KADAVAR『ROUGH TIMES』(2017)
ドイツ・ベルリン出身のトリオバンドKADAVARによる通算4作目のスタジオアルバム。2010年結成とキャリアはまだ浅いのですが、それに反して音はかなり濃厚です。僕自身は2013年発売の2ndアルバム『ABRA KADAVAR』は去年、ストリーミングサービスで触れていたのですが、“今のバンド”とは思えないほどにレイドバックした不可思議なサウンドにギョッとしたことをよく覚えています。
そういった感じで、改めて新鮮な気持ちで接した彼らの新作。サウンド、演奏ともに70年代ハーロドック/サイケデリックロック的なスタイルで、録音も当時を再現したかのようなヴィンテージ感が感じられ、再生方法によっては本当に“今のバンド”だって気づかないんじゃないでしょうか。
「○○に似てる」という表現はとても簡単だと思いますが、むしろそういう先入観なしで聴いたほうが純粋に楽しめる作品だと思います。ジャンル的には確かにオールドスタイルのハードロックに、スペーシーなサイケデリックテイストをまぶしたもので、アレンジも決して凝りに凝ったものではない。なんでしょう、素材の味を活かすために余計な味付けを加えないこだわりといいましょうか、そういうシンプルさが本作からは伝わってきます。
また、彼らのサウンドってストーナーロックにも通ずるものがあるなと。BLACK SABBATH的という意味ではなく、80年代以降のストーナーロックと呼ばれるバンドたちの系譜にあるという点で、共通点が多いと思うのです。あ、あと(「○○に似てる」という表現はしないと言っておきながらアレですが)、BUDGIEあたりに似たプログレ感も感じられますよね。ゴリゴリしたハードロックを軸にしながらも、どこかプログレッシブというところも共通しているし。その感覚をもっとヨーロピアン、そう、ドイツ寄りにするとKADAVARみたいな音になるのかなと。そう思いました。
にしても、このビジュアル……MV含め、これを全部モノクロで編集して、音もモノラルに変換したら、完全に勘違いしちゃいますね。どういった生活を送ったら、この音に到達するのか。ぜひ機会があったら聞いてみたいものです。
ちなみに、日本盤にはボーナストラックとしてTHE BEATLES「Helter Skelter」のカバーを追加収録。このセレクト、普通っちゃあ普通ですけど、アルバムを通して聴くとこのカバーが一番メジャー感の強い曲というのもまた笑えます(微笑ましいという意味で)。
▼KADAVAR『ROUGH TIMES』
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