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カテゴリー「Iron Maiden」の24件の記事

2021年9月16日 (木)

IRON MAIDEN『SENJUTSU』(2021)

2021年9月3日にリリースされた、IRON MAIDENの17thアルバム。

全英1位/全米4位を記録した前作『THE BOOK OF SOULS』(2015年)から6年ぶりのオリジナルアルバム。バンドはこの期間にも『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』(2017年)、『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』(2020年)とライブアルバム2作を発表しており、それぞれ全英17位/全米49位、全英7位/全米53位というまずまずの数字を残しています。

前作は初のCD2枚組/全11曲・92分という過去最長の内容でしたが、続く今作もCD2枚組という形態に。今作は全10曲・82分とボリューム的には前作には及ばないものの、CD1枚に収録するには2分ほど長すぎるということで2枚組になったようです。それでも70年代だったら、アナログ盤4枚組に相当するボリュームですけどね。

さて、内容について。リードトラック「The Writing On The Wall」が比較的地味なミディアムナンバーだったこともあり、個人的には「なんとなく『A MATTER OF LIVE AND DEATH』(2006年)の作風に似てるかな?」と感じていました。で、いざアルバムを通して聴いてみると……地味。前作『THE BOOK OF SOULS』も決して派手な作品ではなかったですし、あのときも「なんとなく『A MATTER OF LIVE AND DEATH』の作風に似てるかな?」という感想を抱きましたが、今作に関してはそれ以上。むしろ『A MATTER OF LIVE AND DEATH』をまた聴いているんじゃないか?というデジャブに陥ったほどです。

こういう作風のときって、間違いなくスティーヴ・ハリス(B)の創作意欲にブーストがかかっているときなんですよね。『A MATTER OF LIVE AND DEATH』然り、『THE BOOK OF SOULS』然り。『THE FINAL FRONTIER』(2010年)のときも比較的その傾向にありましたが、あのときはほかのメンバーの創作意欲も強まっていた時期だと思うので、もうちょっと全体的なバランスが整っていた気がしますが、今作に関してはスティーヴ・ハリス無双という表現がぴったり。80年代から90年代初頭にかけて、ファンが喜ぶことに徹しつつ自身の表現したいことも重ねてきた彼ら、そういったことを散々やってきたのだから、メンバー全員が60代に突入した今はもう余生。リスナーが、ファンが、過去のメイデンがといった外野の声を無視して、本当にやりたいことを、作りたい音楽を、表現したい芸術を形にするのがベストなのかもしれません。そういった意味で、このアルバムで表現されている内容は純度100%のIRON MAIDEN=スティーヴ・ハリスだと思います。文句なし。

ただ、そこに従来のファンが求めるであろう派手さ、尖った部分、わかりやすさが伴っていないだけ。商業作品としては間違っているのかもしれないけど、IRON MAIDENが2021年に表現すべき音楽としては大正解。この矛盾を孕んだ作品、果たしてどこまで正しく評価されるのかわかりません。きっとこの先、あと1枚2枚アルバムを作れるのかどうか。あるいは、何か突発的な事故が起こってこのアルバムがラストアルバムになる可能性だってある。年齢的に、そして時勢的に考えると、近年のメイデンは毎回「これがラストアルバム」という気持ちで制作と向き合っていると思うんです。

商業的に成功するような作品は『FEAR OF THE DARK』(1992年)でひとつ完結している。あるいは、6人になって最初の1、2枚(『BRAVE NEW WORLD』『DANCE OF DEATH』)でもう一度トライしてきた。もう昔のような「売れるアルバム」「大衆にアピールするアルバム」という鎖に縛られる必要はない。演奏していて楽しい音楽、自分たちが聴いて楽しい音楽を作ればいい。その答えが今回の『SENJUTSU』というアルバムなのかもしれません。

ブルース・ディッキンソン(Vo)は前作制作前に舌癌と向き合い、さらに加齢による声域減退から、ボーカリストとしては確実に下り坂へと折り返しています。それにより、メロディラインが以前と比べて単調になり始めている。これはもう仕方のないこと。楽曲のテンポ問題も一緒でしょう。そういった肉体的制限が以前よりも厳しい中で、ここまでまとめるのは相当苦労したはずです。

ですが、そういった問題は作品の質とは無関係。以前より地味だからダメ、サヨナラ、という人もいるはずです。実は、このアルバムを最初に聴いたときは自分もそっち側に行ってしまうのかな、と思っていました。しかし、二度三度とリピートしているうちに、嫌いになれない自分に気づく。むしろこれ、好きなやつじゃん、と気づくのです。そうか、自分『A MATTER OF LIVE AND DEATH』も『THE BOOK OF SOULS』も嫌いになれなかったもんな。じゃあ好きなわけだ。特にDISC 2(7分20秒、10分20秒、12分40秒、11分20秒という長尺曲4曲収録)がお気に入りです。

こんなのレビューでもなんでもないですし、単なる自己肯定のための戯言に過ぎません。しかし、現在進行形のIRON MAIDENが自分にとってどんな存在なのか、それを再認識する上で今回のアルバムは非常に重要な“踏み絵”になったような気がします。最高傑作ではないけれど、真ん中より2、3歩上に位置する「気づいたら手に取っているお気に入り」。そういうユルいポジションの良作だと断言しておきます。

最後に。本作はイギリスで3作連続1位を獲得することができませんでしたが(最高2位)、アメリカではキャリア最高位となる3位にランキングしたことを記して、この長い駄文を締めたいと思います。最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

 


▼IRON MAIDEN『SENJUTSU』
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2021年7月23日 (金)

IRON MAIDEN『KILLERS』(1981)

1981年2月にリリースされたIRON MAIDENの2ndアルバム。

前作『IRON MAIDEN』(1980年)はデビューアルバムながらも全英4位という好記録を残しましたが、続く本作は全英12位とランクを落としてしまっています。しかし、一方で初の全米チャートへのランクイン(最高78位)などもあり、着実に進歩していることは数字からも伝わってきます。

今作からデニス・ストラットン(G)に代わりエイドリアン・スミス(G)が加入。また、今作を最後にポール・ディアーノ(Vo)が脱退するなど、早くも大きな転換期を迎えます。しかし、内容的にはそんないざこざがまったく感じられない、前作からの成長がダイレクトに伝わる良作に仕上がっています。

前作では全体的に勢いで押す曲(「Prowler」「Charlotte The Harlot」など)とプログレッシヴさを全面に打ち出す曲(「Phantom Of The Opera」「Transylvania」など)と二分された感がありますが、今作からはその個性により磨きをかけた感が伝わる。前作の流れを組むパンキッシュさは「Purgatory」程度に収められ、「Murders In The Rue Morgue」や「Another Life」のようなアップチューンはメタリックに整頓されている感がより強まっています。

一方で、オープニングを飾るドラマチックなインスト「The Ides Of March」から「Wrathchild」へ、「Genghis Khan」から「Innocent Exile」へと続く組曲的構成や、6分強におよぶプログレッシヴな「Prodigal Son」、前作における「Iron Maiden」的な展開を持つ「Drifter」などは現在まで続くスタイルのプロトタイプと言えるもの。ブルース・ディッキンソン(Vo)加入後に確立されるスタイルの処女作、といえばわかりやすいのかな。そういった過渡期的な立ち位置にあるアルバムだなと、個人的には昔から感じていました。それもあってか、初期の作品の中でも不思議と手に取る機会の少ない1枚だったんですよね。

ところが、最近久しぶりに聴いたら……面白いことに、1stアルバム以上に気に入ってしまった。周期的なものもあるんでしょうけど、今まで気づいていなかった魅力(暴力的な1作目よりコントロールされている感)にハマってしまったんです。実はこのへんの魅力って、プロデューサーをマーティン・バーチ(BLACK SABBATHDEEP PURPLERAINBOWWHITESNAKEなど)に交代したのも大きく作用しているのかなと。さすがです。

1 stアルバムと比べたらインパクトは若干弱いかもしれませんが、中身の濃さは前作以上。あなどれない1枚です。

 


▼IRON MAIDEN『KILLERS』
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2021年3月31日 (水)

SMITH/KOTZEN『SMITH/KOTZEN』(2021)

2021年3月26日にリリースされたSMITH/KOTZENの1stアルバム。日本盤未発売。

このSMITH/KOTZENはIRON MAIDENのエイドリアン・スミス(G)とTHE WINERY DOGS、ex. POISON、ex. MR. BIGなどで知られるリッチー・コッツェン(G, Vo)によるバンド/プロジェクト。UKを代表する王道ヘヴィメタルバンドのギタリストと、ブルースフィーリング溢れるUSギタリスト/シンガーの邂逅はなかなか想像しにくいものがあるかと思いますが、そもそもエイドリアンはその昔、ASAP(ADRIAN SMITH AND PROJECT)というアメリカンハードロック寄りのソロバンドを組んで、そっち側に傾倒してメイデンを脱退したなんて話もあったほど、根っこの部分ではUSロックをルーツに持つ人なわけで、どこかでつながる機会があれば意気投合するのも理解できるわけです。

数年前に知人を通じて出会った2人は、以降ジャムセッションを何度か重ねたとのこと。エイドリアンによると「僕らはクラシック・ロックとブルージー・ロックへの愛を共有しているから、一緒になって曲を書き始めようと決めたんだ」そうで……ほらね(笑)。昨年2月、ミックスエンジニアにケヴィン・シャーリー(IRON MAIDEN、DREAM THEATERJOURNEYなど)を迎え、ギターとベースはエイドリアン&リッチーが、ドラムも5曲をリッチーがそれぞれ担当し、IRON MAIDENのニコ・マクブレイン(Dr)とリッチーの盟友タル・バーグマン(Dr)のゲスト参加を含めてレコーディングを実施。昨年12月に1stシングル「Taking My Chances」をリリース後、楽曲を小出しにしつつ、レコーディングから1年強の歳月を経てついにアルバムが届けられたわけです。

この2人のタッグにIRON MAIDEN的な側面を求めて本作に手を出したなんて方はまずいないと思いますが、上記のような事情を知っている方なら納得のブルース/ソウル/R&Bを通過したアメリカン・クラシックロック/ハードロック満載の本作。ボーカルも2人で歌いわけられており、リッチーのしゃがれた声と、どこか頼りなさげなエイドリアンの歌(笑)が、それぞれ異なる個性を発しながら独特のグルーヴを作り上げています。ギターとベースは交互に担当しているようで、リッチーのプレイはなんとなく「これかな?」と予想できるので、それ以外がエイドリアンのプレイということでしょう(苦笑)。

非常にシンプルなバンドアンサンブルで、無駄が一切ないトラディショナルなハードロックは、リッチーのソロ作の延長として楽しめるはずです。また、リッチーの味わい深いボーカルがしっかりと確立されているからこそ、程よいバランスで組み込まれたエイドリアンの歌声も同時に楽しむことができる。ギターも適度な派手さと色気、ヘヴィさが備わっており、すべてにおいて「痒いところに手が届く」作りかなと。

特別新しい要素や突出した個性こそ感じられないものの、文句なしに何度も楽しめる安心安定の1枚ではないでしょうか。個人的には大好物ですが、年間ベストに選ぶようなタイプとは違うかな。だけど、気づくと何年経っても手に取っている、そんな良作だと断言できます。できれば、忘れた頃に2作目、3作目も作ってほしいなと思う、そんな良プロジェクトです。

 


▼SMITH/KOTZEN『SMITH/KOTZEN』
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2020年11月20日 (金)

IRON MAIDEN『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』(2020)

2020年11月20日にリリースされたIRON MAIDENの最新ライブアルバム。

本作は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった、今年5月の来日公演を含むワールドツアー『LEGACY OF THE BEAST WORLD TOUR』から、2019年9月にメキシコ・シティで行われたライブの模様を完全収録したもの。ライブアルバムとしては現時点での最新オリジナルアルバム『THE BOOK OF SOULS』(2015年)を携えたワールドツアーの模様を収めた『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』(2017年)以来3年ぶりとなります。この10年で考えると、すでに4作目……オリジナル作のリリース間隔がどんどん長くなっている一方で、その隙間を埋めるようにライブアルバムが(過去のアーカイブ含め)どんどん発表されるのは、ファンとしてうれしいような「いや、そんなに出されても」と困るような……。

とはいえ、『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』が日本を含むワールドツアーのハイライト的内容(世界各国のライブからベストテイクを集めたもの)だったのに対し、今作は1公演をまるまる収録。しかも、血気盛んなメキシコ公演の模様ですから、どれだけ贔屓目に見ても悪いわけがない。実際、約100分におよぶ全17曲のパフォーマンスは最高の一言なわけですから、困ったものです(苦笑)。

「Aces High」からスタートするセットリストがそもそも悪いわけないし、そこから「Where Eagles Dare」「2 Minutes To Midnight」という流れも最高。また、このツアーでは「The Clansman」や「Sign Of The Cross」といったブルース・ディッキンソン(Vo)不在時期の楽曲(過去のツアーでも披露していましたが)や、「The Wickerman」「For The Greater Good of God」という2000年代の楽曲も含まれており、まさにオールタイムベスト的なセットリストで、定番曲以外は『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』とそこまで被らないようになっているのも特徴ではないでしょうか。まあそこまで意外な曲はほぼないですけど、このセトリを生で味わったら確かにうれしくてたまらないですよね。

僕、ブルースの歌う「The Clansman」が原曲以上に大好きなんですよ。同曲が収録されたオリジナルアルバム『VIRTUAL XI』(1998年)って、生活環境が変わったタイミングだったのでそこまで真面目に聴き込めていなかったので、同作に対する印象も薄かったのですが、ライブバージョンで(かつブルースのボーカルパフォーマンスによって)急激に惹きつけられたのです。これは「Sign Of The Cross」も同様で、ブレイズ・ベイリー(Vo)には申し訳ないですが……。

ただ、2000年代に発表された『ROCK IN RIO』(2002年)や『DEATH ON THE ROAD』(2005年)あたりのボーカルパフォーマンスと比べると、さすがにブルースも歳をとったと感じずにはいられません。観客に歌わせるパートも増えている印象を受けるし、声の張りも……それでも、60歳を超えてここまで歌えるヘヴィメタル・シンガー、そうそういませんけどね。

逆に、演奏面に関してはより脂が乗っているように感じるのは気のせいでしょうか。初期の楽曲におけるアグレッシヴさこそ薄まっているものの、特に上に挙げたここ10〜20年くらいのプログレッシヴな楽曲では円熟味が伝わってくるんですよね。要するに、ヘヴィメタルバンドとしてまだまだ現役すぎるってことです。すげえバンドだな、相変わらず。

一応、『LEGACY OF THE BEAST WORLD TOUR』は2021年夏まで延期される形となりましたが、この最高の選曲/パフォーマンスのライブを日本でも楽しめる未来があるのか……こればかりは本当に神のみぞ知るといったところですが、今はこのライブアルバムをできる限り爆音で聴いて、デビュー40周年を迎えたIRON MAIDENに賞賛の拍手を送り続けたいと思います。

 


▼IRON MAIDEN『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』
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2020年7月 2日 (木)

IRON MAIDEN『NO PRAYER FO THE DYING』(1990)

1990年10月にリリースされたIRON MAIDENの8thアルバム。

前作『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』(1988年)を携えたツアーを終えたあと、バンドとして長めの休暇期間へと突入。その間にエイドリアン・スミス(G)が自身もボーカルを務めるソロプロジェクトA.S.A.P(ADRIAN SMITH AND PROJECT)でアルバム『SILVER AND GOLD』(1989年)を発表。続いてブルース・ディッキンソン(Vo)も映画『エルム街の悪夢5 ザ・ドリームチャイルド』サウンドトラックにソロ曲「Bring Your Daughter To The Slaughter」を提供し、続いてソロアルバム『TATTOOED MILLIONAIRE』(1990年)を発表します。

各メンバーが順調にソロ活動を続けていましたが、ブルースのアルバムリリース前後にバンド再集結の召集がかかります。ここで、音楽性の違いから独自の活動を続けたかったエイドリアンがバンドを脱退。代わりに、ブルースのアルバム『TATTOOED MILLIONAIRE』や同作を帯同したショートツアーでギターをプレイしたヤニック・ガーズ(G)がメイデンに加入することになりました。

こうして完成したメイデン8作目のオリジナルアルバムは、前作で見せたスティーヴ・ハリス(B)らしいプログレッシヴな要素が後退した、コンパクトでロックンロール色の強い異色の1枚に仕上がりました。

メンバーチェンジも大きな影響を与えたのでしょうが、メジャーデビュー10周年というタイミングに迎えた久しぶりの大きな変化を前に、バンドは原点回帰的なラフさ/アグレッシヴさでレコーディングに臨みます。どの曲も3〜4分台で非常にコンパクト、かつ複雑なアレンジは比較的避けられており、そのノリの良さからスルスルと聴き進められる内容なのです。

とはいえ、このバンドらしいプログレ感をにじませたタイトルトラック「No Prayer For The Dying」や、本作唯一の5分超えナンバー「Motehr Russia」からは従来の複雑さも見え隠れしますが、それも必要最低限に留められており、メイデンにしては淡白であっさりめ。そこに物足りなさを感じるリスナーも少なくないでしょう。

なんとなく、スタジオセッションでの成果をそのまま形にしたかのような内容ですし、制作もかなり短期間で進行したんだろうなというのが伺えます。事実、埋め合わせなのかどうかわかりませんが、ブルースのソロ曲「Bring Your Daughter... To The Slaughter」がバンドで再録音されているくらいですから(しかも、この曲がバンド唯一の全英No.1シングルになるというのも皮肉な話です)。

名曲「Aces High」の続編ナンバー「Tailgunner」もどこか軽いですし、リード曲「Holy Smoke」や「Hooks In You」のようなロックンロールテイストの強い楽曲も含まれていることから、メイデンファンの間ではそこまで評価が高くないような印象を受けます。が、聴き込むとクセになるのも本作。「Public Enema Number On」や「Fates Warning」「The Assassin」などは侮れませんし、なによりも「Motehr Russia」という名曲の存在が本作を駄作で終わらせずに済んでいるわけですから。真っ先に聴くべき作品とは言いませんが、最近の大作主義に疲れてきたらぜひ試してみてください。意外とイケるので!

 


▼IRON MAIDEN『NO PRAYER FO THE DYING』
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2020年7月 1日 (水)

IRON MAIDEN『THE FINAL FRONTIER』(2010)

2010年8月発売の、IRON MAIDEN通算15作目のスタジオアルバム。

1980年にメジャーデビューを果たしたメイデンにとって、本作はデビュー30周年を祝す記念すべき1枚であり、10作目『THE X FACTOR』(1995年)から始まったプログレッシヴロック/大作路線のひとつの完成形と言える内容でもあります。なにぜ全10曲で約77分という、CDの収録容量ギリギリまで詰め込んだ1枚ですからね(結局、次の『THE BOOK OF SOULS』(2015年)では1枚で収まり切らず、初のCD2枚組作品を生み出すことになるわけですが)。

『BRAVE NEW WORLD』(2000年)からの付き合いとなるケヴィン・シャーリー(AEROSMITHDREAM THEATERJOURNEYなど)と、スティーヴ・ハリス(B)との共同プロデュース作品となる本作は、質感的には同作以降の流れを組みつつ、よりタイトで若干丸みを帯びた音色で非常に聴きやすいものになっています。これだけ長尺のアルバムだと、やはり聴きやすい音色じゃないと長続きしないですものね。

アルバム冒頭を飾る「Satellite 15... The Final Frontier」からして9分近くにおよぶ大作ですが、これは4分以上におよぶインダストリアル・チックなインスト(「Satellite 15」)に続いて、いかにもメイデンらしいハードロック(「The Final Frontier」)へと続く、組曲というよりは2部構成の楽曲と呼んだほうがいいのかしら。そこから、“いかにも”なキャッチーさと楽器陣のプログレッシヴ感がキラリと光るリードシングル「El Dorado」へと続くのですが、前作『A MATTER OF LIFE AND DEATH』(2006年)でのシリアス路線を若干引きずっているような印象も受けます。けど、キャッチーさでは前作以上なんですけどね。

ただ、歌メロに関しては前作あたりから若干不安視されてきた「ネタ切れ感」と「マンネリさ」がより強まった印象も。これはブルース・ディッキンソン(Vo)が悪いというよりは、メインソングライター(ここではスティーヴ・ハリスかな)の責任が強いような気がします。楽器陣(特に、ニコ・マクブレインのドラミング)が30周年というタイミングに新たな領域に片足突っ込み始めているだけに、そこだけはちょっと残念かな。

だけど、決して退屈な作品ではありません。「Mother of Mercy」や「Coming Home」のようにアレンジで新たな魅力を見せる楽曲や、メイデンらしいツインリードソロを用いた王道メタル「The Alchemist」、ドラマチックさは随一な「Starblind」などフックとなる楽曲は多数用意されています。『THE X FACTOR』以降のスティーヴ・ハリスの方向性を「あり」と認めるリスナーなら、本作も満足の1枚ではないでしょうか。少なくとも、前作で少々がっかりしたというリスナーも納得できる内容だと思います。

と同時に、本作での経験が続く傑作『THE BOOK OF SOULS』で確実に活かされていることもまた事実。そういった意味では次作へ至るまでの習作的1枚とも言えるでしょう。

 


▼IRON MAIDEN『THE FINAL FRONTIER』
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2020年4月14日 (火)

IRON MAIDEN『BRAVE NEW WORLD』(2000)

IRON MAIDEN、来日中止になっちゃいましたね……前回の両国国技館はいろいろあって行けなかったので、今回は……と楽しみにしていただけに、残念でなりません。まあ、こんなご時世ですから素直にライブを楽しめるのか?と問われると、確かに疑問なんですけどね。とにかく今は、早く健康な世の中になって再来日が決まることを願っております。

というわけで、今回紹介するのは2000年5月末にリリースされたIRON MAIDENの12thアルバムです。

1999年に3代目シンガーのブレイズ・ベイリーが脱退。これと代わるように先代のブルース・ディッキンソンがバンドに再加入し、さらにやニック・ガース(G)の前に在籍したエイドリアン・スミス(G)までもが再加入。ギタリストの誰か1人が抜けるのではなく、トリプル・ギター編成の6人組バンドとしてIRON MAIDENは新たなディケイドへと突入することになります。

アルバムデビュー20周年という節目に発表された本作は、ケヴィン・シャーリー(AEROSMITHDREAM THEATERJOURNEYなど)という若手エンジニアを共同プロデューサーに迎えパリでレコーディングを敢行。ライブ・レコーディングに近い形で、トラックごとにではなく一斉に演奏した音を録っていったそうで、これは現編成になってまず行われたツアー「The Ed Hunter Tour」での勢いをそのまま残す意味もあったのかなと(楽曲自体はツアー前から書かれていたようですが)。

いくつかの楽曲(「The Nomad」「Dream of Mirrors」「The Mercenary」)はブレイズ在籍時の前作『VIRTUAL XI』(1998年)から存在したようで、本作収録にあたりブラッシュアップされたとのこと。そういえば、ブレイズ加入後の2作(『VIRTUAL XI』と1995年の『THE X FACTOR』)はスティーヴ・ハリス(B)のカラーが強すぎたのか、長尺だけどモノトーンという印象の楽曲が多かったように思います。本作にもそういったタイプの楽曲(特に「The Nomad」あたり)は存在するものの、いくぶん彩り豊かになった印象も受けます。

それは、ブルースという“歌える”シンガーが歌っていることも大きいのかなと。ブレイズはどこか一本調子なところがありましたからね。あれはあれでよかったんだけど、曲によっては合わなかったですし。また、オープニングを飾る「The Wicker Man」のキャッチーさ(エイドリアン、スティーヴ、ブルース共作)や、続く「Ghost Of The Navigator」「Brave New World」などが持つ“複雑なのに親しみやすい”要素は、過去2作には確実になかったもの。なんというか、1曲1曲の作りが丁寧な印象を受けるんです。それはクリアなサウンドのせいもあるでしょうけど、なによりも曲作りにいろんな声や意見がしっかり反映されたのかなと。そこの違いが形となって表れた1枚なんじゃないかと思います。

全10曲で70分近い作風は相変わらずですが、それでも先の3曲や「Blood Brothers」「The Fallen Angel」「Out Of The Silent Planet」など印象に残る楽曲は多数存在します。長めの曲を1曲削って、コンパクトな疾走チューンを加えただけでだいぶ印象は違ったと思いますが、現在までの“メイデンらしさ”を決定づけたという点においてはひとつの雛形となる、メイデン史を語る上で欠かせない1枚です。

 


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2020年2月 7日 (金)

BRITISH LION『THE BURNING』(2020)

2020年1月中旬に発表されたBRITISH LIONの2ndアルバム。

BRITISH LIONはIRON MAIDENのスティーヴ・ハリス(B)がサイドプロジェクトとしてスタートさせた5人組バンドで、メンバーはスティーヴのほかリチャード・テイラー(Vo)、デヴィッド・ホーキンズ(G)、グレアム・レスリー(G)、サイモン・ドーソン(Dr)という編成。2012年にセルフタイトルの1stアルバムを発表し(同作はスティーヴ・ハリス名義でのリリース)、短いながらもツアーも敢行。その後はメイデンの活動にシフトしていきましたが、2018年秋にはアルバムリリースから6年を経て待望の初来日公演も実現しております。

デビュー作から7年を経て届けられた2ndアルバムは、BRITISH LION名義でのリリースという事実のみならず、その内容からもスティーヴのサイドプロジェクトからひとつの独立したバンドに昇格した印象を受けます。

前作の時点でソングライティングにスティーヴ以外のメンバーも積極的に関わっていましたが、それは本作も同様。むしろ、そういったスティーヴ以外の4人のカラーも強く反映された結果、前作にあった“取っ付きにくさ”が解消されています。

基本的には前作の延長線上にある、スティーヴが若い頃に強く影響を受けたクラシックロック……UFOTHIN LIZZYをはじめとするブリティッシュロックバンドを現代によみがえらせたような楽曲を展開しています。が、それらが今作ではよりわかりやすく昇華されているんです。ところどころでスティーヴらしいパーカッシヴなベースプレイを見つけることもできるし、リチャードの節回しも初期メイデンに通ずるものがあるので、メイデンファンの耳にも優しい内容となっているはずです。

また、それは随所にフィーチャーされたツインリードや適度なプログレッシヴロック的アレンジにも表れており、2バンドの共通点を見つけ出すのは容易いことかもしれません。が、アルバムを通して聴き進めていくにつれて、このバンドは良い意味で“後ろ向き”なんだなってことにも気づかされます。

メイデンが伝統を守りながらも現代のシーンと向き合っているのに比べると、BRITISH LIONのこのアルバムは「あの頃の俺よ、もう一度」みたいな“童心に帰って楽しんでいる”感が強く伝わってくる。この“後ろ向き”さをネガティヴに捉えてしまえば、本作は今のリスナーにとってつまらない1枚かもしれません。が、メインのバンドがあるからこそ“わかっている”人が“やるべき”ことを徹底してやった結果がこれなのです。だから全然アリなんですよね。

メイデンファンはもちろんのこと、“古き良き時代のブリティッシュハードロック”に関心のあるリスナーにも手に取ってもらいたい本作。派手さ皆無、本当に地味で音の“隙間”が多い1枚ですが、だからこそ若いリスナーにはその隙間に身を委ねつつディープな音世界に浸っていただきたいものです。

 


▼BRITISH LION『THE BURNING』
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2019年11月11日 (月)

IRON MAIDEN『POWERSLAVE』(1984)

IRON MAIDENが1984年9月にリリースした、通算5作目のオリジナルアルバム。全英2位、全米21位という成績を残しており、本作からは「2 Minutes To Midnight」(全英11位)、「Aces High」(同20位)というヒットシングルが生まれています。

ブルース・ディッキンソン(Vo)加入後3作目、そしてブルース、スティーヴ・ハリス(B)、エイドリアン・スミス(G)、デイヴ・マーレイ(G)、ニコ・マクブレイン(Dr)という黄金期の布陣が揃ってからは2作目となる本作は、プログレッシヴな大作志向に拍車がかかった最初の1枚。当時アナログでA面に5曲、B面に3曲でトータル51分強というトータルランニングで、確かそれまでの作品は46分テープを使っていたのに今作から54分テープを使うようになった記憶が強く残っています(今やどうでもいい話ですが。苦笑)。

本作というと、やはりオープニングを飾る名曲中の名曲「Aces High」と、それに続くキラーチューン「2 Minutes To Midnight」という2大シングルの存在感の強さにより、アルバムとしても名盤という印象が強く持たれているような気がします。というか、この2曲の完成度が突出しすぎていて、そこにアルバム全体の評価がボカされてしまっている印象も無きにしも非ず、と言いますか。僕自身、実はこの“マジック”に長い間翻弄され続け、本作に正当な評価を下せずにいたんです。

確かに良いアルバムなんですよ。サウンドの質感も前作『PEACE OF MIND』(1983年)までと異なり、一気に向上したイメージがありますし、80年代後半に彼らが歩むことになる大作志向の第一歩としてはかなり上出来な内容だとも思うんです。けど、すべての楽曲が本当に「Aces High」や「2 Minutes To Midnight」と並ぶ完成度の高さを誇る1枚なのか……そこに関しては、聴くタイミングによってYESでもあり、NOでもあったのは確か。

名曲2曲に続くのがインスト曲「Losfer Words (Big 'Orra)」という構成も当時は謎でしたし、それに続くアップチューン「Flash Of The Blade」も彼らにしては非常にシンプルで薄味に感じられた。続く「The Duellists」も然り。アナログA面に関しては冒頭2曲の出来が突出していたがために、その後の3曲のインパクトがどうしても薄味に思えて仕方なかったんです。これに関しては、正直異論はないんじゃないでしょうか。

ですが、6曲目以降……アナログB面の評価によって、本作の楽しみ方は大いに変わってくるんですよね。僕は前半のインパクトのせいで、正気後半をそこまで真剣に聴き込んでこなかったのも事実でして。だって、3曲で26分という構成は気軽に聴けるものではないですものね(苦笑)。

とはいえ、改めてちゃんと聴くと「Back In The Village」はキャッチーさがしっかり備わったアップチューンで、「Aces High」ほどではないものの、以降のメイデンらしさはしっかりここで確立されていたことに気づかされる。そして7分強におよぶタイトルトラック「Powerslave」と、約14分にわたる大作「Rime Of The Ancient Mariner」。この2曲はガキの頃こそ長尺すぎて(その濃ゆさに)追いつけなかった自分がいたわけですが、余裕を持って音楽を楽しめる年代になればなるほど、その奥深さや作り込みのこだわりに圧倒されることになるわけです。

で、幼い頃は全体としての評価は低かったこのアルバム。気づけば自分内でどんどん評価は高まっていき、今や上位クラスに入るお気に入りの1枚となっているわけです。確かに、その後の『SOMEWHERE IN TIME』(1986年)『SEVENTH SON OF A SEVENTH SON』(1988年)に比べたら一歩劣る出来かもしれませんが(いや、『SOMEWHERE IN TIME』とはどっこいどっこいかな)、それでもこの3作の並びは彼らの80年代中盤から後半を語る上でかなり重要なのではないかと。

頭2曲と後半3曲の完成度はかなりのものがある、今に至る“ディッキンソン's メイデン”の真の意味での幕開けを飾る1枚。2020年5月に控える4年ぶりの来日公演を前に、ぜひじっくり楽しんでほしいところです。

 


▼IRON MAIDEN『POWERSLAVE』
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2019年7月 7日 (日)

IRON MAIDEN『THE NUMBER OF THE BEAST』(1982)

1982年3月にリリースされたIRON MAIDENの3rdアルバム。初期2作で歌っていたポール・ディアノから、元SAMSONのブルース・ディッキンソンが本作から参加しています。

「Run To The Hills」(全英7位)、「The Number Of The Beast」(同18位)といったヒットシングルも生まれ、アルバムは初の全英1位を獲得。アメリカでも最高33位と初のTOP40入りを果たし、100万枚以上を売り上げる大きなヒット作となりました。

粗暴で男臭いディアノのボーカルから一点、ディッキンソンはがなるようなハイトーンが特徴で、彼の個性を活かした曲作りが早くも多数見受けられます。オープニングを飾る「Invaders」のパンキッシュなスピード感は1stアルバム『IRON MAIDEN』(1980年)でも見受けられたものですが、そこに歌い上げるようなハイトーンが加わることで新たな魅力が加わっています。うん、プログレッシヴなパンクアルバムから普通のHR/HMアルバムへとシフトしたような(「普通の」と言いますが、そこはかなりのハイクオリティなんですけどね)。

かと思えば、センチメンタルなアルペジオから始まるヘヴィチューン「Children Of The Damned」、同名ドラマのセリフがそのまま用いられた「The Prisoner」などディッキンソン時代ならではの“らしい”曲が続きます。「The Prisoner」のポップさもなかなかのものがありますよね。

そして、「22 Acacia Avenue」のようなドラマチックなメロディを持つナンバーやポップさが際立つ「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」と、アルバム中盤で大きな山場を迎える。特にシングルヒットした「The Number Of The Beast」「Run To The Hills」、そしてのちに触れる「Hallowed Be Thy Name」は今でもライブで演奏されており、ディッキンソン・メイデンのパブリックイメージを語る上で欠かせないナンバーと言えるでしょう。

ドタバタしたドラミングが印象的な「Gangland」を経て、「Total Eclipse」へ……あれ、最新リマスター盤(2018年)だとこの曲カットされてる! そうなんです。1998年のリマスター盤ではラスト前にシングル「Run To The Hills」のカップリング曲「Total Eclipse」が追加収録されていたんですが、現行の最新リマスターではオリジナルアナログ盤の仕様に沿った内容に戻されています。まあ、別にないっちゃあなくても平気なんですが、「Total Eclipse」がある曲順に慣れていたのでちょっとした違和感が。

で、ラストに名曲中の名曲「Hallowed Be Thy Name」。最高の締めくくりですね。こういった楽曲がレパートリーに加えられるようになったのも、ブルース・ディッキンソンという稀代のシンガーが加わったからこそ。単なる“第二のデビュー作”という以上に、1stアルバムとは別の意味でメイデンの歴史に、そしてHR/HMの歴史において欠かせない1枚です。

 


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