2016/12/17

JUDAS PRIEST『TURBO』(1986)

JUDAS PRIESTが1986年に発表した、当時は問題作なんてレッテルを貼られたことでも知られる10thアルバム『TURBO』。その前作にあたる『DEFENDERS OF THE FAITH』からプリーストに足を踏み入れた人間にとって、「シンセサイズドギターを導入」「デジタル録音」「よりポップに」といったこの『TURBO』路線は受け入れがたいものだったことを、昨日のことのように覚えています。当時はまだ中学生。硬派こそが正義だと信じていたウブな時代です。

時は流れ、2012年2月。2009年の『LOUD PARK』での来日時にロブ・ハルフォードにインタビューする機会があったことから、続く2012年のジャパンツアーにも足を運ぶことができました。Zepp Tokyoと武道館の2公演を観たのですが、ここで演奏されたのが『TURBO』のオープニングトラック「Turbo Lover」。あれ、こんなにカッコよかったっけ? それが素直な感想で、「これ、もしかしたら……」と思い久しぶりにCDに手を伸ばしてみたら……。

全体的にポップな(というか、キャッチーなメロディを持つ)楽曲が多いのと、ギターオリエンテッドではなくてシンセの比率が高くなったことで勘違いしてたけど、偏見抜きに聴くと本当に優れた楽曲が並ぶアルバムだと思います。冒頭の「Turbo Lover」「Locked In」「Private Property」の流れは気持ち良いし、ポップな「Parental Guidance」も過去の「Living After Midnight」あたりと同系統のポップさだと思うし。かと思うと疾走感の強い「Rock You All Around The World」があり、叙情的なミドルチューン「Out In The Cold」もある。アメリカナイズされたワイルドな「Wild Nights, Hot & Crazy Days」、シーケンスさえ気にならなければひたすらカッコいい「Hot For Love」、そして“これぞジューダス!”な泣きメロを持つ「Reckless」で幕を降ろす。最高じゃないですか。ネガティヴな感情で接していたため、アルバムの本質を見過ごしてたのかな。若さって強いね。

先に述べたように、過去のジューダスには「Living After Midnight」や「Take On The World」のようなポップな楽曲もあり、それらはイギリスでシングルカットされた事実もあるわけです。もっと言えば、後には『PAINKILLER』のようにスラッシュメタルにすり寄ったアルバムも発表している。要するに、やることが極端すぎるんですよ。それがガチなメタルファンには時に好意的に受け入れられ、時には攻撃の材料となるだけの話。身にまとう装飾は作品ごとに変わるけど、軸にある本質は実は変わってないんだなと。

そうそう。2017年2月には『TURBO』の30周年記念エディションが発売されるとのこと。アルバム本編の最新リマスター版に当時のライブ音源(CD2枚組)を同梱したパッケージになるそうです。この頃のライブといえば、1987年にリリースされたライブアルバム『PRIEST…LIVE!』でも聴けますが、あれよりも長いフルサイズになるそうなので、こちらも楽しみに待ちたいと思います。



▼JUDAS PRIEST『TURBO』
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投稿: 2016 12 17 04:00 午前 [1986年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2015/01/16

Judas Priest『Screaming For Vengeance』(1982)

Judas Priestの映像をいろいろ見返していたら、自分がリアルタイムで体験できなかった頃のライブ映像に見入ってしまい……仕事を忘れて2時間くらいネットサーフを繰り返していました。自分が初めて生で体験したのは1991年の「Painkiller」を携えた来日公演(代々木体育館)だったので、それより前(「Defenders of the Faith」でのツアー)は観られなかったんですよね。そもそもリアルタイムで聴き始めたのは「Defenders of the Faith」ツアー後なので、行けるわけもなく……。

「Defenders of the Faith」でJudas Priestに出会って、次に聴いたのが「Screaming For Vengeance」なわけですよ。もうね、しばらくはこの2枚だけで生きていける……当時はそのくらい聴きまくった記憶があります。その頃はまだレコードの時代で、レンタルでも簡単に手に入ったのがこのへんだったってだけなんですが(「British Steel」あたりもあった気がするのですが、ほかにも聴かなきゃいけない / 聴きたい新作や旧譜がたくさんあったので、中学生の小遣いでは網羅することなんてできなかったわけです)。

「Screaming For Vengeance」はアナログで聴いたときの生々しい音がとにかく好きで、それをクロームのカセットテープにダビングして聴きまくってました。その“アナログ+カセット”で聴いたイメージが強く、実は90年代に入ってからCDで聴き返したときはちょっと違和感があったような……(同じことは「Defenders of the Faith」をCDで聴いたときにも感じました)。逆に「Turbo」や「Ram It Down」みたいなアルバムはCDで聴いたクリアなサウンドのほうが気に入った記憶もあり(まあ「Ram It Down」の頃になるとすでにCDしか出てなかったような気もしますが)。

その後、2000年前後にPriestの全作品がリマスタリング再発。音自体はよりクリアになりつつ、アナログ時代に聴いた厚みのある荒々しいサウンドが復活したような気が……って、単にCD音源に耳が慣れただけなのかな? とにかく、それくらい思い入れの強いアルバムなわけです、「Screaming For Vengeance」と「Defenders of the Faith」の2枚は。


で、本題はここから。「Screaming For Vengeance」ってアルバムは、本当に隙のないヘヴィメタルアルバムといいますか。捨て曲なし、全10曲(オープニングの「The Helion」がインストかつ次の「Electric Eye」への序章なので実質9曲)で40分欠けるくらいのトータルランニング。疾走感ある曲が並んでいて、ただヘヴィなだけじゃなくてしっかりメロディアス、しかもどの曲も4分前後で聴きやすい。ちょうどプログレとかDeep Purple、Rainbowあたりの長尺曲に馴染めなかった頃で、そこで出会ったこのアルバムの潔さに感動したのを今でも覚えてます。ぶっちゃけアルバムに1曲だけでいいんですよ、5分台の曲なんて。あとは3〜4分の曲でまとめて、全部で10曲あるかないかだったら最高。一番いいのは、46分のカセットにちゃんと収まる作品。A面B面それぞれ23分以内の作品ね。たまにあるんですよ、片面だけ20分欠けるくせに、もう片面は25分くらいあるやつが。そういう意味で「Screaming For Vengeance」という作品は、両面とも20分あるかないかというベスト中のベストだったわけです。

もちろん楽曲自体の完成度も素晴らしかったですよ。今聴いてもそのコンパクトさは圧巻といいますか。「British Steel」をUS向けに進化させた結果が「Screaming For Vengeance」なのかな、なんて勝手に思ってます。そこから再びブリティッシュ寄りに押し戻して“深化”させたのが「Defenders of the Faith」。結局今でもアルバムとしてよく聴くのはこの2枚なんです。「Painkiller」も聴く頻度は高いけど、この2枚ほどではないかなと。アナログでいうところのB面(「Night Crawler」以降)は先の3枚にも負けないくらい好きですけどね。

それでですね、80年代中頃にメタルにハマった人間は、その数年前にアメリカで「US Festival 1983」という数十万人集めたフェスがあったことを雑誌などで知るわけです。西新宿あたりのブート屋さんでそのへんの映像を見つけては、その観客の多さに驚かされるわけですが、数年前に発売された「Screaming For Vengeance」の30周年アニバーサリーエディションにはこの「US Festival 1983」でのPriest出演パートをほぼ収めたDVDが付属しています。日中の野外で演奏された12曲。「Screaming For Vengeance」をリリースしてアメリカでブレイクした時期の、脂の乗った演奏を楽しめるわけです。この時期の映像としては、過去にも「Live Vengeance '82」というDVDが発売されていて、「US Festival 1983」前年のライブをフルセットで楽しめますが、ここはぜひ伝説となった「US Festival 1983」での映像を名盤とともに楽しんでもらえたらなと思います。

3月に新作「Redeemer of Souls」を携えたジャパンツアーを行うJudas Priest。同時期には「Defenders of the Faith」30周年アニバーサリーエディションのリリースも控えています。個人的には「Redeemer of Souls」を「70年代〜80年代初頭に立ち返ったかのような楽曲を現代のテクニックとサウンドで表現した」作品と捉えているので、来日公演に行こうと思ってる人には「British Steel」「Screaming For Vengeance」「Defenders of the Faith」の3作はぜひ聴いておいてもらいたいと思っています。というか、これから「Screaming For Vengeance」に出会える人がいるかと思うと本当に羨ましいなと……。



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投稿: 2015 01 16 12:16 午前 [1982年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

Judas Priestの私的ベスト10

昨年リリースされた「Redeemer of Souls」も好評、今年3月には武道館公演を含むジャパンツアーが控えているJudas Priestについても私的ベスト10をこの流れでセレクトしてみようと思います。個人的には「Jugulator」も「Demolition」も嫌いじゃないので、ティム・リッパー・オーウェンズ時代の楽曲も含めた、現時点での“私的ベスト10”です。

1. Dissident Aggressor

2. Beyond the Realms of Death

3. Steeler

4. The Hellion / Electric Eye

5. (Take These) Chains

6. The Sentinel

7. Turbo Lover

8. Blood Red Skies

9. Painkiller

10. Jugulator


ベスト10には選んでないけど、MVとして好きなのは「Hot Rockin'」「Freewheel Burning」「Breaking The Law」です。やるならここまでふざけましょう。


Hot Rockin'

Freewheel Burning

Breaking The Law


昨年の10枚およびその次点10枚には選出しませんでしたが、今聴くと「Redeemer of Souls」ってめちゃめちゃ良質なハードロックアルバムですね。ヘヴィメタルではなく、あえてハードロックと呼びたい、そんな1枚。最初に聴いたときは「70年代〜80年代初頭を思わせる作風で、ロブの現在の声域を考えればここに戻らざるを得ないよな……」とネガティブに捉えがちだったんですが、聴き込めば聴き込むほど普遍性のある良質なハードロック作品ではないかと思えてきたんです。前回の来日公演、武道館とZepp Tokyoの2公演行ったので今回はいいかな?なんて思ってたんですが、新曲を生で聴いてみたいなあ……せっかくなので武道館とEX THEATERあたりで。



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投稿: 2015 01 16 12:02 午前 [Judas Priest, 「私的ベスト10」] | 固定リンク

2009/10/30

現在発売中の「TV Bros.」でメタル特集を執筆しました

弊社の業務以外にも外仕事として、定期的にいろんな原稿を書いていたりするんですが(過去にはYAMAHA「MySound」内のメタルコーナー「Lazy」でも執筆してましたが、もう閉鎖しちゃうんですよね。もしかしたらテキストだけでも、こちらに補完するかもしれません)、今回はちょっとガッツリとやった仕事があるので、ご紹介したいと思います。

10月28日発売のテレビ雑誌「TV Bros.」最新号の巻頭8ページ特集「誌上初のHEAVY METAL大特集!たかがメタル されどメタル」で、ライター仕事をしました。ロブ・ハルフォードへのインタビュー、ANVILへのインタビュー、元TOY'S FACTORYの宮本さんへのインタビューのほか、「LOUD PARK 09」レポート(プリーストの写真付き)、「やはりタダモノではない!? メタル列伝666連発」という読み物執筆が僕担当です。ほかはブロスのライターさんがTHE 冠の冠徹弥さんお宅訪問とか、メタル・バラード列伝とか執筆してまして、こっちも面白いです。

表紙がJUDAS PRIESTのフロント3人(ロブ、K.K.ダウニング、グレン・ティプトン)というのが笑えます。「BURRN!」も真っ青です。ていうか、その「BURRN!」編集部の奥野さんも取材に応じてくれてます。

まさか自分がロブ・ハルフォードとインタビューする日が来るなんて、まったく想像できてなかったし、そんなことあるはずないと思ってたんですが(そのへんは、特集の冒頭にも綴ってますが)、いやぁ……貴重な体験をさせていただきました。

TOKYONEWS WebStore

海外のアーティストというと、過去にはAVENGED SEVENFOLDのギタリスト2名にもインタビューしたことがありましたが、あの比じゃないですねマジで。逆に、先にロブと対談したおかげで翌日のANVILは非常にやりやすかったです。朝イチの取材だったので、リップスのエンジンがかかるまでにちょっと時間を要しましたが(ロブ・ライナーは映画どおりのイメージで、とてもクールなオッサンでした)。

いやいや……ANVIL、現在公開中の映画「アンヴィル!夢を諦めきれない男たち」は絶対に観たほうがいいですよ! 特にここを普段から覗いてくれているような人たちに、絶対に響く映画なので。僕は公開前に3度も観てしまいましたが……何度観ても、最初はゲラゲラ笑っていて、終盤にホロッとしてしまう。非常によくできた映画です。これ、ロックとかメタルとか興味ない人が観ても通じる内容だし(メタルをほかのものに置き換えれば、万人に通ずる問題なのです)、本当にひとりでも多くの人に観てもらいたいです。

正直、ANVILのニューアルバムは「う〜ん……」って内容だと思うけど、ラウパーでのライブは素晴らしかったです。そうですね、ラウパーの感想も残しておかないとね。

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メタルネタからちょっと離れて。今週末10月31日(土)に、実に8カ月ぶりとなる「AIN'T IT FUN」をやります。もう18回目なんですね。20回目はちょっと盛大にやらないとね。

■「AIN'T IT FUN」Vol.18 〜今年のハロウィンはAIFに行こうか〜
□日時:2009年10月31日(土)18:00〜22:00
□会場:下北沢DJ BAR altoto
□料金:2,000円(2ドリンク付)
□DJ:AIF CREW(とみぃ、津田大介、showhey、のりしろ)
□guest DJ:臼山田洋(オール5)
□VJ:キキ(AIF)
□ブログ:http://blog.livedoor.jp/aint_it_fun/
□mixiコミュ:http://c.mixi.jp/aif
□Timetable:
 18:00〜18:00 とみぃ
 18:30〜19:00 showhey
 19:00〜19:30 津田大介
 19:30〜20:00 臼山田洋(オール5)
 20:00〜20:40 のりしろ
 20:40〜21:20 とみぃ
 21:20〜22:00 Shabu to Shabu(Back to Back)

詳しくは、オフィシャルブログのほうを観てもらえると助かります。今回の裏テーマとか、サブタイトルの意味とか、あれこれ書いてます。

ま、個人的には今回も女子アイドル、束ものアイドル曲(AKB48、アイドリング!!!、一部のハロプロとか)が中心になると思いますので。気が向いたらHELLOWEENとかJUDAS PRIESTとかかけたりしてね。

投稿: 2009 10 30 04:29 午前 [Judas Priest, LOUD PARK, 「DJ / イベント出演」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2005/03/05

JUDAS PRIEST『ANGEL OF RETRIBUTION』(2005)

テレビ東京:新番組「ヘビメタさん」 司会に熊田曜子ら(MSN-Mainichi INTERRACTIVE)

 ヘヴィメタルを愛する者にとって、「ヘビメタ」という呼称は単なる軽蔑語というか、ホントにマイナスのイメージしかないんですよね。それは恐らく‥‥1980年代半ばに放送された某番組に出演した、日本のインディーメタルバンド達(その中には当時まだマイナーだった「X」の姿も)が笑いのネタとされ、例えば「早朝ヘビメタ(寝てる芸能人の前でいきなり演奏して起こす)」「ヘビメタ運動会(文字通り、ステージ衣装のまま普通に運動会)」「ヘビメタ歌合戦(横森正三氏のアコーディオンをバックにメタルシンガーが熱唱)」なんていうコーナーで色モノとして使われ、その奇抜なファッションや、自らをジミーだのポールだのと呼ぶバカっぽさが更に拍車を掛け、世間の笑い者になってたんだよね‥‥(と、遠い目)

 当時高校生だった俺は普通にメタルキッズでしたよ。いや、メタルだけしか聴いてなかったってことはなかったけど、やはり一番好きなジャンルはハードロックやヘヴィメタルだったし。だから、出演するバンド達のやりたい事とかやってる事も理解できたのね。と同時に、それをブラウン管を通して観る事で、如何にそれらが滑稽かってことも理解してて。普通に笑ってたもんな、テレビ観て。勿論魅せ方も上手かったわけだけどさ。

 そんなヘビメタが、深夜とはいえ再び地上波の深夜に帰ってきますよ‥‥15年振りくらいに。まぁテレ東は昔からこういうの、結構やってきてたし、当たるとホントに(カルト的に)面白いの連発してたから、個人的には期待してます。「エアギター勝ち抜きバトル」、楽しそうだなー。

 さてさて。そんな「ヘビメタ」ですが、最新のオリコン・アルバム週間チャートで珍事が発生してます。先頃リリースされたJUDAS PRIESTの約4年振り(オリジナルシンガーであるロブ・ハルフォード参加作としては、'90年の「PAINKILLER」以来、約14年半振り)の新作「ANGEL OF RETRIBUTION」が、チャートのトップ10入りを果たしてしまったのです。勿論、過去にも海外のメタルバンド/ハードロックバンドが日本のオリコンチャートでトップ10入り、あるいは1位を獲得してしまったこともありました。イングヴェイ・マルムスティーンの「FIRE AND ICE」だったり、BON JOVIの「THESE DAYS」だったり、MR.BIGの「HEY MAN」だったり。しかし、それも全て10年以上も前のお話。21世紀において「ヘビメタ」は単なる時代遅れの『終った』ジャンルだったわけですよ、コア層以外にとって。

 しかし、PRIESTにロブが復帰したことでメディアやファンが大騒ぎし、昨年行われた復活ライヴツアーで見せつけた貫禄振りを伝え聞いたファンが大騒ぎし、今度の新作は出る前から大騒ぎだったわけですよ‥‥曰く、『「PAINKILLER」に続くべきオリジナルアルバムの完成』等々と。

 んで、実際に完成したアルバムを聴いて‥‥非常に懐かしい香りがプンプンして、聴いてるこっちの顔がニヤケてしまう程に首尾一貫の鋼鉄魂を感じさせる作品集だな、と感じたわけです。ただこれ、決して「PAINKILLER」の後に続くような作品集ではないですよね。そこだけは力説しておきます。間違いなく「PAINKILLER」に続くアルバムは「JUGULATOR」であり、「DEMOLITION」なわけですよ。じゃあ今度のアルバムは「DEMOLITION」に続く作品かというと、イエスでもありノーでもあるかな、と。

 イエスというのは一部の楽曲に関して、前作で再び復活したアコースティックを導入した叙情性豊かなスロウソングが今回も取り入れられている点かな。"Angel" や "Eulogy" といった辺りは、そう言えなくもないでしょう。'80年代の作品辺りからこういったスロウソングを聴く機会がめっきり減っていたので、個人的には非常に嬉しいですね(しかもそれをロブの声で聴けるんだから)。

 そしてノーというのは‥‥この作品が単なる「前作の延長線上作品」なのではなく、これまでのJUDAS PRIEST史を総括するような作風だということでしょうか。つまり、単なる「PAINKILLER」以降の続編なのではなく、それらの要素も取り入れつつ、非常にオールドスタイルのPRIESTを現代の手法で再現しようとした、そういう意気込みを感じるわけですよ。もうアルバム1曲目の "Judas Rising" のイントロを聴いた瞬間に俺、てっきり「SIN AFTER SIN」か「STAIND CLASS」でも聴いてるんじゃないか!?って錯覚に陥った程でして。続く "Deal With The Devil" や "Revolution"、"Worth Fighing For" にしたって「BRITISH STEEL」や「SCREAMING FOR VENGEANCE」、「DEFENDERS OF THE FAITH」 といった往年の名作に入ってそうなタイプの曲調であり、アレンジなんですよね。かと思えば現代的な "Demonizer" や "Hellrider" みたいな曲もあり、ちょっと往年のBLACK SABBATHとLED ZEPPELINをPRIEST風様式美に仕上げた13分以上もある超大作 "Lochness" もある‥‥古くからPRIESTに慣れ親しんできた身からすれば、こんな作品は本当に久し振りなわけですよ‥‥リアルタイムで最初に聴いたアルバムが「DEFENDERS OF THE FAITH」だったんですね、俺。だから未だに一番好きなPRIESTのアルバムはこれで(そう、いくら「PAINKILLER」に当時衝撃を受けたからといっても、これを越えることはないですね、俺の中で)、20年経ってようやくあそこに再び戻ってきたような感じなんですよね、この「ANGEL OF RETRIBUTION」を聴いてると。

 多分「PAINKILLER」辺りから入った子、それ以降しかしらない子、あるいはリアルタイムで初めて「ロブのいるPRIEST」を体験する若い子達からすれば、これはつまらない、聴き所の少ない退屈な作品なのかもしれないけど、この作品こそが約40年近くに渡るブリティッシュ・ハードロック/ブリティッシュ・メタルの集大成のひとつなんですよ。奥義ですよもはや。それくらい言い切っちゃってもいいと思うよ。ここまで真正面からぶつかってこないでしょ、SABBATHもリッチー・ブラックモアも。かろうじてIRON MAIDENが頑張ってるくらいか。けど、まだPRIESTの域にまでは達してないよね。

 決して過去最高の傑作とは言い難いけどさ、俺はこれ大好きですよ。久し振りにヘヴィメタルのアルバムを聴いて「あーメタルってやっぱいいなー」って思えたもん。最近、こんな純粋なメタルの新譜を聴いてなかったから(何を聴いてもどこかモダンヘヴィネスだったりその辺の影響が垣間みれたし)、余計に新鮮なんだよね。これ、アメリカでも売れるといいねー。いや、売れるでしょう、世が世だしさ!



▼JUDAS PRIEST「ANGEL OF RETRIBUTION」(amazon:日本盤US盤

投稿: 2005 03 05 12:00 午前 [2005年の作品, Judas Priest] | 固定リンク | コメント (1) | トラックバック

2004/10/24

とみぃ洋楽100番勝負(67)

●第67回:「Painkiller」 JUDAS PRIEST ('90)

 多分この年リリースされたアルバムの中で、最もショックを受けた1枚であり、最もショックを受けた1曲だと思います。1990年に聴いた楽曲(新旧問わず)だと、前のZEPの曲と1、2を争う勢いなんですが‥‥それくらいショックでかかったなぁ‥‥

 俺、前にも書いたように、中学〜高校の頃ってそんなにコテコテのヘヴィメタルバンド‥‥所謂「メタルの教科書」みたいなものが存在したとしたら、その1ページ目に出てきそうなIRON MAIDENやJUDAS PRIESTといったバンドをちゃんと通過してこなかったんですよね。いや、リリースされたものは聴いてたんですが。だからPRIESTも「DEFENDERS OF THE FAITH」も「TURBO」も「RAM IT DOWN」もちゃんと聴いてきてるんですよ、リリース当時に。けど、まぁカッコいいけど‥‥止まり。自分が好きなMETALLICAやSLAYERといったバンド達に大いなる影響を与えてきたにも関わらず、ね。

 ところが。この突然変異的アルバム「PAINKILLER」からの1曲目、"Painkiller" を初めて伊藤政則の深夜ラジオで聴いた瞬間‥‥鳥肌と冷や汗が同時に襲ってきたんですよ。なんじゃこりゃ、と。スラッシュじゃねぇか、スラッシュメタルじゃ! イントロでのドラムソロでまずやられて、続いて入るギターのアーミング、そしてヘヴィなリフと正しく金属音的なロブ・ハルフォードの歌声‥‥す、すげぇ。これが『Metal God』の異名を持つ重鎮バンドの底力か、と。本気で感動したんですよ。

 これを切っ掛けに、全アルバム買い漁ったし、来日が決まれば浪人中にも関わらず始発で青山チケットエージェンシーまで整理券貰いに行って青山墓地周辺に並ばされたり(当時は来日公演の告知が新聞発表された日の朝に整理券を発行して、その順番で優先的にチケットが買えたんですよ、若い子達は知らないだろうけど。今じゃネットとかあるから全然意味ないけどさ)。

 代々木体育館で観た'91年4月のライヴ、忘れられねーなぁ‥‥後にも先にも、あれが俺が観た唯一のJUDAS PRIESTだったし。その後、ロブが脱退してボーカルが変わって2度来日してるけど、当然俺は行ってないし。

 ところが。去年だったか今年だったか、彼等はこの「PAINKILLER」リリース時のメンバーに戻って、この夏から復活ライヴを行ってるんですよ。2005年1月にはこの編成による新作もリリースされるっていうし、春頃には来日の噂もあるし‥‥ええ、行きますよ。もう一度、この目に焼き付けてきますから。



▼JUDAS PRIEST「PAINKILLER」(amazon

投稿: 2004 10 24 12:00 午前 [1990年の作品, Judas Priest, 「100番勝負」] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

2003/07/14

JUDAS PRIEST『DEMOLITION』(2001)

先日前任ボーカリスト、ロブ・ハルフォードの復帰が発表されたばかりのヘヴィメタル界のゴッド的存在、JUDAS PRIEST。来年2004年でバンドのデビュー30周年なんだそうで。そういうこともあっての『全盛期メンバーでの復活』ということになったんでしょうね。ただ、ここでいう全盛期ってのは'80年代の黄金期メンバーではなくて、あくまで'90年の名盤「PAINKILLER」発表時のメンバーってことなんですよね。ま、今更ドラマーをスコット・トラヴィス以外の人に戻すのもどうかと思うし、メンバー的には何にも問題ない、はずなんですが‥‥どうにも釈然としないわけで。何故なら、ロブと入れ替わるように脱退した二代目シンガー、ティム・リッパー・オーウェンズの存在が気になるからですよ。

今回紹介するアルバムは、現時点での最新オリジナルアルバムで、そのティムが加入して2作目となる2001年夏の作品「DEMOLITION」。実はリリース当時、よく聴き込まなかったんですよね‥‥アルバムリリース前後に丁度今の家に引っ越したので、そのドタバタで買ったはいいけど聴く暇ないまま忘れ去られてしまったという。尚かつ、そのままフジロックに行っちゃったりロッキンジャパンフェスに行っちゃったりしたもんだから‥‥そういう『メタルを聴き込むモード』になれなかったんですよね。

んで、今日このロブ復帰劇を知り、改めて聴いているんですが‥‥全然悪くないじゃん。むしろ前作「JUGULATOR」('97年)の数倍素晴らしい内容じゃないですか? メタルファンからすれば「‥‥今更何言ってんの!?」って憤慨するかもしれませんが、これが偽らざる正直な感想なんだから仕方ないです。ゴメンナサイ。

基本的に俺、プリーストは'80年代普通に聴いてきて、そこまで入れ込む程に思い入れがあるかと問われれば「‥‥別に」と答えちゃうような、そんな接し方だったわけですよ。ところが、'90年秋にリリースされた「PAINKILLER」。これで全てが変わっちゃうのね、俺の中で。とにかく聴き込んださ。んで、来日決まれば浪人生なのにも関わらず、青山チケットエージェンシーに予約整理券を貰う為に始発で行って並んだりして。そのくらい、当時19才だった俺に衝撃を与えた1枚だったわけですよ。

勿論、その頃には彼等の全作品は網羅していたし、「PAINKILLER」が全てだとは思わなかったんだけど、どうしてもこのアルバムがひとつの基準になってしまってたのは確か。仕方ないか。

だからね、その後の彼等‥‥ロブのFIGHTやTWOといったソロ・バンド、そしてティムが加入したプリーストに対して、どうしても本気ではのめり込めなかったのね。そりゃいいアルバムだとは思ったけどさ‥‥

そういう視点で見るとこの「DEMOLITION」というアルバムは、「PAINKILLER」とは全く異なる内容で、ああいうレベルには達していないと思う。でもね、プリーストという『息の長い、歴史のあるバンド』という観点から見ると、非常に安定した『2001年のプリースト』を見事に表現したアルバムだな、と思えるわけ。この違い、判っていただけるでしょうか?

確実に現代的な要素を取り入れつつ、その骨格を形成してるのは'74年にデビューして、'80年代にヘヴィメタルという音楽を普及させ、'90年に「PAINKILLER」という素晴らしいアルバムを作りだしたJUDAS PRIESTというバンドなわけ。つまり、現代的なサウンド・アレンジを取り入れつつも、その根底にあるものは何ら変わっていない、むしろ曲そのものは非常にプリースト的なんですよね。勿論、全てのサウンドが現代的というわけではなくて、所々に'80年代的‥‥「TURBO」('86年)や「RAM IT DOWN」('88年)といったアルバムの要素を感じさせるし、当然「PAINKILLER」で魅せた要素もあれば前作「JUGULATOR」的な要素もある。これって結局、前作をリリースしてツアーに次ぐツアーを重ね、過去の楽曲と新曲を同じように演奏し続けた結果なんじゃないかな、なんて思うんですけど‥‥ま、門外漢の意見なんですけどね。

個人的には速い曲がメインになっていない点(=ミドルヘヴィチューンが大半)、しかもそのミドルチューンが前作みたいに退屈じゃないこと、更に泣きのバラードが数曲収録されている点が大きいですね。これだけで評価がググンと上がってますし。そして、それらの楽曲を時には前任者をイメージさせる歌い方で、そしてその殆どで彼自身以外の何者でもないという歌唱を聴かせてくれるティムの表現力。このアルバム一番の肝はそこだと思うんですよね。

これに続くアルバムがどういう感じになるのか‥‥ロブのHALFORDもいい感じで成功してただけに、その融合となるような凄まじい内容になるのか‥‥リリースはまだまだ先の話ですが、これはちょっと注目に値する作品になるのだけは間違いないですね。



▼JUDAS PRIEST『DEMOLITION』
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投稿: 2003 07 14 03:31 午前 [2001年の作品, Judas Priest] | 固定リンク

2001/11/16

FIGHT『WAR OF WORDS』(1993)

今回のテーマは「モダンヘヴィネス/ラウドロック好きにもアピールするHM/HR」ということで、元JUDAS PRIESTのボーカリスト、ロブ・ハルフォードがバンド脱退後に結成したFIGHTの、'93年に発表したファーストアルバム「WAR OF WORDS」を取り上げたい。

正直、今回のテーマで取り上げるべき作品は山程ある。今後、第2弾、第3弾としてこのテーマを続けると思うが、まず最初に「ヘヴィメタルの象徴」というべきシンガーが何故モダンヘヴィネス路線へと進んでいったのか‥‥この辺を考えてみると、非常に面白いのではないだろうか?

'90年秋にJUDAS PRIEST史上('90年当時)最もアグレッシヴな作品「PAINKILLER」をリリース、起死回生を果たした。若手メタルバンド(MEGADETHやPANTERA等)とツアーに回ったり「OPERATION ROCK'N'ROLL」というパッケージツアーではALICE COOPERやMOTORHEAD等と全米をサーキットしたりして、約1年近くに及ぶ長期ツアーを成功させた。

'92年頃、とある映画のサウンドトラックにロブはPANTERAのメンバーをバックに"Light Comes Out Of Black"というモダンヘヴィネス寄りの楽曲を発表。同じ頃、PRIESTはファストナンバーを集めたベスト盤の制作に乗り出す‥‥のだが、どこでどうなったか、'93年に入ってロブがソロアルバムを作っていること、そしてそれがバンド「FIGHT」へと変化していくこと、更にPRIEST脱退へと繋がっていく。

そうして出来上がった作品が、この「WAR OF WORDS」というアルバム。先のPANTERAとの共演を思い浮かべる、非常に当時のモダンヘヴィネス勢に影響を受けた作品となっている。勿論、そうはいってもそこはメタルゴッドの事、冒頭からいきなりハイトーンボイス炸裂の"Into The Pit"からスタートし、そのままノリのいい名曲"Nailed To The Gun"へと流れていく(この2曲は最近のHALFORDのツアーでも演奏されているので、自分のキャリアの中でも残すべき名曲だという思いがあるのだろう)。その後は、ミディアム~スローテンポの重い曲が大半を占める。

'90年代前半のロックシーンを支えたのは、METALLICAやPANTERAといったメタル寄りのラウドロック勢と、NIRVANAやPEARL JAM、SOUNDGARDEN、ALICE IN CHAINSといったシアトルからのグランジ組だったのはご存じだろう。'90年前後までのロックシーンを支えてきたHM/HRバンドは時代遅れとなり、次々と契約を切られるか、音楽性のシフトチェンジを強いられる。そんな中、IRON MAIDENを脱退したブルース・ディッキンソンはソロになって「SKUNK WORKS」というグランジ・プロジェクトを始めたり、再結成したDOKKENはDOORS的な色合いを見せつつも、実はPEARL JAMのHM版だったという復活を遂げる(しかもそこそこ成功してしまう)。MOTLEY CRUEはボーカルが代わったことをいいことに、「DR.FEELGOOD」から大衆性を薄めたハードコアなヘヴィロックを我々に打ち出す‥‥そう、一時代を築いたメタルバンド達は皆、生き残る為に必死だったのだ。

しかし、このロブの音楽的進化(あえてこう呼ばせてもらう)には、そういう「必死さ」「切羽詰まり感」があまり感じられなかった。むしろ「PAINKILLER」を更に一歩押し進めた/モダンにしたような魅力さえ見え隠れする。これはコアなPRIESTファンには否定されそうだが‥‥もしロブがPRIESTを脱退していなかったら、あの時期にJUDAS PRIESTは「WAR OF WORDS」に比較的近い作風のモダンヘヴィネス系アルバムを作っていたのではないだろうか?その後のPRIESTが「PAINKILLER」という名作から7年も経ってから「JUGULATOR」という、時代遅れスレスレのモダンヘヴィネス系アルバムを発表したことからも、そのことが伺えるような気がしてならない(逆に「JUGULATOR」というアルバムは、発表があと3年早かったらきっと名盤と呼ばれていたのかもしれない)。

ロブという人は、周りのブレイン(パートナー)さえしっかりしていれば、かなりの実力を発揮するアーティストだと思うのだ。PRIESTしかり、FIGHTのファーストしかり、今回のHALFORDしかり。しかし、FIGHTはセカンドアルバム「A SMALL DEADLY SPACE」をリリース後に空中分解してしまう。ファーストでのイニシアティヴを握っていたのがロブ本人で、周りの若手メンバーはそれをサポートする形で出来たのがあの名盤だった。しかし、セカンドではそれが逆転してしまった気がする。若手が引っ張る形でロブはそれに自分の色をつける‥‥結果出来たのが、ヘヴィでスロウな曲が中心の、訴えるものが少ない中途半端な作品だった。その後ロブは、トレント・レズナー(NINE INCH NAILS)のレーベルからTWOというバンドでデビューするものの、ここでもボブ・マーレットという人間が出しゃばったため、どの層に訴えているのかが不明の中途半端な1枚を残して解散となる(ここのギタリストが、後にMARILYN MANSONに加入することとなるジョン・5だということはご存じだろうか?)ロブ自身にそういうモダンロックへの憧れのようなものが強くあるのだと思うし、「TURBO」でシンセギターを導入したり、「RAM IT DOWN」「PAINKILLER」で早い曲を多めに入れたりスラッシュ寄りになったりという時代感覚は、ロブのみならず他のPRIESTのメンバーにも兼ね備わってるものなのかもしれない。ただ、それが若手よりもちょっとだけずれているだけで(笑)。いや、その「ズレ感覚」が結果オーライとなって、名作を作ってこれたのだと思うのだが。

昨今のヒップホップ寄りモダンヘヴィネスとは違うが、PANTERAやその手のハードコアな路線が好きな人に、間違いなくアピールする作品だと思う。個人的にはPRIEST脱退後のロブの仕事の中ではHALFORDのファーストとどっこいどっこいで好きな作品だ(音楽性が違うため、どっちの方が好きとは選べない)。



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投稿: 2001 11 16 04:15 午後 [1993年の作品, Fight, Judas Priest] | 固定リンク