カテゴリー「Journey」の9件の記事

2023年3月20日 (月)

JOURNEY『FRONTIERS』(1983)

1983年2月1日にリリースされたJOURNEYの8thアルバム。

「Who's Crying Now」(米4位)、「Don't Stop Believin'」(同9位)、「Open Arms」(同2位)、「Still They Ride」(同19位)とヒットシングルを連発し、アルバム自体もキャリア初の1位を獲得した前作『ESCAPE』(1981年)。現在までにアメリカのみで1000万枚以上のセールスを誇る名盤から約1年7ヶ月という、今から考えると非常に短いスパンで届けられたのがこの『FRONTIERS』というアルバムです。普通に考えたら、相当なプレッシャーが伴った制作だったのではと予想しますが、この時代ってそういったことを考える余裕もないくらい時間に追われ続けていたのかもしれませんよね。

アメリカンロックの大らかさとポップスとして通用するソフト感のバランスにもっとも優れた前作を経て、今作ではより洗練された上質なサウンドと、このバンドが本来持ち合わせていたハードロック/プログロック的な側面を(ちょうどアメリカでも人気爆発寸前だった)HR/HM視点で昇華させた作風でまとめ上げた印象。楽曲の方向性的には前作の延長線上にあるので、「ソフトでポップなJOURNEY」を期待するリスナーも十分に満足させるだけの内容に仕上がっているのではないでしょうか。

とはいえ、アルバムの冒頭を飾る「Separate Ways (Worlds Apart)」の若干シリアスで仰々しいイントロ、全体を覆う硬質さは「おや、前作とはちょっと違うかも?」と思わせるに十分な1曲。今聴くとチープなシンセリフですが、このあとにVAN HALEN「Jump」やEUROPE「The Final Countdown」がヒットすることを考えると、そのルーツと言えなくもないかな。事実、80年代半ばの“メンバーにキーボードがいた”洋楽カバーバンドはみんなこの「Separate Ways (Worlds Apart)」をコピー/カバーしていましたしね。

で、その若干シリアスな作風はミディアムバラード調の「Send Her My Love」、ダイナミックはハードロック「Chain Reaction」へと続いていきます。前作ではスティーヴ・ペリー(Vo)/ニール・ショーン(G)/ジョナサン・ケイン(Key)の三頭体制で楽曲制作を行ったことでバランスに優れていたわけですが、今作ではペリー&ケイン名義の楽曲も増え(「Separate Ways (Worlds Apart)」「Send Her My Love」「After The Fall」)、挙げ句ケイン単独名義によるピアノバラード「Faithfully」まで存在。ペリー/ケイン/スティーヴ・スミス(Dr)による「Back Talk」なんて曲も存在し、バンド内のバランス感が少しずつ崩れ始めていることにも気づきます。

アルバム前半は前作で得た成功をなぞろうとして若干空回りしている印象もありますが、「Edge Of The Blade」以降のアルバム後半ではニール・ショーンのカラーを強めたハードロック全開。ヘヴィバラード「Troubled Child」やパーカッシヴなドラミングが気持ち良い「Back Talk」、若干プログロック的で演奏陣のテクニカルさが際立つ「Frontiers」、ダイナミックなハードロック「Rubicon」と前半とはまた違った色合いで楽しめるはず。序盤にバラードタイプの楽曲を固めてしまったため、どこか軟弱な印象が付きまとう本作ですが、最後まで聴くとバンドの芯がしっかり伝わる良作なんですよね。

本作からは「Separate Ways (Worlds Apart)」(米8位)、「Faithfully」(同12位)、「After The Fall」(同23位)、「Send Her My Love」(同23位)といったヒットシングルも生まれ、アルバムもアメリカで最高2位(しかも9週連続)を記録。現在までにアメリカのみで600万枚以上を売り上げています。しかし、次作制作に向けて動き出そうとしたタイミングに、ロス・ヴァロリー(B)とスティーヴはバンドを脱退。メインソングライターの3人が残り、バンド活動を継続させることになります。

 


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2022年7月11日 (月)

JOURNEY『FREEDOM』(2022)

2022年7月8日にリリースされたJOURNEYの15thアルバム。

前作『ECLIPSE』(2011年)から約11年2ヶ月ぶりと、JOURNEYとしては過去最長のスパンを経て届けられたスタジオアルバム。その間にディーン・カストロノヴォ(Dr)の離脱&スティーヴ・スミス(Dr)の再々加入、さらにはロス・ヴァロリー(B)&スティーヴの造反による脱退など数々のトラブルがありましたが、今作のレコーディングにはアーネル・ピネダ(Vo)、ニール・ショーン(G)、ジョナサン・ケイン(Key)にランディ・ジャクソン(B)&ナラダ・マイケル・ウォルデン(Dr)という異色のリズム隊が加わった形で制作。さらにはディーンもバンドに復帰し(ナラダは本作完成後に脱退)、ドラムこそ叩いていないものの「After Glow」ではリードボーカルも披露しています。

ニールとジョナサン、そしてナラダという3人がプロデュースを手掛け、ミックスにボブ・クリアマウンテンという名手が参加した本作。全15曲/約73分と非常に長尺な大作ですが、なるほど、長年待たされた甲斐があったと言わざるを得ない力作に仕上がっています。

アルバムタイトルの『FREEDOM』は、本来9thアルバム『RAISED ON RADIO』(1986年)に付けるはずだったタイトルとのことで、そういった点からも今作が名盤『ESCAPE』(1981年)、『FRONTIERS』(1983年)を踏襲した内容であることが想像に難しくありません。実際、どの曲も「Don't Stop Believin'」や「Separate Ways」を筆頭とした『ESCAPE』〜『FRONTIERS』の延長線上にある作風で、多くのファンが求める“JOURNEYらしさ”が凝縮された1枚と言えるでしょう。

最初の数曲、それこそ本当ならタイトであるべき「Together We Run」や「Don't Give Up On Us」には若干の緩さを感じずにはいられませんが、中盤以降……「Come Away With Me」あたりからでしょうか、演奏やバンドアンサンブル含め、序盤以上に緊張感の強いプレイを楽しむことができます。個人的には「Let It Rain」や「Holdin' On」は大好物。モダンな質感が加わった「All Day, All Night」も捨て難いですね。そこから王道の「Don't Go」へとつづく流れは、本作のハイライトではないでしょうか。

ただ、問題点もいくつかあります。ひとつは、曲数が多いため全体像がぼやけてしまうこと。特に彼らのようなバンドの場合、ただ良い曲だけを並べればいいわけではなく、その並び方(起承転結)も重要になってくると思うんです。そういった点でも、本作は12曲程度にまとめられていたら、もっと聴きやすくてギュッと締まった内容になったのではないでしょうか。

もうひとつは、メロディラインの単調さ。これはアーネルの加齢も大きい気がします(近年は『ESCAPE』『FRONTIERS』からの楽曲もキーを下げて歌っていましたし)。音域が狭まったことで、以前ほどメロディの起伏が付けにくくなったことが、この単調さにつながったのなら、やはり曲数はできるだけ絞ったほうがよかったのではないでしょうか。

加えて、日本盤はボーナストラックが蛇足すぎ。曲が多ければいいわけじゃないのに(ただでさえ多いアルバムなのに)、よりによってバラードを追加しますか。その点もちょっとどうかと思いました。輸入盤が店頭に並ぶまでに時間がかかりそうなので、割高(いよいよ3,000円超えですか)な日本盤を購入してしまいましたが、もし店頭に両方並んでいたら僕は迷わず輸入盤を選ぶと思います。

ということで、本来なら高得点を付けたいくらいに良質な内容なのですが、あと3歩くらい足りたいものがあるいということで、点数を付けるとしたら78点くらいかな。だいぶ厳しめですが、待たされたわりにこれじゃあ……という気もするので。

そうはいっても、彼らに懐かしさを求めて本作に手を伸ばした層にはそれなりに満足してもらえるんじゃないかな。

 


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2022年2月 3日 (木)

JOURNEY『ESCAPE』(1981)

1981年7月17日にリリースされたJOURNEYの7thアルバム。

前作『DEPARTURE』(1980年)が初の全米TOP10入り(最高8位)を記録し、「Any Way You Want It」(全米23位)、「Walks Like a Lady」(同32位)、「Good Morning Girl / Stay Awhile」(同55位/両A面)といったヒットシングルを輩出。1980年12月には日本映画『夢・夢のあと』のために制作されたサウンドトラックアルバム『DREAM, AFTER DREAM』、1981年1月には初のライブアルバム『CAPTURED』も連発し、こちらも全米9位まで上昇、さらに同作からは「The Party's Over (Hopelessly in Love)」(同34位)というスマッシュヒットシングルも生まれました。

この勢いを途絶えさせないようにと、スタジオ作としては1年5ヶ月という短いスパンで届けられた今作。「Who's Crying Now」(全米4位)、「Don't Stop Believin'」(同9位)、「Open Arms」(同2位)、「Still They Ride」(同19位)とシングルヒットを連発させ、アルバム自体も初の全米1位を獲得。現在までに1000万枚以上を売り上げる、オリジナルアルバムとしてはキャリア最大のヒット作となりました(バンド最大のヒット作は1988年に発表したベスト盤『GREATEST HITS』で、アメリカのみで1500万枚超)。

ハードロックバンドとしての魅力は次作『FRONTIERS』(1983年)に譲るものの、アメリカンロックの大らかさとポップスとして通用するソフト感のバランスにもっとも優れているのが本作の特徴でしょうか。今作はグレッグ・ローリー(Key)から元THE BABYSのジョナサン・ケインへとメンバーチェンジして初のアルバムで、ジョナサンは早くもソングライティング面で大貢献しており、全10曲すべてに携わっています。

「Who's Crying Now」や「Don't Stop Believin'」といったバラードヒットの印象が強い本作(およびJOURNEYというバンドのパブリックイメージ)ですが、「Stone In Love」や「Keep On Runnin'」「Escape」をはじめとする楽曲では70年代から引き継ぐアメリカンハードロックバンドとしての矜持が伝わる、随所にテクニカルな演奏/アレンジがフィーチャーされています。特に、「Keep On Runnin'」や「Dead Or Alive」で味わえる疾走感や「Escape」で楽しめるプレイヤー陣の奇才ぶりは、本作における真の意味での醍醐味ではないでしょうか。ニール・ショーン(G)のギタリストとしての才能は本作の随所から伝わってきますし、「Mother, Father」でのリフワークのカッコ良さに関しては特筆しておくべきポイントだと断言しておきます。

その一方で、スティーヴ・ペリー(Vo)の声の存在感もさすがの一言で、ぶっちゃけシンガーとしての絶直期は今作や続く『FRONTIERS』、そしてソロアルバム『STREET TALK』(1984年)あたりではないかと思うほど。先に触れた「Mother, Father」はニールのギターのみならず、スティーヴのボーカルワークも絶品で、数々のシングルヒットを差し置いて真っ先にオススメしたい1曲でもあります。このドラマチックなハードロックチューンがあるからこそ、続くラストナンバー「Open Arms」がより輝くわけです。

音の質感的には70年代の延長線上にあるため、今聴くと若干の古臭さを感じずにはいられませんが(特に、80年代的な質感の『FRONTIERS』のあとに聴くと余計に感じるかも)、内容の充実度はキャリア最高峰。個人的にはベストアルバムよりも真っ先に聴くべき1枚だと思っています。

にしても、1981年7月というタイミングに本作とFOREIGNERの4thアルバム『4』がリリースされているという事実、非常に興味深いです。ハードロック界隈的には新興勢力が現れ始めた時期ですが、70年代からシーンを牽引してきたバンドたちによる奮起がもっとも伝わる2枚かもしれませんね。

 


▼JOURNEY『ESCAPE』
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2019年7月31日 (水)

BAD ENGLISH『BACKLASH』(1991)

1991年8月にリリースされた、BAD ENGLISHの2ndアルバムにしてラストアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて同年9月に発売されました。

パワーバラード「When I See You Smile」が全米1位を獲得し、続く「Price Of Love」も全米5位まで上昇。これを受けてアルバム『BAD ENGLISH』(1989年)も100万枚を超えるセールスを記録するなど、さすがJOURNEY+THE BABYS(というかジョン・ウェイトのソロアーティストとしてのネームバリューか)なスーパーバンド、いきなり素晴らしい結果を残します。

で、続く2ndアルバムは60分強というボリューミーな前作から一転、全10曲で48分という非常に聴きやすい“アルバム本来の形”に収まっています。

プロデューサーは前作のリッチー・ズィートから“産業ロック王”ロン・ネヴィソン(HEART、SURVIVOR、DAMN YANKEESなど)に交代。若干硬めだった質感が、本作ではもう少しナチュラル、だけど高品質というバランスに生まれ変わっています。

また、前作には先の「When I See You Smile」のように外部ライターが手がけメンバーは一切作曲に関わっていない楽曲も複数含まれていましたが、本作はダイアン・ウォーレンやラス・バラッド、マーク・スピロなど著名なソングライターが参加しつつも、それらがすべてジョン・ウェイト(Vo)やジョナサン・ケイン(Key)、ニール・ショーン(G)らとの共作となっています。このへんは前作での経験によるものなのか、はたまたロン・ネヴィソンによるものなのかはわかりませんが、バンド感が強まるという点においては好印象かもしれません。

とはいえ本作、意外と地味なんですよ。前作も決して派手ではなかったけど、さらに輪をかけて地味になっている印象を受けます。まあ視点を変えれば、それは“こなれてきた”という証でもあるのかなと。別の言い方をすれば、しっかり大人のメンバーたちが余裕を持って“遊んでいる”ということなのかもしれません。

でもね、その地味さ加減が嫌いになれないのも、また本作の魅力といいますか。アコースティックギターを前面に打ち出した「Time Stood Still」や、AOR調の「Savege Blue」など、ミディアムテンポのバラードナンバーが相変わらず素晴らしいのです。まあ、10曲という限られた曲数のうち、ミディアム/スロウナンバーが4曲というのはちょっとどうかと思いますけど、“大人のハードロック”という解釈をすれば全然ありなのかもしれません。

ただ、残念なのが突出した1曲がないこと。同じパワーバラードにしても、本作の「The Time Alone With You」は「When I See You Smile」同様にダイアン・ウォーレンが関わっているのに、突き抜けていない。あと一歩なんですよね……そういう楽曲が少なくないことは、実は好調なようで裏では陰りが見え始めていた当時の状況が反映されているようで、怖くもあります。だって、本作リリースから数ヶ月後には解散しているわけですから……。

ジョン・ウェイトの歌声は相変わらず素晴らしいし、ニール・ショーンも的確なギタープレイで聴き手を楽しませてくれる。ジョナサン・ケインは相変わらずシンセ前に出過ぎだし、ディーン・カストロノヴォのドラムも馬鹿デカイ。あとひとりは……まあいいや。戦争後の不景気だったり、HR/HMブームの終焉だったりいろいろ要因はあったとはいえ、バンドって終わるときはあっけないんだなと思わされた、苦い1枚です。

 


▼BAD ENGLISH『BACKLASH』
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2018年12月23日 (日)

STEVE PERRY『TRACES』(2018)

年明け1月には70歳の誕生日を迎える、元JOURNEYスティーヴ・ペリーによる通算3作目のソロアルバム。前作『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994年)から実に24年ぶりの新作……びっくりですよね。そもそも、その24年の間に発表された“新作”って、JOURNEY再結成アルバムの『TRIAL BY FIRE』(1996年)と、ソロベストアルバム『GREATEST HITS + FIVE UNRELEASED』(1998年)に収録された未発表曲くらいですから(それも、1988年に2枚目のソロアルバム用にレコーディングしながらもお蔵入りした10年前のテイク)。

前作『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』が1994年という時代性を完全に無視した、良くも悪くも“産業ロック”テイストにJOURNEY時代から引き継ぐソウルテイストを加えた「いかにもスティーヴ・ペリーらしい」仕上がりでしたが、あれから時は24年も流れて音楽業界も流行りのサイクルが何回転も繰り返し……今作では「結局俺にはこれしかできないし、これしか歌えない」という開き直りにも似た、過去2作の延長線上にありながらもしっかり“大人”になったスタイルが展開されています。

オープニングの「No Erasin'」を先行配信で聴いた瞬間、「そうそう、これだよね、スティーヴ・ペリーって」と妙に納得させられたことを覚えています。JOURNEYをよりソフトにしながらも、しっかりそのイメージをギリギリのところで保っている。で、彼が歌えばそれが確実に“それっぽく”成立する。なかなかの佳曲だと思います。

じゃあ、アルバム全体でそういったソフトな産業ロックが展開されているのかというと、そこは齢69のスティーヴ・ペリー御大。メロディアスなミディアム/スロウナンバーを中心に、要所要所にソウルやR&Bのカラーを加えたポップロック/バラードがずらりと並びます。刺激的な要素は皆無。もちろん、彼にそういったものは求めるはずもなく、最初から最後まで安心して楽しめる1に仕上がっています。

前作の時点で感じた声の“枯れ”はさすがにあれから24年も経っていることもあり、さらに加速していますが、それでも伸びのあるハイトーンは健在。とはいえ、その“かつての武器”をこれでもかと使い回すことはせず、すごく自然に使うことで曲の中に溶け込ませている。まったく嫌味のない、本当にナチュラルな“歌”が楽しめるはずです。

「No Erasin'」や「Sun Shine Gray」(ROB ZOMBIEのギタリスト、ジョン・5がソングライティングやギターで参加)程度しかロックと呼べるものはないので、ハードロック寄りのリスナーには少々厳しい内容かもしれませんが、例えばJOURNEYが好きでマイケル・ボルトンあたりのAORシンガーも好みという方には間違いなくハマる内容だと断言できます。完成度だけは無駄に高いです。年間ベストには選ばないもののふとした瞬間に聴きたくなる、自分的にはそんな“癒し”の1枚。

ちなみに本作、全米6位/全英40位と、ともにキャリア最高記録を更新しています。



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2018年8月19日 (日)

HARDLINE『DOUBLE ECLIPSE』(1992)

昨日のスティーヴ・ペリーの項で触れた元JOURNEY組(ギターのニール・ショーン、キーボードのジョナサン・ケイン)が結成したBAD ENGLISHですが、1991年8月に2ndアルバム『BACKLASH』をリリースしてすぐに解散。ニールと、同バンドのドラマーだったディーン・カストロノヴォはジョニー(Vo)&ジョーイ(G)のジョエル兄弟と意気投合し、デヴィッド・リー・ロスのツアーなどに参加したトッド・ジェンセン(B)の5人でHARDLINEというバンドを結成するのでした。

本作は、1992年4月にリリースされたデビューアルバム。プロデュース自体をニール自身が担当しており、ソングライティングに関してもジョエル兄弟とともに行っております。

ここ日本では本作収録曲の「Hot Cherie」が先行して名曲扱いされ、このイメージで語られることの多いバンドかもしれませんが、アルバム自体は「Hot Cherie」のように哀愁味あふれる泣きのハードロックとは異なる、カラッとした王道アメリカンハードロック風味で仕上げられています。

オープニングの「Life's A Bitch」や続く「Dr. Love」など、重量感のあるミディアムテンポがいかにもアメリカンハードロック的ですし、アコースティックギターを用いたバラード「Change Of Heart」もJOURNEY時代のピアノバラードやBAD ENGLISHでのパワーバラードと比べたらケレン味の薄い作風と言えるでしょう。

しかし、本作がそれでも名作と呼ばれるのは「Hot Cherie」1曲のせいだけではなく、こういった良質のハードロックナンバーを、的確な演奏とジョニー・ジョエルという新たな可能性を持つシンガーが歌っていることも大きいのではないかなと。とにかく、ジョニーの歌が非常に良いのですよ。BON JOVIほどクセが強くなく、だけど胸に響く歌心が感じられる。そしてポップにもハードにも歌いこなせるその実力に、「本当にこれ、無名の新人?」と思わされたものです。

個人的には「Rhythm From A Red Car」や「Everything」「Bad Taste」のようなハードロックチューン、「Can't Find My Way」みたいなバラード、「I'll Be There」的な壮大さを持つミディアムナンバーがお気に入り。もちろん「Hot Cherie」も素晴らしいですけどね。

とにかく、JOURNEYやBAD ENGLISHとはまた異なる、良質のアメリカンハードロックバンドであることは間違いありません。ただ、ニールはこのアルバム1枚でとっとと脱退してしまうのですが(苦笑)。それにより、バンドも解散するのですが、1999年には再結成を果たしており、現在はジョニーのみが残りバンドを継続しています。



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2018年8月18日 (土)

STEVE PERRY『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994)

1994年7月にリリースされた、元JOURNEYのフロントマンであるスティーヴ・ペリーの2ndソロアルバム。ソロ作品としては前作『STREET TALK』(1984年)からおよそ10年ぶり、スティーヴが参加したスタジオアルバムとしてもJOURNEYの『RAISED ON RADIO』(1986年)以来8年ぶりと、ファンにとってはまさに待望の新作でした。

事実、当時JOURNEYに大した思い入れのなかった僕ですら、「おお、久しぶりに!」と真っ先に飛びついたくらいですから。

ニール・ショーン(G)やジョナサン・ケイン(Key)といったJOURNEY組は1989年にBAD ENGLISHとして再デビューしてブレイクを果たしましたが、スティーヴは自身が先にバンドから離れたにも関わらず、このアルバムまでかなりの時間を要しています。

プロデュースに当たったのはスティーヴ本人と、ジェイムズ・ジンボ・バートン(QUEENSRYCHE、TRIXTER、LITTLE ANGELSなど)、ゴスペル/R&B系シンガーソングライターのティム・マイナーの3人。作品自体、このメンツからも想像できるような高品質の産業ハードロックとR&Bテイストの歌モノロックが入り混じった、我々が想像する“JOURNEYのスティーヴ・ペリー”らしい1枚に仕上がっています。

1曲目の「You Better Wait」のオープニングに感じられる讃美歌調のアレンジ、そこから流れるように突入するメロディアスハードロックサウンドに、当時は歓喜したものです。だって、1994年といえばカート・コバーン(NIRVANA)の急逝はあったものの、シーンはまだまだグランジまっただ中、かつヘヴィでラウドな音楽がもてはやされる時期でしたから。

ミディアムテンポでAOR寄りのハードロック/ハードポップと、じっくり聴かせるミディアム/スローバラードの数々。新しい要素はこれといって見受けられませんが、終始安心して聴ける1枚。各楽曲、非常に手の込んだ完成度の高いものです。『ESCAPE』(1981年)から『RAISED ON RADIO』までのJOURNEYらしさも至るところから感じられますし、ファンなら間違いなく気に入る作品集ではないでしょうか。特に後半の盛り上げで重要な役割を果たす壮大なバラード「Missing You」と、ラストの大人びたスローナンバー「Anyway」は涙なしには聴けない1曲なはずです。

ですが、スティーヴの歌声……最初に聴いたときは、その“枯れ”っぷりに驚きを隠せなかったことも、記しておかねばなりません。最近公開された24年ぶりの新曲「No Erasin'」を聴いて、さらなるその“枯れ”っぷりに時の流れを感じたものですが(とはいえ、すでにスティーヴも69歳。そりゃあ衰えますよ)、それを最初に感じたのはこのアルバムだったな、と久しぶりに本作を聴いて思い出しました。

上記のような時代背景や、8年ぶりの音源などといった不安要素があったものの、本作は全米15位、50万枚を超えるヒットとなりました。また、「You Better Wait」(全米29位)、「Missing You」(同74位)というシングルヒットも生まれています。このアルバムを携え、ソロとしての来日公演も予定されていましたが、二度目のJOURNEY脱退理由にもなった退行性骨関節疾患のために実現せず。その後、JOURNEY再結成などいろいろありながらも、ソロとしては3作目となる『TRACES』(2018年)が完成するまでには、さらに24年もの歳月を要するのでした。



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2018年8月15日 (水)

JOURNEY『REVELATION』(2008)

2008年6月に海外で(日本では同年10月に)リリースされた、JOURNEY通算13枚目のスタジオアルバム。前任のスティーヴ・オージェリー(Vo)に代わり、新たに加入したフィリピン・マニラ出身の新人シンガー、アーネル・ピネダを迎えて制作された第1弾作品となります。

また、本作はバンドにとって初の2枚組スタジオ作品となり、DISC 1が新曲で構成された純粋な新作(1曲のみ前作『GENERATIONS』収録曲のリテイク)、DISC 2は代表曲の数々をアーネル・ピネダのボーカルでレコーディングした再録ベストアルバムとなっています(さらにUS盤限定の付属DVDには、同編成でのライブ映像を収録)。ボリューミーながらも豪華な内容ということもあり、本作は前作の170位を大きく上回る全米5位にランクイン。現在までに100万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

アーネルの歌声は、バンドの全盛期を支えたスティーヴ・ペリー(Vo)の歌声にそっくりということもあり、ある種“クリカン版『ルパン三世』”と同じようなイメージを持つ人も多いかもしれません。がしかし、アーネルが加入してすでに12年以上経っており、ここ日本のロックファンの間でも彼の存在は浸透したと言い切ってもいいでしょう。

確かにモノマネ上手かもしれませんが、スティーヴ・ペリーよりも太く、深みのある歌声は若干疲れ果てていたバンドに新たな潤いを与えたことは間違いありません。結果、本作のDISC 1に収録されている新曲の大半は、初めて聴くはずなのに「あれ、以前も聴いたことある?」と思えてしまうくらい、どこをどう切り取ってもJOURNEYの楽曲そのもの。しかも、そのクオリティが単なる焼き直しレベルで終わっておらず、耳に残るものばかりなのです。

また、随所随所には過去の名曲のフレーズが散りばめられていて、思わずニヤリとしてしまう場面も多いですしね。ぶっちゃけ、1996年の復活作『TRIAL BY FIRE』(1996年)以降の作品で、もっとも“らしい”内容で、かつ完成度の高い1枚ではないでしょうか。

そして、DISC 2ですが……サントラ収録曲「Only The Young」から始まり、そのまま「Don't Stop Believin'」「Wheel In The Sky」という流れ……そう、これって彼らのベストアルバム『GREATEST HITS』(1998年)の構成をなぞったものなんですよね。まったく一緒というわけではなく、元が15曲のところを11曲に減らし、しかもオリジナル盤にはなかった「Stone In Love」をピックアップしていたりと、アーネルや今のバンドのスタンスに合わせた選曲がなされているのではないんでしょうか。そこも含めて、『GREATEST HITS』とはまた違った楽しみ方ができるはずです。

ニール・ショーン(G)の弾きまくりっぷりもハンパないし、ディーン・カストロノヴォ(Dr)のヘヴィヒッターぶりも存分に楽しめる。バンドとしてフレッシュさを取り戻しつつも、しっかり円熟味も感じさせてくれる、強烈なアルバムだと思います。



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2017年2月 7日 (火)

BAD ENGLISH『BAD ENGLISH』(1989)

1989年デビューのスーパーバンドつながり、なおかつ現在JOURNEY来日中ということで、今日はBAD ENGLISHの1stアルバム『BAD ENGLISH』を紹介します。

BAD ENGLISHはJOUNEYを活動休止させたニール・ショーン(G)とジョナサン・ケイン(Key)が、元THE BABYSのフロントマンで「Missing You」を全米No.1ヒットさせたソロシンガーのジョン・ウェイト、同じく元THE BABYSのリッキー・フィリップス(B)、トニー・マカパインやCACOPHONYで活躍したディーン・カストロノヴォ(Dr)と結成した5人組バンド。一部からは“JOUNEYの再編”と呼ばれたほか、ジョナサン・ケインもJOURNEY加入前はTHE BABYSのメンバーだったこともあり“新生THE BABYS”なんて声もありました。

JOURNEYの活休前ラスト作『RAISED ON RADIO』(1986年)がハードロックというよりもAOR的なアメリカンロックアルバムだった反動もあり、このBAD ENGLISHのデビュー作にはハードロック寄りの楽曲が比較的多く含まれています。ニール・ショーンも曲を殺さない程度に弾きまくってますし、ジョナサン・ケインのキーボードも80年代半ばの産業ハードロックそのものといったテイスト。そしてなにより、スティーヴ・ペリー(JOURNEY)ほどキーは高くないものの哀愁味の強い枯れた歌声が魅力のジョン・ウェイトが、暑苦しすぎないボーカルで聴き手を楽しませてくれます。リードトラックとなった「Forget Me Not」なんてまさに、各メンバーの個性が存分に生かされたロックチューンですしね。

しかし、「Open Arms」の大ヒットが生んでしまった“JOURNEY=バラード”という公式を、このBAD ENGLISHも引き継いでおり、全13曲中バラードタイプの楽曲が4曲(「Possession」「When I See You Smile」「Price Of Love」「Don't Walk Away」)と比較的多く含まれています。中でも「When I See You Smile」は全米1位、「Price Of Love」は全米5位と立て続けにシングルカットされ大ヒット。これに導かれるようにアルバム自体も最高21位まで上昇、100万枚を超えるセールスを記録しました。バラードバンドのレッテルを剥がしたかったはずのニール・ショーン、ここでもその呪縛から離れられなかったわけですね。

とはいえ、職業作家のダイアン・ウォーレンが書き下ろした「When I See You Smile」も、ジョン・ウェイト&ジョナサン・ケイン作の「Price Of Love」も間違いなくいい曲ですし、JOURNEYの香りがするマイナーキーのハードロック「Tough Times Don't Last」、激しいドラムに引っ張られるようにニール・ショーンのギターが唸る「Ready When You Are」、豪快なハードロック「Lay Down」や「Rockin' Horse」など聴きどころの多い1枚なのは確か。60分超えの収録時間はちょっとアレですけど、純粋にいい曲がたくさん詰まったアルバムと考えればマイナスにはならないはず。

それにしてもスーパーバンドってどこも基本的に短命なんですよね。BAD ENGLISHも1991年に2ndアルバム『BACKLASH』をリリースして解散してますし。そりゃあこれだけの大物たちだもん、みんなエゴが強かったわけです。それと90年代に入り湾岸戦争を境に不況に突入、ロックもグランジをはじめとするダークなものが主流になっていき、こういったHR/HMは前時代的なものになってしまいます。もう5年早かったら、どのバンドももう1枚くらいアルバムを作れたのかもしれませんね。

 


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