2018年8月19日 (日)

HARDLINE『DOUBLE ECLIPSE』(1992)

昨日のスティーヴ・ペリーの項で触れた元JOURNEY組(ギターのニール・ショーン、キーボードのジョナサン・ケイン)が結成したBAD ENGLISHですが、1991年8月に2ndアルバム『BACKLASH』をリリースしてすぐに解散。ニールと、同バンドのドラマーだったディーン・カストロノヴォはジョニー(Vo)&ジョーイ(G)のジョエル兄弟と意気投合し、デヴィッド・リー・ロスのツアーなどに参加したトッド・ジェンセン(B)の5人でHARDLINEというバンドを結成するのでした。

本作は、1992年4月にリリースされたデビューアルバム。プロデュース自体をニール自身が担当しており、ソングライティングに関してもジョエル兄弟とともに行っております。

ここ日本では本作収録曲の「Hot Cherie」が先行して名曲扱いされ、このイメージで語られることの多いバンドかもしれませんが、アルバム自体は「Hot Cherie」のように哀愁味あふれる泣きのハードロックとは異なる、カラッとした王道アメリカンハードロック風味で仕上げられています。

オープニングの「Life's A Bitch」や続く「Dr. Love」など、重量感のあるミディアムテンポがいかにもアメリカンハードロック的ですし、アコースティックギターを用いたバラード「Change Of Heart」もJOURNEY時代のピアノバラードやBAD ENGLISHでのパワーバラードと比べたらケレン味の薄い作風と言えるでしょう。

しかし、本作がそれでも名作と呼ばれるのは「Hot Cherie」1曲のせいだけではなく、こういった良質のハードロックナンバーを、的確な演奏とジョニー・ジョエルという新たな可能性を持つシンガーが歌っていることも大きいのではないかなと。とにかく、ジョニーの歌が非常に良いのですよ。BON JOVIほどクセが強くなく、だけど胸に響く歌心が感じられる。そしてポップにもハードにも歌いこなせるその実力に、「本当にこれ、無名の新人?」と思わされたものです。

個人的には「Rhythm From A Red Car」や「Everything」「Bad Taste」のようなハードロックチューン、「Can't Find My Way」みたいなバラード、「I'll Be There」的な壮大さを持つミディアムナンバーがお気に入り。もちろん「Hot Cherie」も素晴らしいですけどね。

とにかく、JOURNEYやBAD ENGLISHとはまた異なる、良質のアメリカンハードロックバンドであることは間違いありません。ただ、ニールはこのアルバム1枚でとっとと脱退してしまうのですが(苦笑)。それにより、バンドも解散するのですが、1999年には再結成を果たしており、現在はジョニーのみが残りバンドを継続しています。



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投稿: 2018 08 19 12:00 午前 [1992年の作品, Hardline, Journey] | 固定リンク

2018年8月18日 (土)

STEVE PERRY『FOR THE LOVE OF STRANGE MEDICINE』(1994)

1994年7月にリリースされた、元JOURNEYのフロントマンであるスティーヴ・ペリーの2ndソロアルバム。ソロ作品としては前作『STREET TALK』(1984年)からおよそ10年ぶり、スティーヴが参加したスタジオアルバムとしてもJOURNEYの『RAISED ON RADIO』(1986年)以来8年ぶりと、ファンにとってはまさに待望の新作でした。

事実、当時JOURNEYに大した思い入れのなかった僕ですら、「おお、久しぶりに!」と真っ先に飛びついたくらいですから。

ニール・ショーン(G)やジョナサン・ケイン(Key)といったJOURNEY組は1989年にBAD ENGLISHとして再デビューしてブレイクを果たしましたが、スティーヴは自身が先にバンドから離れたにも関わらず、このアルバムまでかなりの時間を要しています。

プロデュースに当たったのはスティーヴ本人と、ジェイムズ・ジンボ・バートン(QUEENSRYCHE、TRIXTER、LITTLE ANGELSなど)、ゴスペル/R&B系シンガーソングライターのティム・マイナーの3人。作品自体、このメンツからも想像できるような高品質の産業ハードロックとR&Bテイストの歌モノロックが入り混じった、我々が想像する“JOURNEYのスティーヴ・ペリー”らしい1枚に仕上がっています。

1曲目の「You Better Wait」のオープニングに感じられる讃美歌調のアレンジ、そこから流れるように突入するメロディアスハードロックサウンドに、当時は歓喜したものです。だって、1994年といえばカート・コバーン(NIRVANA)の急逝はあったものの、シーンはまだまだグランジまっただ中、かつヘヴィでラウドな音楽がもてはやされる時期でしたから。

ミディアムテンポでAOR寄りのハードロック/ハードポップと、じっくり聴かせるミディアム/スローバラードの数々。新しい要素はこれといって見受けられませんが、終始安心して聴ける1枚。各楽曲、非常に手の込んだ完成度の高いものです。『ESCAPE』(1981年)から『RAISED ON RADIO』までのJOURNEYらしさも至るところから感じられますし、ファンなら間違いなく気に入る作品集ではないでしょうか。特に後半の盛り上げで重要な役割を果たす壮大なバラード「Missing You」と、ラストの大人びたスローナンバー「Anyway」は涙なしには聴けない1曲なはずです。

ですが、スティーヴの歌声……最初に聴いたときは、その“枯れ”っぷりに驚きを隠せなかったことも、記しておかねばなりません。最近公開された24年ぶりの新曲「No Erasin'」を聴いて、さらなるその“枯れ”っぷりに時の流れを感じたものですが(とはいえ、すでにスティーヴも69歳。そりゃあ衰えますよ)、それを最初に感じたのはこのアルバムだったな、と久しぶりに本作を聴いて思い出しました。

上記のような時代背景や、8年ぶりの音源などといった不安要素があったものの、本作は全米15位、50万枚を超えるヒットとなりました。また、「You Better Wait」(全米29位)、「Missing You」(同74位)というシングルヒットも生まれています。このアルバムを携え、ソロとしての来日公演も予定されていましたが、二度目のJOURNEY脱退理由にもなった退行性骨関節疾患のために実現せず。その後、JOURNEY再結成などいろいろありながらも、ソロとしては3作目となる『TRACES』(2018年)が完成するまでには、さらに24年もの歳月を要するのでした。



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投稿: 2018 08 18 12:00 午前 [1994年の作品, Journey, Steve Perry] | 固定リンク

2018年8月15日 (水)

JOURNEY『REVELATION』(2008)

2008年6月に海外で(日本では同年10月に)リリースされた、JOURNEY通算13枚目のスタジオアルバム。前任のスティーヴ・オージェリー(Vo)に代わり、新たに加入したフィリピン・マニラ出身の新人シンガー、アーネル・ピネダを迎えて制作された第1弾作品となります。

また、本作はバンドにとって初の2枚組スタジオ作品となり、DISC 1が新曲で構成された純粋な新作(1曲のみ前作『GENERATIONS』収録曲のリテイク)、DISC 2は代表曲の数々をアーネル・ピネダのボーカルでレコーディングした再録ベストアルバムとなっています(さらにUS盤限定の付属DVDには、同編成でのライブ映像を収録)。ボリューミーながらも豪華な内容ということもあり、本作は前作の170位を大きく上回る全米5位にランクイン。現在までに100万枚以上を売り上げるヒット作となりました。

アーネルの歌声は、バンドの全盛期を支えたスティーヴ・ペリー(Vo)の歌声にそっくりということもあり、ある種“クリカン版『ルパン三世』”と同じようなイメージを持つ人も多いかもしれません。がしかし、アーネルが加入してすでに12年以上経っており、ここ日本のロックファンの間でも彼の存在は浸透したと言い切ってもいいでしょう。

確かにモノマネ上手かもしれませんが、スティーヴ・ペリーよりも太く、深みのある歌声は若干疲れ果てていたバンドに新たな潤いを与えたことは間違いありません。結果、本作のDISC 1に収録されている新曲の大半は、初めて聴くはずなのに「あれ、以前も聴いたことある?」と思えてしまうくらい、どこをどう切り取ってもJOURNEYの楽曲そのもの。しかも、そのクオリティが単なる焼き直しレベルで終わっておらず、耳に残るものばかりなのです。

また、随所随所には過去の名曲のフレーズが散りばめられていて、思わずニヤリとしてしまう場面も多いですしね。ぶっちゃけ、1996年の復活作『TRIAL BY FIRE』(1996年)以降の作品で、もっとも“らしい”内容で、かつ完成度の高い1枚ではないでしょうか。

そして、DISC 2ですが……サントラ収録曲「Only The Young」から始まり、そのまま「Don't Stop Believin'」「Wheel In The Sky」という流れ……そう、これって彼らのベストアルバム『GREATEST HITS』(1998年)の構成をなぞったものなんですよね。まったく一緒というわけではなく、元が15曲のところを11曲に減らし、しかもオリジナル盤にはなかった「Stone In Love」をピックアップしていたりと、アーネルや今のバンドのスタンスに合わせた選曲がなされているのではないんでしょうか。そこも含めて、『GREATEST HITS』とはまた違った楽しみ方ができるはずです。

ニール・ショーン(G)の弾きまくりっぷりもハンパないし、ディーン・カストロノヴォ(Dr)のヘヴィヒッターぶりも存分に楽しめる。バンドとしてフレッシュさを取り戻しつつも、しっかり円熟味も感じさせてくれる、強烈なアルバムだと思います。



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投稿: 2018 08 15 12:00 午前 [2008年の作品, Journey] | 固定リンク

2017年2月 7日 (火)

BAD ENGLISH『BAD ENGLISH』(1989)

1989年デビューのスーパーバンドつながり、なおかつ現在JOURNEY来日中ということで、今日はBAD ENGLISHの1stアルバム『BAD ENGLISH』を紹介します。

BAD ENGLISHはJOUNEYを活動休止させたニール・ショーン(G)とジョナサン・ケイン(Key)が、元THE BABYSのフロントマンで「Missing You」を全米No.1ヒットさせたソロシンガーのジョン・ウェイト、同じく元THE BABYSのリッキー・フィリップス(B)、トニー・マカパインやCACOPHONYで活躍したディーン・カストロノヴォ(Dr)と結成した5人組バンド。一部からは“JOUNEYの再編”と呼ばれたほか、ジョナサン・ケインもJOURNEY加入前はTHE BABYSのメンバーだったこともあり“新生THE BABYS”なんて声もありました。

JOURNEYの活休前ラスト作『RAISED ON RADIO』(1986年)がハードロックというよりもAOR的なアメリカンロックアルバムだったこともあり、このBAD ENGLISHのデビュー作にはハードロック寄りの楽曲が比較的多く含まれています。ニール・ショーンも曲を殺さない程度に弾きまくってますし、ジョナサン・ケインのキーボードも80年代半ばの産業ハードロックそのものといったテイスト。そしてなにより、スティーヴ・ペリー(JOURNEY)ほどキーは高くないものの哀愁味の強い枯れた歌声が魅力のジョン・ウェイトが、暑苦しすぎないボーカルで聴き手を楽しませてくれます。リードトラックとなった「Forget Me Not」なんてまさに、各メンバーの個性が存分に生かされたロックチューンですしね。

しかし、「Open Arms」の大ヒットが生んでしまった“JOURNEY=バラード”という公式を、このBAD ENGLISHも引き継いでおり、全13曲中バラードタイプの楽曲が4曲(「Possession」「When I See You Smile」「Price Of Love」「Don't Walk Away」)と比較的多く含まれています。中でも「When I See You Smile」は全米1位、「Price Of Love」は全米5位と立て続けにシングルカットされ大ヒット。これに導かれるようにアルバム自体も最高21位まで上昇、100万枚を超えるセールスを記録しました。バラードバンドのレッテルを剥がしたかったはずのニール・ショーン、ここでもその呪縛から離れられなかったわけですね。

とはいえ、職業作家のダイアン・ウォーレンが書き下ろした「When I See You Smile」も、ジョン・ウェイト&ジョナサン・ケイン作の「Price Of Love」も間違いなくいい曲ですし、JOURNEYの香りがするマイナーキーのハードロック「Tough Times Don't Last」、激しいドラムに引っ張られるようにニール・ショーンのギターが唸る「Ready When You Are」、豪快なハードロック「Lay Down」や「Rockin' Horse」など聴きどころの多い1枚なのは確か。60分超えの収録時間はちょっとアレですけど、純粋にいい曲がたくさん詰まったアルバムと考えればマイナスにはならないはず。

それにしてもスーパーバンドってどこも基本的に短命なんですよね。BAD ENGLISHも1991年に2ndアルバム『BACKLASH』をリリースして解散してますし。そりゃあこれだけの大物たちだもん、みんなエゴが強かったわけです。それと90年代に入り湾岸戦争を境に不況に突入、ロックもグランジをはじめとするダークなものが主流になっていき、こういったHR/HMは前時代的なものになってしまいます。もう5年早かったら、どのバンドももう1枚くらいアルバムを作れたのかもしれませんね。



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投稿: 2017 02 07 12:00 午前 [1989年の作品, Bad English, Journey] | 固定リンク