2019年2月23日 (土)

KING 810『SUICIDE KING』(2019)

2019年1月にリリースされたKING 810の3rdアルバム。過去2作はかのRoadrunner Recordsから発表されていましたが(といっても2枚とも日本盤未発売)、本作から完全自主レーベルでのリリース。それもあってかCDなどフィジカルでの発売はなし、MP3と各種ストリーミングサービスでの配信のみとなります。

前作『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016年)リリース後にアンドリュー・ビール(G)とアンドリュー・ワークマン(Dr)が相次いで脱退。現在はデヴィッド・ガン(Vo)とユージーン・ギル(B)の2人のみで活動を続けているようです。

デビューアルバム『MEMOIRS OF A MURDERER』(2014年)でのNYハードコア的なオールドスクールサウンド、前作でのモダンヘヴィネス色を強めた方向性と作品ごとに変化を重ねてきた“全米一危険なバンド”ことKING 810ですが、今作もヘヴィなミドルテンポの楽曲が中心で(このへんは過去2作の延長線上)、そこにデジタル/インダストリアルの要素が若干加わったような印象を受けます。これは(おそらくですが)ドラムが生音からマシンビートになったことも大きく影響しているのかもしれません。

また、その変化によるものなのかわかりませんが、どことなくヒップホップ色も強まっているような。「.45」あたりは完全にそれですよね。もともとスポークンワードなども取り入れた、独特なボーカルスタイルを見せてきた彼らなだけに、このシフトチェンジ(?)はなるほどといいますか違和感なく入っていけます。

曲によってはメロウなパートも含まれていたり、ピアノを使った曲や女性ボーカルが含まれたパートがあったりと聴きどころも少なくないのですが、どうにも一本調子な印象も。単調なマシンビートに音数が決して多くはないギターリフが乗り、ラップ調のボーカルが重なるわけですから、まあそうなるわな。

前作の感想で「テンポの上げ下げで抑揚をつけることなく、テンポ感はほぼ一定の中で音数や激しさで強弱をつけて聴き手を惹きつける手法は、メタルやラウドロックというよりも映画のサウンドトラック的な印象も」と書きましたが、その片鱗はここにも多少は残っています。「Black Rifle」で聴けるゴシック調の楽曲もそうですが、ギターをただの歪みものとして終わらせず、ひんやりとダークな世界観をカラフルさを演出するための道具として使っているあたりに新しさを感じつつも、「ああ、同じバンドなんだな」と妙に納得したり。

MARILYN MANSONの近作に似ているのかな。聴き終えたときの後味は近いものがあると思います。もはや“全米一危険なバンド”とは言い難いけど、これはこれで悪くないんじゃないかと。聴き手は相当選ぶことになるかと思いますが。



▼KING 810『SUICIDE KING』
(amazon:MP3


投稿: 2019 02 23 12:00 午前 [2019年の作品, King 810] | 固定リンク

2016年12月25日 (日)

KING 810『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』(2016)

前作『MEMOIRS OF A MURDERER』から2年ぶりに発表された、アメリカ・ミシガン州フリント出身の4人組メタルコア/ハードコアバンドの新作。「全米一危険なバンド」という触れ込みで一部マニアの間で話題になった彼らですが、前作はRoadrunnerからの配給だったにもかかわらず日本盤リリースはなし。当然来日も実現しなかったので、知る人ぞ知るみたいな存在で終わりかけていました。ちょうど2年前、当サイトでも紹介したので覚えている人もいるかもしれません。

そんなところに、ニューアルバムの発売。今作もRoadrunnerからのリリースですが、引き続き国内盤の発売はなし。いろんな意味で残念すぎる。

さて、今作の内容ですが、前作までのNYハードコア的オールドスクールサウンドとモダンなヘヴィロックサウンドを融合させた路線はそのまま。ただ、少々モダンよりになった印象も受けました。相変わらず引き摺るようなミドルテンポの楽曲が中心で、そこにスポークンワードやメロウパートを挿入する緩急のつけ方も相変わらずですが、今作ではナレーションを切り刻んだサンプリングをフィーチャーした「Vendettas」、アコースティックギターやストリングスを導入したドラマチックな「Black Swan」、どことなくヒップホップ的な匂いもする「Life's Not Enough」、ピアノを前面にフィーチャーしたジャジーな「Me & Maxine」など新境地ナンバーも多数収録されています。

テンポの上げ下げで抑揚をつけることなく、テンポ感はほぼ一定の中で音数や激しさで強弱をつけて聴き手を惹きつける手法は、メタルやラウドロックというよりも映画のサウンドトラック的な印象も。特にアルバム前半を締めくくる7曲目「La Petite Mort」とラストナンバー「A Conversation With God」はそのタイトルからもわかるように対になっており(2つを“or”でくっつけると、そのまま本作のアルバムタイトルに)、それぞれ前半後半のクライマックスをうまく作り上げています。

前作同様に、いわゆるファストナンバーが皆無なことから疾走系を好むファンからは敬遠されそうですが、前作以上に深みを増した今作からは「全米一危険なバンド」というレッテルで片付けられない魅力もたっぷり感じられます。どことなくSLIPKNOT『IOWA』にも通ずる匂いもするので、そのへんが好きな人にも受け容れられるんじゃないでしょうか。食わず嫌いせずに、ぜひ一度お試ししてみることをオススメします。



▼KING 810『LA PETITE MORT OR A CONVERSATION WITH GOD』
(amazon:海外盤CD

投稿: 2016 12 25 12:00 午前 [2016年の作品, King 810] | 固定リンク

2014年12月10日 (水)

King 810『Memoirs of a Murderer』(2014)

昨日のOpethと同じタイミングで購入していた(つまりCDの山の底にあった)CDのひとつ。先日「あれ、これ前に買ったよな? どんなやつだっけ……」と店頭で試聴するものの、まったく記憶になくて危うくもう1枚購入してしまうところでした。

さて、このアメリカはミシガン州フリント出身の4人組メタルコア / ハードコアバンドのRoadrunner移籍第1弾アルバム。確か店頭のポップに「全米一危険なバンド」みたいなタタキ文が書いてあった記憶があります。何が“危険”なのか? それは下記のMVとNAVERまとめを確認してもらえば理解できるかと思います。

全米一危険な都市で生まれた超極悪メタルバンド"KING 810"がヤバイ - NAVER まとめ

……確認しましたか?

彼ら自身もヤバそうな空気プンプンです。実際、全16曲(トータルランニング67分)の今作を聴いても、そのヤバさは強く伝わってきます。そう、冒頭3曲目までは。

ボキャブラリーが少ない中での例えになってしまいますが、例えば(NYハードコアバンドの)BiohazardにSlipknot的カラーを加えたような、そういう印象をアルバムから受けました。ミディアムヘヴィな曲でゴリゴリに押すだけではなく、アコギをフィーチャーしたブルージーな曲あり、ストリングスを導入したメロウがバラードあり、スポークンワーズあり、と一筋縄でいかない感じが単なるメタルコアバンドやハードコアバンドとは異なる個性と言えるでしょう。

とはいえ、決して音楽的には幅広いことをやってるわけではありません。特にボーカルはほぼメロディを歌っておらず、ひたすら絶叫というイメージが強いです。なので昨今の、軽くメロディアスさが取り入れられたメタルサウンドに慣れてしまった人には、アルバムを通して聴くにはちょっとキツイかもしれません。まあそもそも、Slipknotの1stアルバムだってリリース当時は万人受けするなんて思ってなかったですし、これはこれでいいのではないでしょうか。個人的には毎日好んで聴くタイプではないですが、好きな部類の1枚です。

その風貌やスタンスから、ヒップホップを愛聴する人のほうが実は受け入れやすいのかも。ダークでメロウなスローナンバー含めて。CD購入を悩んでるメタルファンは、下記のMVをチェックしてから決めてみるのもいいかもしれません。


▼King 810「Memoirs of a Murderer」(amazon:輸入盤CD

投稿: 2014 12 10 12:10 午前 [2014年の作品, King 810] | 固定リンク