カテゴリー「John Sykes」の7件の記事

2019年5月24日 (金)

THIN LIZZY『THUNDER AND LIGHTNING』(1983)

1983年3月にリリースされた、THIN LIZZYの通算12枚目にして最後のスタジオアルバム。

解散が決定してから制作されたアルバムって、その多くが“やっつけ”だったり過去のパブリックイメージに沿った想定範囲内の内容だったりすることが多いんだけど、これは異常にテンションが高く、かつ過去のイメージに捉われず新境地に到達してしまったという異色の1枚です。

フィル・ライノット(Vo, B)、スコット・ゴーハム(G)、ブライアン・ダウニー(Dr)という黄金期のメンバーに、前作『RENEGADE』(1981年)から加入したダーレン・ワートン(Key)に、本作が初参加のジョン・サイクス(G)という5人で制作。ジョン・サイクスがソングライティング面で大健闘したのかというと、ジョンの名前は「Cold Sweat」で確認できるのみ。ジョンが加入したのは本作のレコーディング直前で、すでに大半の楽曲は完成していたそうですから、またジョンのような若いミュージシャンが加わったことで演奏に熱が入ったってことなのかもしれませんね。

前のめりなスピードチューン「Thunder And Lightning」のスリリングな構成、ダークで穏やかな「The Sun Goes Down」、メロディアスハードロック「The Holy War」「Cold Sweat」など正統派HR/HMファンにもアピールする楽曲を含みつつも、「Baby Please Don't Go」や「Bad Habits」「Heart Attack」のように従来のTHIN LIZZYファンにも馴染みやすい楽曲もしっかり用意されている。完全に変わったのではなく、バンドとしての軸は残しつつも時代に歩み寄ってヘヴィなスタイルを取り入れた。それがこの進化の理由なのかもしれません。

フィルの味わい深い中音域で歌われる楽曲群は、当時主流だったハイトーンやがなるようなボーカルとは相反するもので、それがどこかパンク的でもあり。そこがTHIN LIZZYを唯一無二のバンドとして知らしめた要因といえるでしょう。事実、「Thunder And Lightning」はバックトラックだけ聴けばスピードメタル的な作風ですが、フィルのボーカルが乗ると急にパンクロックっぽくなるから不思議です。

古くからのファンには賛否あるようですが、僕は初めて聴いたTHIN LIZZYのスタジオアルバムがこれだったので、やっぱり思い入れが強いんですよね(生粋のジョン・サイクス・ファンなもので)。でも、ジョンが弾いているから云々を抜きにしても、本作は非常に素晴らしいハードロックアルバムだと断言できます。

最後に、本作で好きなギタープレイのほとんどが、ジョンのものではなくてスコットのプレイだという事実も書き残しておきたいと思います。

 


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2019年5月23日 (木)

BLUE MURDER『NOTHIN' BUT TROUBLE』(1993)

日本先行で1993年9月にリリースされたBLUE MURDERの2ndアルバム。海外では翌1994年2月に発売されたようです。前作『BLUE MURDER』(1989年)から4年ぶりに発表された本作は、その間のすったもんだ(カーマイン・アピス&トニー・フランクリンのリズム隊脱退など)を経て、難産の末に完成した1枚です。

プロデューサーは前作でのボブ・ロックからジョン・サイクス(Vo, G)のセルフプロデュースへと変更。とはいえ、ミックスはマイク・フレイザーというボブ・ロックがらみの人選なので、サウンドの質感的には前作の延長線上にあると言えるでしょう。

肝心の楽曲ですが、前作がWHITESNAKE“サーペンス・アルバス”に対する執念(と言う名の怨念。笑)が前面に出まくった作風だったのに対し、本作はそこだけに固執せず、ジョン・サイクスというアーティストの全キャリアを総括するような楽曲が揃っています。その“全キャリア”というのはプロのギタリストとしてだけではなく、彼が子供の頃に愛したブリティッシュ・ロックまでを包括するもので、ハードロックというジャンルだけでは括りきれないバラエティ豊かなものと言えます。

例えばオープニングを飾る「We All Fall Down」は完全にジョンが参加した末期THIN LIZZYですし、ボーカルの節回しもフィル・ライノットを彷彿とさせるもの。スリリングなアップチューンで冒頭を飾ると、続くSMALL FACESのカバー「Itchycoo Park」では急に牧歌的な雰囲気に。アコースティックギターがメインのこの曲で早くも和んだ空気を作り上げると、3、4曲目はWHITESNAKE時代に得たソングライティング力をフルで発揮させた「Cry For Love」「Runaway」というエモーショナルな楽曲が続く。しかも、これらで1stアルバムでの力みが完全に抜けきった、伸びやかなボーカル&ギターを聴かせてくれるのですから。

以降、「Dance」のようにポップで豪快なハードロックあり、ジョンの代わりにケリー・キーリングが歌うアップチューン「I'm On Fire」、メジャーキーのエモいバラード「Save My Love」、グルーヴィーな「Love Child」、流麗なメロディが印象的な「Shouldn't Have Let You Go」、ダイナミックな大作「I Need An Angel」、トラッドミュージック風の「She Knows」と、さまざまなタイプの楽曲が並び、改めてジョン・サイクスというソングライターの非凡さが体感できる構成となっています。

そういった意味ではアルバムとしてのまとまりは1stアルバムよりも薄いかもしれません。が、シンガーとしても力量が向上し、またギタリストとしてもより深みを増した本作の楽曲群の出来は、明らかに前作よりも上。何を重視するかで本作の対する評価は異なるかもしれませんが、このアルバムがBLUE MURDER名義では事実上最後のスタジオアルバムになったという現実を目の当たりにすると、ジョンの才能はBLUE MURDERという狭い枠の中には収まりきらなかった……ということなのかもしれません。

つまり、ここでようやくWHITESNAKEに対する“復讐”は終わったんじゃないかなと。以降もデヴィッド・カヴァーデイルに対する不平不満を口にし続けるジョンですが、実はこのアルバムでけじめはつけていた。そんな気がしてなりません。

 


▼BLUE MURDER『NOTHIN' BUT TROUBLE』
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2019年3月27日 (水)

WHITESNAKE『SLIDE IT IN: THE ULTIMATE SPECIAL EDITION』(2019)

WHITESNAKEが1984年に発表した6thアルバム『SLIDE IT IN』が今年で35周年を迎えたということで、新たにリマスタリングを施されたエディションが2019年3月に発売。ジョン・サイクス(G)が参加したUSミックスを使った1枚ものと、USミックス+UKオリジナルミックスの2枚組、そして新たなリミックス音源や秘蔵レア音源6枚組+MVや最新インタビューを収めたDVD付き“アルティメット・スペシャル・エディション”の3仕様が用意さています。

『SLIDE IT IN』と続く『WHITESNAKE』(1987年)はちょうど本格的なアメリカ進出と重なったこともあり、本国イギリスとアメリカとで収録内容や曲順が異なったりと、何かと曰く付きの作品だったりします。そのへんは各アルバムのレビューで過去に触れてきましたが、特に『SLIDE IT IN』はここでさらに厄介なことになっています(詳しくはこちらをご覧ください)。

2009年に25周年を記念したCD+DVD仕様が海外でリリースされましたが、そこではUSミックスを使った、元のUK版ともUS版とも異なる曲順を用意(便宜上、こちらを以前のレビューに沿って④と呼びます)。あれから10年を経て新たに完成したリマスタリング版USミックス&UKミックスは、その④をベースにしたもの(UKミックスのみ、ボーナストラックとしてシングルのみに収録された「Need Your So Bad」と、エディ・クレイマーがミックスした「Gambler」「Guilty Of Love」の7インチ・バージョンを追加)。

 

⑤35TH ANNIVERSARY EDITION

01. Gambler
02. Slide It In
03. Slow An' Easy
04. Love Ain't No Stranger
05. Give Me More Time
06. Standing In The Shadow
07. Hungry For Love
08. All Or Nothing
09. Spit It Out
10. Guilty Of Love
11. Need Your So Bad [UK MIXのみ]
12. Gambler (7" Eddi Kramer Mix 1983) [UK MIXのみ]
13. Guilty Of Love (7" Eddi Kramer Mix 1983) [UK MIXのみ]

これが今の「正規トラックリスト」ということにでもしたいのでしょうか。まあ④で耳慣れた曲順とはいえ、80年代に散々①で聴きまくった耳にはやっぱりどこか違和感が残ります。それでもUSミックス②よりはマシですけどね。

で、本作のボックスセットには新たにリミックスを施された「35周年リミックス」というものが用意されており、こちらがDISC 3に収録されているのですが……これがね、またまたすごい代物なんですよ(苦笑)。

 

⑥35TH ANNIVERSARY REMIX EDITION

01. Slide It In
02. Slow An' Easy
03. Love Ain't No Stranger
04. Give Me More Time
05. Guilty Of Love
06. All Or Nothing
07. Spit It Out
08. Standing In The Shadow
09. Hungry For Love
10. Gambler
11. Need Your So Bad

もうね、何が何やら……原型すら残っていませんよ、これ(笑)。冒頭3曲は②のUSミックスと同じなんですが……これ、どういう意図があるんでしょうね。「Gambler」が10曲目で本編ラスト?と思いきや、新たに「Need Your So Bad」をしれっと追加することで、なんとなく収まり良く見せている感もあり。やっぱり違和感は拭いきれませんが、それ以上に気になるのがリミックスされたサウンドなんです。

全体的に音の硬さやリバーブの掛け方が現代的になっており、オルガンをオリジナル盤よりも前に出したミックスと言えばいいんでしょうか。曲によっては(特に「Standing In The Shadow」あたり)「あれっ、こんな音入ってたっけ?」と驚くものもあり、そういった意味では『WHITESNAKE』の“30TH ANNIVERSARY EDITION”で初披露されたリミックス曲にも似た感想を覚えました。基本的にはUKミックスのテイクをもとにリミックスしたようですが、ところどころでジョン・サイクスのプレイも聴こえてくるので、そこをいいとこ取りしたかったってだけなんですかね。完全にデヴィッド・カヴァーデイルのエゴですわ(苦笑)。

なお、ボックスセットには『SLIDE IT IN』レコーディング時のモニターミックス音源や、ジョン・ロード(Key)在籍時ラストライブ音源、1984年3月1日のグラスゴー公演、アルバム収録曲の簡易デモなどの貴重な音源も満載。3仕様の中では間違いなくボックスセットを購入することをオススメします。

けど……まだこのアルバムを聴いたことがないというビギナーは、オリジナルのUK盤から聴いたほうがいいんじゃないかなと。なんなら、今回の2枚組仕様のUKミックスをオリジナルの曲順に変えて聴いてみてもいいと思います(CDに関して言えば、音質的には確実に最新リマスターのほうが今の耳に合っているものなので)。

 


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2018年11月25日 (日)

V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』(2018)

2018年10月リリースの、ゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム。アルバムジャケットにあるように、ゲイリーの諸作品やライブに参加してきたベーシスト、ボブ・デイズリーが中心となって制作された本作には、ニール・カーター(Key)やドン・エイリー(Key/DEEP PURPLE)、エリック・シンガー(Dr/KISS)、グレン・ヒューズ(Vo)に加え、元SKID ROW(「Youth Gone Wild」じゃないほう)のブラッシュ・シールズ(Vo)といったゲイリー・ムーアと馴染み深い面々、ゲイリーの実子であるガス・ムーア(Vo)とジャック・ムーア(G)のほか、豪華ゲストプレイヤーが多数参加しています。

そのメンツもジョン・サイクス(G)やダニー・ボウズ(Vo/THUNDER)、スティーヴ・ルカサー(G/TOTO)、ジョー・リン・ターナー(Vo)、リッキー・ウォリック(Vo/BLACK STAR RIDERS)、スティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE)、デーモン・ジョンソン(Vo, G/BLACK STAR RIDERS)、ダグ・アルドリッチ(G/THE DEAD DAISIES)などなど。とにかく、無駄に豪華です。

選曲的にはブルースに傾倒した『STILL GOT THE BLUES』(1990年)以降の作品にこだわることなく、初期の『BACK ON THE STREETS』(1978年)から『VICTIMS OF THE FUTURE』(1983年)、『WILD FRONTIER』(1987年)の楽曲も収録。ボブ・デイズリー自身が関わっていることもあってか、『POWER OF THE BLUES』(2004年)という晩年の作品から3曲も選ばれていることがちょっと意外でした。

基本的にはどの曲もゲイリー独特の粘っこいギターフレーズを活かしつつ、オリジナルを尊重しながら随所に自身の個性を取り入れていく手法で、またボブが中心となって制作していることもあって統一感も強く、この手のトリビュートアルバムとしてはかなり水準の高いもののように思います。HR/HM系ギタリストが多く参加しているものの、各自そこまで出しゃばることもないので、本当に気持ちよく楽しめる1枚です。

やはり本作最大の聴きどころは、久しぶりにシーン復帰を果たしたジョン・サイクス参加の「Still Got The Blues (For You)」になるかと。ゲイリーからの影響も大きく、彼と同じTHIN LIZZY(=フィル・ライノット)にもお世話になった関係もあり、そりゃあもうディープなソロを聴かせてくれています。まあこの曲自体、基本的にメインフレーズの繰り返しになるのでそこまでアドリブを効かせることは難しいのですが、特に終盤のソロはサイクスらしいもので、フェイドアウトせずにこのままずっと聴いていたい!と思わせられるはずです。

で、この曲を歌うのがTHUNDERのダニー・ボウズというのが、また最高。思ったよりも感情抑え気味ですが、それがギターのエモーショナルさに拍車をかけているように感じました。うん、これ1曲のために購入してたとしても無駄じゃないと思います。

個人的にはこのほか、リッキー・ウォリックが歌い、スティーヴ・モーズがギターを弾く「Parisienne Walkways」、グレン・ヒューズが最高のボーカルパフォーマンスを聴かせる「Nothing's The Same」、思ったよりもゲイリー・ムーア色の強いダグ・アルドリッチのプレイが印象に残る「The Loner」、デーモン・ジョンソンが歌って弾いてと大活躍の「Don't Believe A Word」あたりがお気に入り。もちろん、そのほかの曲も文句なしに良いです。

来年の2月で、亡くなってから早8年。ゲイリー・ムーアというギタリストがどんな存在だったか、改めてロック/ブルース/HR/HMシーンに与えた影響をこのアルバムから振り返ることができたら、と思います。彼の名前しか知らないという若いリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。



▼V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』
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2017年11月18日 (土)

WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』(2017)

1987年という年はHR/HMにとって象徴的な1年だったんだなと、あれから30年経った2017年に改めて感じさせられます。それは、今年に入って当時発表された名盤の30周年アニバーサリーエディションが次々とリリースされている事実からも伺えるはずです。MOTLEY CRUE『GIRLS, GIRLS, GIRLS』DEF LEPPARD『HYSTERIA』……記念盤の発売こそなかったものの、GUNS N' ROSES『APPETITE FOR DESTRUCTION』も1987年リリース。当ブログ右カラムのカテゴリから〈1987年の作品〉をクリックしてもらえば、ここで取り上げた名盤の数々を振り返ることができるので、ぜひ一度チェックしてみてください。

そんな1987年の名盤のひとつ、WHITESNAKE最大のヒット作である『WHITESNAKE』(ヨーロッパ圏では『1987』というタイトル)が先日、“30TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打って新規リマスタリング&未発表テイクを追加した2枚組仕様とCD4枚組+DVDからなるボックスセットで新規リリースされました。「あれ、このアルバムって昔も“○○TH ANNIVERSARY EDITION”発売されてなかったっけ?」とお気付きのあなた、正解。本作は2007年に“20TH ANNIVERSARY EDITION”と銘打ったCD+DVDが発表済みで、その際にも音源のほうはリマスタリングされていました。

ところが今回、WHITESNAKEが新たにワーナーグループと契約したことで、その第1弾アイテムとしてこの30周年盤がリリースになったわけです。一体何枚買わせるんですか、同じアルバムを(苦笑)。

実は当ブログでも今年2月に本作および20周年盤について執筆しており、これまでに発表された曲順が異なるいくつものバージョン違いにも触れております。作品の素晴らしさについては、そちらを改めてご確認ください。

ちなみに気になる曲順ですが……各仕様ともCDのDISC 1は『WHITESNAKE』20周年盤から、スタジオテイク部分のM-1〜M-11(「Still Of The Night」から「Don't Turn Away」まで)を収録。オリジナルのUS盤や日本盤の曲順が復活することなく、残念ながらあの違和感ありまくりの20周年盤と同じです。もうそこは諦めるしかないのかな。

ということで、今回のエントリでは2枚組CDおよびボックスセットで新たに聴ける音源について触れていきたいと思います。

 

 

【DISC 2(2枚組仕様およびボックスセット共通)】

「SNAKESKIN BOOTS [LIVE ON TOUR 1987-1988]」と題したこのディスクは、レーベルの説明によると「87年から88年にかけて行なわれたワールド・ツアーの未発表ライヴ音源を収録。デイヴィッド・カヴァデールに加え、エイドリアン・ヴァンデンバーグ、ヴィヴィアン・キャンベル、ルディ・サーゾ、トミー・アルドリッジ、ドン・エイリー(おそらく間違い)というラインナップでのパフォーマンスとなっている。全曲未発表音源」とのこと。当時のヘッドライナーツアーをほぼほぼまるっと音源化したものなんですが、すげえ聴き覚えがあるな……あれ、MCでデヴィッド・カヴァーデイルが「ウタッテ、トキオーッ!」って叫んでるよ……これ、1988年6月に実現したジャパンツアーの音源ですよね? 残念ながら僕、このツアーは生で観られなくて、後日TOKYO FMで深夜にオンエアされた代々木オリンピックプール(現在の国立代々木第一体育館)公演の音源をエアチェック(死語)して、カセットで聴きまくったんだよな。だからめっちゃ聴き覚えがあるわけですね。MCや音源と異なるアレンジやギターソロに違和感を覚えながらも、必死に追いつこうとした高2の夏……懐かしいですね。

この音源が当時オンエアされたものと同じかどうかは不明ですが、それにしては音が悪い……エアチェック音源のほうがもっとクリアで各パートの分離が良かった記憶があるんですが、それって時間が経ったことで美化されてるんですかね? なんにせよ、もっとクオリティの高いもの(音質や歌・演奏含め)は残されていなかったんでしょうか。こうやって当時の貴重な音源を今楽しめるのは嬉しいのですが、そこだけが残念でなりません。

ライブの最後に演奏されたZZ TOPのカバー「Tush」とかトミー・アルドリッジのドラムソロパートとかいろいろカットされているので完全盤ではないものの、まぁオマケとしては十分かなと。

 

【DISC 3(ボックスセットのみ)】

「87 EVOLUTIONS(DEMOS AND REHEARSALS)」と題されたこのディスクは、「『白蛇の紋章~サーペンス・アルバス』に収録されている楽曲のデモ音源やリハーサル音源など、それぞれの楽曲の原型とも言える貴重な音源ばかりを収録。全て未発表音源の貴重なテイクだ。こちらも全曲未発表音源」とのことで、デヴィッドとジョン・サイクス(G)がいかにしてあの名曲たちを完成させていったかが垣間見れる貴重な音源集。「Give Me All Your Love」が最初スローテンポのブルースロックだったり、「Is This Love」が今みたいなAORっぽくなかったり、「Straight For The Heart」もテンポがユルめでカッコ良かったり、「Don't Turn Away」が最初はもっとアップテンポだったりと、いろんな発見があるのは面白いですね。ただ、「Crying In The Rain」以外は歌とギターだけによるラフなものなので、過剰な期待は禁物ですが。

 

【ディスク4(ボックスセットのみ)】

「87 VERSIONS(2017 REMIX)」と銘打った本ディスクは、「今回の30周年記念作品の発売にあたり、新たにリミックスを行なったシングル曲4曲に加え、当時日本のみで発売されていたEP『87 VERSIONS』に収録されていた音源や、貴重なラジオ・ミックスなどを収録。2017リミックスは今回が初出の音源となる」ということで、ディスク1に未収録の“あの当時レコーディングされ公式リリースされた音源”を網羅したものとなっています。気になる最新リミックスですが、このアルバム特有のリバーブ感が取り除かれ、非常に生々しいミックスに生まれ変わっています。ただ、それによりドラムサウンドの厚みがなくなったり、ギターの音が細くなったりなどの弊害も。ボーカルも前に出すぎていて、メタルアルバムのミックスというよりは現代的なロック/ポップスのミックスという印象。あと、原曲にはなかった音やコーラスが追加されていたりと、印象もだいぶ異なるかな。「Still Of The Night」はあの仰々しさが薄れてしまったし、「Here I Go Again」もダイナミックさが激減したけど、逆に「Is This Love」は今回のバージョンのほうが気に入ったかな(フェードアウトせずに終わるのも、なお良し)。「Give Me All Your Love」は評価が分かれるところかもしれませんが、これはこれで好き。原曲とどっちが良いかと問われたら、原曲を選びますが(苦笑)。

そして、日本限定リリースだったミニアルバム『87 VERSIONS』の音源ですが、リマスタリングが施されているかは不明。つうか「Looking For Love」と「You're Gonna Break My Heart Again」に関してはディスク1とかぶり。そこは気を遣えよ、ちゃんと仕事しろよと力説したい。それ以外は、Geffen時代のベストアルバムで聴けた「Here I Go Again」ラジオミックスと、シングルのみで発表された「Give Me All Your Love」のリミックス(ヴィヴィアン・キャンベルのギターソロに差し替えられたバージョン)も収録されております。まあこのディスクの主役は最新リミックスの4曲ですね。どうせなら、アルバムまるまる1枚をこの音で聴いてみたいという気もしましたが(それはそれで、別モノとして楽しめるかもしれないので)。

 

というわけで、今回の最新バージョン。初めて本作に触れるビギナーは2枚組仕様で十分です。ボックスはマニア向け。とはいえ、そのマニアならいろいろ突っ込みたくなるんじゃないかと察しますが……。

以下、オマケ。今回の最新リマスタリング音源を使って、1987年発売当時の国内盤およびUS盤の曲順でプレイリストを作りました →2019年9月現在、US&日本オリジナルの曲順にボートラを加えたアルバムが公開されています。「Crying In The Rain」から「Bad Boys」への曲間の違いはあるものの、やっぱりこのトラックリストに強い親しみがあるだけに、ぜひ現行のトラックリストと聴き比べてみることをオススメします。

 

 


▼WHITESNAKE『WHITESNAKE: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
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2017年2月 4日 (土)

BLUE MURDER『BLUE MURDER』(1989)

さて、昨日の続きを。ジョン・サイクス(G)はWHITESNAKEにて初めて曲作りおよびレコーディングで貢献したアルバム『WHITESNAKE』を1987年に完成させますが、レコーディング中からたびたびデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)と衝突していたこともあり、アルバム発売前にバンドを脱退。ライブでこれらの楽曲を弾くことが一度もなかったわけです。その『WHITESNAKE』はアメリカのみで800万枚ものセールスを記録。印税は懐に入ったものの、表向きはバンドの成功を味わうことなく、ひたすらデヴィッドに対する憎悪の思いのみが加速していったのでした(これ、憶測ですよ。誤解なきよう)。

そんなジョン・サイクスは“打倒WHITESNAKE”のもとにコージー・パウエル(Dr)やフィル・スーザン(B)、レイ・ギラン(Vo)などとBLUE MURDERと命名したバンドを結成。しかし二転三転して、最終的にカーマイン・アピス(Dr)、トニー・フランクリン(B)、そしてジョンがボーカルも兼任するトリオ編成となり、本作『BLUE MURDER』を完成させます。

プロデューサーはAEROSMITH『PERMANENT VACATION』(1987年)BON JOVI『NEW JERSEY』(1988年)などで名を馳せたボブ・ロック。あの鋭いギターサウンドとドラムのビッグサウンドがここでも堪能できるだけでなく、トニー・フランクリンという名うてのフレットレスベースプレイヤーが加わったことによる不思議なグルーヴ感を楽しむことができます。

楽曲自体は『WHITESNAKE』アルバムの延長線上にあると言っていいでしょう。ただ、デヴィッドのブルーステイストが加わらないことで非常にモダンなテイストが前面に打ち出されており、単なる姉妹作で終わらないオリジナリティも確立されています。それは1曲目「Riot」から明白で、「Still Of The Night」のアレンジが下地にある「Sex Child」、WHITESNAKEでは表現しきれなかったドラマチックさを追求した「Valley Of The Kings」、アコースティックを基調としたアーシーなテイストから壮大なアレンジへと変化していく「Jelly Roll」など、序盤から聴きどころ満載。もちろん「Out Of Love」や「Black-Hearted Woman」など、『WHITESNAKE』をバージョンアップされた楽曲も含まれています。

カーマイン・アピス&トニー・フランクリンという鉄壁のリズム隊とのアンサンブルも最高で、かつジョンのギターもこれでもかとフィーチャーされている。けれど単なるギター・オリエンテッド・アルバムでは終わっておらず、メロディのポピュラリティもしっかり維持しつつ、ジョンのボーカルもしっかり主張している。これがデビューアルバムか!?と驚きが隠せない完成度持つ、ギタリスト必聴の1枚です。

にしても、この妙にセクシーさを前面に打ち出したMVもWHITESNAKEをなぞっていて、バチバチ感が見え隠れします。WHITESNAKEと同じGeffen Recordsからのリリースというのも大きいんですけどね。

残念ながら本作は全米69位と大成功には程遠い結果しか残せず、この編成は短命に終わります。また、こんなに『WHITESNAKE』の継承的アルバムを作っておきながら、本作は1986年に亡くなったフィル・ライノット(THIN LIZZY)に捧げられています。そのあたりにもジョンの歪んだ対抗心みたいなものが感じられて、意地らしいなと思ってしまいます。

 


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2017年2月 3日 (金)

WHITESNAKE『WHITESNAKE (1987)』(1987)

まず最初に。今回、かなり長いです。それだけ語ることが多い作品であり、しっかり語らなくてはならない1枚だと思っているので、ぜひ時間があるときに読んでいただきたいと思います。

 

1987年春にリリースされたWHITESNAKEの通算7枚目のスタジオフルアルバムにして、同年を代表するHR/HMの1枚。レコーディングメンバーはデヴィッド・カヴァーデイル(Vo)、ジョン・サイクス(G)、ニール・マーレイ(B)、エインズレー・ダンバー(Dr)の4人。「Here I Go Again」のみギターソロでエイドリアン・ヴァンデンバーグが参加しています。ちなみに本作を携えたワールドツアーではデヴィッド以外のメンバーを総入れ替えし、エイドリアン、DIOを脱退したヴィヴィアン・キャンベル(G)、オジー・オズボーンのリズム隊でおなじみのルディ・サーゾ(B)&トミー・アルドリッジ(Dr)の5人編成でライブが行われました。

本作は全米2位という最高位を獲得し、1987年の年間アルバムチャートで16位、翌1988年の年間チャートでも19位にランクインし、現在までにアメリカのみで800万枚以上ものセールスを記録。本作からのシングルも「Here I Go Again」が全米1位、「Is This Love」が全米2位、「Give Me All Your Love」が全米48位、「Still Of The Night」が全米79位、特に「Here I Go Again」は1987年のビルボード年間チャートで7位に輝く大ヒット作となりました。1987年がいかにHR/HMの年だったかが伺える事象かと思います。

とはいえこのアルバム、当時は古くからのWHITESNAKEファンにとってはある種の踏み絵というか、なんとも受け入れがたいアルバムだったと記憶しています。だって前作『SLIDE IT IN』(1984年)までギリギリ保っていたブルースベースのブリティッシュハードロック色が払拭され、完全にアメリカナイズされたサウンドと曲調になっているんですから。本作に続く1989年の8thアルバム『SLIP OF THE TONGUE』なんて、さらにもってのほかだと思いますよ。

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