KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』(2017)
前作『48:13』(2014年)から3年ぶり、通算6枚目のオリジナルアルバム。先行シングル「You're In Love With A Psycho」のメジャー感が強いポップさに若干引きつつも、アルバムは別に全体がそういう作風というわけではなく、従来さしさもありつつ新しい挑戦もありで、思う存分楽しめました。
ブリットポップ以降のUKロックの系譜をしっかり引き継ぎつつ、現代的なヒップホップやエレクトロなど毎回流行もそこそこ取り入れてきた彼ら。このアルバムでもその貪欲さは薄れておらず、1曲目「Ill Ray (The King)」から“らしさ”と“新しさ”が全開です。続く「You're In Love With A Psycho」は最初に書いたとおりで、これもある種の“新しさ”なわけで、そこからアグレッシヴな「Twentyfourseven」へとつないでいく流れはさすがの一言。
そこから、再びポップでドリーミーな「Good Fight」へと続き、アコギの音色が心地よい「Wasted」、ブラスセクションを取り入れたアンセミックな「Comeback Kid」(サッカーっぽいなと思ったら、実際サッカーゲームのサントラに採用されたのね)、ブルージーなソウルナンバー「The Party Never Ends」、ディスコ調のダンスチューン「Are You Looking For Action?」(8分半の大作!)など聴き応えのある楽曲が続きます。
OASIS以降のUKギターロック感とブラックミュージックからの影響を伺わせるカラーは相変わらずなのですが、今回は時代がそうさせるのか、ちょっとミニマルな方向に向かってなくもないかなという気がして。いや、もともとそんなに音数を詰め込んで派手にカマすバンドではなかったけど、今作のテイストは昨今の流行に乗りつつ、そこで独自性を見せているように感じられました。
本当はアルバム全編、もっとギターリフでガツンと聴かせてほしいなという願望もあったけど(「Bless This Acid House」みたいな曲がもっと欲しかったと)、これはこれで全然アリ。ギターは自己主張の道具ではなくて、ここでは調味料のひとつでしかない。2017年という時代を考えれば、もはやこれが正解なんでしょうね。
ちなみに本作、初回限定盤には2016年の英・レスター「キング・パワー・スタジアム」でのライブをまとめたボーナスディスク付き。代表曲満載の全16曲、フルライブを楽しむことができます。意外と抜けてるヒット曲もあるので、そう考えるとこのバンドも長いこと活動してるんだなと思わせられたわけです(実際はまだ12、3年くらいなんだっけ)。なので、購入するなら迷わず2CD版で。
▼KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』
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