KATATONIA『SKY VOID OF STARS』(2023)
2023年1月20日にリリースされたKATATONIAの12thアルバム。
前作『CITY BURIALS』(2020年)から約3年ぶりの新作。本作は20年以上にわたり在籍した老舗レーベルPeaceville Recordsから、新たにNapalm Recordsへと移籍してのリリースとなります。
今作の基本的な方向性は前作の延長線上にある、“エクストリームメタルの枠から一歩外へ踏み出した、多様性の強さが伝わる”サウンド。メタルバンドらしくエッジの強さを強調させることに特化することなく、音響/空間の特性を効果的に取り入れることで、過去作よりも聴きやすい方向へと押し進めています。
もちろんディストーションの効いたヘヴィなギターリフやダイナミックなドラムサウンドは、HR/HMの範疇にあるものと言えるでしょう。しかし、先にも書いたように音響系的なエフェクトを随所にフィーチャーしつつも、音を詰め込むことに固執せず、むしろ“抜く”ことに意識的なのでは?と思わせるアレンジが目立つ。この取り組み方自体がヘヴィメタルというよりも、もっと視野を広く保ちつつ考えられたもののような気がしてなりません。
例えば「Author」のような楽曲を聴くと、ヘヴィなリフワークやバンドアンサンブルがこの曲の軸なのではなく、もはや味付けの一部なのではとさえ思えてくる。ここが過去作との大きな違いのような気がしています。KATATONIAというバンドはデスメタル/ドゥームメタルの延長線上からスタートし、ゴシックテイストを強めていく過程でクリーントーンボーカル中心のスタイルへと移行した。その時点で、こういった終着点は彼ら自身も少なからず想像できていたのではないでしょうか。
このアルバムを聴いていると、彼らのことを無理やりゴシックメタルとカテゴライズするよりも、むしろ“ゴシック色の強いプログロック/プログメタル”と認識したほうが正しいのではないかという気がしてきました。そう思うとすごくしっくりくるし、ネガティブな感情なしで楽しむことができるはずです。
ヘヴィメタル寄りのリスナーには「刺激の少ない作品に成り下がってしまった」という印象の1枚かもしれませんが、DEPECHE MODEのようなダークなサウンドを軸にするバンドや、抒情生の強いヨーロッパのプログロックを好むリスナーにはむしろ好意的に受け入れられる可能性の強い。本作はそんな“新たな扉”を開く、未知の領域へとつなぐ分岐点になる気がしています。
▼KATATONIA『SKY VOID OF STARS』
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