2018年7月 3日 (火)

BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』(2018)

昨年6月に開催された『GRASPOP METAL MEETING』など、海外のメタルフェスに出演したのを機に一部で話題になっていた、女性13人からなるHR/HMの名曲をカバーするコーラス隊BRIDES OF LUCIFERがアルバムをリリースしました。

本作でピックアップされている楽曲たちは下記のとおり(曲名後ろのカッコは原曲アーティスト名)。


01. Burn In Hell [TWISTED SISTER]
02. Walk [PANTERA
03. Warriors Of The World [MANOWAR]
04. Chop Suey! [SYSTEM OF A DOWN
05. Painkiller [JUDAS PRIEST
06. Fear Of The Dark [IRON MAIDEN
07. Roots Bloody Roots [SEPULTURA
08. O Father O Satan O Sun! [BEHEMOTH]
09. Holy Diver [DIO
10. South Of Heaven [SLAYER
11. Futility [SCALA & KOLACNY BROTHERS]
12. Halo [MACHINE HEAD
13. White Moon [SCALA & KOLACNY BROTHERS]


ライブではこのほか、RAMMSTEIN「Engel」あたりもカバーされているみたいですね。

ライブやレコーディングには彼女たちのほか、ドラム/ベース/ギター/ピアノが入り、原曲に比較的忠実なアレンジでカバーされています。もちろん、コーラスがメインになるので、彼女たちの歌声が前面に出るようなアレンジも新たに施されており、曲によってはギターソロパートをカットしていたりもします。

どのバンドの曲もボーカルのクセが強いものばかりで、特にPANTERAやSEPULTURAみたいなスクリームメインの楽曲、SYSTEM OF A DOWNのように変態的なボーカルが耳に残る曲すらも聖歌のようなボーカルアレンジで表現されているので、聴き進めていくうちに「あれ、こんなに聴きやすくて大丈夫?」と不安に陥る瞬間も。メタルファンには数年に1枚は世に産み落とされる“ネタCD”として楽しめば、そこまで不快ではないはず。むしろ、僕は積極的に楽しんでおります。

逆に、普段メタルに疎い人にこそ「ね? 意外と曲自体は悪くないんだよ?」と手に取ってほしい1枚だったりして。まあ、一緒に笑って聴いてみましょうよ。

あ、あと本作で2曲もピックアップされているSCALA & KOLACNY BROTHERSという存在。彼らはこのBRIDES OF LUCIFERの先輩的存在でもある、2000年代前半に90年代〜ゼロ年代のUKロックやグランジの代表曲をピアノ伴奏でカバーしたベルギーの少女合唱隊のこと。グループ名は指揮者&ピアノ伴奏者でもある中心人物となる兄弟の名前から取られています。このグループのオリジナル曲をカバーするあたりに、BRIDES OF LUCIFERの起源が見え隠れするのも興味深いところです。



▼BRIDES OF LUCIFER『BRIDES OF LUCIFER』
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投稿: 2018 07 03 12:00 午前 [2018年の作品, Brides of Lucifer, Dio, Iron Maiden, Judas Priest, Machine Head, Pantera, Sepultura, Slayer, System of a Down] | 固定リンク

2018年7月 1日 (日)

2018年上半期総括(アルバムベスト10)

恒例となった上半期ベスト。ひとまず7月1日現在の10枚を紹介したいと思います。バランスとしては洋楽5枚、邦楽5枚というセレクトで順位など関係なし。今回はあえてミニアルバムやEPを外し、フルアルバムのみをピックアップしました。


COURTNEY BARNETT『TELL ME HOW YOU REALLY FEEL』(amazon)(レビューはこちら

IHSAHN『ÁMR』『SPIRIT』(amazon)(レビューはこちら

JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(amazon)(レビューはこちら

MANIC STREET PREACHERS『RESISTANCE IS FUTILE』(amazon)(レビューはこちら

STARCRAWLER『STARCRAWLER』(amazon)(レビューはこちら

brainchild's『STAY ALIVE』(amazon

HER NAME IN BLOOD『POWER』(amazon

エレファントカシマシ『WAKE UP』(amazon

おとぎ話『眺め』(amazon

けやき坂46『走り出す瞬間』(amazon

投稿: 2018 07 01 12:00 午後 [2018年の作品, brainchild's, Courtney Barnett, HER NAME IN BLOOD, Ihsahn, Judas Priest, Manic Street Preachers, Starcrawler, おとぎ話, けやき坂46, エレファントカシマシ] | 固定リンク

2018年3月31日 (土)

JUDAS PRIEST『FIREPOWER』(2018)

2018年3月に発表された、JUDAS PRIEST通算18枚目のスタジオアルバム。前作『REDEEMER OF SOULS』(2014年)からほぼ4年ぶりにあたる本作は、全米・全英ともに5位という好成績(アメリカでは過去最高位)を残し、概ね高評価を得たように思います。

前作から制作に加わったリッチー・フォークナー(G)の影響もあってか、『REDEEMER OF SOULS』は70年代〜80年代初頭のハードロック的スタイルを踏襲しつつ、再結成後の2枚(2005年の『ANGEL OF RETRIBUTION』と2008年の『NOSTRADAMUS』)をより若々しくしたような楽曲を楽しむことができました。それに続く今作『FIREPOWER』は、『REDEEMER OF SOULS』をさらにメタリックに、かつよりモダンにアップデートしたような内容と言えるでしょう。

プロデュースを手がけたのは、プリーストの80年代の名盤を多数手がけてきたトム・アロムと、昨今のモダンなヘヴィメタル作品を多数プロデュースするアンディ・スニープ。この「プリーストのことを一番理解しているプロデューサー」と「もっとも現在のメタルシーンを理解しているプロデューサー」を同時投入することで、このエネルギッシュなアルバムが完成したのだと思うと、なるほど納得です。

アルバムのオープニングを飾る「Firepower」の疾走感と、続く「Lightning Strikes」で見せる(聴かせる)王道感。前者は80年代後半以降、特に『PAINKILLER』(1990年)で確立させたブルータルな作風を彷彿とさせますし(もちろん単なる焼き直しでは終わっていない)、後者はその『PAINKILLER』に含まれていたハードロック的ストロングスタイルをブラッシュアップさせたような1曲です。かと思えば、「Never The Heroes」のような若干ダークな空気感の楽曲(でも、聴けばプリーストのそれだとわかる)や、「Children Of The Sun」みたいにオールドスタイルのハードロックをモダンに昇華させたミドルヘヴィナンバーも存在する。

アルバム後半に入ると、短尺のインスト「Guardian」から続く「Rising From Ruins」や「Spectre」といったミドルチューンで深みを見せる。3分にも満たないメロウな「No Surrender」あたりは80年代前半の彼らをイメージさせるし、逆に「Lone Wolf」はなんとなくFIGHT時代のロブ・ハルフォード(Vo)を思い浮かべてしまう。そんなバラエティに富んだ楽曲群のラストを飾るのは、6分前後におよぶ本作最長のメタルバラード「Sea Of Red」。全14曲、58分と決して短いとはいえない大作ですが、意外とスルッと聴けてしまうのも本作の魅力かもしれません。

前作『REDEEMER OF SOULS』はエディション違いで曲数が違ったり、そのデラックス盤が全18曲で90分超えと、その前の『NOSTRADAMUS』同様に1曲1曲の印象が薄まる作風でした。本作も14曲と確かに曲数が多いので、しっかり聴き込むには時間が必要ですが、それでも「何度でも聴きたい」と思わせてくれる魅力が豊富な1枚だと思いました。すごく簡単な分類をしてしまえば、前作が“ハードロックバンドJUDAS PRIESTの集大成”だとしたら、本作は“ヘヴィメタルバンドJUDAS PRIESTの、過去と今をつなぐ現在進行形”と言えるのではないでしょうか。そう、単なる集大成というよりは、しっかり2018年という時代と向き合っている。そんな印象を強く受けます。

本作リリース直前には、オリジナルメンバーと呼んでも過言ではないギタリスト、グレン・ティプトンが10年前からパーキンソン病を患っていること、同作を携えたワールドツアーには参加せず、代わりにアンディ・スニープが参加することがアナウンスされたばかり。3月からスタートした全米ツアーのある公園にはグレンもゲスト参加したようですが、こうなると本作の持つ意味合いも今後少し変わってくる気がします。『ANGEL OF RETRIBUTION』以降では、ロブのボーカルも一番脂が乗っているし、もう少しいけるんじゃないか……と思っていた矢先だったので、この現実を受け入れるにはもう少し時間がかかりそうです。

とはいえ、自分は「間違いなく素晴らしい作品だし、大好きだし、2018年を代表する1枚」という、最初にこのアルバムを聴いたときに感じた気持ちを大切にしたいと思います。



▼JUDAS PRIEST『FIREPOWER』
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投稿: 2018 03 31 12:00 午前 [2018年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2018年3月15日 (木)

2WO『VOYEURS』(1998)

ロブ・ハルフォードが1998年3月(日本では2月)、2WO(=TWO)名義でリリースしたアルバム。JUDAS PRIEST脱退後、“PANTERA以降”を彷彿とさせるサウンドのFIGHTでスタジオアルバム2枚を発表後、自然消滅。その延長として、トレント・レズナー(NINE INCH NAILS)をエグゼクティブプロデューサーに迎え制作された本作は、トレントが主宰するNothing Recordsからリリースされました。

トレントのプロデュースというだけで、生粋のメタルファンは嫌な予感しかしないわけですが、聴いてもらえばおわかりのように本作は完全なるインダストリアルメタルアルバム。NINE INCH NAILSのような変態性も過激さもなく、ギターを軸にしつつもダークでモダンな味付けが施された平坦な楽曲を、ロブが低〜中音域のみで歌うという、メタラーにはある種FIGHT『WAR OF WORDS』(1993年)よりも拷問的な1枚。

が、しかし。NINE INCH NAILSやMARILYN MANSONなどを当時から普通に愛聴していた自分のような偏った人間には、このアルバムはそこまで悪いものには思えなかったんですよね。そりゃあ聴く頻度はFIGHTやJUDAS PRIESTの諸作品より明らかに低かったですけど、発売から20年経った今聴くと「……あれ、そこまで悪くないかも?」と思えるのですから、本当に不思議です。

アルバムを直接的にプロデュースしたのは、以降もロブのソロ活動に関わるボブ・マーレットと、SKINNY PUPPYやMARILYN MANSONとの仕事で知られるデイヴ・オギルヴィの2名。なるほど、音を聴けば納得のいく布陣ですね。で、アルバムでギターを弾いているのがジョン・オウリーなる人物。この人、本作をリリースしたしばらくあとにMARILYN MANSONに加入し、ジョン・5と名乗るようになります……そう、今やROB ZOMBIEなどで活躍中のあのジョン・5です。それを知ると、本作がなるべくしてこうなったというのが頷けるはずです。

ですが、ロブ自身は本当にこれをやりたくて……やりたかったんでしょうね、なんだかんだで新しモノ好きですから。思えば、80年代半ばにストック・エイトケン・ウォーターマンをプロデューサーに迎えようと考えたのもロブですし、いち早くPANTERAの面々とレコーディングして初ソロ曲「Light Comes Out Of Black」を発表したりするような人ですから。ロブが当時NINE INCH NAILSやトレントが手がけるMARILYN MANSONを聴いてないわけがない。

グランジ以降のヘヴィロック「I Am A Pig」を筆頭に、NIN的ないかがわしさを持つ「My Ceiling's Low」、ドラムンベース的テイストを含む「If」、90年代半ばに流行ったオルタナロック的な「Deep In The Ground」、ダークなインダストリアルナンバー「Bed Of Rust」など風変わりな曲もいくつか含まれているものの、全体的にはデジタル風味のヘヴィロック。それをロブが落ち着いた歌い方で聴かせるから、メタルファンには不評なんでしょうけど、当時のMARILYN MANSONの諸作を楽しむ耳で聴けば本当にすんなり入っていける。うん、今聴くと20年前よりも素直に楽しめるんですよ。まあ完全に珍味ですけどね。

本家プリーストも『JUGULATOR』という珍味を発表した1997〜98年というタイミング、ある意味では変革期だったんでしょうけど、あれはあれで面白かったなぁと最近改めて実感しているところです。ゴスメイクして打ち込みバックに歌うロブ御大、観てみたかったなぁ。



▼2WO『VOYEURS』
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投稿: 2018 03 15 12:00 午前 [1998年の作品, Judas Priest, Marilyn Manson, Nine Inch Nails, Two (2wo)] | 固定リンク

2018年3月14日 (水)

JUDAS PRIEST『JUGULATOR』(1997)

1990年に発表した傑作『PAINKILLER』に関する活動を1991年に終えたJUDAS PRIESTDでしたが、翌1992年にバンドの存続を左右するような大きな出来事が起こります。それがロブ・ハルフォード(Vo)脱退……ご存知のとおり、ロブはバンド脱退後にFIGHTというモダンヘヴィネスに特化したバンドをプリーストのドラマー、スコット・トラヴィスらと結成します。ロブが『PAINKILLER』を経て、のちにブレイクするPANTERAのメンバーらとつるみ、よりモダンな方向へとシフトしていったのも理解できるのですが、とはいえ旧来のHR/HMの権化みたいな存在がそっち側に行ってしまうことには、王道メタルを愛するリスナーには正直受け入れがたい事実だったと思います。

そんな窮地に立たされたプリーストですが、グレン・ティプトン(G)とK.K.ダウニング(G)のソングライティングチームはボーカリスト不在のまま曲作りを継続。1996年に入るとスコット・トラヴィスを呼び戻して、イアン・ヒル(B)との4人でバックトラックのレコーディングを開始します。そして、バンドはオーディションの結果、ついに後任シンガーとしてティム・“リッパー”・オーウェンズの加入を発表し、1997年10月に前作『PAINKILLER』から実に7年ぶりとなる通算13作目のスタジオアルバム『JUGULATOR』をリリースしたのでした。

古巣のColumbiaから離れ、新たにCMC International(EU)やSPV(US)と契約して発表された本作ですが(ここ日本では当時、新興メタルフェーベルとして名を馳せたゼロ・コーポレーションから発売。同社がなくなってからは、2001年にビクターから再発)、まず気になるのがロブの後任ティムのボーカルですよね。これに関してはロブらしさを受け継ぎつつ(実際似てますしね)、よりモダンでドスの効いた歌い方もできる新たな武器としては、合格点が与えられるのではないでしょうか。特にライブになると、新旧の楽曲を違和感なく聴かせてくれるので、そこについて非難されることは少なかったと記憶しています。

しかし、本作の最大の問題点/衝撃ポイントはそこではなく、むしろ“『PAINKILLER』の続き”として展開されたそのサウンド/楽曲についてでしょう。現代的な質感はそのままに、軸となるのは前作におけるスラッシュメタルから“(METALLICAの)ブラックメタル以降”、あるいは“PANTERA以降”と呼ばれるミドルテンポ中心のグルーヴメタル/モダンヘヴィネスへと変化しており、当時は「今さらこれをプリーストがやる必要があるのか?」と疑問に感じました。

というのも、1997年後半というとすでに“PANTERA以降”はひと世代前的な感覚もあり、むしろシーンの主流はKORNLIMP BIZKITなど“ヒップホップ以降のヘヴィロック”に移り始めていたからです。いってしまえば、メンバーが曲作りや後任シンガー探しに時間をかけすぎたばかりに、本来やろうとしていたこととシーンに求められるものに時差ができてしまったわけです。これはもう不幸としかいいようがありませんね。

もちろん、アルバム自体の質は非常に高く、変拍子を導入したオープニングのタイトルトラック「Jugulator」をはじめ、サビでシンガロングできそうな「Death Row」、MVも制作された「Burn In Hell」などは今聴いても良いと思える。だけど……すべてが良いかと言われると、正直疑問なのも事実。全10曲で58分というトータルランニングが語るように、1曲1曲が長い。特にラストの「Cathedral Spires」は9分超えの大作なんですが、アレンジ次第ではもう少しコンパクトにできたはずだし、もっと名曲と呼べるものにできたはず。ベースは良いのに、練りこみが甘い。そう、全体的に勿体なさが目立つ1枚なんですよね。

では、これをロブが歌っていたらどうなっていたか……いや、ロブが歌ったとしても結果は一緒だったかな。これがあと3〜4年早かったら、きっとアルバム自体に対する評価も、受け取る側の印象も大きく変わったのかもしれません。

ちなみに本作と続く『DEMOLITION』(2001年)はロブが歌っていないせいか、はたまたインディーズからのリリースだったせいか、2001年に再発されて以降廃盤状態が続いています。当然、デジタル配信もストリーミング配信もされておらず、手軽に聴けない状況にある不幸な作品なのですよ。もっと簡単に楽しめる状況になれば、本作はもう少しポジティブな評価が得られるんじゃないでしょうか……そう願ってやみません。



▼JUDAS PRIEST『JUGULATOR』
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投稿: 2018 03 14 12:00 午前 [1997年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2018年3月13日 (火)

JUDAS PRIEST『PAINKILLER』(1990)

1990年9月に発表された、JUDAS PRIEST通算12枚目のスタジオアルバム。いろいろなトラブルに巻き込まれ、表現の自由と戦い続けた80年代後半のプリースト。その合間に長年にわたりバンドを支えてきたドラマー、デイヴ・ホーランドが脱退(1989年)というピンチもあったものの、新たに元RACER Xのスコット・トラヴィスを迎えたことでバンドは若返りに成功。プロデューサーも前作までのトム・アロムからクリス・タンガリーディス(1976年の2ndアルバム『SAD WINGS OF DESTINY』でアシスタントエンジニアとして関わっていた)に変更し、1990年という時代にフィットしたモダンなアルバムを完成させました。

まあとにかく、このアルバムはオープニングを飾る「Painkiller」の、冒頭のドラミングから驚かされるわけですよね。過去にも印象的なドラムプレイから始まるアルバムは『STAINED CLASS』(1978年)なんて名作があったわけですが、今作はそこを彷彿させるというか、新たな時代の幕開けを宣言するようなオープニングなわけです。

で、この曲のアレンジ、プレイ、ロブ・ハルフォード(Vo)のボーカルスタイル、すべてが前作『RAM IT DOWN』(1988年)までとは異なる、エクストリーム化したもの(サウンドの質感的には、1986年の『TURBO』以降の延長線上にありますが)。スラッシュメタルやスピードメタルからの影響があからさまながらも、そこをしっかりプリースト化させることで単なる焼き直しやコピーで終わらない、唯一無二のオリジナルへと昇華させています。間違いなく、スコットという若い血を得たこと、今までのドラマーとは違う現代的なプレイヤーを獲得したことにより、ここまでイメージが膨らんだといっても過言ではありません。

このアルバムの面白いところは、ハードコアな作風と従来の伝統的なプリーストナンバーが交互に登場するところかもしれません。もちろん、従来の伝統的なプリーストナンバーもモダンな味付けをすることにより、このアルバムならではの色合いを見せているので古臭さはまったく感じられません。特に序盤は「All Guns Blazing」や「Metal Meltdown」のようなスラッシーな楽曲の合間に「Hell Patrol」「Leather Rebel」といった王道色の強いHR/HMナンバーが組み込まれていると、改めて「自分は今、JUDAS PRIESTの新作を聴いているんだ……っ!」と発売当時現実に引き戻されて手に汗握ったことを、昨日のことのように思い出します。

それと、本作はアナログでいうところのA面(M-1〜5)がヘヴィメタル的、B面(M-6〜10)がハードロック的と捉えることもできるかと思います。特にB面はモダンな味付けこそされているものの、「Night Crawler」「Between The Hammer & The Anvil」といったアップテンポのHR/HMナンバーに続いて、ドラマチックなミドルチューン「A Touch Of Evil」、短尺のインスト「Battle Hymn」から「One Shot At Glory」へと続く組曲構成は、それまでのプリーストの持ち味を現代的に解釈した奇跡的な内容だと断言できます。

全英&全米26位、アメリカでは50万枚程度の売り上げと80年代の名盤と比較すれば大きなヒットにはつながらなかったかもしれませんが、彼らが1990年という時代の節目にこういった作品を残した功績は非常に大きなものがあります。これが1991年ではダメだったんですよね。それは、時代がすべてを物語っていると思います。『BRITISH STEEL』(1980年)や『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984年)と比較したら奥ゆかしさ皆無かもしれませんが、僕はこれもJUDAS PRIESTになくてはならない要素であり、重要なアルバムだと認識しています。ぶっちゃけ、今挙げたような名盤たちと同じくらい聴く頻度の高い、大好きな1枚です。



▼JUDAS PRIEST『PAINKILLER』
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投稿: 2018 03 13 12:00 午前 [1990年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2018年3月12日 (月)

JUDAS PRIEST『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984 / 2015)

前作『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982年)から1年半ぶり、JUDAS PRIESTにとって通算9枚目のスタジオアルバム。プロデューサーには前作同様トム・アロムを、エンジニアにはのちにANTHRAXSUICIDAL TENDENCIESなどで名を馳せるマーク・ドッドソンを迎え制作されました。チャートアクション的にも全米18位、全英19位と前作に匹敵する成績を残し、「Freewheel Burning」「Some Heads Are Gonna Roll」がそれぞれ全英42位、全英97位とシングルヒットを記録しています。

前作『SCREAMING FOR VENGEANCE』が名盤『BRITISH STEEL』(1980年)での路線を進化させ、質感的にカラッとしたアメリカンなサウンドだったのに対し、今作『DEFENDERS OF THE FAITH』はもっとウェット感が強く、ファットな音作りが施されています。そこが、このアルバムから漂う“よりブリティッシュ”な香りの大きな要因になっているのではないでしょうか。

楽曲自体も前作の延長線上にある、正統派HR/HMが満載。前作では「The Hellion」〜「Electric Eye」というドラマチックなオープニングが印象的でしたが、今作では疾走感が強烈な「Freewheel Burning」からスタート。どこかアメリカンな香りが感じられるこの曲も、『SCREAMING FOR VENGEANCE』での成功がなければ生まれなかった1曲かもしれません。特に中盤のギターソロで聴ける、ツインリードをフィーチャーした構成は“これぞJUDAS PRIEST!”と呼べるものかもしれませんね。

その後もスピード感に満ち溢れるマイナーコードの「Jawbreaker」、彼ららしいミドルテンポの「Rock Hard Ride Free」と聴き手の高揚感を煽り、当初はアルバムのオープニングを飾る予定だったと言われるドラマチックな「The Sentinel」へと続いていきます。

アナログB面冒頭にあたる5曲目「Love Bites」はデジタルっぽさが加わった気持ち良いテンポ感の1曲。このへんは続く『TURBO』(1986年)への布石を感じさせますね。そしてサイドアッパーな「Eat Me Alive」、ボブ・ハリガン・Jr.のペンによる「Some Heads Are Gonna Roll」、JUDAS PRIEST流メタルバラード「Night Comes Down」、アルバムのクライマックスとなるヘヴィな組曲「Heavy Duty」「Defenders Of The Faith」で締めくくります。

『SCREAMING FOR VENGEANCE』の延長線上にある続編かと思いきや、前作とも違う作品を作り上げたJUDAS PRIEST。NWOBHMからUSメタルの勃発期を経て従来のHR/HMバンドが真価を問われる中、彼らは自分たちが守るべき信念をここでしっかり形として残したかったのかもしれませんね。それがこのアルバムタイトルにもしっかり刻まれているわけですから。『SCREAMING FOR VENGEANCE』と『DEFENDERS OF THE FAITH』、どっちのほうが好きか?という難問にはいまだに答えにくいものがありますし、日によってこっちのほうが好きみたいなのはありますが、個人的には『SCREAMING FOR VENGEANCE』は気構えることなく楽しめる1枚、『DEFENDERS OF THE FAITH』は聴くためにしっかり向き合う姿勢を整えようとする1枚かもしれません。それくらい、本作は以降のJUDAS PRIESTにとって本流的な作品と言えるのではないでしょうか。



▼JUDAS PRIEST『DEFENDERS OF THE FAITH』
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なお、本作はオリジナル版リリースから30年以上経過した2015年春、同作リリース時期のライブ音源(CD2枚組)を同梱した30周年記念盤も発売されています。

「Love Bites」から重々しくスタートするこのツアー音源は、『DEFENDERS OF THE FAITH』という力作の楽曲を軸に、「Grinder」「Metal Gods」「Sinner」といった代表曲に加え、「Desert Plains」なんてこの時期じゃないと聴けない今となってはレアな楽曲も含まれています。

実はここ日本では、『DEFENDERS OF THE FAITH』を携えた来日公演(1984年9月)で初の日本武道館公演が実現しています。アルバムジャケットに登場する機械獣メタリアン(Metallian)を配置したステージセットは、映像で観ると圧巻の一言。

当時のライブ音源がフルでCD化されたのはもちろん嬉しいですが、できたらライブDVDを付けてもらえたら……なんて思ったのは、僕だけではなかったはず。まだしっかり髪が残っているロブ・ハルフォードの姿も、今となっては懐かしさ以上に微笑ましさすらあるので(笑)、ぜひこの時代のライブ映像も完全版として残してほしいものです。



▼JUDAS PRIEST『DEFENDERS OF THE FAITH: 30TH ANNIVERSARY EDITION』
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投稿: 2018 03 12 12:00 午前 [1984年の作品, 2015年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2018年2月 3日 (土)

SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』(1992)

SKID ROWが1992年秋に発表した5曲入りカバーEP。前年初夏に発表した2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』が全米チャート初登場1位という快挙に輝き、同作を携えたツアーも1年以上継続。そのファイナルを控えたタイミングでのリリースだったのですが、収録曲の大半は過去のシングルにカップリングで収録されたものばかり。ですが、こうやって彼らのルーツナンバーを彼らのサウンドで楽しめるというのは、ファンにとっては少なからず嬉しいものがあるのではないかと思います。

カバーされているのは、RAMONESKISSJUDAS PRIESTRUSHジミ・ヘンドリックスと、彼らのサウンドからすれば何にひねりもないセレクト。RUSHに多少こだわりが感じられたりしますが、ピックアップしたのが1stアルバムからというあたりにこだわりがあまり感じられないのでは……という話も(苦笑)。まあ、いいじゃないですか、微笑ましくて。

とにかく、どの曲も原曲に忠実で素直なアレンジ。オープニングのRAMONES「Psycho Therapy」(ボーカルはベースのレイチェル・ボラン)も若干ヘヴィにはなっているものの、基本的なアレンジはまんま。KISS「C'mon And Love Me」は原曲にあったアコースティカルな色合いが消えてしまったものの、メロの良さは完全に生かされており、これはこれでグッド。プリースト「Delivering The Goods」はご本家ロブ・ハルフォードがゲスト参加したライブテイクをそのまま収録。そりゃあまんまですよね(笑)。

で、RUSH「What You're Doing」ですが、実はこれを聴くと「なぜ『SLAVE TO THE GRIND』というアルバムが完成したのか?」という、その理由の片鱗が見えてくるんじゃないかという気がするんです。そして、ここから次作『SUBHUMAN RACE』(1995年)へとつながっていく理由もね。結局、こういうグルーヴィーなハードロックをJUDAS PRIEST的方法論で表現したかったんですね。

最後のジミヘン「Little Wing」のみ、本作で初出のカバー。これも、まぁまんまっちゃあまんまですが、ギタリスト2人が本家に無理やり近づこうと頑張っております。残念ながらそこには到達できてないのですが、いい線いってるんじゃないかなと。これを聴くと、『SLAVE TO THE GRIND』での泣きのバラード(「Quicksand Jesus」「「In A Darkened Room」「Wasted Time」」のルーツも垣間見えるという。なるほどですね。

たった5曲、20分にも満たないEPですが、もしあの当時のSKID ROWがのちのGUNS N' ROSESみたいにフルカバーアルバムを作ったとしたら、ほかにどんなアーティストを取り上げたんでしょうね。



▼SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』
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投稿: 2018 02 03 12:00 午前 [1992年の作品, Jimi Hendrix, Judas Priest, KISS, Ramones, Rush, Skid Row] | 固定リンク

2018年1月21日 (日)

JUDAS PRIEST『RAM IT DOWN』(1988)

1988年5月にリリースされた、JUDAS PRIEST通算11枚目のスタジオアルバム。前作『TURBO』(1986年)でポップな作風、シンセやシンセサイズドギターを大々的に導入したサウンドメンが批判された彼らでしたが、続く本作では当初、当時ヒットを飛ばしまくっていたダンスミュージック・プロデュースチーム「STOCK AITKEN WATERMAN」がプロデュースを担当するという話もあり、メタルファンを驚愕させたのですが、残念ながら実現せず、結局はこれまで同様にトム・アロムを迎えて制作されました。

本作は『TURBO』の流れを汲む、ポップでシンセサイズドな作風と、その反動から生まれたハードエッジなメタルチューンが混在したもの。そもそも『TURBO』というプロジェクト自体がその両方を持ち合わせたものだったはずが、途中からポップサイドに特化した内容に変更されたため、ハードサイドの楽曲は保留されており、そのアウトテイクを本作では数曲使用しているようです。そういう意味では、本作は『TURBO』と併せて語るべき1枚かもしれませんね(腕をモチーフにしたジャケットしかり、関連性は大いにあるのではないかと)。

オープニングの「Ram It Down」は、当時のバンドの状況(ポップに成り下がったと揶揄され、さらに言いがかりにも近い裁判騒動など)もあってか、それらに対する怒りを冒頭のロブ・ハルフォード(Vo)のシャウト一発で表現しているようにも感じられます。でも、激しいファストチューンながらも、しっかりポップな要素が備わっているのがいかにも『TURBO』プロジェクトのアウトテイクといった印象。そのへんは、例えば『SCREAMING FOR VENGENCE』(1982年)や『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984年)ともちょっと違ったイメージがあるかもしれません。

それから、本作は全体的にシンプルなイメージが強いのも特徴かな。曲タイトルのシンプルさはもちろん、大半の楽曲のアレンジもそこまで複雑ではなく、意外とあっさりめ。それをデジタルテイストでコーティングしているんだから、より異質な感触が強まっているんです。「Heavy Metal」や「Love Zone」のドラムのエフェクト感(トリガーを使ってるのかしら)もそうだし、プログレッシヴな名曲「Blood Red Skies」やヘヴィなミドルナンバー「I'm A Rocker」「Monsters Of Rock」あたりもそう。

で、その究極の1曲が「Johnny B. Goode」。そう、チャック・ベリーの代表曲ですよ。あれを映画のサウンドトラック用とはいえ、プリーストがカバーしてしまったんです。初めて聴いたときの何とも言えない感といったら……これが正解なのか失敗なのかすら理解できず、ただ流れ去っていくような気すらしましたもん。

という名作というよりは迷作寄りの1枚ですが、『TURBO』からのノリで聴くとそこまで悪くないので、まぁいいんじゃないでしょうか。僕は嫌いじゃないですよ。だって「Blood Red Skies」1曲あるだけで全然勝ってるし、そもそも彼らのポップセンス自体、決して悪くないですもん。まあ、そこをこのバンドに求めるのか?って話なんですよね、そもそもは(苦笑)。

リリースから今年で30年。もしかしてデラックス盤とか出たりするんですかね。だとしたら、当時来日公演が実現していないので、この時期のちゃんとしたライブ音源もしくはライブ映像を発表してほしいものです。

P.S.
本作を最後にバンドを脱退したドラマー、デイヴ・ホランドが亡くなったようです(参照:ソース)。晩年は少年への性的暴行などであれこれありましたが、今はご冥福をお祈りしたいと思います。



▼JUDAS PRIEST『RAM IT DOWN』
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投稿: 2018 01 21 12:00 午前 [1988年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2017年12月 3日 (日)

JUDAS PRIEST『REDEEMER OF SOULS』(2014)

2014年夏にリリースされた、JUDAS PRIEST通算17枚目のスタジオアルバム。初の2枚組スタジオアルバムかつ初のコンセプトアルバムだった前作『NOSTRADAMUS』(2008年)から6年ぶりの新作にして、K.K.ダウニング(G)に代わってリッチー・フォークナー(G)加入後初の新作となります。また本作は全米6位と初のトップ10入り、全英12位と『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984年)以来30年ぶりにトップ20入りを果たしました。

前作『NOSTRADAMUS』とそれに伴うツアーそして、1980年の『BRITISH STEEL』再現ツアーを経て2011年に最後のツアーを行うことを発表していた彼らですが、そのツアー開始前にK.K.がバンド脱退を発表。結局2011年のツアーにはリッチーが加わり事なきを得たのですが……このときのツアー(2012年2月の来日公演)はZepp Tokyoと武道館の2公演を観たのですが、正直バンドが若返ったなと思ったし、このリッチーという新たな才能を手にした彼らがこのまま活動を終えてしまうのは勿体ないと感じました。

結局、彼らはツアー終了から2年を経てオリジナルアルバムを完成させます。気づけば前作から6年経っていたものの、ここ数年のモヤモヤを払拭するには必要な歳月だったのかもしれません。

ロブ・ハルフォード(Vo)復帰後最初のアルバム『ANGEL OF RETRIBUTION』(2005年)はもちろん今でも良いアルバムだと思っていますが、ロブの衰えが災いしてか、90年代のモダンヘヴィ路線が合わずに中途半端に原点回帰してしまったがために、若干焦点がブレた内容になってしまったのかなと。続く『NOSTRADAMUS』はコンセプトアルバムという前提がなければ、正直個人的にはまったく響かない内容でした。ホント、印象に残ったのは数曲のみでしたし。

ところが。今回の『REDEEMER OF SOULS』は開き直ったかと言いたくなるくらいに、“クラシックJUDAS PRIEST”が展開されている。1曲目の「Dragonaut」の疾走感、そしてシャッフルビートを取り入れた「Redeemer Of Souls」、ツインリードギターが気持ち良い王道HR/HMチューン「Halls Of Valhalla」と、本作で何を表現したいのかがこの3曲だけで十分に理解できてしまうのです。確かに「Redeemer Of Souls」のサビメロの、1オクターブ下で歌うロブの声を聴いて寂しい気持ちにもなりはしますが、基本的には今の彼に合った曲作り、メロディ作りがなされているので、前2作に漂っていた違和感は基本的に感じられない。聴けばすぐに「今、自分はJUDAS PRIESTの新作を体験している!」と実感できる、非常に即効性の強い1枚に仕上がっていると思いました。

ぶっちゃけ、本作で表現されているのは彼らの名盤と呼ばれる『BRITISH STEEL』や『SCREAMING FOR VENGENCE』(1982年)、『DEFENDERS OF THE FAITH』あたりの作風で、そこに若干『PAINKILLER』のテイストも散りばめられている……つまり、上に書いたように誰もが「今、自分はJUDAS PRIESTの新作を体験している!」と感じられるような“わかりやすさ”で構築されているのです。それもこれも、頭の固くなった爺さんたちの中に1人加わった若者、リッチー・フォークナーの影響が大きいのではないか……そう思うのですが、いかがでしょう?

どの楽曲も平均点以上の仕上がりですし、「そうそう、これこそHR/HMだよね!」とガッツポーズを取りたくなる王道ナンバーばかり。基本的に4〜5分台(「Halls Of Valhalla」のみ6分超え)というのも聴きやすさに直結しているのかもしれませんね。

ただ、全13曲で60分超え、しかもデラックスエディションには5曲入りのEPが追加され、トータル90分近くといことで、1曲1曲の印象が弱まってしまうのが難点かな。なんだかんだでツアーではここから数曲しか披露されないわけですし、勿体ないとしか言いようがない……最近の「デラックスエディション商法」(通常盤に加えて、4〜5曲多い仕様を同時発売)には首をかしげることが多いのですが、せめてやるなら「全曲捨て曲なし!」な内容にしてもらいたいものです……。

ということで、年明け2018年春には待望の18thアルバム『FIREPOWER』のリリースも決定したJUDAS PRIEST。本作『REDEEMER OF SOULS』を軽く超える、何度目かの黄金期かと言いたくなるような傑作の完成に期待しています。



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投稿: 2017 12 03 12:00 午前 [2014年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2016年12月17日 (土)

JUDAS PRIEST『TURBO』(1986)

JUDAS PRIESTが1986年に発表した、当時は問題作なんてレッテルを貼られたことでも知られる10thアルバム『TURBO』。その前作にあたる『DEFENDERS OF THE FAITH』からプリーストに足を踏み入れた人間にとって、「シンセサイズドギターを導入」「デジタル録音」「よりポップに」といったこの『TURBO』路線は受け入れがたいものだったことを、昨日のことのように覚えています。当時はまだ中学生。硬派こそが正義だと信じていたウブな時代です。

時は流れ、2012年2月。2009年の『LOUD PARK』での来日時にロブ・ハルフォードにインタビューする機会があったことから、続く2012年のジャパンツアーにも足を運ぶことができました。Zepp Tokyoと武道館の2公演を観たのですが、ここで演奏されたのが『TURBO』のオープニングトラック「Turbo Lover」。あれ、こんなにカッコよかったっけ? それが素直な感想で、「これ、もしかしたら……」と思い久しぶりにCDに手を伸ばしてみたら……。

全体的にポップな(というか、キャッチーなメロディを持つ)楽曲が多いのと、ギターオリエンテッドではなくてシンセの比率が高くなったことで勘違いしてたけど、偏見抜きに聴くと本当に優れた楽曲が並ぶアルバムだと思います。冒頭の「Turbo Lover」「Locked In」「Private Property」の流れは気持ち良いし、ポップな「Parental Guidance」も過去の「Living After Midnight」あたりと同系統のポップさだと思うし。かと思うと疾走感の強い「Rock You All Around The World」があり、叙情的なミドルチューン「Out In The Cold」もある。アメリカナイズされたワイルドな「Wild Nights, Hot & Crazy Days」、シーケンスさえ気にならなければひたすらカッコいい「Hot For Love」、そして“これぞジューダス!”な泣きメロを持つ「Reckless」で幕を降ろす。最高じゃないですか。ネガティヴな感情で接していたため、アルバムの本質を見過ごしてたのかな。若さって強いね。

先に述べたように、過去のジューダスには「Living After Midnight」や「Take On The World」のようなポップな楽曲もあり、それらはイギリスでシングルカットされた事実もあるわけです。もっと言えば、後には『PAINKILLER』のようにスラッシュメタルにすり寄ったアルバムも発表している。要するに、やることが極端すぎるんですよ。それがガチなメタルファンには時に好意的に受け入れられ、時には攻撃の材料となるだけの話。身にまとう装飾は作品ごとに変わるけど、軸にある本質は実は変わってないんだなと。

そうそう。2017年2月には『TURBO』の30周年記念エディションが発売されるとのこと。アルバム本編の最新リマスター版に当時のライブ音源(CD2枚組)を同梱したパッケージになるそうです。この頃のライブといえば、1987年にリリースされたライブアルバム『PRIEST...LIVE!』でも聴けますが、あれよりも長いフルサイズになるそうなので、こちらも楽しみに待ちたいと思います。



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投稿: 2016 12 17 04:00 午前 [1986年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2015年1月16日 (金)

JUDAS PRIEST『SCREAMING FOR VENGEANCE』(1982 / 2012)

JUDAS PRIESTの映像をいろいろ見返していたら、自分がリアルタイムで体験できなかった頃のライブ映像に見入ってしまい……仕事を忘れて2時間くらいネットサーフを繰り返していました。自分が初めて生で体験したのは1991年の『PAINKILLER』を携えた来日公演(代々木体育館)だったので、それより前(『DEFENDERS OF THE FAITH』でのツアー)は観られなかったんですよね。そもそもリアルタイムで聴き始めたのは『DEFENDERS OF THE FAITH』ツアー後なので、行けるわけもなく……。

『DEFENDERS OF THE FAITH』でJUDAS PRIESTに出会って、次に聴いたのが『SCREAMING FOR VENGEANCE』なわけですよ。もうね、しばらくはこの2枚だけで生きていける……当時はそのくらい聴きまくった記憶があります。その頃はまだレコードの時代で、レンタルでも簡単に手に入ったのがこのへんだったってだけなんですが(『BRITISH STEEL』あたりもあった気がするのですが、ほかにも聴かなきゃいけない / 聴きたい新作や旧譜がたくさんあったので、中学生の小遣いでは網羅することなんてできなかったわけです)。

『SCREAMING FOR VENGEANCE』はアナログで聴いたときの生々しい音がとにかく好きで、それをクロームのカセットテープにダビングして聴きまくってました。その“アナログ+カセット”で聴いたイメージが強く、実は90年代に入ってからCDで聴き返したときはちょっと違和感があったような……(同じことは『DEFENDERS OF THE FAITH』をCDで聴いたときにも感じました)。逆に『TURBO』や『RAM IT DOWN』みたいなアルバムはCDで聴いたクリアなサウンドのほうが気に入った記憶もあり(まあ『RAM IT DOWN』の頃になるとすでにCDしか出てなかったような気もしますが)。

その後、2000年前後にプリーストの全作品がリマスタリング再発。音自体はよりクリアになりつつ、アナログ時代に聴いた厚みのある荒々しいサウンドが復活したような気が……って、単にCD音源に耳が慣れただけなのかな? とにかく、それくらい思い入れの強いアルバムなわけです、『SCREAMING FOR VENGEANCE』と『DEFENDERS OF THE FAITH』の2枚は。


で、本題はここから。『SCREAMING FOR VENGEANCE』ってアルバムは、本当に隙のないヘヴィメタルアルバムといいますか。捨て曲なし、全10曲(オープニングの「The Helion」がインストかつ次の「Electric Eye」への序章なので実質9曲)で40分欠けるくらいのトータルランニング。疾走感ある曲が並んでいて、ただヘヴィなだけじゃなくてしっかりメロディアス、しかもどの曲も4分前後で聴きやすい。ちょうどプログレとかDEEP PURPLERAINBOWあたりの長尺曲に馴染めなかった頃で、そこで出会ったこのアルバムの潔さに感動したのを今でも覚えてます。ぶっちゃけアルバムに1曲だけでいいんですよ、5分台の曲なんて。あとは3〜4分の曲でまとめて、全部で10曲あるかないかだったら最高。一番いいのは、46分のカセットにちゃんと収まる作品。A面B面それぞれ23分以内の作品ね。たまにあるんですよ、片面だけ20分欠けるくせに、もう片面は25分くらいあるやつが。そういう意味で『SCREAMING FOR VENGEANCE』という作品は、両面とも20分あるかないかというベスト中のベストだったわけです。

もちろん楽曲自体の完成度も素晴らしかったですよ。今聴いてもそのコンパクトさは圧巻といいますか。『BRITISH STEEL』をUS向けに進化させた結果が『SCREAMING FOR VENGEANCE』なのかな、なんて勝手に思ってます。そこから再びブリティッシュ寄りに押し戻して“深化”させたのが『DEFENDERS OF THE FAITH』。結局今でもアルバムとしてよく聴くのはこの2枚なんです。『PAINKILLER』も聴く頻度は高いけど、この2枚ほどではないかなと。アナログでいうところのB面(「Night Crawler」以降)は先の3枚にも負けないくらい好きですけどね。

それでですね、80年代中頃にメタルにハマった人間は、その数年前にアメリカで「US Festival 1983」という数十万人集めたフェスがあったことを雑誌などで知るわけです。西新宿あたりのブート屋さんでそのへんの映像を見つけては、その観客の多さに驚かされるわけですが、数年前に発売された『SCREAMING FOR VENGEANCE』の30周年アニバーサリーエディションにはこの「US Festival 1983」でのプリースト出演パートをほぼ収めたDVDが付属しています。日中の野外で演奏された12曲。『SCREAMING FOR VENGEANCE』をリリースしてアメリカでブレイクした時期の、脂の乗った演奏を楽しめるわけです。この時期の映像としては、過去にも「Live Vengeance '82」というDVDが発売されていて、「US Festival 1983」前年のライブをフルセットで楽しめますが、ここはぜひ伝説となった「US Festival 1983」での映像を名盤とともに楽しんでもらえたらなと思います。

3月に新作『REDEEMER OF SOULS』を携えたジャパンツアーを行うJUDAS PRIEST。同時期には『DEFENDERS OF THE FAITH』30周年アニバーサリーエディションのリリースも控えています。個人的には『REDEEMER OF SOULS』を「70年代〜80年代初頭に立ち返ったかのような楽曲を現代のテクニックとサウンドで表現した」作品と捉えているので、来日公演に行こうと思ってる人には『BRITISH STEEL』『SCREAMING FOR VENGEANCE』『DEFENDERS OF THE FAITH』の3作はぜひ聴いておいてもらいたいと思っています。というか、これから『SCREAMING FOR VENGEANCE』に出会える人がいるかと思うと本当に羨ましいなと……。



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投稿: 2015 01 16 12:16 午前 [1982年の作品, 2012年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

Judas Priestの私的ベスト10

昨年リリースされた「Redeemer of Souls」も好評、今年3月には武道館公演を含むジャパンツアーが控えているJudas Priestについても私的ベスト10をこの流れでセレクトしてみようと思います。個人的には「Jugulator」も「Demolition」も嫌いじゃないので、ティム・リッパー・オーウェンズ時代の楽曲も含めた、現時点での“私的ベスト10”です。

1. Dissident Aggressor

2. Beyond the Realms of Death

3. Steeler

4. The Hellion / Electric Eye

5. (Take These) Chains

6. The Sentinel

7. Turbo Lover

8. Blood Red Skies

9. Painkiller

10. Jugulator


ベスト10には選んでないけど、MVとして好きなのは「Hot Rockin'」「Freewheel Burning」「Breaking The Law」です。やるならここまでふざけましょう。


Hot Rockin'

Freewheel Burning

Breaking The Law


昨年の10枚およびその次点10枚には選出しませんでしたが、今聴くと「Redeemer of Souls」ってめちゃめちゃ良質なハードロックアルバムですね。ヘヴィメタルではなく、あえてハードロックと呼びたい、そんな1枚。最初に聴いたときは「70年代〜80年代初頭を思わせる作風で、ロブの現在の声域を考えればここに戻らざるを得ないよな……」とネガティブに捉えがちだったんですが、聴き込めば聴き込むほど普遍性のある良質なハードロック作品ではないかと思えてきたんです。前回の来日公演、武道館とZepp Tokyoの2公演行ったので今回はいいかな?なんて思ってたんですが、新曲を生で聴いてみたいなあ……せっかくなので武道館とEX THEATERあたりで。



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投稿: 2015 01 16 12:02 午前 [Judas Priest, 「私的ベスト10」] | 固定リンク

2009年10月30日 (金)

現在発売中の「TV Bros.」でメタル特集を執筆しました

弊社の業務以外にも外仕事として、定期的にいろんな原稿を書いていたりするんですが(過去にはYAMAHA「MySound」内のメタルコーナー「Lazy」でも執筆してましたが、もう閉鎖しちゃうんですよね。もしかしたらテキストだけでも、こちらに補完するかもしれません)、今回はちょっとガッツリとやった仕事があるので、ご紹介したいと思います。

10月28日発売のテレビ雑誌「TV Bros.」最新号の巻頭8ページ特集「誌上初のHEAVY METAL大特集!たかがメタル されどメタル」で、ライター仕事をしました。ロブ・ハルフォードへのインタビュー、ANVILへのインタビュー、元TOY'S FACTORYの宮本さんへのインタビューのほか、「LOUD PARK 09」レポート(プリーストの写真付き)、「やはりタダモノではない!? メタル列伝666連発」という読み物執筆が僕担当です。ほかはブロスのライターさんがTHE 冠の冠徹弥さんお宅訪問とか、メタル・バラード列伝とか執筆してまして、こっちも面白いです。

表紙がJUDAS PRIESTのフロント3人(ロブ、K.K.ダウニング、グレン・ティプトン)というのが笑えます。「BURRN!」も真っ青です。ていうか、その「BURRN!」編集部の奥野さんも取材に応じてくれてます。

まさか自分がロブ・ハルフォードとインタビューする日が来るなんて、まったく想像できてなかったし、そんなことあるはずないと思ってたんですが(そのへんは、特集の冒頭にも綴ってますが)、いやぁ……貴重な体験をさせていただきました。

TOKYONEWS WebStore

海外のアーティストというと、過去にはAVENGED SEVENFOLDのギタリスト2名にもインタビューしたことがありましたが、あの比じゃないですねマジで。逆に、先にロブと対談したおかげで翌日のANVILは非常にやりやすかったです。朝イチの取材だったので、リップスのエンジンがかかるまでにちょっと時間を要しましたが(ロブ・ライナーは映画どおりのイメージで、とてもクールなオッサンでした)。

いやいや……ANVIL、現在公開中の映画「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」は絶対に観たほうがいいですよ! 特にここを普段から覗いてくれているような人たちに、絶対に響く映画なので。僕は公開前に3度も観てしまいましたが……何度観ても、最初はゲラゲラ笑っていて、終盤にホロッとしてしまう。非常によくできた映画です。これ、ロックとかメタルとか興味ない人が観ても通じる内容だし(メタルをほかのものに置き換えれば、万人に通ずる問題なのです)、本当にひとりでも多くの人に観てもらいたいです。

正直、ANVILのニューアルバムは「う〜ん……」って内容だと思うけど、ラウパーでのライブは素晴らしかったです。そうですね、ラウパーの感想も残しておかないとね。

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メタルネタからちょっと離れて。今週末10月31日(土)に、実に8カ月ぶりとなる「AIN'T IT FUN」をやります。もう18回目なんですね。20回目はちょっと盛大にやらないとね。

■「AIN'T IT FUN」Vol.18 〜今年のハロウィンはAIFに行こうか〜
□日時:2009年10月31日(土)18:00〜22:00
□会場:下北沢DJ BAR altoto
□料金:2,000円(2ドリンク付)
□DJ:AIF CREW(とみぃ、津田大介、showhey、のりしろ)
□guest DJ:臼山田洋(オール5)
□VJ:キキ(AIF)
□ブログ:http://blog.livedoor.jp/aint_it_fun/
□mixiコミュ:http://c.mixi.jp/aif
□Timetable:
 18:00〜18:00 とみぃ
 18:30〜19:00 showhey
 19:00〜19:30 津田大介
 19:30〜20:00 臼山田洋(オール5)
 20:00〜20:40 のりしろ
 20:40〜21:20 とみぃ
 21:20〜22:00 Shabu to Shabu(Back to Back)

詳しくは、オフィシャルブログのほうを観てもらえると助かります。今回の裏テーマとか、サブタイトルの意味とか、あれこれ書いてます。

ま、個人的には今回も女子アイドル、束ものアイドル曲(AKB48、アイドリング!!!、一部のハロプロとか)が中心になると思いますので。気が向いたらHELLOWEENとかJUDAS PRIESTとかかけたりしてね。

投稿: 2009 10 30 04:29 午前 [Judas Priest, LOUD PARK, 「DJ / イベント出演」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2008年6月17日 (火)

JUDAS PRIEST『NOSTRADAMUS』(2008)

2008年6月に発売された、JUDAS PRIEST通算16枚目のスタジオアルバム。本作はバンド結成39年目にして初のコンセプトアルバムであり、初の2枚組オリジナルアルバムとなっています。全23曲中、歌モノは14曲で、そのほかは曲と曲をつなぐ役割のインストゥルメンタルナンバー。トータル100分超えの、バンドの気合い入りまくりの力作であり、チャート的にも前作『ANGEL OF RETRIBUTION』(2005年)の全米13位、全英39位を上回る全米11位、全英30位を記録しています。

預言者ノストラダムスの生涯を100分にわたり、音楽で表現した本作。正直、僕はこの作品に対しては過度の期待は寄せていませんでした。『ANGEL OF RETRIBUTION』のレビューで書いたように、ロブ・ハルフォード(Vo)が復帰したプリーストは“21世紀を生き抜く、現在進行形のヘヴィメタルバンド”ではなく、オールドスタイルのHR/HMをいかに現代に継承していくか……それが現在のプリーストの生き方なのかな、と強く感じさせる作風でしたしね。そういう作品が本当に2008年の今現在、求められているのかが僕には自信を持てなかったのです。

実際、今回の2枚組アルバムでは前作で示した“21世紀を生き抜く、現在進行形のヘヴィメタルバンド”スタイルがさらに顕著なものとなっています。

『PAINKILLER』(1990年)は今や遠い昔の話。なんなら若気の至りくらいの勢いでなかったことにされそうなくらい、今回は“枯れっぷり”が非常に印象深い作品で、に、若いファンがこれについていけるのか非常に気になるところです。とはいえ、今作は前作同様に、これはこれで素晴らしいアルバムなんじゃないでしょうか。速い曲なんて数曲あるのみで、大半はミドルテンポ。泣きメロのバラードタイプの楽曲も多く、それらが短尺のインストと並ぶことで適度な緊張感を生み出しています。

プリーストの諸作品を聴いてきた人なら、このアルバムが『SAD WINGS OF DESTINY』(1976年)や『SIN AFTER SIN』(1977年)、あるいは『DEFENDERS OF THE FAITH』(1984年)から高速メタルチューンを除いたものの延長線上にある作品集だと気づくことでしょう。今回のアルバムの随所に、古き良き時代のプリーストの影がちらついているし、視点を変えれば“これこそがプリーストの神髄”と言い切ることもできるはずです。

ヘヴィメタルが21世紀にぶち当たった壁、それは“時代との格闘”でした。その難題に向けて、プリーストが最強のラインナップで作り出した2作品こそが、前作『ANGEL OF RETRIBUTION』と今回の『NOSTRADAMUS』かもしれません。

人によっては“時代錯誤も甚だしい”と貶される可能性も高い。でも、このバンドの信念上(“Keep The Faith”ってやつね)、こういう作品こそが『PAINKILLER』や『JUGULATOR』(1997年)みたいにモダンな作品よりも適しているんじゃないかと、今は思っています。もちろん僕はその2枚も大好きですよ。でも、2000年代に『ANGEL OF RETRIBUTION』や『NOSTRADAMUS』のような作品を堂々と提供できるのはプリーストだけだし、逆に『PAINKILLER』でやったようなことは、今ならほかのバンドのほうが得意なんじゃないでしょうかね(あの当時もプリーストよりも上手くやるバンドはたくさんいたけど、あの時代だからプリーストがそれをやる意味/意義はあったわけですよ)。

とにかく。この長尺のアルバムはダラダラ流し聴きするのではなく、集中して聴くことをオススメします(100分以上も集中力が保つのか、という疑問は残りますが)。終盤の「Calm Before The Storm」「Nostradamus」「Future Of Mankind」のたたみ掛けは異常というか、鳥肌ものですから。



▼JUDAS PRIEST『NOSTRADAMUS』
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投稿: 2008 06 17 08:00 午後 [2008年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2005年3月 5日 (土)

JUDAS PRIEST『ANGEL OF RETRIBUTION』(2005)

テレビ東京:新番組「ヘビメタさん」 司会に熊田曜子ら(MSN-Mainichi INTERRACTIVE)

 ヘヴィメタルを愛する者にとって、「ヘビメタ」という呼称は単なる軽蔑語というか、ホントにマイナスのイメージしかないんですよね。それは恐らく‥‥1980年代半ばに放送された某番組に出演した、日本のインディーメタルバンド達(その中には当時まだマイナーだった「X」の姿も)が笑いのネタとされ、例えば「早朝ヘビメタ(寝てる芸能人の前でいきなり演奏して起こす)」「ヘビメタ運動会(文字通り、ステージ衣装のまま普通に運動会)」「ヘビメタ歌合戦(横森正三氏のアコーディオンをバックにメタルシンガーが熱唱)」なんていうコーナーで色モノとして使われ、その奇抜なファッションや、自らをジミーだのポールだのと呼ぶバカっぽさが更に拍車を掛け、世間の笑い者になってたんだよね‥‥(と、遠い目)

 当時高校生だった俺は普通にメタルキッズでしたよ。いや、メタルだけしか聴いてなかったってことはなかったけど、やはり一番好きなジャンルはハードロックやヘヴィメタルだったし。だから、出演するバンド達のやりたい事とかやってる事も理解できたのね。と同時に、それをブラウン管を通して観る事で、如何にそれらが滑稽かってことも理解してて。普通に笑ってたもんな、テレビ観て。勿論魅せ方も上手かったわけだけどさ。

 そんなヘビメタが、深夜とはいえ再び地上波の深夜に帰ってきますよ‥‥15年振りくらいに。まぁテレ東は昔からこういうの、結構やってきてたし、当たるとホントに(カルト的に)面白いの連発してたから、個人的には期待してます。「エアギター勝ち抜きバトル」、楽しそうだなー。

 さてさて。そんな「ヘビメタ」ですが、最新のオリコン・アルバム週間チャートで珍事が発生してます。先頃リリースされたJUDAS PRIESTの約4年振り(オリジナルシンガーであるロブ・ハルフォード参加作としては、'90年の『PAINKILLER』以来、約14年半振り)の新作『ANGEL OF RETRIBUTION』が、チャートのトップ10入りを果たしてしまったのです。勿論、過去にも海外のメタルバンド/ハードロックバンドが日本のオリコンチャートでトップ10入り、あるいは1位を獲得してしまったこともありました。イングヴェイ・マルムスティーンの『FIRE AND ICE』だったり、BON JOVI『THESE DAYS』だったり、MR.BIG『HEY MAN』だったり。しかし、それも全て10年以上も前のお話。21世紀において「ヘビメタ」は単なる時代遅れの“終った”ジャンルだったわけですよ、コア層以外にとって。

 しかし、PRIESTにロブが復帰したことでメディアやファンが大騒ぎし、昨年行われた復活ライヴツアーで見せつけた貫禄振りを伝え聞いたファンが大騒ぎし、今度の新作は出る前から大騒ぎだったわけですよ‥‥曰く、『「PAINKILLER」に続くべきオリジナルアルバムの完成』等々と。

 んで、実際に完成したアルバムを聴いて‥‥非常に懐かしい香りがプンプンして、聴いてるこっちの顔がニヤケてしまう程に首尾一貫の鋼鉄魂を感じさせる作品集だな、と感じたわけです。ただこれ、決して「PAINKILLER」の後に続くような作品集ではないですよね。そこだけは力説しておきます。間違いなく「PAINKILLER」に続くアルバムは「JUGULATOR」であり、「DEMOLITION」なわけですよ。じゃあ今度のアルバムは「DEMOLITION」に続く作品かというと、イエスでもありノーでもあるかな、と。

 イエスというのは一部の楽曲に関して、前作で再び復活したアコースティックを導入した叙情性豊かなスロウソングが今回も取り入れられている点かな。"Angel" や "Eulogy" といった辺りは、そう言えなくもないでしょう。'80年代の作品辺りからこういったスロウソングを聴く機会がめっきり減っていたので、個人的には非常に嬉しいですね(しかもそれをロブの声で聴けるんだから)。

 そしてノーというのは‥‥この作品が単なる「前作の延長線上作品」なのではなく、これまでのJUDAS PRIEST史を総括するような作風だということでしょうか。つまり、単なる「PAINKILLER」以降の続編なのではなく、それらの要素も取り入れつつ、非常にオールドスタイルのPRIESTを現代の手法で再現しようとした、そういう意気込みを感じるわけですよ。もうアルバム1曲目の "Judas Rising" のイントロを聴いた瞬間に俺、てっきり「SIN AFTER SIN」か「STAIND CLASS」でも聴いてるんじゃないか!?って錯覚に陥った程でして。続く "Deal With The Devil" や "Revolution"、"Worth Fighing For" にしたって「BRITISH STEEL」や「SCREAMING FOR VENGEANCE」、「DEFENDERS OF THE FAITH」 といった往年の名作に入ってそうなタイプの曲調であり、アレンジなんですよね。かと思えば現代的な "Demonizer" や "Hellrider" みたいな曲もあり、ちょっと往年のBLACK SABBATHLED ZEPPELINをPRIEST風様式美に仕上げた13分以上もある超大作 "Lochness" もある‥‥古くからPRIESTに慣れ親しんできた身からすれば、こんな作品は本当に久し振りなわけですよ‥‥リアルタイムで最初に聴いたアルバムが「DEFENDERS OF THE FAITH」だったんですね、俺。だから未だに一番好きなPRIESTのアルバムはこれで(そう、いくら「PAINKILLER」に当時衝撃を受けたからといっても、これを越えることはないですね、俺の中で)、20年経ってようやくあそこに再び戻ってきたような感じなんですよね、この「ANGEL OF RETRIBUTION」を聴いてると。

 多分「PAINKILLER」辺りから入った子、それ以降しかしらない子、あるいはリアルタイムで初めて「ロブのいるPRIEST」を体験する若い子達からすれば、これはつまらない、聴き所の少ない退屈な作品なのかもしれないけど、この作品こそが約40年近くに渡るブリティッシュ・ハードロック/ブリティッシュ・メタルの集大成のひとつなんですよ。奥義ですよもはや。それくらい言い切っちゃってもいいと思うよ。ここまで真正面からぶつかってこないでしょ、SABBATHもリッチー・ブラックモアも。かろうじてIRON MAIDENが頑張ってるくらいか。けど、まだPRIESTの域にまでは達してないよね。

 決して過去最高の傑作とは言い難いけどさ、俺はこれ大好きですよ。久し振りにヘヴィメタルのアルバムを聴いて「あーメタルってやっぱいいなー」って思えたもん。最近、こんな純粋なメタルの新譜を聴いてなかったから(何を聴いてもどこかモダンヘヴィネスだったりその辺の影響が垣間みれたし)、余計に新鮮なんだよね。これ、アメリカでも売れるといいねー。いや、売れるでしょう、世が世だしさ!



▼JUDAS PRIEST『ANGEL OF RETRIBUTION』
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投稿: 2005 03 05 12:00 午前 [2005年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2004年10月24日 (日)

とみぃ洋楽100番勝負(67)

●第67回:「Painkiller」 JUDAS PRIEST ('90)

 多分この年リリースされたアルバムの中で、最もショックを受けた1枚であり、最もショックを受けた1曲だと思います。1990年に聴いた楽曲(新旧問わず)だと、前のZEPの曲と1、2を争う勢いなんですが‥‥それくらいショックでかかったなぁ‥‥

 俺、前にも書いたように、中学〜高校の頃ってそんなにコテコテのヘヴィメタルバンド‥‥所謂「メタルの教科書」みたいなものが存在したとしたら、その1ページ目に出てきそうなIRON MAIDENやJUDAS PRIESTといったバンドをちゃんと通過してこなかったんですよね。いや、リリースされたものは聴いてたんですが。だからPRIESTも「DEFENDERS OF THE FAITH」も「TURBO」も「RAM IT DOWN」もちゃんと聴いてきてるんですよ、リリース当時に。けど、まぁカッコいいけど‥‥止まり。自分が好きなMETALLICAやSLAYERといったバンド達に大いなる影響を与えてきたにも関わらず、ね。

 ところが。この突然変異的アルバム「PAINKILLER」からの1曲目、"Painkiller" を初めて伊藤政則の深夜ラジオで聴いた瞬間‥‥鳥肌と冷や汗が同時に襲ってきたんですよ。なんじゃこりゃ、と。スラッシュじゃねぇか、スラッシュメタルじゃ! イントロでのドラムソロでまずやられて、続いて入るギターのアーミング、そしてヘヴィなリフと正しく金属音的なロブ・ハルフォードの歌声‥‥す、すげぇ。これが『Metal God』の異名を持つ重鎮バンドの底力か、と。本気で感動したんですよ。

 これを切っ掛けに、全アルバム買い漁ったし、来日が決まれば浪人中にも関わらず始発で青山チケットエージェンシーまで整理券貰いに行って青山墓地周辺に並ばされたり(当時は来日公演の告知が新聞発表された日の朝に整理券を発行して、その順番で優先的にチケットが買えたんですよ、若い子達は知らないだろうけど。今じゃネットとかあるから全然意味ないけどさ)。

 代々木体育館で観た'91年4月のライヴ、忘れられねーなぁ‥‥後にも先にも、あれが俺が観た唯一のJUDAS PRIESTだったし。その後、ロブが脱退してボーカルが変わって2度来日してるけど、当然俺は行ってないし。

 ところが。去年だったか今年だったか、彼等はこの「PAINKILLER」リリース時のメンバーに戻って、この夏から復活ライヴを行ってるんですよ。2005年1月にはこの編成による新作もリリースされるっていうし、春頃には来日の噂もあるし‥‥ええ、行きますよ。もう一度、この目に焼き付けてきますから。



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投稿: 2004 10 24 12:00 午前 [1990年の作品, Judas Priest, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003年7月14日 (月)

JUDAS PRIEST『DEMOLITION』(2001)

先日前任ボーカリスト、ロブ・ハルフォードの復帰が発表されたばかりのヘヴィメタル界のゴッド的存在、JUDAS PRIEST。来年2004年でバンドのデビュー30周年なんだそうで。そういうこともあっての『全盛期メンバーでの復活』ということになったんでしょうね。ただ、ここでいう全盛期ってのは'80年代の黄金期メンバーではなくて、あくまで'90年の名盤「PAINKILLER」発表時のメンバーってことなんですよね。ま、今更ドラマーをスコット・トラヴィス以外の人に戻すのもどうかと思うし、メンバー的には何にも問題ない、はずなんですが‥‥どうにも釈然としないわけで。何故なら、ロブと入れ替わるように脱退した二代目シンガー、ティム・リッパー・オーウェンズの存在が気になるからですよ。

今回紹介するアルバムは、現時点での最新オリジナルアルバムで、そのティムが加入して2作目となる2001年夏の作品「DEMOLITION」。実はリリース当時、よく聴き込まなかったんですよね‥‥アルバムリリース前後に丁度今の家に引っ越したので、そのドタバタで買ったはいいけど聴く暇ないまま忘れ去られてしまったという。尚かつ、そのままフジロックに行っちゃったりロッキンジャパンフェスに行っちゃったりしたもんだから‥‥そういう『メタルを聴き込むモード』になれなかったんですよね。

んで、今日このロブ復帰劇を知り、改めて聴いているんですが‥‥全然悪くないじゃん。むしろ前作「JUGULATOR」('97年)の数倍素晴らしい内容じゃないですか? メタルファンからすれば「‥‥今更何言ってんの!?」って憤慨するかもしれませんが、これが偽らざる正直な感想なんだから仕方ないです。ゴメンナサイ。

基本的に俺、プリーストは'80年代普通に聴いてきて、そこまで入れ込む程に思い入れがあるかと問われれば「‥‥別に」と答えちゃうような、そんな接し方だったわけですよ。ところが、'90年秋にリリースされた「PAINKILLER」。これで全てが変わっちゃうのね、俺の中で。とにかく聴き込んださ。んで、来日決まれば浪人生なのにも関わらず、青山チケットエージェンシーに予約整理券を貰う為に始発で行って並んだりして。そのくらい、当時19才だった俺に衝撃を与えた1枚だったわけですよ。

勿論、その頃には彼等の全作品は網羅していたし、「PAINKILLER」が全てだとは思わなかったんだけど、どうしてもこのアルバムがひとつの基準になってしまってたのは確か。仕方ないか。

だからね、その後の彼等‥‥ロブのFIGHTやTWOといったソロ・バンド、そしてティムが加入したプリーストに対して、どうしても本気ではのめり込めなかったのね。そりゃいいアルバムだとは思ったけどさ‥‥

そういう視点で見るとこの「DEMOLITION」というアルバムは、「PAINKILLER」とは全く異なる内容で、ああいうレベルには達していないと思う。でもね、プリーストという『息の長い、歴史のあるバンド』という観点から見ると、非常に安定した『2001年のプリースト』を見事に表現したアルバムだな、と思えるわけ。この違い、判っていただけるでしょうか?

確実に現代的な要素を取り入れつつ、その骨格を形成してるのは'74年にデビューして、'80年代にヘヴィメタルという音楽を普及させ、'90年に「PAINKILLER」という素晴らしいアルバムを作りだしたJUDAS PRIESTというバンドなわけ。つまり、現代的なサウンド・アレンジを取り入れつつも、その根底にあるものは何ら変わっていない、むしろ曲そのものは非常にプリースト的なんですよね。勿論、全てのサウンドが現代的というわけではなくて、所々に'80年代的‥‥「TURBO」('86年)や「RAM IT DOWN」('88年)といったアルバムの要素を感じさせるし、当然「PAINKILLER」で魅せた要素もあれば前作「JUGULATOR」的な要素もある。これって結局、前作をリリースしてツアーに次ぐツアーを重ね、過去の楽曲と新曲を同じように演奏し続けた結果なんじゃないかな、なんて思うんですけど‥‥ま、門外漢の意見なんですけどね。

個人的には速い曲がメインになっていない点(=ミドルヘヴィチューンが大半)、しかもそのミドルチューンが前作みたいに退屈じゃないこと、更に泣きのバラードが数曲収録されている点が大きいですね。これだけで評価がググンと上がってますし。そして、それらの楽曲を時には前任者をイメージさせる歌い方で、そしてその殆どで彼自身以外の何者でもないという歌唱を聴かせてくれるティムの表現力。このアルバム一番の肝はそこだと思うんですよね。

これに続くアルバムがどういう感じになるのか‥‥ロブのHALFORDもいい感じで成功してただけに、その融合となるような凄まじい内容になるのか‥‥リリースはまだまだ先の話ですが、これはちょっと注目に値する作品になるのだけは間違いないですね。



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投稿: 2003 07 14 03:31 午前 [2001年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2001年11月16日 (金)

FIGHT『WAR OF WORDS』(1993)

今回のテーマは「モダンヘヴィネス/ラウドロック好きにもアピールするHM/HR」ということで、元JUDAS PRIESTのボーカリスト、ロブ・ハルフォードがバンド脱退後に結成したFIGHTの、'93年に発表したファーストアルバム「WAR OF WORDS」を取り上げたい。

正直、今回のテーマで取り上げるべき作品は山程ある。今後、第2弾、第3弾としてこのテーマを続けると思うが、まず最初に「ヘヴィメタルの象徴」というべきシンガーが何故モダンヘヴィネス路線へと進んでいったのか‥‥この辺を考えてみると、非常に面白いのではないだろうか?

'90年秋にJUDAS PRIEST史上('90年当時)最もアグレッシヴな作品「PAINKILLER」をリリース、起死回生を果たした。若手メタルバンド(MEGADETHやPANTERA等)とツアーに回ったり「OPERATION ROCK'N'ROLL」というパッケージツアーではALICE COOPERやMOTORHEAD等と全米をサーキットしたりして、約1年近くに及ぶ長期ツアーを成功させた。

'92年頃、とある映画のサウンドトラックにロブはPANTERAのメンバーをバックに"Light Comes Out Of Black"というモダンヘヴィネス寄りの楽曲を発表。同じ頃、PRIESTはファストナンバーを集めたベスト盤の制作に乗り出す‥‥のだが、どこでどうなったか、'93年に入ってロブがソロアルバムを作っていること、そしてそれがバンド「FIGHT」へと変化していくこと、更にPRIEST脱退へと繋がっていく。

そうして出来上がった作品が、この「WAR OF WORDS」というアルバム。先のPANTERAとの共演を思い浮かべる、非常に当時のモダンヘヴィネス勢に影響を受けた作品となっている。勿論、そうはいってもそこはメタルゴッドの事、冒頭からいきなりハイトーンボイス炸裂の"Into The Pit"からスタートし、そのままノリのいい名曲"Nailed To The Gun"へと流れていく(この2曲は最近のHALFORDのツアーでも演奏されているので、自分のキャリアの中でも残すべき名曲だという思いがあるのだろう)。その後は、ミディアム~スローテンポの重い曲が大半を占める。

'90年代前半のロックシーンを支えたのは、METALLICAやPANTERAといったメタル寄りのラウドロック勢と、NIRVANAやPEARL JAM、SOUNDGARDEN、ALICE IN CHAINSといったシアトルからのグランジ組だったのはご存じだろう。'90年前後までのロックシーンを支えてきたHM/HRバンドは時代遅れとなり、次々と契約を切られるか、音楽性のシフトチェンジを強いられる。そんな中、IRON MAIDENを脱退したブルース・ディッキンソンはソロになって「SKUNK WORKS」というグランジ・プロジェクトを始めたり、再結成したDOKKENはDOORS的な色合いを見せつつも、実はPEARL JAMのHM版だったという復活を遂げる(しかもそこそこ成功してしまう)。MOTLEY CRUEはボーカルが代わったことをいいことに、「DR.FEELGOOD」から大衆性を薄めたハードコアなヘヴィロックを我々に打ち出す‥‥そう、一時代を築いたメタルバンド達は皆、生き残る為に必死だったのだ。

しかし、このロブの音楽的進化(あえてこう呼ばせてもらう)には、そういう「必死さ」「切羽詰まり感」があまり感じられなかった。むしろ「PAINKILLER」を更に一歩押し進めた/モダンにしたような魅力さえ見え隠れする。これはコアなPRIESTファンには否定されそうだが‥‥もしロブがPRIESTを脱退していなかったら、あの時期にJUDAS PRIESTは「WAR OF WORDS」に比較的近い作風のモダンヘヴィネス系アルバムを作っていたのではないだろうか?その後のPRIESTが「PAINKILLER」という名作から7年も経ってから「JUGULATOR」という、時代遅れスレスレのモダンヘヴィネス系アルバムを発表したことからも、そのことが伺えるような気がしてならない(逆に「JUGULATOR」というアルバムは、発表があと3年早かったらきっと名盤と呼ばれていたのかもしれない)。

ロブという人は、周りのブレイン(パートナー)さえしっかりしていれば、かなりの実力を発揮するアーティストだと思うのだ。PRIESTしかり、FIGHTのファーストしかり、今回のHALFORDしかり。しかし、FIGHTはセカンドアルバム「A SMALL DEADLY SPACE」をリリース後に空中分解してしまう。ファーストでのイニシアティヴを握っていたのがロブ本人で、周りの若手メンバーはそれをサポートする形で出来たのがあの名盤だった。しかし、セカンドではそれが逆転してしまった気がする。若手が引っ張る形でロブはそれに自分の色をつける‥‥結果出来たのが、ヘヴィでスロウな曲が中心の、訴えるものが少ない中途半端な作品だった。その後ロブは、トレント・レズナー(NINE INCH NAILS)のレーベルからTWOというバンドでデビューするものの、ここでもボブ・マーレットという人間が出しゃばったため、どの層に訴えているのかが不明の中途半端な1枚を残して解散となる(ここのギタリストが、後にMARILYN MANSONに加入することとなるジョン・5だということはご存じだろうか?)ロブ自身にそういうモダンロックへの憧れのようなものが強くあるのだと思うし、「TURBO」でシンセギターを導入したり、「RAM IT DOWN」「PAINKILLER」で早い曲を多めに入れたりスラッシュ寄りになったりという時代感覚は、ロブのみならず他のPRIESTのメンバーにも兼ね備わってるものなのかもしれない。ただ、それが若手よりもちょっとだけずれているだけで(笑)。いや、その「ズレ感覚」が結果オーライとなって、名作を作ってこれたのだと思うのだが。

昨今のヒップホップ寄りモダンヘヴィネスとは違うが、PANTERAやその手のハードコアな路線が好きな人に、間違いなくアピールする作品だと思う。個人的にはPRIEST脱退後のロブの仕事の中ではHALFORDのファーストとどっこいどっこいで好きな作品だ(音楽性が違うため、どっちの方が好きとは選べない)。



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投稿: 2001 11 16 04:15 午後 [1993年の作品, Fight, Judas Priest] | 固定リンク