KING 810『AK CONCERTO NO.47, 11TH MOVEMENT IN G MAJOR』(2020)
2020年11月13日にリリースされたKING 810の4thアルバム。日本盤未発売。
デヴィッド・ガン(Vo, G)とユージーン・ギル(B, G, Dr)の2人体制になって初のアルバム『SUICIDE KING』を2019年1月に自主リリースした彼らですが、そこから約2年を経て届けられた今作。今回もデヴィッドを中心に同じ布陣、同じスタイルで制作されたことが伺える仕上がりとなっています。
前作にてハードコア色が後退し、一方でニューメタル色が濃くなりはじめていましたが、今作ではその色合いがさらに強まることに。オープニングを飾る「AK Concerto No. 47」では、DISTURBEDのデヴィッド・ドレイマン(Vo)を彷彿とさせるパーカッシヴな歌唱スタイルに驚かされることでしょう。(恐らく)打ち込みで構成されたリズムトラックはこのミドルヘヴィな曲調に非常に合っており、かつそこにデヴィッド・ガンの新たな歌唱法が加わることで……懐かしさを感じずにはいられません。
かと思えば、前作からの流れを汲むリードトラック「Hellhounds」では、MARILYN MANSONあたりを彷彿とさせる作風(MVではビジュアルも)で無駄にスケールの大きさをアピール。続く「Love Under Will」のようなデジタル・ゴシックと言わんばかりの曲調も、早くもこのバンドのカラーにマッチしており好印象を与えます。
前半は前作の延長線上にあるミドルヘヴィのニューメタルスタイルで押し通しますが、後半に入るとそのカラーに少しずつ変化が。「Dukes」での若干跳ね気味なリズム&ギターリフは、本作において良いアクセントになっているように案じました。さらに「House Of Dust」ではテンポを上げることでさらなる高揚感を与え、インダストリアル調の「Love Bomb」、グルーヴィーな「Suicide Machines」と良い流れを作り、ラストの「2a」で盛大に締めくくる。後半から終盤にかけて、尻上がりに良くなっていく印象を与える内容だと思いました。
もはやRoadrunner時代の2作とは完全に別モノへとシフトしたKING 810。“全米一危険なバンド”なんて謳い文句も今は昔、これはこれでアリのような気もしてきました。グルーヴメタルやニューメタルを2020年代に再生するという意味では、彼らが本作で果たした役割は非常に大きなものがあると思うし、このアルバムも高く評価されるべき作品だと言えるでしょう。しかし、目新しさや“2020年ならでは”の要素は皆無。上のような見方を外せば、単なる懐古主義で片付けられてしまいそうで勿体ないなと。LIMP BIZKITやKORN、MARILYN MASONなどの90年代後半のグルーヴメタル、DISTURBED以降のニューメタルを好むリスナーに今こそ触れていただきたい1枚。
にしても、良いアルバムタイトルですね。この際過去のキャリアを切り離して、新鮮な気持ちで接してもらいたいなかなかの良作です。
▼KING 810『AK CONCERTO NO.47, 11TH MOVEMENT IN G MAJOR』
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