhood's End」「Judas Be My Guide」、シンプルなバラード「Wasting Love」、プログレッシヴな「Fear Is The Key」、そして現在まで歌い継がれるメタルアンセム「Fear Of The Dark」など印象的な楽曲も多く、個人的にも今でも好きな1枚です。



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2018年7月 3日 (火)

BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』(2018)

昨年6月に開催された『GRASPOP METAL MEETING』など、海外のメタルフェスに出演したのを機に一部で話題になっていた、女性13人からなるHR/HMの名曲をカバーするコーラス隊BRIDES OF LUCIFERがアルバムをリリースしました。

本作でピックアップされている楽曲たちは下記のとおり(曲名後ろのカッコは原曲アーティスト名)。


01. Burn In Hell [TWISTED SISTER]
02. Walk [PANTERA
03. Warriors Of The World [MANOWAR]
04. Chop Suey! [SYSTEM OF A DOWN
05. Painkiller [JUDAS PRIEST
06. Fear Of The Dark [IRON MAIDEN
07. Roots Bloody Roots [SEPULTURA
08. O Father O Satan O Sun! [BEHEMOTH]
09. Holy Diver [DIO
10. South Of Heaven [SLAYER
11. Futility [SCALA & KOLACNY BROTHERS]
12. Halo [MACHINE HEAD
13. White Moon [SCALA & KOLACNY BROTHERS]


ライブではこのほか、RAMMSTEIN「Engel」あたりもカバーされているみたいですね。

ライブやレコーディングには彼女たちのほか、ドラム/ベース/ギター/ピアノが入り、原曲に比較的忠実なアレンジでカバーされています。もちろん、コーラスがメインになるので、彼女たちの歌声が前面に出るようなアレンジも新たに施されており、曲によってはギターソロパートをカットしていたりもします。

どのバンドの曲もボーカルのクセが強いものばかりで、特にPANTERAやSEPULTURAみたいなスクリームメインの楽曲、SYSTEM OF A DOWNのように変態的なボーカルが耳に残る曲すらも聖歌のようなボーカルアレンジで表現されているので、聴き進めていくうちに「あれ、こんなに聴きやすくて大丈夫?」と不安に陥る瞬間も。メタルファンには数年に1枚は世に産み落とされる“ネタCD”として楽しめば、そこまで不快ではないはず。むしろ、僕は積極的に楽しんでおります。

逆に、普段メタルに疎い人にこそ「ね? 意外と曲自体は悪くないんだよ?」と手に取ってほしい1枚だったりして。まあ、一緒に笑って聴いてみましょうよ。

あ、あと本作で2曲もピックアップされているSCALA & KOLACNY BROTHERSという存在。彼らはこのBRIDES OF LUCIFERの先輩的存在でもある、2000年代前半に90年代〜ゼロ年代のUKロックやグランジの代表曲をピアノ伴奏でカバーしたベルギーの少女合唱隊のこと。グループ名は指揮者&ピアノ伴奏者でもある中心人物となる兄弟の名前から取られています。このグループのオリジナル曲をカバーするあたりに、BRIDES OF LUCIFERの起源が見え隠れするのも興味深いところです。



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2018年3月16日 (金)

BRUCE DICKINSON『SKUNKWORKS』(1996)

90年代のロブ・ハルフォードの迷走ばかりに触れるのもかわいそうなので、JUDAS PRIESTと双璧をなすブリティッシュHMバンド、IRON MAIDENブルース・ディッキンソンのソロ活動(の迷走)についても触れておきましょう。

本作『SKUNKWORKS』は1996年2月(日本では1月)にリリースされた、ブルース通算3作目、メイデン脱退後2作目のソロアルバム。ソロとはいいますが、本作は本来“SKUNKWORKS”というバンド名義で発表されるべき1枚でした。

グランジ真っただ中の1994年に正統的ブリティッシュHMに傾倒した『BALLS OF PICASSO』で健在ぶりを示したブルース。アルバムではロイ・Z(G)などが参加したものの、その後のツアーではアレックス・ディクソン(G)という若き才能と組むことで、音楽性もより若々しいものへと変化。それが先のSKUNKWORKS結成につながるわけです。

本作のプロデューサーは、NIRVANA『BLEACH』(1989年)をはじめ、MUDHONEYの諸作を手がけてきたジャック・エンディーノが担当。もうこの時点で何がやりたいのかが見え見えですよね。実際、完成したアルバムは3分前後のコンパクトな楽曲が中心で、その大半はPEARL JAMにも通ずる“シンプルなギターリフを軸にしたミディアムテンポのダークなハードロック”。ブルースのボーカルもハイトーンに頼ることなく、それでいてブルースの楽曲とわかるような歌声をしっかり聞かせる“わかる人にはわかる”1枚に仕上がっています。

オープニングを飾る「Space Race」の浮遊感、アメリカンロック的なストレートさが斬新な「Back From The Edge」など、前作『BALLS OF PICASSO』はおろか、アメリカナイズされた派手なハードロックサウンドも含む『TATTOOED MILLIONAIRE』(1990年)とも違う……単純にカッコいいんですよ。そりゃあメイデン的なプログレッシヴさや仰々しさも嫌いじゃないけど、あの時代にこういうサウンドに積極的に挑戦したブルースの心意気、嫌いじゃないです。「Solar Confinement」とか「Dreamstate」とか、今聴いても全然“アリ”だしね。

例えば、今のブルースがこういうアルバムやサウンドにソロで挑戦したのなら、それはそれで受け入れられると思うんです。メイデンに所属していながら、ソロでも同じことをやってもアーティストとして成長が感じられませんし。だけど、当時メイデンから離れていた彼に求められていたのはヘヴィメタルそのもの。当のメイデンが新しいシンガーと『THE X FACTOR』(1995年)という微妙な作品を発表したあとですもん、そりゃあ期待を裏切ったと言われるわけですよね。そこだけは残念でなりません。

なお、本作は日本盤ではオープニングが「Back From The Edge」なのに海外盤では「Space Race」と、トラックリストが一部異なります。個人的には海外盤のトラックリストのほうが好きなので、手に入れる際には輸入盤をオススメします。

とはいえ、本作は2005年に2枚組仕様で再発されて以降、国内廃盤状態。数年前にHostessから『TATTOOED MILLIONAIRE』と『BALLS OF PICASSO』の2枚組仕様が国内リリースされましたが、残念ながら本作は含まれていませんでした。なので、デジタル配信&ストリーミング配信もなし。ぜひ再評価してほしい1枚なんですけどね……ってあれ、最初に迷走って書いたけど、結局は迷走してないってこと?(笑)


※上記のベストアルバム『THE BEST OF BRUCE DICKINSON』にて、『SKUNKWORKS』収録曲「Back From The Edge」を聴くことができます。



▼BRUCE DICKINSON『SKUNKWORKS』
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2018年2月 7日 (水)

IRON MAIDEN『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』(1988)

1988年春に発表された、IRON MAIDEN通算7枚目のスタジオアルバム。おりしも世界的なメタルブームの最中にリリースされたこともあり、同作はブルース・ディッキンソン(Vo)加入後初(通算3作目)のアルバム『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982年)以来となる全英1位を獲得。しかし、アメリカでは最高12位止まりで、50万枚程度と中ヒットに終わってしまいました。

なぜアメリカでヒットしなかったのか。それは本作が開き直ったと言わんばかりに“Very British”なアルバムだったからかもしれません。確かにシングルヒットを意識したポップな「Can I Play With Madness」(全英3位)のようなが曲が含まれてはいるものの、このコンパクトなポップメタルでさえも非常にブリティッシュメタルそのものな構造を持っている1曲ですし、そりゃあアメリカでウケないのも仕方ないのかなと。

また、本作は全8曲を通して物語が進行するようなコンセプチュアルな構造で、1曲目「Moonchild」からラスト「Only The Good Die Young」までがつながっていて、ラストからオープニングにループするようなプログレッシヴロック的構成もブリティッシュロックそのものと言えるかもしれません。シングル志向の強かったアメリカでウケないのは仕方ないのかなと。

とはいえ、イギリスでは本作から4曲ものシングルヒットが生まれています。先の「Can I Play With Madness」に続いて、「The Evil That Men Do」(全英5位)、「The Clairvoyant」(全英6位)、「Infinite Dreams」(全英6位)とそのどれもがトップ10入り。エイドリアン・スミス(G)ががっつりソングライティングに携わった「Moonchild」「Can I Play With Madness」「The Evil That Men Do」をはじめ全体的にポップでメロウな楽曲が多いですが、しっかりメイデンらしさは保たれており、そんな中にスティーヴ・ハリス(B)の本領発揮な10分にもおよぶタイトルトラックが入ったりとバランスは絶妙。前作『SOMEWHERE IN TIME』(1986年)が好きな人なら間違いなく気に入る1枚だと思います。

ちなみにメイデンは本作を携えたツアー終了後、活動休止期間に突入。ブルースやエイドリアンはソロ活動に突入します。そういうこともあって、本作のジャパンツアーは実現せず。そういうこともあって、作品としての評価は高いものの生で聴いてないぶん、思い入れが薄いファンも少なくないようです。ですが、僕はメイデンの作品中もっとも好きな1枚なんですよね。なにせ、初めて買ったメイデンのCDが本作だったので、そういったところでも思い入れが強い作品です。



▼IRON MAIDEN『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』
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2017年8月 2日 (水)

IRON MAIDEN『THE BOOK OF SOULS』(2015)

IRON MAIDENが2015年9月にリリースした、通算16枚目のスタジオアルバム。ブルース・ディッキンソン(Vo)復帰後5作目にあたるだけでなく、現在の6人編成(デイヴ・マーレイ、やニック・ガース、エイドリアン・スミスのトリプルギター編成)になってから5枚目ということにもなるわけで、気づけばこの編成が過去最長という事実にも驚かされます。

前作『THE FINAL FRONTIER』(2010年)から5年ぶりの新作にあたるわけですが、そのブランクを埋めるかのように本作はバンド史上初の2枚組スタジオアルバムとなっております。それだけたくさんの曲が入っているのかと思いきや、そこはこのバンドのこと。全11曲で92分という過去最長のスタジオアルバムをを完成させたわけです。

2006年の14thアルバム『A MATTER OF LIFE AND DEATH』以降、それまで以上に大作主義に移行し始めたメイデンですが、本作では6分台2曲、7分台1曲、8分台1曲、そして10分超3曲(うち1曲は18分超!)と、もはややりすぎ!と突っ込みたくなるほどの内容です。こうなると、シングルカットできる曲も限られてきますし、宣伝的にも困るんじゃないかと思うんですが、そもそも本気でバカ売れさせる気だったら、もうちょっと短い曲を増やすなどコマーシャルな方向に走っても不思議じゃない(それでも「Speed Of Light」みたいに“いかにも”なシングル向け楽曲も用意されてますが)。けど、もはやこのバンドにとってそういう必要がないレベルにまで到達しているわけで(CDが売れなくてもツアーでカバーできるし、そもそも過去のカタログセールスである程度補完できるでしょうし)。

彼らもすでに60歳前後。ニコ・マクブレイン(Dr)に関しては現在65歳だし、最年少のブルースですら現在58歳(8月7日で59歳)なわけでして。ヘヴィメタルアーティストとして彼らに“残された時間”は限られているわけです。場合によっては、今作がラストと言われても別におかしくない状況なわけですよ。だって、本作後にブルースの舌癌が発覚して、リリースが半年近く遅れたわけですからね。昨今の音楽界を考えれば、いつ誰が同じような状況に陥っても不思議じゃない。

そんなですもん、そりゃあやりたい方向性で好き放題やるわけですよね。それが10年くらい前の前々作『A MATTER OF LIFE AND DEATH』から顕著になりだした、と個人的には認識しております。

プログレッシブロック的で何度か聴くにはちょっとキツかった『A MATTER OF LIFE AND DEATH』、新しさも感じられた『THE FINAL FRONTIER』に続く本作ですが、本作はどちらかというと『A MATTER OF LIFE AND DEATH』寄りの作風なのかな。しかも1曲目「If Eternity Should Fail」からいきなり8分半の大作が登場するのですが……これが意外と良い。この曲、ブルースが書いたものなんですよね(他にもブルースはラストの超大作「Empire Of The Clouds」も制作)。てっきりスティーヴ・ハリス(B)かと思ってましたが、違った。つまり、スティーヴ以外のメンバーのクリエイティビティがそれだけ増している時期だった、だったらみんなに好き放題させようと。その結果がこれですよ。

世間的には「長すぎる」「長い曲がダラダラしすぎ」「これが最高傑作とは言い難い」という声をよく耳にします。ほぼ同意です。ただ、ダラダラは言い過ぎでしょ。そこまでダラダラはしてないよ。ただ、最初にアルバムを通して聴いたときは、ちょっと厳しいなとは思いました。だけど、しばらく経ってから聴き返すと、意外と悪くない。さらに何度か聴き込んでいくと、かなり計算されているなと気づかされる。ねえ、これ良いアルバムですよ?

確かに、ここから2〜3曲間引けば全体的に締まりのある作品集になったし、最高傑作に近い内容になったのではないかとも思う。だけど、あえてそれをしないのがIRON MAIDENだって、みんな知ってるんじゃないかな。そんなバンドだから、幾多の困難を乗り越えて40年以上も続いているわけですし。

昨年の来日公演は残念ながら行くことができませんでしたが、ぜひ再び本作を携えたツアーで戻ってきてほしい……いや、本作を携えてなくてもいいので、もう一度日本でその勇姿を見せてください。お願いします。



▼SABATON『THE LAST STAND』
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2016年12月18日 (日)

IRON MAIDEN『SOMEWHERE IN TIME』(1986)

昨日触れたJUDAS PRIEST『TURBO』がリリースされたのが、今から30年間の1986年。面白いことにこの年、ほぼ同じタイミングでもう1組のメタル界の王者、IRON MAIDENもシンセサイズドギターを取り入れた作品を発表しています。それが今回紹介する、通算6枚目のオリジナルアルバム『SOMEWHERE IN TIME』です。

メタル界屈指の名曲「Aces High」を含む前作『POWERSLAVE』(1984年)が名盤として高く評価されたこと、またアメリカでのメタルの盛り上がりにうまく乗ろうとしたこともあってか、味付けとしてシンセや先のシンセサイズドギターが随所に取り入れられ、楽曲もより洗練された印象があります。それこそ、曲によっては若干落ち着いた雰囲気も感じられ(3曲目「Sea Of Madness」あたりが顕著)、『POWERSLAVE』と比較すると全体的に地味なイメージすらあります。また、JUDAS PRIEST『TURBO』での(装飾的)変化に嫌悪感を示した旧来のメタルファンが、ここでも「シンセサイズドギター」というキーワードに敏感に反応。もしかしたらこれがネックになって、当時ちゃんと聴かなかった人もいるかもしれません。

しかし。先行シングルの「Wasted Years」や1曲目「Caught Somewhere In Time」、ライブでのシンガロングでおなじみの「Heaven Can Wait」、疾走感あふれる“Very British”な「The Loneliness Of The Long Distance Runner」、これぞメイデン!と断言できるデイヴ・マーレイ作「Deja-Vu」など、1曲1曲を取り上げるとレベルの高いものばかり。地味だけど妙にクセになる(しかもアルバムからの2ndシングル)「Stranger In A Strange Land」みたいな曲もあるし、ラストを飾る8分半の大作「Alexander The Great」(もちろんスティーヴ・ハリス作)もメイデンじゃなきゃ作り得ない説得力があるし。全体的に地味さは拭えないけど、良曲揃いの素晴らしいアルバムなのは間違いない事実です。

メイデンは続く1988年の7thアルバム『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』でもシンセサイズドギターを使用するのですが、こちらではアメリカを完全に無視した(?)、英国人でなければ作ることができない傑作に到達することになります。それについてはまた別の機会に。



▼IRON MAIDEN『SOMEWHERE IN TIME』
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2006年10月26日 (木)

IRON MAIDEN@日本武道館(2006年10月25日)

ホントに新作まるまるやったよ。演奏が完璧すぎてため息出た。緊張の糸が途切れることなく、最後まですごいもん見せてくれたよ。

セットリストはちょっと前に日記に書いた、USツアーのときとまったく一緒。つまりニューアルバムから全曲、同じ曲順で再現するという圧巻の内容。MCらしいMCもほとんどなく(5曲目終わった辺りでようやく長めに喋ったけど、その後また5曲続けて演奏)、ようやく「Fear Of The Dark」で箍が外れたように大合唱。なんかSMで焦らされてるような、そんなイメージがあるなぁ。

さすがに戦車が出てきたときは爆笑したし、軍服着て銃を持って登場したエディも微笑ましかったんだけど、新作の曲を演奏してるときはリズムこそ取っていたけど、ずーっと集中して聴いてた。俺、正直なところ「途中で眠くなるんじゃないか」と思ってたんだけど、全然そんなことなかった。演奏完璧すぎなんだもん、いかにヘタクソなバンドが多いかってことですよね、まったく。

で、考えたんだけど……新作を作って、それをそのままライブでやれるアーティストってどれくらいいるんだろう。OASISでもいいしサザンでもいいしそれこそモーニング娘。でもいいんだけど、作ったアルバムをそのまままるごと、曲順も一緒で表現できて、そして客を飽きさせない……いや、メイデンだって今回のセットリストは賛否両論だと思うんだけど、それさえもひねり潰してしまうような説得力はあったよね。それをできるアーティストが他にどれくらいいるのかな、って単純に思ったんですよ。METALLICAやSLAYER、DIOも過去のアルバムを再現するライブとかやったけど、それってリリース当時にはやってないわけで、逆に現代の新作でそれができるのか?というと、答えはノーなわけじゃないですか。

だからといって、どっちの方が優れてるとか、そういうことが言いたいんじゃなくて。アルバムって本来そうあるべきなんじゃないかな、と思ったもので。

つーかさ、メイデンの場合、バンドの歴史上1、2を争うくらいに地味なアルバムでそれをやっちゃってるんだからね。どんだけ今回が自信作なんだよ、って話ですよ。いや、それがよく理解できるライブだったけどね。

あと、プログレメタルと「プログレッシヴなヘヴィメタル」は似て非なるものだな、と再認識。例えば、前者がDREAM THEATER、後者がIRON MAIDENなのかな。「UKロック」と「ブリティッシュロック」くらいの違い・差があるなぁと思いました。

すべてのロックファン・メタルファンに薦められる内容ではないけど、メイデンがどういうバンドか理解していて、ブリティッシュハードロック/メタルが好きな人は観ておいて損はないと思います。もちろん、ライブに行く前に新作聴いておくとなお良し。


[SET LIST]
01. Different World
02. These Colours Don't Run
03. Brighter Than a Thousand Suns
04. Pilgrim
05. Longest Day
06. Out of the Shadows
07. Reincarnation of Benjamin Breeg
08. For the Greater Good of God
09. Lord of Light
10. Legacy
11. Fear of the Dark
12. Iron Maiden
--encore--
13. 2 Minutes to Midnight
14. The Evil that Men Do
15. Hallowed Be Thy Name

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