既に英国メディア(といってもBBCだけかな)では「今年期待の新人」として年頭からプッシュされていた3人組、KEANE。ボーカル+ピアノ(&ベース)+ドラムという、BEN FOLDS FIVEよりもヘンテコな編成によるバンドなんだけどさ‥‥これがいいのよ。本当に涙が出るくらいに、いい。最初、J-WAVEだったかINTER FMだったかで彼らのメジャーデビュー曲 "Somewhere Only We Know" を耳にした時、正直TRAVISとかあの辺のバンドの曲だと思ったのね。けどそれにしてはギターとか入ってこないし‥‥で、曲終わりにバンド名を耳にして、あーこれが噂のKEANEかぁ‥‥って。丁度フジロックへの出演も決まった頃で、こりゃチェックしておかなきゃって思い、早速同シングルを注文して‥‥
同シングルは、イギリスのチャートでも初登場3位を記録する程の人気で、続く "Everybody's Changing" も大ヒット。それを受けて5月にリリースされたファーストアルバム「HOPES AND FEARS」は強豪を抑えて初登場1位に。2週連続1位の後、2位に転落するも、翌週には再び1位に返り咲き。間違いなくイギリスで認知されているわけですよ。
メディアが騒ぐから気になったのではなくて、純粋に曲と最初に出会った‥‥ "Somewhere Only We Know" という素晴らしい名曲との出会いがあったから、俺はこのバンドに興味を持てたわけでして。多分、そういったネットや雑誌等での前評判だけだったら、正直ちゃんとチェックしたかどうか‥‥
「第二のCOLDPLAY」なんて呼び声もあるようですが、それも納得できる音楽性で、ちょっとだけジメッとしてる潤いあるメロディを聴けば、嫌でも「あー、英国的だよなー」と誰もが思うことでしょう。しかもそれが嫌みじゃない。ジメッとしてる割りに、サラリと最後まで聴けてしまう。勿論、心に残るフックはそこら中に存在してますよ。けど、この癒しの空気にやられた聴き手は、その心地よさの中で気づくとアルバムが1巡してしまう。そしてリピート、またリピート‥‥そう、このアルバムにはそういった「スルメ的要素」満載なんですよ。
まず、ギターレスでピアノメインというのが大きいですよね。とにかく耳障りが良い。「ギターがなきゃロックじゃねぇよ!」という心の狭い方は別として、この広がりあるサウンド(エフェクト含む)が本当に気持ちよいのね。今みたいな梅雨時、ジメジメして鬱っぽくなりがちなキミにこそ聴いて欲しい1枚なんだよね‥‥俺もホントこのアルバムに助けられてるもの。
ボーカルも伝統的なUKギターロック系バンドの系譜に当てはまる声質で、悪くない。いや、このサウンドと、このメロディにピッタリ合ってる。全体的に落ち着いた印象の曲が多いので、後半キツいかなぁ‥‥って心配してたんだけど、それなりにバリエーションもあるし(ちょっと打ち込みっぽい実験的な曲調もあってビックリ)そんな心配は無用だったみたい。勿論、そこには「良質なメロディ」という要素が大前提としてあるからこそなんだけど。本当によく出来た曲ばかり。
UKロックが好きだという人なら一発で気に入るはず。いや、そういうくだらないカテゴリーは無用だよね。純粋に「良質なメロディと良質な楽曲。それが10数曲詰まった良質なアルバム」ってだけで十分じゃない。いやー、最近はUKからもSNOW PATROL、カナダからはTHE STILLSみたいな良質なギターポップ/ロックバンドが登場してきてるし、こういう風変わりなKEANEもいるし。勿論相変わらずロックンロール・リバイバル系もいろんなのが出てくる。流行ってよく「10年周期」って言われるけど、今年でブリットポップから10年‥‥成る程、確かにその予兆はあるのかもね。
KEANEが今後どこまで成長するのか、あるいはこのまま1発屋で終わってしまうのか‥‥それは誰にも判らないけど、間違いなくここ日本では受け入れられると思うよ。だって既にうちのネットラジオでかけた "Somewhere Only We Know" が非常に評判よかったからね(問い合わせも幾つかもらったし)。夏に実現するフジロックでの初来日、楽しみだなぁ‥‥

▼KEANE『HOPES AND FEARS』
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