カテゴリー「King Crimson」の8件の記事

2019年8月 4日 (日)

KING CRIMSON『DISCIPLINE』(1981)

1981年9月にリリースされた、KING CRIMSON通算8作目のオリジナルアルバム。

ロバート・フリップ(G)、ジョン・ウェットン(Vo, B)、ビル・ブルーフォード(Dr)のトリオ編成を軸に、デヴィッド・クロス(Violin)、メル・コリンズ(Sax)、イアン・マクドナルド(Sax)などをゲストに迎えた、70年代クリムゾンのラスト作『RED』(1974年)をもってその活動を一旦終了させたクリムゾン。しかし、80年代に入りロバート・フリップ&ビル・ブルーフォードにエイドリアン・ブリュー(Vo, G)、トニー・レヴィン(B, Stick)を加えた4人編成で再始動。このアルバムで新生クリムゾンの全貌が明らかとなりました。

初期のフリーキーなスタイル、後期のメタリックなサウンドなど時期によって表現方法や奏でるサウンドに大きな変化が生じるクリムゾンですが、80'sクリムゾンは過去のどの時期とも似ていない新たなスタイルを確立。時期的なものもあるのでしょうが、非常にニューウェイヴにも似た、ダンサブルなサウンドが展開されています。

まず、聴いていきなり驚くのが「Elephant Talk」での像の鳴き声を真似たエイドリアン・ブリューのギタープレイ。かなり昔、日本のテレビCMでも動物の鳴き真似プレイを目にすることができましたが、かつそのベースとなるサウンドが非常にダンサブルでメタルのメの字はおろか、プログレのプの字すら皆無のヘロヘロサウンド&ボーカルに最初は「?っ」とひっくり返ったものです(といっても、僕自身はリアルタイムではなく、発売から10年以上経ってからの初聴だったのですが)。

「Frame By Frame」でのポリリズムを用いたギターアンサンブルやバンドアレンジに、かろうじてプログレの匂いを感じることができますが、続くストーナンバー「Matte Kudasai」の平和な感じはちょっと……と、頭3曲に肩を落としたこと、今でもよく覚えています(笑)。

ところが、4曲目「Indiscipline」でその雰囲気が一変。そうそう、これが聴きたかったんだ!という重厚なアンサンブルが突如繰り広げられるのです。これこそ、プログレッシヴロックのクリムゾンだ!と。ボーカルの軽薄さだけはどうにもなりませんが(笑)、この1曲にどれだけ救われたことか。

後半も再びダンサブルな「Thela Hun Ginjeet」や、当時のテクノポップの影響を受けたかのような(シンセ・ギターの影響も大きいのでしょうね)「The Sheltering Sky」、ダンサブルなプログレ・クリムゾンという「Descipline」と、かなりバラエティに富んだ内容になっています。

最初こそ面を食らった1枚ですが、実は今ではトップクラスで好きな1枚でもあります。それは、リアルタイムで体験した90年代のクリムゾンはこの“ニューウェイヴ期”なくしては語れないから。これがあったから、僕の好きな90年代のクリムゾンが存在するんだ、ここにいろんなヒントが隠されているんだと思いながら聴き返していたら、いろんな発見があったし、どんどん好きになっていった、と。『クリムゾン・キングの宮殿』(1969年)の頃とはまったく異なる存在ではありますが、これもクリムゾン。仰々しいプログレ時代が苦手という人にこそ、一度は触れてもらいたい「気軽に聴けるクリムゾン」なのです。

 


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2019年7月 2日 (火)

BAD COMPANY『BAD COMPANY』(1974)

FREEのポール・ロジャース(Vo)&サイモン・カーク(Dr)、元MOTT THE HOOPLEのミック・ラルフス(G)、元KING CRIMSONのボズ・バレル(B)によって結成されたBAD COMPANYによる、1974年6月発売のデビューアルバム。

今でいう“スーパーバンド”のはしりですよね、これ。しかも、リリース元はLED ZEPPELINが設立したSwan Song Recordsで、全米1位/全英3位まで上昇。アメリカでは500万枚を超えるセールスを記録し、「Can't Get Enough」(全米5位/全英15位)、「Movin' On」(全米19位)というヒットシングルも生まれている。どちらかというと、本国イギリスよりもアメリカでのウケが良かったんですね。

FREEではアメリカでもそこそこのヒットを飛ばしていたポール・ロジャースですが、このBAD COMPANYを通じてその歌唱力・表現力の高さを幅広い層にまで届けることに成功。彼のキャリアを通じても最大のヒット作となっているだけに、ポールを語る上では欠かせない1枚と言えるでしょう。

FREEのように楽器隊がテクニカルで主張が強いわけではない、あくまでキャッチーな楽曲をポールという稀代のシンガーが歌い、楽器隊はそれを前面に打ち出すためにバックに徹する。このアルバムにはそういう印象が付きまとっており、個人的には初めてきいた10代後半にはそこまで響かない作品でした。

その中でプレイヤー陣が強い主張を出していない、なんならシンガーもそこまで強く自身を誇示していない。そんなだから、一聴しただけでは曲が素晴らしいだけで終わってしまう。が、聴き込めば聴き込むほどにご理解いただけると思うのですが、実は1曲1曲に隙がないんですよね。無駄に完成度が高い。ソウルやブルースをベースにしたロック/ハードロックって、どうしても過剰に歌い上げたり、ギターが泣きまくったりすることが多いんですが、ここではそういった自己主張が皆無。とにかく曲の素晴らしさをアピールすることに専念している。このある意味でのクセのなさが、幅広い層にまで行き届く結果につながった……と考えることはできないでしょうか。

要するに、純粋なポップソングと同じ域にまで到達させることができたという表れだと思うんですよね。ただ、一方でメンバーが過去に在籍したアクの強いバンド群との比較で、より地味に見えて/聴こえてしまった。デビュー作からの大成功はラッキーでしたが、と同時に最大の失態も犯してしまっていた。難しいですね。

先にも挙げたように、曲は文句なしに素晴らしいです。MOTT THE HOOPLEのカバーでもある「Ready For Love」、僕はバドカン・バージョンのほうが好きですし、シングルカットされた2曲や「Bad Company」、そしてソウルフルな「The Way I Choose」など、どれも出来が素晴らしい。で、ここでの経験を経てバンドらしさをより強く打ち出したのが、次作『STRAIGHT SHOOTER』(1975年)という最高傑作なのかなと思います。こちらの作品については、また別の機会に。

 


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2019年5月27日 (月)

KING CRIMSON『RED』(1974)

1974年10月にリリースされた、KING CRIMSONの7thアルバム。ロバート・フリップ(G)、ジョン・ウェットン(Vo, B)、ビル・ブルーフォード(Dr)のトリオ編成を軸に、デヴィッド・クロス(Violin)、メル・コリンズ(Sax)、イアン・マクドナルド(Sax)などをゲストに迎えた、70年代クリムゾンのラスト作となります。

前作『STARLESS AND BIBLE BLACK』(1974年)から約半年という短いスパンで発表された本作ですが、リリース時点ですでに解散を発表済み。バンドの終焉を感じさせるメランコリックな楽曲(「Fallen Angel」「Starless」)も用意されているものの、本作で注目される機会が多いのはタイトルトラック「Red」や「One More Red Nightmare」といったヘヴィな作風の楽曲でした。

特に「Red」は歪みまくったギターサウンドを用いたヘヴィなリフを用いた、重厚感のあるミドルナンバーで、それまでのクリムソンとは一線を画する1曲と言えます。しかも、約6分半におよぶこの曲はボーカルなしのインストゥルメンタルナンバー。ドラマチックとは言い難い不穏な展開を含め、クリムゾンのメタルサイドなんて声もよく耳にします。そしてこの曲、90年代のクリムゾンサウンドの指針になっているはずで、これがなかったらあのダブルトリオ編成で奏でるメタリックなサウンドは生まれなかったのではないか、そう思っております。

また、「One More Red Nightmare」は「Red」にも通ずるヘヴィなリフを用いているものの、ボーカルが入ると急にキャッチーさが増す異色の1曲。プログレだとかメタルだとかカテゴライズが難しいものの、その後のロックに多大な影響を与えたことは間違いありません。

かと思えば、8分にもおよぶインプロビゼーションが繰り広げられる「Providence」という彼ららしい1曲も用意。この曲はライブテイクをそのまま使っているようで、バンドとデヴィッド・クロスのバイオリンとのセッションからはほかのスタジオテイクとは異なる緊張感を味わうことができます。

そして、叙情性の強い歌モノ2曲(「Fallen Angel」「Starless」)のうち、特に「Starless」は初期の「Epitaph」「The Court Of The Crimson King」(ともに1stアルバム『IN THE COURT OF THE CRIMSON KING』収録)にも匹敵する名曲。前半のドラマチックな泣メロと、後半の即興演奏を含む展開という12分にもおよぶ2部構成は、これぞクリムゾンと胸を張って言えるもの。ある種の集大成感も漂っております。

全5曲で約40分。6分以下の楽曲が皆無という“プログレあるある”作品の代表的な1枚ですが、1stアルバム同様に初心者も入っていきやすい内容ではないでしょうか。特に楽器の経験があるリスナーなら、ここで展開されているプレイは存分に楽しめるはず。聴けばこれが45年前のアルバムだなんて、とても信じられないと思いますよ。

ご存知のとおり、クリムゾンの諸作品はデジタル配信およびストリーミング配信がされておらず、まもなく海外ではサブスクリプションサービスでの配信がスタートするという話もあります。日本ではまだまだ先のようですが、こういった名盤が誰でも手軽に楽しめるようになると、今みたいなカルト的人気とはまた異なる広まり方もするのでは……なんて思うのですが、いかがでしょう。

 


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2016年1月10日 (日)

祝ご成人(1995年4月〜1996年3月発売の洋楽アルバム20枚)

新成人の皆さん、おめでとうございます。昨年度に初めて実施したこの企画、今回も新成人の皆さんが生まれた年(学年的に1995年4月〜1996年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品を20枚ピックアップしました。どれも名盤ばかりなので、もし聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にお手にしてみてはいかがでしょうか。とは言いながらも大半が名盤中の名盤なので、聴いたことがあるものばかりかもしれませんが。

並びはすべてアルファベット順です。(2015年の新成人編はこちら


Alice in Chains『Alice in Chains』(Amazon)(レビュー

Ben Folds Five『Ben Folds Five』(Amazon

Björk『Post』(Amazon

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2006年11月30日 (木)

PORCUPINE TREE@昭和女子大学人見記念講堂(2006年11月29日)

夕べ急遽行くことになった、PORCUPINE TREE@昭和女子大学人見記念講堂。タダだし、ロバート・フリップ御大観れるし、近場(三茶)だし、ということで即決。

夏のウドーフェスで初来日してたんだけど、実は今日のライブで彼らの音に初めて触れたという。いや、クリムゾン絡みだとか、キーボードが元JAPANのリチャード・バルビエリだったり、ギター&ボーカルのスティーヴン・ウィルソンがOPETHのプロデュースやってたり、となにかと俺好みのバンドだと思ってたら……案の定、一発で気に入った。

なんだろう……メタルとも違って、プログレとも違う。80年代に流行ったポンプロックだっけ?(って流行ってはいないけどなw)MARILLIONとかIT BITESとか、ふとあのへんを思い出したんだけど.……ちょっと違う? でもPORCUPINE TREEは良い意味で米国臭もして、それがよいバランスで響いてたような。

どこかで「21世紀のPINK FLOYD」なんていう例えを目にしたけど、ちょっと違うかな。どちらかというと、GENESISっぽいかも。あと、もっとヘヴィ。ドラムなんてマーク・ポートノイ(DREAM THEATER)とビル・ブラフォードを足して2で割った感じだし、ギタープレイもちょっとIT BITES思い出した(フランシス・ダナリーって今なにやってるんだろう?)。もちろんただ古くさいだけじゃなくて、現代的……TOOL辺りにも通ずるスタイルも感じられるし。実際TOOLのファンで、ああいうプログレッシヴな部分を気に入っている人ならすんなり入っていけるんじゃないかな。

あ、オープニングアクトのフリップ御大の話もしておかないと。えーっとねぇ、なんかアンビエントな感じのループの上で、ひたすら緩いギター弾いてました。30分間ずーっと即興で。途中でマジ熟睡して、客が拍手し始めたので目が覚めたくらい(笑)考えてみたら俺、クリムゾンは好きだけど、この人のソロアルバムとかプロジェクトってあんまり興味なかったわ。

PORCUPINE TREEは来年2月頃に発表される予定の(と、MCで言ってた)ニューアルバムから、新曲も披露。「長くて退屈な曲だから、我慢してくれ」とか冗談言ったと思ったら、本当に歌詞の中に「Patience」て単語が出てきて笑った。あと、アルバム出したら夏にまたライブで戻って来たいと言ってた。フェスかな。

数十~百人程度を前に気を吐いたウドーフェス。そして今回は2000人入るハコに半分程度(内100人以上もの招待客)。クリマンは明らかにハコの選択ミスだと思う。確かにあの環境はバンドのサウンドにピッタリだったけどね。

あ、そうだ。このバンドのもうひとつの魅力は、映像だね。ライブDVD後で買わないと。

……と、レポというよりも、メモをいろいろ書いてみた。

2004年11月22日 (月)

とみぃ洋楽100番勝負(96)

●第96回:「21st Century Schizoid Man」 KING CRIMSON ('69)

 そりゃやはり、「とみぃの宮殿」というサイト名の元ネタなだけに、この曲を外すことはできないですよね。実際、このアルバム・この曲との出会いがなかったら、俺はプログレというジャンルに(一時的とはいえ)のめり込むこともなかったでしょうからね。

 中学の頃かな‥‥このジャケットと出会ったのは。当時のレンタル店に飾ってあって。インパクトだけでいったら間違いなくナンバーワンだもんね、これを店頭に飾るってことは。で、それに勝るとも劣らないサウンド。2004年の今聴いても、全然色褪せてない。むしろ今聴くとそのヘヴィな世界観やサウンドに圧倒されるんだけどね。これがもう35年も前のものなのか‥‥そう考えるとゾッとするね。俺だってまだ生まれてなかったんだから。

 プログレと呼ばれるジャンルの中で唯一、全アルバムを揃えた経験があるのは、後にも先にもCRIMSONだけ。ライヴにしても同様。高い金だして廃盤になってるボックスセットの中古盤に大枚はたいたり、既に持ってるアルバムなのに紙ジャケが出れば思わず手を出してしまったり、挙げ句の果てにアナログ盤まで買い揃える始末。正直、この「クリムゾン・キングの宮殿」だけで3枚は持ってるからね、俺。もう、ただのアホだよね。うん、俺もそう思うもん。

 自分の留学先であったイギリス・ボーンマスがロバート・フリップの故郷であると知った時の嬉しさといったら‥‥どう表現していいもんか。思わず奇声上げちゃったからね、マジで。そんくらい好きってことですよ。ま、だからといって仲良くなりたいとは思わないけど(滅茶苦茶偏屈そうだしね)。それに‥‥あのプレイが自分にとって、決して究極とはいえないしね。飛び道具ですよやはり。

 だけど‥‥だからこそ憧れるんだよね。永遠の憧れ。あそこには近づけないし、近づきたくもない。遠くから眺めてるだけ。だからこそいいんだよ、あれは‥‥あんな世界、本気で入り込んでしまったら、それこそ「21世紀の精神異常者」になっちゃいますからね(やっぱりこの曲の邦題は、誰が何と言おうと「精神異常者」の方がピッタリですよ)。だから今日も俺は、音源集めまでで踏みとどまるわけです。



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2001年12月17日 (月)

KING CRIMSON『IN THE COURT OF THE CRIMSON KING』(1969)

KING CRIMSONの事は皆さん、実際に聴いた事はなくても「プログレ」というジャンルの先駆者としてPINK FLOYDYES等といったバンドと共に、名前だけは記憶に残っていることだろう。1969年のデビュー以後、何度もメンバーチェンジを繰り返し、1974年には一旦解散。しかし80年代に入り再結成、その音楽性は当初の「プログレ」スタイルとは一線を画するものの、これもある意味では80年代の「プログレ」であった。その後、1984年には再び活動を停止、何度か再々結成の噂が上るものの、結局実際に活動再開するのは90年代も半ばに入ってから。恐らく多くの方がリアルタイムでご存じなのは、この「6人編成、ダブルトリオ編成」時代の「メタル・クリムゾン」だろう。当の俺もリアルタイムではこの時期が初体験であり、初ライヴもこの時期だ。その後、三度休止。2000年に4人編成で復活。今度は過去の集大成的でありながら昨今のテクノやエレクトロニカ等の要素も取り入れた、正しく「2000年のプログレッシヴ・ロック」を体現している。

実際に彼らのアルバムに手を出した事はなくても、CMで何度も使われている「21st Century Schizoid Man」(邦題「21世紀の精神異常者」、最近では自主規制の影響で「21世紀のスキッゾイドマン」と表記されている)なら誰もが知っているだろう。また、数年前にヒットしたヴィンセント・ギャロの映画「バッファロー'66」劇中でも使用された「Moonchild」の幻想的な空気感を記憶してる人もいるだろう。聴けば「ああ、これか!」と納得してしまう楽曲。と同時に「へっ、クリムゾンってイメージと違くない?」と思う人もいることだろう。

KING CRIMSONの、このファーストアルバムの凄さは「楽曲の幅広さ、なのに架空の映画のサウンドトラックみたいな統一感」といった点に端的に表れていると思う。1曲目の「21st Century Schizoid Man」なんてある意味ヘヴィロック/ヘヴィメタルの元祖ともいえる重さと攻撃性、中盤アップテンポになるパートはジャズロック的且つパンキッシュともいえる。続く2曲目「I Talk To The Wind」(このタイトルも「とみ宮」初期、日記ページのタイトルとして使っていた)はいきなりピースフルな朝焼けといった爽やかな空気を運ぶ。が、曲はそのまま「Epitaph」へと流れ、聴き手を絶望へと引きずり下ろす。〈Confusion will be my epitaph.〉……何て官能的な一節だろう。実はかなり好きな一節だったりする。

アルバムはそのまま、アナログでいえばB面に突入する。12分もある、幻想的な「Moonchild」(同名バンドがここ日本にいたけど、やはりここから取ったのだろうか?)が聴き手を現実から夢の世界へと導き、そのまま感動的なイントロが忘れられない「The Court Of The Crimson King」で最大のピークを迎え、物語は終了する。聴いてもらえば判ると思うが、もうこの世界観こそが「ひとつの映画」なのだ。CDをプレイヤーにセットし、聴き始めると‥‥どうしても最後まで聴き入ってしまう。プレイヤーのストップボタンなんてとても押せなくなる。このスタイルは特に'70年代の彼らに顕著だ。メロトロンやフルート、サックスといった、今では「コアなロックバンドには考えられない」であろう楽器を使用する事によって、その世界観を更に深いものへと導いている。いや、昨今のロックではこれらの楽器を使用する事は何ら不思議ではないか‥‥RADIOHEADやSPIRITUALIZED、MERCURY REVといったバンドはクリムゾンからの影響を匂わせる存在だ。彼らもこういった楽器をアルバムに使用したりしているし、その音楽感もかなり影響を受けているだろう。

これら昨今のバンドとクリムゾンとの共通点として「音楽の中に生々しいまでの『生』と『死』を散りばめている」という重要なポイントが挙げられると思う。ドラッグによるトリップ感というのもあるが、レディヘといいクリムゾンといい、過剰なまでの『生』と『死』の匂いを感じるのだ。ポジティヴというよりは躁と言った方がピッタリなアッパー感、どん底まで突き落とすかのような鬱的要素。ロックバンドとしての形態を無視してまで拘る表現方法(ギメロトロンやテルミンといった楽器の比重が高くなったり、管楽器を取り入れたり等)、シュールな歌詞の世界観、等々‥‥挙げればきりがない。

RADIOHEADの「Just」のイントロを聴いて「おおっ、『Red』だ!!」と唸ったのも、もう7年近くも前の話。既にあの頃からレディヘはその片鱗を表していた。そういえば、クリムゾンが復活したのもこの時期だった。強引なこじつけだが(笑)、リンクするポイントはかなりある。そういう観点からクリムゾンに入っていっても面白いのではないだろうか?

まぁ勿論、そんなこじつけがなくてもこのアルバムは歴史に残る名盤だし、既に32年も前の作品だというのに革新的で斬新で新鮮だ。初めてレンタルレコード店でこのアルバムのジャケットに出会ってから、もう16年以上経った。当時はアナログだったので、インパクトも大だった‥‥学生時代はこのアルバムをネタに朝まで酒呑みながら友人と語り合ったりもした。バイト先のスタジオで、明け方に必ずこのアルバムをかけると「そろそろ閉店ですか?」とお客に言われたりもした。友人は中学生の頃、美術の授業でこのジャケットを真似したっけ(考えてみれば、こんなに音楽の内容を端的に表したジャケット、そうはないだろう)。思い出はいくらでもある。もし、「とみぃの人間形成をした10枚」を紹介する機会があったら、間違いなく選ばれるであろう1枚。ビートルズ『ABBEY ROAD』ツェッペリン『PRESENCE』と並んで大切な1枚である。

 


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2000年10月12日 (木)

KING CRIMSON The ConstruKction Of Light TOUR 2000@渋谷公会堂(2000年10月7日)

それにしても、今年はよくライヴに行く年だな? 既に何本行ってるんだろう?‥‥チケット取っていながら諸事情で行けなくなったライヴだけでも4本なんだからなぁ。(苦笑)既に2000年も残り3ヶ月を切ったけど、それでもチケット持ってて行く予定が年内だけでもあと4本あるもんなぁ。(笑)

てなわけで、5年振りのKING CRIMSON(以下、KCと略)に4年振りの渋谷公会堂。全てが○年振り尽くし。

で、そのKC。前回はダブル・トリオ編成の6人組だったのに、今回は4人編成。しかも、残ると思ってたトニー・レヴィン(Bass & Stick)とビル・ブラフォード(Drum)の姿はそこにはなく、前回から参加のトレイ・ガン(Stick/最近のロバート・フリップ(Guitar)翁の側近)とパット・マステロット(Drum/元MR.MISTER)が残ったわけだ。まぁ4人編成は今回が初めてではなく、'80年代再結成時も4人だったから違和感はないんだけど‥‥やっぱり映像とかでロバート、エイドリアン・ブリュー(Guitar & Vocal)、トニー、ビルの4人っていう固定イメージが焼き付いてたから、いざステージに立った新しい4人の姿を初めて観た時は、ちょっと変な感じがした。

そして更に変な違和感を伴ったのは、ライヴがスタートいきなり冒頭から往年の名曲"Red"や"Flame By Flame"を連発した事だろう。事前にインタビュー等でロバート翁は「昔の曲はやらない。新作中心のライヴになる」って言ってたし、直前まで行われてた欧米でのツアーでも実際にその言葉通りの内容だったらしいのに。そういやぁ、前回もそんな事、言ってなかったっけ?(笑)結局、前回のラインナップでのツアー終盤では"21世紀の精神異常者"まで登場した、って噂もあった程だし。

勿論、こういった往年の名曲を再び今聴けるのはありがたいし、俺はもっとやるべきだと思う。結局、その当時のラインナップと今のメンバーは全く違うわけで、時代性やバンドのコンセプトも変わっているので、絶対に同じものになるはずがない。新しいアレンジや試みで演奏されるはずだから。実際に前ラインナップでのミニアルバム「VROOOM」収録の"Cage"は今回、原曲の狂気性とはまた違った、幾分コミカルさも含んだアコースティックアレンジを施されていたし、先の"Red"も所々拘ったアレンジで修正されていた。

昔の曲(特に'80年代以降)を演奏する時、逆に残念だと思ったのは、トニー・レヴィンの不在だろうか? 彼参加後のKCではトニーのコーラスを生かした楽曲が幾つかあった。今回でいえば"Flame By Flame"の合いの手的コーラスがなかった事。そこに違和感があった。更に新作でもハーモニーを生かした曲"Into The Frying Pan"等では、エイドリアンのボーカルにハーモナイザー等のエフェクターを掛けて原曲に近づける努力をしていた。けど、やっぱりトニーは歌もそこそこ上手い人なので、今回も参加して欲しかった。

トニーといえばもうひとつ。今回のトレイ・ガンはスティック(ベースに似た楽器で、10本の弦が張られている。ネックは通常のギター類の倍以上の幅があり、ハンマリングやタッピングで音を出す)しか使わず、普通の4弦ベースは1度も使用しなかった。トニーの場合は曲によって臨機応変に使い分けていたのだが‥‥まぁトレイ自身がスティック奏者だという事も関係しているのだろう。それに新作にはスティックの音しか入っていないだろうし。その辺の影響は聴いた限りではなかったと思う。

今回のライヴで最も活躍したのは、間違いなくパット・マステロット(しつこいが元MR.MISTER)だろう。レコーディング面ではトレイが力を発揮し、アレンジ面や実際のライヴを引っ張っているのは、間違いなくパット・マステロット(クドいが元MR.MISTER)だ。

その上で、いつもながらの緻密なプレイをかますロバート翁。相変わらずステージ向かって右側で客席の方を見ないで、ステージ中央に向かって椅子に座ってプレイしていた。これはいつも通り。(笑)メロトロンもシンセもない、あるのはギターのみ。まぁこの人の場合はギターがシンセみたいなもんだけど。フリップトロニクスって言ったっけ、あれ? 今回もいろんな音を出してましたよ。どうしても新しい音色が登場すると、ロバート翁の手元に目が行ってしまう。楽器弾きの悲しい性とでもいいましょうか?(苦笑)あ、"FraKctured"のあの難しいパートも一生懸命、ミス・ピッキングもなくこなしておりました。

今回、どうしても言っておきたいのは、エイドリアンが不調だったという事。どうやら風邪をひいたらしく、数曲唄った辺りで声が掠れてきたのが判ったし、高音は出てはいるものの、少々辛そうだった。その為だろうか、実際に予定されていたセットリストから後半4曲程度カットされている。最後に当日実際のセットリストと、本来予定されていた幻のセットリストの2つをアップしているので、ご参考に。これを見ると、今回はアンコールの一番最後にデヴィッド・ボウイの"Heroes"をやる事になっていた。実は今回の日本公演ではほぼ毎回、この曲で終わるらしい。何故に"Heroes"?とも思うが、まぁボウイの方の原曲でギター弾いてるのはフリップ翁だし、ボウイの'90年のツアーにはエイドリアンが参加していたので、そういうのもあるんだろう。それにしても、どうしてもこの曲のみ浮くような気がするんだけど‥‥コンセプトなんて、あってないようなもんなのか?(苦笑)

演奏に関しては、本当に文句なし。歌は少々辛いと感じる瞬間があったが、それ以外はいつもの彼ららしい緻密で計算し尽くされ、尚かつ即興っぽいインタープレイを堪能できる内容だったと思う。マニアの方々は酷評しているらしいが、そんなに目くじら立てるようなものだっただろうか? 俺には判らない。「どこ聴いてるんだよ?」って突っ込み入れられたら、どこがどういけなかったのか、逆に教えて欲しい。KCは常に完璧じゃなきゃいけないのだろうか、常にレコードと同じじゃなきゃいけないのだろうか? 何か判んねぇけど‥‥下らない蘊蓄たれる前に、楽しもうって気持ちがなきゃ、何観ても/聴いても楽しめないと思うよ? それにライヴは生ものなんだし‥‥だから面白いんじゃないの? まぁきっと、そういう方々と俺とは思考回路が違うんでしょう。一生交わる事もないと思うので、この辺で止めとくか。(笑)

そうそう、忘れてた。今回のライヴで演奏中、結局1度も席を立たなかった。一番最後にスタンディングオベーションはあったけど、あのテクニカルで緻密な演奏をクラシックコンサートのように座って聴くというのも、またいいもんですな? けど、疲れ溜まってて、途中でウトウトしてしまった事も正直に告白して(笑)、今回のライヴレポートを終えたいと思う。


KING CRIMSON@ Shibuya Kohkaidoh. 10/07/2000
01. Red
02. Frame By Frame
03. The ConstruKction Of Light
04. Into The Frying Pan
05. FraKctured
06. improvisation "Seizure" (ProjeKct X)
07. One Time
08. Lark's Tongues in Aspic part IV
09. Coda: I Have a Dream
10. Cage
11. Elephant Talk
12. VROOOM
 [ENCORE-1]
13. Deception of the Thrush (ProjeKct 3)
 [ENCORE-2]
14. The World Is My Oyster Soup Kitchen Floor Wax Museum



▼KING CRIMSON『The ConstruKction Of Light』
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