KINGDOM COME『KINGDOM COME』(1988)
そろそろ正月気分も薄らいできた頃。この1988年縛りもそろそろいいかな……なんて思ってきたタイミングですが、今日もこの年に生まれたアルバムを紹介します。もはや意地です。
1988年のHR/HM界において切っても切り離せないのが、LED ZEPPELINクローン問題。ちょうど前年1987年、WHITESNAKEがモロZEPな「Still Of The Night」をリリースして物議を呼んだのが始まりだったのでしょうか。1988年になると本家ZEPがAtlantic Records 40周年コンサートで一夜限りの復活を果たし、ロバート・プラントがソロアルバム『NOW AND ZEN』でZEP楽曲をサンプリング、ジミー・ペイジも初の本格的なソロアルバム『OUTRIDER』でZEP調サウンドを解禁。ZEPの話題やZEP風の曲が増え始めたのが、この1988年という年だったのです。
そして、その象徴的なバンドとして必ずピックアップされるのが、今回紹介するKINGDOM COMEというバンド。ドイツ出身のフロントマン、レニー・ウルフがアメリカで結成した5人組バンドなのですが、そのデビューアルバムである本作からの楽曲のいくつかが、「まるでZEP」ということで良くも悪くも話題になったのでした。
その代表的な楽曲が、デビューシングル「Get It On」と2ndシングル「What Love Can Be」。前者はグルーヴィーなメインリフと曲中の刻むようなリフ&コード進行がZEPのいくつかの楽曲に酷似していること、後者は楽曲そのものよりもボーカルワークが若き日のロバート・プラントまんまということで、このバンドの登場を境に「ZEPクローン」なんて揶揄も生まれたくらい。
がしかし。これ、そこまで叩かれるような作品でもないんですよね。確かにZEPからアイデアを拝借した楽曲は多々あるのですが、それを抜きにしてもハードロックアルバムとして非常に高品質。いかにも80年代後半なビッグサウンドは、当時BON JOVIやAEROSMITHをヒットさせたボブ・ロックのプロデュースによるもの。その後ボブはTHE CULT『SONIC TEMPLE』やBLUE MURDERのデビュー作を経て、MOTLEY CRUE『DR.FEELGOOD』、そしてMETALLICAのブラックアルバムへと到達するわけです。
ブルースをベースにしたハードロックが軸になってはいるものの、ギタリストがブルース寄りではなく完全にハードロック寄りなので、リフがZEP的でもその他のプレイは完全に80年代のHR/HM。中にはどこかDEEP PURPLE的なシャッフルナンバー「The Shuffle」、マイナー調メロディが気持ち良いパワーソング「Now Forever After」「Shout It Out」まである。「Get It On」のインパクトが強かったため、こういった良曲が見過ごされてしまうのは非常に勿体ないと思うわけです。
もうちょっと登場が早かったら、ここまでネガティブに騒がれずに済んだのに。ホント、いいアルバムなんですよ? 当の「Get It On」だって、なんだかんだ言ったってカッコいいし。ぜひフラットな気持ちで触れてみてほしいと思います。
なお、KINGDOM COMEはその後も地道に活動を続けていたのですが、昨年夏にその活動を終了。最後の最後に、この1stアルバムの編成で活動しようとしたそうですが、残念ながら全員揃うことはありませんでした。