2018年8月22日 (水)

CHUCK BERRY『HAIL! HAIL! ROCK'N'ROLL』(1987)

1987年に制作・公開されたライブ/ドキュメンタリー映画『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』のサウンドトラック的ポジションにあたる、チャック・ベリーのライブアルバム。ちゃんと音源を聴いたことがない人でも、チャック・ベリー=「Johnny B. Goode」の人、という構図は自然と浮かんでくるはず。僕もそのひとりで、さらに「ビートルズストーンズが初期にカバーした人」といった程度の知識で、実はこのアルバムを通して初めてチャック・ベリーという人にちゃんと触れ、映画(というかビデオ)で初めて動く姿を目にしたのでした。

この映画は、チャック60歳の誕生日をお祝いするライブイベントを、彼を敬愛するキース・リチャーズがプロデュースしていく流れが収められたもので、さてどんなレジェンドの一挙手一投足が見られるのか、と楽しみにしていると……その期待が木っ端微塵に打ち砕かれます。

なんだよ、ただの偏屈ジジイじゃねえか、と(笑)。

リハーサルにもちゃんと参加しない、キースがうまく進めようとするといちゃもんをつけるチャックの姿は、ダックウォークでギターをプレイする伝説的な姿とは真逆にあるもので、チャックの前ではあのキースも子供に見えてしまうのですから、本当に面白いものです。ぜひアルバムと同時に、この映画のほうもチェックしていただきたいです。良くも悪くも、ロック史に残る名ドキュメント作品ですので。

ですが、そんなチャックもライブ本番はきっちりこなすわけです。この、良い意味でのテキトーさが、長きにわたり愛され続けた所以……とは思いたくないですが、アルバムで聴けるロッククラシックの数々と、そのチャックを支えるキースを中心としたバンドたち(ドラムにスティーヴ・ジョーダン、キーボードにチャック・リーヴェルという布陣はアレサ・フランクリンのときと同じ)に加え、ゲストプレイヤーとしてエリック・クラプトン、ロバート・クレイ、ゲストボーカルでエタ・ジェイムズ、ジュリアン・レノン、リンダ・ロンシュタットが参加。リンダ・ロンシュタットの力強い歌声や、クラプトンらしいブルージーなギタープレイ、さらには父親ジョン・レノンそっくりな歌声で「Johnny B. Goode」を歌うジュリアンなど、聴きどころ満載です。

チャック・ベリーってどれから聴けばいいの?とお悩みのあなた。遺作となった『CHUCK』(2017年)でもベストアルバムでもいいですが、僕は単なる映画のサントラでは終わらない、ここでしか聴けない豪華なコラボ&名演が詰まった本作をオススメしたいと思います。後半の名リフ連発っぷりは、ただただアガりっぱなしですから。



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投稿: 2018 08 22 12:00 午前 [1987年の作品, Chuck Berry, Eric Clapton, Keith Richards] | 固定リンク

2018年8月20日 (月)

ARETHA FRANKLIN『ARETHA』(1986)

1986年10月にリリースされた、アレサ・フランクリン通算34枚目のスタジオアルバム。アルバムの大半を前作『WHO'S ZOOMIN' WHO?』(1985年)を手がけたナラダ・マイケル・ウォルデンが、2曲のみアレサ自身が、そして1曲だけキース・リチャーズTHE ROLLING STONES)が担当。前作の全米13位(ミリオン)には届かなかったものの、本作も全米32位まで上昇し、50万枚以上売り上げています。特に本作からは、ジョージ・マイケルとのデュエット曲「I Knew You Were Waiting (For Me)」が全米1位の大ヒットとなったほか、「Jumpin' Jack Flash」(全米21位)、「Jimmy Lee」(全米28位)、「Rock-A-Lott」(全米82位)という数々のヒットシングルが生まれています。

僕自身、初めて手に取ったアレサ・フランクリンのアルバムが本作でした。当時中学生だったものの、ストーンズのキースとロニー・ウッドをゲストに迎えた「Jumpin' Jack Flash」のカバー(当然キースがプロデュース)は、原曲とは異なるスローなテンポで、なおかつソウルテイストが強まったクールなアレンジで、MVともどもヘビロテした記憶があります。この曲でドラムを叩いているのが、のちにキースのバンドに加わるスティーヴ・ジョーダン。キーボードはストーンズのサポートでおなじみのジャック・リーヴェルだし、本当にオールスターバンドによる豪華なカバーなんですよね。

この1曲聴きたさに手にしたアルバムでしたが、オープニングを飾る「Jimmy Lee」(今聴くと時代を感じますね)、WHAM!解散後のジョージ・マイケルが華やかな歌声を聴かせてくれる「I Knew You Were Waiting (For Me)」と、とにかくポップさが際立つアルバムではないかと。いかにもなソウルバラード「Do You Still Remember」も当時は非常に大人っぽさを感じつつ、背伸びしながら聴いていました。懐かしい。

アナログB面は派手なディスコチューン「Rock-A-Lott」を皮切りに始まるも、ゆったりしたリズムのソウルチューン「An Angel Cries」、ストリングス&ブラスをフィーチャーしたゴスペルナンバー「He’ll Come Along」、ラリー・グラハムとのデュエット「If You Need My Love Tonight」など、全体的に落ち着いた印象。ラストはブロードゥエイミュージカル『フィニアンの虹』から「Look To The Rainbow」のカバーでしっとり幕を下ろします。

1986年当時の僕は、とにかくMTVで気になった曲があったらジャンル問わず、まずはアルバムをレンタルして聴くことが習慣になっていました。このアルバムもその延長だったのですが、ストーンズやジョージ・マイケルといった取っ付きやすさがあったおかげで、すんなり入っていけました。今となってはアレサ・フランクリンの魅力はここじゃないことは承知しておりますが(笑)、それでも記憶の片隅にはいつもこのアルバムが存在していました。そりゃあ、『LADY SOUL』(1968年)とか聴いたほうがわかりやすいですけどね。それでも、気づけばこの週末はこのアルバムばかり聴いていたのですから……まあ、こうしてここで取り上げるのも自分なりのトリビュートになってるのかな。



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投稿: 2018 08 20 12:00 午前 [1986年の作品, Aretha Franklin, George Michael, Keith Richards, Rolling Stones] | 固定リンク

2017年8月 4日 (金)

KEITH RICHARDS『TALK IS CHEAP』(1988)

1988年秋にリリースされた、キース・リチャーズ初のソロアルバム。ミックの初ソロアルバム『SHE'S THE BOSS』(1985年)に遅れること3年半、ついにキースまでもがソロアルバムを制作したということで、正直このときには「ああ、ストーンズ復活はもうないかもない」と、当時はまだライトなファンだった自分ですら思ったのですから、さらにコアな古参ファンにとって本作は“最後通告”みたいな作品だったんじゃないかな……なんて、今になって思うわけです。

ちょうどこのアルバムを作ることになる前、キースはチャック・ベリーのドキュメンタリー映画『ヘイル!ヘイル!ロックンロール』制作を手伝っており、これが後押しする形で“自分のソロバンドを作る”という考えに至るわけです。キースはスティーヴ・ジョーダンをパートナーに迎え、THE X-PENSIVE WINOSという自身のバンドを結成。そのまま本作『TALK IS CHEAP』を制作し、アルバム発表後にはソロツアーまで敢行するのでした。

全体の作風としては、“いかにもキースらしい”ロックンロールとソウルへの愛がぎっしり詰まった、オールドスタイルな1枚。そのへんがミックのソロと正反対なのが面白いし、そういう2人が揃うことでストーンズが成立しているんだなということにも気づかされるわけです。

この時点でのROLLING STONESの最新作『DIRTY WORK』(1986年)で聴けるストレートなロックンロール路線を、よりブラッシュアップさせた楽曲群はどれも「それ、ストーンズでやってくれよ!」と言いたくなるようなものばかり。ただ、ここにあるのはミック成分ゼロなので、ストーンズに持ち込んだらまた違った感じになるんでしょうけどね。

とはいえ、1曲目「Big Enough」にはいきなり驚かされるというか。ブーツィー・コリンズがベースで参加したファンキーなこの曲は、ストーンズでは絶対に再現できないものですし(だって、ビル・ワイマンがベースですからね)、その後続くシンプルなロックンロール&ソウルの数々は、キースだからこそ表現できるものばかり。

セールス的にはそれほど大ヒットには至らなかったし(全米24位、全英37位)シングルヒットも生まれなかったけど、あの時点でキースがこれを吐き出さなかったら、翌年のストーンズ再合流はなかったのかも……なんて考えるのは、都合よすぎでしょうか?

キースは現在までにソロアルバムを3枚(本作と1992年の『MAIN OFFENDER』、2015年の『CROSSEYED HEART』)制作していますが、初心者には本作が一番聴きやすいかもしれませんね。



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投稿: 2017 08 04 12:00 午前 [1988年の作品, Keith Richards, Rolling Stones] | 固定リンク

2005年3月23日 (水)

KEITH RICHARDS『MAIN OFFENDER』(1992)

 第1回目から随分と間が空いてしまいましたが、不定期連載企画『ロケンロールと無理心中』第2回、いきますよーっ。

 この企画で選ぶアルバム、比較的メジャーではない作品‥‥まぁ取り上げるアーティストはメジャー中のメジャー、ロックンロールの世界でいったらど真ん中な人達ばかりなんでしょうけど、そんな中でも個人的に好きでオススメしたい作品がたまたま地味なモノばかりになる、という‥‥ホントに需要があるのかどうか判りませんが、まぁ自己満足でやってる企画なので特に気にしないことにします。

 んで第2回目にして、超王道中の王道、ROLLING STONESのギタリスト、キース・リチャーズを取り上げたいと思います。

 キースのソロ活動はといいますと、ストーンズでデビューして24年目(1988年)にして初めてソロアルバムをリリースするんですね。その前には単発シングルや映画サントラ(チャック・ベリーのやつね)はあったけど、キースが中心となって主導権を握り、彼が曲を書いて彼が歌う完全なソロアルバムっていうのは、その'88年にリリースされた「TALK IS CHEAP」が最初だったわけですよ。これにしたって当初は出すつもりのなかったもので、単にミック・ジャガーがなかなかストーンズに戻ってこなくてソロ活動に精を出してたから、しびれを切らしたキースがとうとう動き出した、という‥‥まぁある意味では偶然の副産物なんですよね。その後ストーンズは'89年に合流して「STEEL WHEELS」というアルバムを作って、同年夏から翌年夏にかけてワールドツアーを敢行、その中には初となる日本公演(東京ドーム10公演がソールドアウト!)が含まれるわけです。で、'91年には新曲2曲を含むライヴ盤「FLASHBACK」をリリース、その後はまた暫くストーンズはお休み、それぞれ自由な活動へと移るわけです。ま、ここでビル・ワイマンが脱退してしまうので、その休憩時間は結局'94年頃にまで及ぶわけですが。

 この長い休憩期間に、各メンバーそれぞれソロアルバムをリリースしてます。ミックも、ロン・ウッドも、そしてチャーリー・ワッツまでもジャズでアルバムをリリース。当然キースもソロアルバム第二弾を制作するわけです。それが今回紹介する1992年リリースの「MAIN OFFENDER」です。

 「TALK IS CHEAP」がストーンズの次回作を待つ間に作られた『偶然の副産物』だとしたら、この「MAIN OFFENDER」は最初から『ソロアルバム』としてキッチリ作られた、ホントの意味での1stアルバムになるのかもしれません。そういうこともあってか、「TALK IS CHEAP」にはストーンズ的な『陽』のイメージが強く感じられるものの、この「MAIN OFFENDER」はもっと『閉じた』ような‥‥『個』であったり『陰』のイメージをこれまで以上に強く感じるんですね。勿論ストーンズの顔が作るアルバムですから、ストーンズらしさも十分感じられるんですが、何だろう‥‥無理をしてないというか、肩の力がいい具合に抜けた、タイトなんだけど適度に緩さを持った、独特且つ唯一無二の世界観を表現してます。一聴しての印象は『地味』以外の何ものでもなく、特に引っかかる名曲も存在しない、聴く人が聴いたらそのままスルーしてしまいそうなアルバムかもしれません。実際、俺も最初手にした時は‥‥まだ20才とかそのくらいだったのかな、その良さが完全に判ったとは言い難い年頃で、無理して何度も聴いてみたけど‥‥「TALK IS CHEAP」以上に好きにはなれなかったのね。まぁ「MAIN OFFENDER」より前のストーンズの作品が「STEEL WHEELS」みたいな派手な作品だったから、余計かもね。

 ところがね‥‥このアルバム、年を取るに連れ、聴く頻度がどんどん高くなってるんですよ。何時頃からだろう‥‥5〜6年前からかな、気づいたらこのアルバムばかり聴いてる時期ってのが必ず年に1〜2度あって。それが年に3〜4回に増え、また翌年には2ヶ月に1回になり、最近じゃ月に1回は必ずCD棚から引っ張り出す機会があるわけ。何でか知らないけどさ、聴いてると非常に落ち着くんだよね‥‥テンポ間が心地よいのかなぁ。変化球もなく、リズム的にもミドルテンポが中心で、途中でスロウチューンやレゲエのリズムが取り入れられたり。ストーンズみたいな速い曲もシャッフルもヘヴィなブルーズもない。肩肘張らない自然体の、空気みたいなロックンロール。当たり前のように鳴らされるキースのギターに、呼吸するかのようなキースの歌声。癒されるってやつとはちょっと違うけど‥‥ロックンロール・チルドレンにとっては、これが子守唄みたいなもんなのかしら。まぁ50超えた(当時)オジイに子守唄なんて歌ってもらうような趣味は持ち合わせてないけどさ‥‥それでもこの音、このタイム感、このフィーリング、この空気感‥‥全てが自分の生活に必要なものなんだなぁ、と。今改めてこのアルバムを聴いてそれを噛み締めています。

 キースのソロアルバムをこれから聴こう、っていうなら最初は「TALK IS CHEAP」を聴くといいですよ。この「MAIN OFFENDER」を最初に聴くことはオススメしません。ましてやストーンズをしっかり聴いてこなかったなら尚更ね。ストーンズにドップリと浸かった人生を送って来た人なら‥‥既に2枚共聴いてるか。

 まぁアレですよ‥‥俺にとっては墓場まで持っていきたいアルバムなわけですよ。



▼KEITH RICHARDS『MAIN OFFENDER』
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投稿: 2005 03 23 12:00 午前 [1992年の作品, Keith Richards, Rolling Stones] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック