2017/07/05

KASABIAN『FOR CRYING OUT LOUD』(2017)

前作『48:13』(2014年)から3年ぶり、通算6枚目のオリジナルアルバム。先行シングル「You're In Love With A Psycho」のメジャー感が強いポップさに若干引きつつも、アルバムは別に全体がそういう作風というわけではなく、従来さしさもありつつ新しい挑戦もありで、思う存分楽しめました。

ブリットポップ以降のUKロックの系譜をしっかり引き継ぎつつ、現代的なヒップホップやエレクトロなど毎回流行もそこそこ取り入れてきた彼ら。このアルバムでもその貪欲さは薄れておらず、1曲目「Ill Ray (The King)」から“らしさ”と“新しさ”が全開です。続く「You're In Love With A Psycho」は最初に書いたとおりで、これもある種の“新しさ”なわけで、そこからアグレッシヴな「Twentyfourseven」へとつないでいく流れはさすがの一言。

そこから、再びポップでドリーミーな「Good Fight」へと続き、アコギの音色が心地よい「Wasted」、ブラスセクションを取り入れたアンセミックな「Comeback Kid」(サッカーっぽいなと思ったら、実際サッカーゲームのサントラに採用されたのね)、ブルージーなソウルナンバー「The Party Never Ends」、ディスコ調のダンスチューン「Are You Looking For Action?」(8分半の大作!)など聴き応えのある楽曲が続きます。

OASIS以降のUKギターロック感とブラックミュージックからの影響を伺わせるカラーは相変わらずなのですが、今回は時代がそうさせるのか、ちょっとミニマルな方向に向かってなくもないかなという気がして。いや、もともとそんなに音数を詰め込んで派手にカマすバンドではなかったけど、今作のテイストは昨今の流行に乗りつつ、そこで独自性を見せているように感じられました。

本当はアルバム全編、もっとギターリフでガツンと聴かせてほしいなという願望もあったけど(「Bless This Acid House」みたいな曲がもっと欲しかったと)、これはこれで全然アリ。ギターは自己主張の道具ではなくて、ここでは調味料のひとつでしかない。2017年という時代を考えれば、もはやこれが正解なんでしょうね。

ちなみに本作、初回限定盤には2016年の英・レスター「キング・パワー・スタジアム」でのライブをまとめたボーナスディスク付き。代表曲満載の全16曲、フルライブを楽しむことができます。意外と抜けてるヒット曲もあるので、そう考えるとこのバンドも長いこと活動してるんだなと思わせられたわけです(実際はまだ12、3年くらいなんだっけ)。なので、購入するなら迷わず2CD版で。



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投稿: 2017 07 05 12:00 午前 [2017年の作品, Kasabian] | 固定リンク

2005/05/22

KASABIAN『CLUB FOOT (EP)』(2004)

既に英国メディア(といってもBBCだけかな)では「今年期待の新人」として年頭からプッシュされていた3人組、KEANE。ボーカル+ピアノ(&ベース)+ドラムという、BEN FOLDS FIVEよりもヘンテコな編成によるバンドなんだけどさ‥‥これがいいのよ。本当に涙が出るくらいに、いい。最初、J-WAVEだったかINTER FMだったかで彼らのメジャーデビュー曲 "Somewhere Only We Know" を耳にした時、正直TRAVISとかあの辺のバンドの曲だと思ったのね。けどそれにしてはギターとか入ってこないし‥‥で、曲終わりにバンド名を耳にして、あーこれが噂のKEANEかぁ‥‥って。丁度フジロックへの出演も決まった頃で、こりゃチェックしておかなきゃって思い、早速同シングルを注文して‥‥

同シングルは、イギリスのチャートでも初登場3位を記録する程の人気で、続く "Everybody's Changing" も大ヒット。それを受けて5月にリリースされたファーストアルバム「HOPES AND FEARS」は強豪を抑えて初登場1位に。2週連続1位の後、2位に転落するも、翌週には再び1位に返り咲き。間違いなくイギリスで認知されているわけですよ。

メディアが騒ぐから気になったのではなくて、純粋に曲と最初に出会った‥‥ "Somewhere Only We Know" という素晴らしい名曲との出会いがあったから、俺はこのバンドに興味を持てたわけでして。多分、そういったネットや雑誌等での前評判だけだったら、正直ちゃんとチェックしたかどうか‥‥

「第二のCOLDPLAY」なんて呼び声もあるようですが、それも納得できる音楽性で、ちょっとだけジメッとしてる潤いあるメロディを聴けば、嫌でも「あー、英国的だよなー」と誰もが思うことでしょう。しかもそれが嫌みじゃない。ジメッとしてる割りに、サラリと最後まで聴けてしまう。勿論、心に残るフックはそこら中に存在してますよ。けど、この癒しの空気にやられた聴き手は、その心地よさの中で気づくとアルバムが1巡してしまう。そしてリピート、またリピート‥‥そう、このアルバムにはそういった「スルメ的要素」満載なんですよ。

まず、ギターレスでピアノメインというのが大きいですよね。とにかく耳障りが良い。「ギターがなきゃロックじゃねぇよ!」という心の狭い方は別として、この広がりあるサウンド(エフェクト含む)が本当に気持ちよいのね。今みたいな梅雨時、ジメジメして鬱っぽくなりがちなキミにこそ聴いて欲しい1枚なんだよね‥‥俺もホントこのアルバムに助けられてるもの。

ボーカルも伝統的なUKギターロック系バンドの系譜に当てはまる声質で、悪くない。いや、このサウンドと、このメロディにピッタリ合ってる。全体的に落ち着いた印象の曲が多いので、後半キツいかなぁ‥‥って心配してたんだけど、それなりにバリエーションもあるし(ちょっと打ち込みっぽい実験的な曲調もあってビックリ)そんな心配は無用だったみたい。勿論、そこには「良質なメロディ」という要素が大前提としてあるからこそなんだけど。本当によく出来た曲ばかり。

UKロックが好きだという人なら一発で気に入るはず。いや、そういうくだらないカテゴリーは無用だよね。純粋に「良質なメロディと良質な楽曲。それが10数曲詰まった良質なアルバム」ってだけで十分じゃない。いやー、最近はUKからもSNOW PATROL、カナダからはTHE STILLSみたいな良質なギターポップ/ロックバンドが登場してきてるし、こういう風変わりなKEANEもいるし。勿論相変わらずロックンロール・リバイバル系もいろんなのが出てくる。流行ってよく「10年周期」って言われるけど、今年でブリットポップから10年‥‥成る程、確かにその予兆はあるのかもね。

KEANEが今後どこまで成長するのか、あるいはこのまま1発屋で終わってしまうのか‥‥それは誰にも判らないけど、間違いなくここ日本では受け入れられると思うよ。だって既にうちのネットラジオでかけた "Somewhere Only We Know" が非常に評判よかったからね(問い合わせも幾つかもらったし)。夏に実現するフジロックでの初来日、楽しみだなぁ‥‥



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投稿: 2005 05 22 03:56 午前 [2004年の作品, Kasabian] | 固定リンク