V.A.『KILLER QUEEN -A TRIBUTE TO QUEEN-』(2005)
さて、目下絶賛来日中のQUEEN + PAUL RODGERS御一行様ですが、やはり来日する前は懐疑的な声があったと思うんですよ、特に古くからのファンから。けど、実際にこの目で見てしまうとやはり……QUEENという偉大さに対してリスペクトをしつつ、ブライアン・メイやロジャー・テイラーがポール・ロジャースという「友人」と思う存分楽しんでQUEENナンバー、さらにはFREEやBAD COMPANYの曲を演奏してる……っていうことを、もの凄い説得力を持って披露してくれるもんだから、観る側としては文句の言いようがないわけですよ。だってねぇ、約2時間半近くに渡って、それこそ30曲近くも演奏してくれるんですからねぇ。僕はあのセットリスト見ただけで涙ぐみましたもの。
今年は『WE WILL ROCK YOU』のミュージカルが来日したり(当然僕も行きました)、先のQUEEN + PAUL RODGERSがあったり、もっといえば去年からの『JEWELS』のヒットなどがあって、かなりQUEENに注目が集まった1年だったじゃないですか。そんな中、リリースされたこのトリビュートアルバム『KILLER QUEEN -A TRIBUTE TO QUEEN-』。アメリカでは8月に、ここ日本では来日公演に合わせて10月後半にリリースされたばかりで、リリース元がQUEENのアメリカでの配給元である「Hollywood Records」ということもあり、もっとも公式トリビュート盤に近い存在な1枚ではないかと思うんです。以前にも「EMI」からこの手のトリビュートが出たこともあったけど、あのときはダンス系のみだったし。今回みたいなロック/ポップス/オルタナティヴといったもっともQUEENが影響を与えたシーンからのフィードバックは恐らく初めてのことだと思うので、普段はこの手のトリビュート盤を買わない僕ですら、これは真っ先に買いました。
参加アーティストはそれこそ多岐に渡り、そのへんはAmazonのリンク先を見てもらえば一目瞭然だと思うんですが……みんなそれぞれに原曲に忠実だったり、独自の色にまで昇華させてしまっていたり、その愛情表現の方法はさまざまで、良い意味で聴きやすく、破綻してないなーと。それが嬉しくもあり、また物足りなくもあり。まぁトリビュート盤というのはそういうのが多いですからね、そこまで過剰な期待はしてなかったですけど。
でも聴き応えありますよ、それなりに。完全にゴスペルバラードに昇華してしまったデヴィン・デグロウの「We Are The Champions」もそうだし、ストーナーチックなヘヴィロックへと進化したジョシュ・オム(QUEENS OF THE STONE AGE)が歌いELEVENが演奏する「Stone Cold Crazy"」もそうだし、個性的なアーティストっていうのはやはりカバー曲でも己の色へと昇華してしまうんですね。
かと思えばSUM41による「Killer Queen」やROONEYによる「Death On Two Legs」みたいに、原曲まんまの完全コピーすらある(彼らがここまで素直なカバーをするとはちょっと驚きでした)。あのLOS LOBOSがQUEEN(「Sleeping On The Sidewalk」)をカバーするというのもある意味面白いし、ジョン・オブライオンによる「Play The Game」もらしくて聴き応えあったし。うん、これだけでも平均点以上ですよね。
しかし、このアルバムには本当の意味でのハイライトがふたつ用意されていました。それはふたつの「Bohemian Rhapsody」カバーなんですよ。
前半のハイライトであるコンスタンティン・Mとミュージカル『WE WILL ROCK YOU』ハリウッド版キャストによるカバーは、原曲まんまなんですが、中盤のオペラパートもミュージカル同様すべて完全コピーされてるのがさすがというか。ちょっと鳥肌立ちますね。
そしてもうひとつのカバーは、かのTHE FLAMING LIPSによるサイケデリック・バージョン。こちらも基本的には完全コピーに近いんだけど、そこは彼らのことですから……完全にLIPSバージョンになってしまってる。ていうか、彼らのオリジナル曲ですよこれ! 多重録音ならではの中間パートは正に「涅槃からの誘い」ですし、このドリーミーな感じこそLIPSの極みといったところでしょうか。こちらも違った意味で泣けますね。
ほかにも名カバーは幾つもあるしホントは1曲1曲についてコメントしていきたいんですが、それをやると相当な長さになるんで、今回は割愛。QUEEN好きで昨今のロックシーン(主にアメリカン・オルタナ・シーンね)に興味を持っている人なら間違いなく楽しめる1枚だと思いますよ。これを聴いて改めてQUEENの偉大さにひれ伏すもよし、来日公演前に聴いて気分を高めるもよし。LIPSバージョン「Bohemian Rhapsody」だけでもぜひ聴いてみてくださいよ!