KILLING JOKE『KILLING JOKE』(1980)
1980年10月5日にリリースされたKILLING JOKEの1stアルバム。日本盤は翌1981年、『黒色革命』の邦題で発売。
当時のメンバーはジャズ・コールマン(Vo, Synth)、ジョーディー・ウォーカー(G)、ユース(B)、ポール・ファーガソン(Dr)の4人。70年代末のパンクロック/ポストパンク/ニューウェイヴの流れを汲む方向性で、のちにシンセサイザーを多用したインダストリアルロック色を強めていきますが、本作ではエレクトロ要素は味付け程度にとどめ、ギターとドラムを前面に打ち出した(ある意味では旧体制的なパンクロックから80年代的な新時代へと移行する)過渡期的1枚と受け取ることもできます。
リズムが特徴的で、空間系のエフェクトを施したギターサウンド、隙間を埋めるように適度に被せられたシンセの音色、呪術的なメロディラインを吐き捨てるように歌うボーカルなど、パンクからニューウェイヴへの過渡期ならではといった楽曲の数々は、聴く人によっては退屈に映るかもしれません。しかし、この独特のグルーヴは非常にクセになるものがあり、個人的には「Wardance」や「The Wait」など比較的派手めな曲よりも「Tomorrow's World」や「S.O.36」みたいにダブ的要素を含むミディアム/スローナンバーがツボだったりします。
もちろん、初めて聴いたときは冒頭の「Requiem」(かのHELMETもカバー)や疾走感の強い「Bloodsport」、グルーヴィーな「Complication」、METALLICAの名カバーでお馴染みの「The Wait」にTHE MAD CAPSULE MARKETSも取り上げた「Wardance」などに夢中になったものです。今聴いてもこれらの楽曲は色褪せていませんし、初聴時の即効性の強さはリリースから40年以上経った今も維持され続けていると思います。
イギリスではパンクが下火になり、ポストパンクやニューウェイヴが盛り上がり始める一方で、アンダーグラウンドに追いやられていたHR/HMが新亜種=NWOBHMとともに新たなブームを起こし始めていた1980年。実はパンク勢のみならず、メタル新興勢力側からも密かに支持されていたのではないかと思わせられる、そんな魅力に満ちた本作は、そういった意味でも過渡期の中の1枚だったのかな。だからこそ、絶妙なバランス感で仕上がった奇跡の1枚なのかもしれませんね。
なお、オリジナル盤は「Primitive」で終わる全8曲構成ですが、デジタル/ストリーミングを踏む現行盤はアルバム未収録曲「Change」や「Requiem」シングルバージョン、「Primitive」「Bloodsport」のラフミックスなどを含むボーナストラック5曲を追加。「Change」のダブミックスなんてものも含まれており、おまけにしては十分すぎるほど楽しめるボリューミーな内容ではないでしょうか。
▼KILLING JOKE『KILLING JOKE』
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