PRONG『CLEANSING』(1994)
ニューヨーク出身のクロスオーバー(懐かしい響き……)/スラッシュメタルバンドPRONGが1994年初頭に発表した、通算4作目(メジャー3作目)のスタジオアルバム。前作までのマーク・ドッドソン(ANTHRAX、SUICIDAL TENDENCIES、METAL CHURCHなど)から代わり、今作ではテリー・デイト(SOUNDGARDEN、PANTERA、DEFTONESなど)にプロデューサー変更。さらにベーシストが元KILLING JOKEのポール・レイヴンに替わったほか、新たにキーボーディストが加わり4人編成に。
とはいえ、スラッシュメタルを軸にしつつもどこか無機質でインダストリアル調のヘヴィサウンドは健在です。ヘヴィなリフとグルーヴィーなリズムが織り成す気持ち良さが最高なオープニング曲「Another Wordly Device」からスラッシーなファストチューン「Cut-Rate」まで、頭4曲の構成は圧巻の一言。そこからヒップホップの影響すら感じさせるミディアムテンポの「Broken Peace」、“もしBLACK SABBATHがインダストリアル調になったら”な表現がぴったりな「One Outnumbered」など、とにかく聴きどころの多い1枚です。
トミー・ヴィクター(Vo, G)のダミ声ボーカルは、PANTERAというよりもHELMETのそれに近く、スラッシュメタルのカラーを残しつつグルーヴ感を強調した作風からもHELMETと比較されることが当時は多かったように記憶しています。
しかし、こうやって今聴いてみると新加入のポール・レイヴンのカラーなのか、どこかKILLING JOKEにも通ずる点も多いんですよね。そういう意味では、最新のテイストを取り入れつつもバンドの原点へと接近していった“原点回帰にして新境地に突入した”意欲作と呼べるでしょう。本作があったから続く次作『RUDE AWAKENING』(1996年)にたどり着けたわけですしね。
PANTERAの大ブレイク以降HR/HMシーンの主流となりつつあった“モダンヘヴィネス”の流れを汲む、非常に気持ち良いノリと重さを兼ね備えた好盤にも関わらず、ここ日本ではさほど高い評価を得ることがなかった。HELMETのほうが先に成功を収めたしまったため、またメタル上がりだったことからPRONGは本国アメリカでもこれといった大成功を収められませんでした。とはいえ、本作は本国でもっとも成功したアルバムなんですよね(全米126位ながらも30万枚以上のセールスを記録)。バンドは『RUDE AWAKENING』リリース後に解散してしまいますが、2002年には早くも再結成。ここ数年は毎年のように新作をリリースしているので、興味を持った人は本作と『RUDE AWAKENING』あたりからぜひ手に取ってみてはどうでしょう。