JEFF BECK GROUP『ROUGH AND READY』(1971)
ジェフ・ベックが1971年10月、JEFF BECK GROUP(以下、JBG)名義で発表したアルバム。60年代にロッド・スチュワート(Vo)、ロニー・ウッド(B)、ニッキー・ホプキンス(Key)らと同名義で『TRUTH』(1968年)、『BECK-OLA』(1969年)の2作を発表したベック先生ですが、今作ではメンバーを一新。ボブ・テンチ(Vo)、クライヴ・チャーマン(B)、マックス・ミドルトン(Key)、そしてコージー・パウエル(Dr)という布陣で制作した、第2期JBGのデビューアルバムとなります。
第1期JBGはロッド・スチュワートの派手なボーカルを軸に、のちのLED ZEPPELINにも通ずるブルースロック/ハードロックの手法が取られましたが、本作ではハードロック的な色合いは残しつつも、それ以上にソウルやフュージョンをイメージさせる濃厚なロックが展開されています。
オープニングを飾る「I Got The Feeling」のグルーヴ感からして、まずそれまでとは違うなと感じさせますよね。ベック御大のファンキーなカッティング、1音1音が重いながらもグルーヴィーなコージーのドラミング、そしてソウルフルなボブ・テンチの歌声。コード使いを含むアレンジもハードロックのそれとは一線を画するもので、スリリングさと気持ち良さが同時に体感できる。
そういえば、90年代後半にKULA SHAKERやREEFのようなバンドが登場したとき、僕はこの曲を思い浮かべたんですよね。すごく通ずるものがあると思うのですが、いかがでしょうか。
もちろん、それ以降もヘヴィさとファンキーさ、そこにちょっとのおしゃれさを混ぜ合わせた独特のロックサウンドが展開されていくわけです。とにかくコージーのドラムが重い! ベック先生のギターはベック先生以外の何者でもないのですが、それでも本作ではボブ・テンチという個性的なシンガーの存在感も強く、良い意味で両者の存在感を示し合うバトルが繰り広げられているのかなと。その緊張感が、先に触れたスリリングさにもつながっていると思うんです。
久しぶりに聴いてみて、まずリリースから46年も経っている事実にまず驚かされるのですが(自分が生まれた年にこんなすごいアルバムが発表されていたとは)、それ以上に今聴いてもまったく古びていないという事実がすごいことなんじゃないかと。ベックのオリジナル曲はもちろんですが、マックス・ミドルトンによる大作「Max's Tune」の存在感もなかなかのもの。全編通して捨て曲なし、一瞬たりとも聴き逃せないこの傑作にまだ触れたことがないという人は、なんて幸せなんでしょう。だって、これからこのアルバムを通して至福の時間を味わえるのですから。
▼JEFF BECK GROUP『ROUGH AND READY』
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