2017/08/05

MICK JAGGER『PRIMITIVE COOL』(1987)

1987年9月にリリースされた、ミック・ジャガー2枚目のソロアルバム。前年春にROLLING STONESとしての新作『DIRTY WORK』を発表したものの、ミックはツアーに取り掛かることなる今作の制作に取りかかります。ソロ1作目『SHE'S THE BOSS』(1985年)がミリオンヒットになったこともあり、味をしめたんでしょうかね。

ミック、ビル・ラズウェル、ナイル・ロジャースという異色ながらも個性的にならざるを得ない布陣がプロデュースに携わった前作から、今回はミック、キース・ダイヤモンド(ドナ・サマーやマイケル・ボルトン、シーナ・イーストン、ビリー・オーシャンなどを手がけたR&B寄りのプロデューサー兼ソングライター)、そしてEURYTHMICSのデイヴ・スチュワーというこれまた個性的な組み合わせで制作。レコーディングには前作にも全面的に参加したジェフ・ベックに加え、オマー・ハキム(Dr)、サイモン・フィリップス(Dr)、ダグ・ウィンビッシュ(B)、ヴァーノン・リード(G)、ビル・エヴァンス(Sax)、デヴィッド・サンボーン(Sax)など豪華な面々がレコーディングに参加しております。

作風的にはストーンズのポップサイドをより煮詰めたような『SHE'S THE BOSS』から、今回はよりロック色が強まり、しかもメインストリームでスタジアムロック的なテイストが強まっています。リードシングルとして中ヒットした(MVが酷い。笑)「Let's Work」(全米39位、全英31位)こそ打ち込み主体のダンスポップでしたが、アルバムオープニングの「Throwaway」を筆頭にブラックミュージックのテイストを散りばめたハードロックナンバーがずらりと並びます。思えば1987年はBON JOVI『SLIPPERY WHEN WET』(1986年)のメガヒットを機に、WHITESNAKE『WHITESNAKE』DEF LEPPARD『HYSTERIA』GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』などがチャート上位を占めた時期。少なからずミックもこういった流行を意識したのでしょうけど、そこは“腐っても”ミック・ジャガー。結局はこういった“ストーンズの匂いを感じさせるスタジアムロック”が限度だったねしょうね。

結果、本作は全米41位、全英26位という微妙な結果で終了します。翌年にはキースの初ソロアルバム『TALK IS CHEAP』も世に放たれ、いよいよストーンズも終わりか……と思わせておいてからの、1989年の本格的復活へと続いていくという。その復活作『STEEL WHEELS』とこのミックのソロアルバム『PRIMITIVE COOL』、実は非常に共通点が多いと思うのは気のせいでしょうか? 最近この2作をよく聴くのですが、改めて『PRIMITIVE COOL』で得た知識や経験が『STEEL WHEELS』に反映されていると実感しています。

大きなヒットにはつながらなかったけど、“いかにも80年代後半”な産業ロック的サウンドは意外と悪くない。もちろん好き嫌いがはっきり分かれる作品だと思いますが、もし『STEEL WHEELS』が苦手じゃなかったら手にしてみてもいい1枚かもしれませんよ。

なお、本作発表後にミックはソロツアーをここ日本で行うため、初来日。1988年3月、東京ドーム2公演を含む東名阪5公演で17万人を動員しました。ちなみにアルバム2作に参加したジェフ・ベックはツアーには不参加。代わりにジョー・サトリアーニがリードギターを担当するという、驚きの展開になったことも記憶に残っています。



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投稿: 2017 08 05 12:00 午前 [1987年の作品, Jeff Beck, Mick Jagger] | 固定リンク

2017/07/25

MICK JAGGER『SHE'S THE BOSS』(1985)

ROLLING STONESのフロントマン、ミック・ジャガーが1985年2月に発表した初のソロアルバム。これまで映画のサウンドトラックにソロ名義の楽曲を提供したことはあったものの、アルバムまるごとソロで制作するのはこれが初めてのこと。1983年11月に発表したストーンズのアルバム『UNDERCOVER』で時代の最先端のサウンドを取り入れようとしたミックと、それまでのスタイルにこだわりを持っていたキース・リチャーズとの仲が険悪になり、さらに追い討ちをかけるようにミックの本格的ソロ活動開始と、2人の仲はさらに悪化していくことになります。

そんな不安定な状況下で制作されたこのアルバム。オープニング曲「Lonely At The Top」がいきなりジャガー/リチャーズ名義……つまり、ストーンズのアウトテイク曲をソロ用にリテイクしたトラックからスタートすることで、当時多くのファンを驚かせました。サウンド的には現代的な電子ドラムやシンセを多用したモダンなもので、そりゃここまでやったらキースはさらにブチギレるだろうな……なんて、今聴いても思ってしまいます。

しかも、本作のほぼ全編でギターを弾きまくっているのがジェフ・ベック。さらにTHE WHOのピート・タウンゼント、CHICのナイル・ロジャース、エディ・マルティネスなど“いかにも”な面々を招集しています。ベーシストに目を向けても、CHICのバーナード・エドワーズやビル・ラズウェル、SLY AND ROBBIEのロビー・シェイクスピア、WHITESNAKEなどで活躍したコリン・ホッジキンソン、ドラムにはSLY AND ROBBIEのスライ・ダンバー、CHICのトニー・トンプソン、アントン・フィグ、スティーヴ・フェローンなど……クレジットを全部書いていくだけで、このコラムが埋まってしまうほど多数(苦笑)。

楽曲自体は先の「Lonely At The Top」以外はほぼミック単独で書いたもので、2曲(「Lucky In Love」「She's The Boss」)のみカルロス・アロマーとの共作。ミックらしい非常にポップで親しみやすいメロディを持つ佳曲が満載で、ストーンズでの彼らしさもありつつも、「そうそう、ミックってこういうの好きそうだもんね」と納得させられるような新機軸もあり。そんな中、「Hard Woman」みたいにソウルフルなバラードを入れてしまうあたりに、ストーンズとは離れられない彼の“弱さ”も感じてしまうんですよね。

シングルヒットした「Just Another Night」(全米12位)の印象が強いアルバムかもしれませんし、今聴くとそのサウンドの“80年代っぽさ”に時代を感じてしまうかもしれませんが、楽曲自体は良いものが多く、ゲストミュージシャンたちのプレイにも聴きどころが多いので、ぜひ手に取ってみてはいかがでしょう。ストーンズは苦手だけどこれはアリ、ってこともあるかもしれませんしね。



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投稿: 2017 07 25 12:00 午前 [1985年の作品, Jeff Beck, Mick Jagger, Rolling Stones] | 固定リンク

2016/07/15

JEFF BECK『LOUD HAILER』(2016)

御歳72歳の名ギタリスト、まだまだ攻めまくり。オリジナル作としては6年ぶりという事実にも驚きだが、女性シンガー&ギタリストと組んでラウドで重々しいアルバムを制作するというその姿勢も、人生の大先輩として見習いたいものだ。

力強くもどこか気怠いボーカルとキレッキレのギターとの相性は抜群で、適度な枯れ&泣きも混在。レジェンドが次々にこの世を去る今だからこそ、この力作を全力で受け止めたい。


※このレビューは同作リリース時に『TV BROS.』に掲載されものを一部修正して掲載しております。



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投稿: 2016 07 15 12:00 午前 [2016年の作品, Jeff Beck] | 固定リンク

2004/01/09

JEFF BECK『JEFF』(2003)

改めて実感するのは、やはりジェフ・ベックというオッチャン(というか爺サマ)の貪欲さ‥‥勿論そのプレイの凄さや醍醐味については書くまでもないと思うんだけど‥‥多分何の説明もなしにこのアルバムを聴かせたら、大体の人は「どこぞの若手インダストリアルユニット?」とか「新手のデジロック」「ダンス界の新星」なんて言っちゃうのかも。そういった要素を持ち、見事に消化しきっているのが、この「JEFF」というアルバム。

ある意味、ここ数作の集大成ともいえる作風だし、尚かつ更に前を見据えている作品と取ることも出来る。とにかくひとつ言えるのは、過去2作‥‥「WHO ELSE!」や「YOU HAD IT COMING」よりもこなれてきたという点。勿論その2作でも、ただの借り物では済ませられない程の完成度を見せていた「ジェフ・ベック流テクノ」ですが、ここで一旦完成型を見せ、それでいて更に最新型の武器を披露するという、とにかく凄いアルバムなのですよこれ。

ブルーズあり、サーフミュージックあり、ファンキーあり、ヒップホップあり、フュージョンあり、ハウスやテクノ系あり、インダストリアルあり、といった具合にとにかく雑多。けど、その根底にあるのは「踊る」という行為そのもの。つまりはダンスミュージックなわけですよ。如何に聴き手を踊らせるか、それが彼の根底にある重要なファクターのひとつだと思うんですね。JEFF BECK GROUPでもいいし、その後のソロ活動でもいいし、とにかくいろんな要素のダンスミュージックを、その時その時で違った方向性・違った手段で料理してきたベック。しかも「流行に乗って借り物的に手を出してみました」的な胡散臭さがあまり感じられず(中には失敗作もあるんだけど)、やるからには常に追求する男、ジェフ・ベック。とくに「テクノ三部作」と呼ばれている「WHO ELSE!」以降の流れは圧巻で、完全に時代とリンクしているんですよね。UNDERWORLDやTHE CHEMICAL BROTHERS、PRODIGYといったダンスユニットがオーバーグラウンドへ浮上したのと同時に、ベックもああいった作風のアルバムを制作する。しかも若手との作業を経て、どんどん若返っていく。

今回の作品でも前作で起用したアンディ・ライトを筆頭にCURVEのディーン・ガルシア、APPOLO440、デヴィッド・トーン、ミー・ワンといった有名・無名アーティスト達と共同作業で制作にあたってるし。バックトラックを作るのがそうった若手達なんだけど、最終的にはその上にベックの自由奔放なギターが乗ることで完全に「ジェフ・ベックの作品」へと昇華していく。さすがというか何というか。やっぱり凄いオッサンですよこの人。

一時期エリック・クラプトンがテクノロジーに興味を持って、そういった方向に片足を突っ込んでいた時期があったけど、結局あの人はブルーズの人なんですよね。最終的にはそこに戻っていく。けどそれは決して保守的というわけではない。方やジミー・ペイジはひとつのスタイルの中でいろんな可能性を見出そうとしてきたけど、ここ20年くらいは完全に停止してしまってる。はっきり言っちゃえば保守的‥‥なんだろうね。けど、それだからこそ彼は支持されるのかもしれない。そしてジェフ・ベック‥‥この人の事を好きだという人は、一体どういった音楽を愛する人達なんでしょうね? オールドロックのファン? ギターキッズ? それともダンスミュージック好き?? 何かよく掴めないんだけど‥‥間違いなく言えるのは、60歳を間近に迎えても尚、このオヤジは守りに入らないという事実。一体何時までこの進化を続けるのか、とくと見届けていこうではないですか。



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投稿: 2004 01 09 03:00 午前 [2003年の作品, Jeff Beck] | 固定リンク

2003/08/11

JEFF BECK『WHO ELSE!』(1999)

'60~'70年代に所謂「三大ギタリスト」と呼ばれた、現在ではもやは大御所といえるエリック・クラプトン、ジミー・ペイジ、そして今回の主役ジェフ・ベック。彼等は'60年代にYARDBIRDSというバンドに在籍していたことから(また、その後の独特な活躍から)そのように呼ばれることになったわけですが‥‥クラプトンはここ日本では今や何も説明は要らない程有名ですし、ジミー・ペイジは最近またまたLED ZEPPELINの蔵出し音源&映像集リリースで話題になったばかり。そのプレイの非凡さとかアイディアとか、確かに有無を言わさぬ説得力がありますよね(ま、現在の技量云々はこの際無視します。じゃないと可哀想過ぎる人が若干名いるんで‥‥)。

ところが‥‥このジェフ・ベックって、今10代のギターキッズ(なんて言葉、今時浜田省吾やB'zくらいしか使わないような死語になったなぁ‥‥)にとってどういう存在なんでしょうかね? というのも数年前、とある高校生のロック好き少年に「三大ギタリストって知ってる?」と尋ねたところ、「クラプトン、ジミー・ペイジ、リッチー・ブラックモア」という、ちょっと悲しくなるような答えをされたもので‥‥いや、リッチーでもいいんですけどね、個人的には(いやよくないか)。

かくいう自分も、中学~高校生の頃にはジェフ・ベックの良さってイマイチ判ってなかったんですよね。丁度自分が高校3年の頃、「GUITAR SHOP」というアルバムを出し、それを聴いてちょっと「あ、いいかも」と思えて、丁度来日公演があったんで観に行ったんですよ‥‥その時のメンツというのがベックの他に、かのテリー・ボジオ(フランク・ザッパ・ファミリーで、後にスティーヴ・ヴァイやかのhideと共に活動したりレコーディングしたり等する程の名ドラマー)と旧友トニー・ハイマス(Key)というトリオ編成だったんですが‥‥本当に凄くて、文字通りカルチャーショックを受けたんですよね。後にクラプトンやペイジ、リッチーのプレイも実際に観ることになるんですが、ベックの時以上の衝撃は受けなかったですからね。

そんなベック、その'89年以降オリジナルアルバムってずっと出してなかったんですよ。ジョン・ボン・ジョヴィの初ソロに参加したりとか、企画モノのカバーアルバムを作ったりとかはあったんですが、自身がメインとなってオリジナル曲をプレイするアルバムというのは、結局その10年後‥‥'99年までお預けになるわけです。

というわけで、今回紹介するのがその'99年リリースのオリジナルアルバム、「WHO ELSE!」。恐らくこのアルバムも、当時通っていたロック系クラブイベント「CLUB K」でアルバム1曲目"What Mama Said"に出会ってなければスルーしてたと思うんですよ。

だってね‥‥俺、クラブ系のダンスミュージックは別にインストでも全然平気なんだけど、フュージョン等のインストものってメッチャ苦手なんですよ。一時期、バイト先でそういった音楽ばかり聴かされてた時期があったんですが、絶対にダメでしたもんね。元来歌モノが好きってのもあるんだけど、あと「踊れるか否か」ってのも結構重要になってくるんですよ。だからテクノOK、P-FUNKみたいな延々インストパートがインプロで続くソウルやファンクもOK、みたいな。

そういった観点からすると、ジェフ・ベックのアルバムってのもギター・インストだしダメなんじゃ‥‥って思われるでしょうけど、これがね、違うんですよ。基本的にベックのアルバムって「踊れる」のよ。いや、例外も勿論ありますよ。けどね‥‥第2期JEFF BECK GROUPとか、滅茶苦茶ファンキーだし、クラブとかで "Got The Feeling" がかかっても、気持ちよく踊れるわけですよ。何ならマッドチェスター辺りの曲と並べても、多分全然違和感ないと思うのね。

そんな「踊る/踊らせる」という感覚が無意識の内に備わっていると思われる彼のプレイ(敢えて『楽曲』ではなく、彼の『ギタープレイ』)が、現代的な表現方法と旧来の表現方法とが見事に融合して1枚の作品として完成されているのが、このアルバム。例えばアルバム1~2曲目("What Mama Said"と"Psycho Sam")や7曲目"THX138"なんて、モロに昨今のテクノ系ダンスミュージックを意識した作風になってるし、しかも単なる「オヤジが若ぶってる」ような代物ではなくてちゃんと「ジェフ・ベックらしさ」を堪能できる楽曲として完成されてるんですよね。かと思うとライヴテイクをそのまま収録してしまったスローブルーズ"Brush With The Blues"なんてのもあれば、変拍子が入ってるんだけど気持ちよく踊れそうな"Blast From The East"や"Hip-Notica"、ちょっとレゲエっぽいリズムを持ったムーディーな"Angel (Footsteps)"、ヘヴィでグルーヴィーなリフがカッコいいロックチューン"Even Odds"、男臭い優しさを存分に味わえるラストのスローナンバー2連発("Declan"と"Another Place")等々‥‥非常に緩急に富んだアルバムになってるんですよ。

ダンス系でもこういった作風のアルバムってあると思うんですよ。俺ね、このアルバムってそういったアルバム達にも引けを取らない、滅茶苦茶優れた1枚だと思うんですね。だってさ、曲の大半を作ってるのとかアレンジのアイディアなんかの殆どは共同プロデューサーや参加した若手ミュージシャンによるものだと思うんですが、それに無理なく対応出来て、しかもそういった楽曲にしっかり自分の『色』を加え、違和感なく聴かせてしまう‥‥リリース当時54才のオッサン(というよりも、下手すりゃおじいちゃんの領域ですよ!?)の作品ですよ、これ!

しかもね、これに続くアルバム(翌'00年リリースの「YOU HAD IT COMING」と、先日リリースされたばかりの新作「JEFF」)でも、更に現代的な音楽にチャレンジしてるんですから‥‥ブルージーな曲を弾かせれば勿論それなりに枯れた「ベックらしい」プレイを聴けるわけですが、敢えてそっちに行かずに時代と対峙していこうという心構え‥‥是非「過去の遺産を食い潰すことしか脳のない」薄らハゲのオッサンにも見習って欲しいものですね♪

最後に‥‥このアルバムとの出会いを与えてくれた、梯一郎氏に最上級の感謝を。



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投稿: 2003 08 11 02:55 午前 [1999年の作品, Jeff Beck] | 固定リンク