IRON MAIDEN『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』(2020)
2020年11月20日にリリースされたIRON MAIDENの最新ライブアルバム。
本作は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止になった、今年5月の来日公演を含むワールドツアー『LEGACY OF THE BEAST WORLD TOUR』から、2019年9月にメキシコ・シティで行われたライブの模様を完全収録したもの。ライブアルバムとしては現時点での最新オリジナルアルバム『THE BOOK OF SOULS』(2015年)を携えたワールドツアーの模様を収めた『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』(2017年)以来3年ぶりとなります。この10年で考えると、すでに4作目……オリジナル作のリリース間隔がどんどん長くなっている一方で、その隙間を埋めるようにライブアルバムが(過去のアーカイブ含め)どんどん発表されるのは、ファンとしてうれしいような「いや、そんなに出されても」と困るような……。
とはいえ、『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』が日本を含むワールドツアーのハイライト的内容(世界各国のライブからベストテイクを集めたもの)だったのに対し、今作は1公演をまるまる収録。しかも、血気盛んなメキシコ公演の模様ですから、どれだけ贔屓目に見ても悪いわけがない。実際、約100分におよぶ全17曲のパフォーマンスは最高の一言なわけですから、困ったものです(苦笑)。
「Aces High」からスタートするセットリストがそもそも悪いわけないし、そこから「Where Eagles Dare」「2 Minutes To Midnight」という流れも最高。また、このツアーでは「The Clansman」や「Sign Of The Cross」といったブルース・ディッキンソン(Vo)不在時期の楽曲(過去のツアーでも披露していましたが)や、「The Wickerman」「For The Greater Good of God」という2000年代の楽曲も含まれており、まさにオールタイムベスト的なセットリストで、定番曲以外は『THE BOOK OF SOULS: LIVE CHAPTER』とそこまで被らないようになっているのも特徴ではないでしょうか。まあそこまで意外な曲はほぼないですけど、このセトリを生で味わったら確かにうれしくてたまらないですよね。
僕、ブルースの歌う「The Clansman」が原曲以上に大好きなんですよ。同曲が収録されたオリジナルアルバム『VIRTUAL XI』(1998年)って、生活環境が変わったタイミングだったのでそこまで真面目に聴き込めていなかったので、同作に対する印象も薄かったのですが、ライブバージョンで(かつブルースのボーカルパフォーマンスによって)急激に惹きつけられたのです。これは「Sign Of The Cross」も同様で、ブレイズ・ベイリー(Vo)には申し訳ないですが……。
ただ、2000年代に発表された『ROCK IN RIO』(2002年)や『DEATH ON THE ROAD』(2005年)あたりのボーカルパフォーマンスと比べると、さすがにブルースも歳をとったと感じずにはいられません。観客に歌わせるパートも増えている印象を受けるし、声の張りも……それでも、60歳を超えてここまで歌えるヘヴィメタル・シンガー、そうそういませんけどね。
逆に、演奏面に関してはより脂が乗っているように感じるのは気のせいでしょうか。初期の楽曲におけるアグレッシヴさこそ薄まっているものの、特に上に挙げたここ10〜20年くらいのプログレッシヴな楽曲では円熟味が伝わってくるんですよね。要するに、ヘヴィメタルバンドとしてまだまだ現役すぎるってことです。すげえバンドだな、相変わらず。
一応、『LEGACY OF THE BEAST WORLD TOUR』は2021年夏まで延期される形となりましたが、この最高の選曲/パフォーマンスのライブを日本でも楽しめる未来があるのか……こればかりは本当に神のみぞ知るといったところですが、今はこのライブアルバムをできる限り爆音で聴いて、デビュー40周年を迎えたIRON MAIDENに賞賛の拍手を送り続けたいと思います。
▼IRON MAIDEN『NIGHTS OF THE DEAD, LEGACY OF THE BEAST: LIVE IN MEXICO CITY』
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