カテゴリー「KISS」の30件の記事

2020年1月29日 (水)

DESMOND CHILD『DESMOND CHILD LIVE』(2019)

2019年10月末にリリースされた、デズモンド・チャイルドのライブアルバム。日本盤未発売(2020年1月末時点)。

ご存知のとおり、デズモンド・チャイルドは職業作家としてBON JOVIAEROSMITHKISSアリス・クーパーなどに楽曲提供および共作を続けてきたアーティスト。さらにプロデューサー業のほか、自身もシンガーとして70年代にDESMOND CHILD & ROUGE名義で2枚のアルバム、90年代にはソロアルバム『DISCIPLINE』(1991年)をリリースするなど音楽家としても知られています。

その彼が、『DISCIPLINE』以来28年ぶりにソロ名義でのアルバムを発表しました。本作は2018年3月1〜3日にニューヨークで行われた、40年以上にわたるデズモンドのミュージシャン人生を祝すスペシャルライブの模様を収めたもの。当日は彼が過去に手がけた楽曲のほか、DESMOND CHILD & ROUGEの楽曲、さらにはローラ・ニーロ「The Man Who Sends Me Home」、ジョージ・マイケル「Fast Love」といったフェバリット・ナンバーのカバーも披露sれています。

アルバムにはこのうち、デズモンドの作家人生を総括するようなヒットナンバー、隠れた名曲などをピックアップ。彼自身が歌うナンバーもあれば、ハウスバンドのギタリストや女性コーラスが歌うものも含まれており、原曲の良さをできる限りベストな状態で伝えようとする意思が伝わってきます。

内訳的にもBON JOVIから「Livin' On A Prayer」「You Give Love A Bad Name」「(You Want To) Make A Memory」、AEROSMITH「Dude (Looks Like A Lady)」「Angel」、KISS「I Was Made For Lovin' You」、JOAN JETT & THE BLACKHEARTS「I Hate Myself For Loving You」、HANSON「Weird」、マイケル・ボルトン「How Can We Be Lovers?」、シェール「We All Sleep Alone」、リッキー・マーティン「The Cup Of Life」「Livin' La Vida Loca」「Shake Your Bon-Bon」「She Bangs」(以上、4曲メドレー)、そしてDESMOND CHILD & ROUGEの「Love On Rooftop」(のちにシェールもカバー)、ブロードウェイ・ミュージカル『CUBA LIBRE』から「Where Do I Go From You」と実に幅広い選曲。ここにエアロ「What It Takes」「Crazy」やアリス・クーパー「Poison」、BON JOVI「Keep The Faith」あたりも入っていたら最高だったんですけどね(笑)。

まあ、バンドメンバーがハードロック畑の人ではなくAOR流れの人たちなんでしょうか。演奏はエッジが効いた感じではなく心地よさを重視した、悪く言ってしまえば「毒にも薬にもならない」安パイなもの。まあ曲の良さを伝えるという点においては、この形がベストなんでしょうね。それに、デズモンドもすでにいい年齢(この時点で64歳)ですから、これくらいのヌルさがちょうどいいのかもしれませんし。

にしても、本当にいい曲を書くソングライターだなと改めて実感。もちろん、どの曲も彼ひとりで書いたものではなく、それぞれのアーティストとの化学反応あってこそですが、仮に楽曲の骨格をアーティスト自身が作ったものであったとしても、そこにデズモンドが一手間加えることでスペシャルなものになるわけですからね。そのセンス、才能は飛び抜けたものがあるってことなんでしょう。じゃなかったら、ここまで知ってる曲連発のライブアルバムなんて作れないわけですから。

あと、BON JOVIの中でも比較的地味なヒット曲に含まれる「(You Want To) Make A Memory」をアルバムラストに選ぶあたりに、彼のこだわりやセンスが感じられるかも。この曲、派手さは皆無だしジワジワ盛り上がっていく構成といい本当に地味なんですけど、変な中毒性があるんですよね。

以前、こんな職業作家の記事を書きましたが、今回の記事とあわせて読んでいただくことで、デズモンドを含む職業作家の面白さに気づいてもらえたら幸いです。

 


▼DESMOND CHILD『DESMOND CHILD LIVE』
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2019年11月24日 (日)

KISS『LICK IT UP』(1983)

1983年9月に発表された、KISS通算11作目のオリジナルアルバム。日本盤は『地獄の回想』という邦題で、オリジナルの“被せジャケット”付きで同年11月にリリースされています。90年代に復活する“地獄”シリーズ、ひとまず本作で一度完結したようです。

当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ヴィニー・ヴィンセント(G)、エリック・カー(Dr)。オープニングトラック「Exciter」のリードギターでリック・デリンジャーがゲスト参加しています。「Lick It Up」(全米66位/全英31位)、「All Hell's Breakin' Loose」がシングルカットされ、アルバム自体は全米24位、全英7位という好成績を残しています。

本作で初めてメイクを落とし、素顔で活動を始めたことも話題となり、そのままセールスに反映されたようですね。と同時に、1983年というとQUIET RIOT『METAL HEALTH』DEF LEPPARD『PYROMANIA』とったHR/HMメガヒット作が誕生した記念すべき年。前作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)でHR/HM化したKISSにとってこのムーブメントは“満を辞して”と言えるものだったはずです。先見の明があったのか、ただ商売っ気が強かっただけなのか(主にジーンの)。

作風的には『CREATURES OF THE NIGHT』の延長線上にあるハード路線ですが、かっちりしすぎ&重すぎた前作よりも軽やかさ、しなやかさが増しているのが本作の特徴かな。また、先に挙げた「Lick It Up」のように“本来のKISS”らしいポップ&キャッチーな楽曲が含まれていることも、アルバム全体のバランスに良い作用を与えています。

全10曲中、ポールとジーンのリードボーカル曲の割合は半々。特にアナログA面(M-1「Exciter」からM-5「Gimme More」)はポールとジーンのボーカル曲が交互に置かれているので、素直に“楽しい”と思えるのでは。

一方で、アナログB面(M-6「All Hell's Breakin' Loose」からM-10「And On The 8th Day」)ポール曲2曲、ジーン曲3曲とまとめて置かれており、CDで考えると「Gimme More」からポール曲3曲、「Fits Like A Glove」からジーン曲3曲とかたまってしまっているのがちょっと……エゴなんですかね(笑)。ただ、ヘヴィメタル的なファストチューン「Gimme More」とロックンロール的ファストチューン「Fits Like A Glove」とそれぞれの色や姿勢の違いが楽しめるという点においては非常に興味深い内容。なにより、1曲1曲の出来が非常にクオリティ高いですしね。

また、ヴィニーのギタープレイも前作以上に自由度が高い(まあ前作はエース・フレーリーの影武者的存在でしたしね)。ソングライターとしても非常に優れておりましたし、本作をもってバンドを脱退してしまうのは非常に勿体ないと改めて思います。

ロックを聴き始めた時点で、すでにKISSはノーメイク期だったわけで、そんな自分にとってこのへんの作品はど定番中の定番なわけです。今となっては“70年代のロックンロール期こそKISS”と声高に言われ続けていますが、いえいえ。これこそ自分にとってのKISS原体験ですから。忘れちゃいけない良盤のひとつです。

 


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2019年7月15日 (月)

KISS『DESTROYER』(1976)/『DESTROYER: RESURRECTED』(2012)

1976年3月にリリースされた、KISS通算4作目のオリジナルアルバム。

前作『DRESSED TO KILL』(1975年)から1年ぶりの新作に当たりますが、同作が初の全米TOP40入り(最高32位)。続いて発表されたライブアルバム『ALIVE!』(1975年)がさらに全米10位という高記録を残したことで、このオリジナルアルバム『DESTROYER』に対する期待も高く、最高11位まで上昇(アメリカのみで200万枚以上の売り上げを記録)。「Shout It Out Loud」(全米31位)、「Flaming Youth」(同74位)、「Beth」(同7位)とヒットシングルも多数生まれました。

本作ではアリス・クーパーAEROSMITHルー・リード、Dr.ジョンなどとの仕事で名を上げてきたボブ・エズリンが初めてプロデュースを担当。それまでのシンプルで小気味良いロックンロールスタイルから一歩踏み出し、非常に手の込んだ楽曲が増えています。

例えばアルバムオープニングの「Detroit Rock City」ですが、冒頭のSE(車に乗ってカーステでKISSを聴き始める)から曲に入っていく構成、そして同曲の重厚なアレンジ、ラストに事故を起こしてエンド→そのまま「King Of The Night Time World」へと続いていく流れは圧巻の一言。2曲ともドラマチックなツインリードソロが入っているのも印象的で、思わずコピーしたくなるフレーズが満載なんですよね。

ジーン・シモンズ(Vo, B)の魔王感がハンパないミディアムヘヴィの「God Of Thunder」(もともとはこの曲、アップテンポだったんですよね。そのデモ音源は2000年代前半にリリースされたボックスセットで試聴可能)、そのジーンが続けて歌うストリングスと児童合唱団をフィーチャーした「Great Expectations」と、とにかくバラエティ豊か。

ここまでがアナログA面で、B面は軽快でキャッチーな「Flaming Youth」「Sweet Pain」で初期3作をアップデートさせた感を提示し、ポール・スタンレー(Vo, G)&ジーンのツインボーカルが最高な「Shout It Out Loud」で最高のキャッチーさを見せつける。

そこからピーター・クリス(Dr, Vo)がリードボーカルを担当したドラマチックなバラード「Beth」、シンプルでキャッチーなロックチューン「Do You Love Me」でクライマックスへ。さらにシークレットトラックとして、「Great Expectations」使ったリフレイン「Rock An Roll Party」で締めくくり。トータルで34分少々と今の感覚だと短いように思いますが、非常に濃厚な1枚なんですよね。

どの曲もボブ・エズリンが曲作りに関与しており、その結果バンドとしてひと皮剥けたのは間違いないでしょう。このアルバムをKISSの代表作として挙げる人も多いんじゃないでしょうか。事実、僕も本作と1stアルバム『KISS』(1974年)の2枚を「最初に聴くべきKISSの名盤」としてプッシュするでしょうし。

 


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2019年7月14日 (日)

KISS『SONIC BOOM』(2009)

2009年10月発売の、KISS通算19作目のオリジナルアルバム。

ポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナル編成で制作された前作『PSYCHO CIRCUS』(1998年)から11年ぶりとなる新作で、新たに設立された自主レーベルKiss Recordsからのリリース(海外ではRoadrunner Records流通)。しかしながら、ここ日本では契約上の問題などもあり2019年7月現在まで一度も日本盤が発表されていないKISS唯一のオリジナル作品となります。

レコーディング参加メンバーはポール&ジーンにトミー・セイヤー(G, Vo)、エリック・シンガー(Dr, Vo)という2019年現在のラインナップと同じ編成。アルバムのプロデュースも現時点での最新作『MONSTER』(2012年)同様にポール&グレッグ・コリンズが担当しています。

KISSのオリジナル作品では現時点で最高となる全米2位まで上昇した本作。いかにもブルース・フェアバーン的キラキラサウンドと従来のKISSらしさがいびつな形でミックスされた『PSYCHO CIRCUS』とは異なり、今作では我々がイメージする“メイキャップ時代のKISS”をモダンにした作風にシフトしています。つまり、ご機嫌かつ適度にハードなロックンロールが最初から最後まで展開されている、文句なしの内容なわけです。

全11曲中、ボーカルの内訳はポール4曲、ジーン4曲、ポール&ジーン1曲、さらにトミー1曲、エリック1曲と非常に良いバランス。特にポールとジーンが一緒に歌う「Stand」は70年代のKISSの“あの”感じが見事に再現されており、なかなかの良曲なんですね。トミーのギターソロも耳に残るフレージング多数で、後半のドラマチックなアレンジ含め、KISSオールタムベストでも上位に入るべき1曲ではないかと思うのですが、いかがでしょう。

オープニングの「Modern Day Delilah」こそ彼らにしては地味な楽曲ですが、以降はどこをどう切り取ってもKISS。ジーンも2曲目の「Russian Roulette」こそヘヴィ路線ですが、こちらはモダンヘヴィというよりは70年代のハード&ヘヴィ寄りなので問題なし。9曲目の「I'm An Animal」も一緒ですね。そうそう、こういうジーンが観たい(聴きたい)んだよ我々は。

エリックの歌う「All For The Glory」はポール&ジーンが書き下ろした、どこかTHE HELLACOPTERSを思わせる哀愁味の強い1曲。まあTHE HELLACOPTERSがKISSをなぞっているので逆っちゃあ逆ですが、ここではなんとなくその関係性が逆転してしまっているような。エリックのしゃがれ声もあって、余計にそう感じさせるんですよね。うん、良曲。

トミーの歌う「When Lightning Strikes」はトミー&ポール書き下ろしによる、ミドルテンポのご機嫌なロックンロール。エースのようなヘロヘロボーカルとは違う、芯のある太い歌声に最初こそ戸惑いますが、これはこれであり。

全体的にインパクトの強い作品というわけではないですが、平均点以上の仕上がりで文句のつけどころも見当たらない。実は、90年代以降のKISSオリジナル作品の中では非常に高品質な1枚ではないでしょうか。そういった良作がいまだ国内リリースなし(しかもストリーミングサービスにもなし)というのは悲しい話です。ただ、「Modern Day Delilah」や「Say Yeah」など一部楽曲は最近のベストアルバムでも聴くことができるので、まずはそちらで試してからアルバムに触れてみてもいいのかな。

なお、本作の初回限定盤は3枚組仕様で、2008年に日本限定リリースされた再録ベストアルバム『地獄烈伝』と、2009年4月のブエノス・アイリス公演から6曲を収めたDVDが同梱されています。今でも中古で見つけることができるので、これから購入する人はこちらでもいいかもしれませんね。

 


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2019年3月 3日 (日)

ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』(2019)

2019年1月に発表された、ARCH ENEMYのカバーアルバム。バンド初期からシングルのカップリングやアルバムのボーナストラックとして収録されてきた歴代のカバー曲を1枚にパッケージした作品で、その内訳も初期3作のヨハン・リーヴァ時代、ブレイクのきかっけを作ったアンジェラ・ゴソウ時代、現在のアリッサ・ホワイト=グラズ時代と3世代にわたる、ある種のオールタイム“裏”ベストアルバムとなっています。

取り上げられているカバーはIRON MAIDENJUDAS PRIESTEUROPEMEGADETH、MANOWAR、QUEENSRYCHEPRETTY MAIDSSCORPIONSKISSなど彼らのルーツにあるHR/HMバンドからG.B.H.、DISCHARGEといったハードコアバンド、SKITSLICKERS、ANTI-CIMEX、MODERAT LIKVIDATIONという地元スウェーデンのハードコア/クラストコアバンド、マイケル・アモット(G)がかつて在籍したCARCASS、そしてTEARS FOR FEARSやマイク・オールドフィールドといったポップ寄りまで、バラエティに富んだもの。JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、EUROPE、SKITSLICKERSはボーカリスト違いで複数選ばれているものもあります。

全24曲中、M-1「Shout」からM-11「City Baby Attacked By Rats」までがアリッサ時代、M-12「Warning」からM-20「Symphony Of Destruction」までがアンジェラ時代、ラスト4曲がヨハン時代としっかりブロック分けされているので、そこまで違和感を感じることはないかと。特にアリッサ時代はM-5「Nitrad」から「City Baby Attacked By Rats」までのパンク/ハードコアのカバーが続く流れで統一感を作るなど、構成も考えられていますしね。

ARCH ENEMYの活動を追っているリスナーには、すべて既出で所持している音源ばかりでしょう。しかし、こういった“ファン”アルバムは出すことに意味があるので、そこに文句をつけるのは野暮というもの。そんな中、M-1「Shout」は昨年発売されたアナログボックスセット『1996-2017』やアナログ7インチ盤「Reason To Believe」に収録されていたものですが、CD化はこれが初めて。原曲をよりヘヴィにしたアレンジはどことなくツェッペリン「Immigrant Song」に似ていて、DISTURBEDのカバーバージョンとは違った味わい深さがあります。

そのほかのカバーに関しては原曲まんまのものから凝ったアレンジのものまでさまざまですが、基本的には原曲に対する愛情が強いものが多い印象です。個人的にはPRETTY MAIDS「Back To Back」、EUROPE「Wings Of Tomorrow」、CARCASS「Incarnated Solvent Abuse」、IRON MAIDEN「Aces High」がお気に入りです。

ちなみに、CDブックレットにはマイケル・アモットによる各曲の解説入り。残念ながら日本盤はおろか、配信&ストリーミングもなしの本作ですが、特にストリーミングに関しては過去作もゼロなので、これを機に動いてほしいものです。



▼ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』
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2018年12月11日 (火)

PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』(2006)

2006年10月(日本では11月)リリースの、KISSのフロントマンであるポール・スタンレー(Vo, G)通算2作目のソロアルバム。『PAUL STANLEY』(1978年)から28年ぶりのソロ作となりますが、前作は当時のKISSメンバー4人同時ソロアルバムリリースという企画の一環だったので、純粋なソロアルバムという意味ではこの『LIVE TO WIN』が今のところ唯一の作品と言えるかもしれません。

2000年代半ばはKISSとしての新作が途絶えていた時期で、その2年前にはジーン・シモンズ(Vo, B)も2ndソロアルバム『ASSHOLE』(2004年)をリリースしています。そちらに対するフラストレーションも多少なりともあったと思うのです(事実、本作リリース後にはソロでショートクラブツアーも行っていましたし)。

さて、内容ですが、我々がイメージするポール・スタンレーそのままの、メロディアスなハードロックアルバムに仕上がっています。80年代のHR/HMテイストのKISSをよりモダンな質感にして、ゼロ年代のアレンジでアップデートした、と書けばよりイメージしやすいかもしれません。

そういった楽曲を手がけるのは、ポールのほかにデズモンド・チャイルド、アンドレアス・カールソン、マーティ・フレデリクセン、ホーリー・ナイトなどといった80年代〜ゼロ年代を代表する職業作家たち。さらにジョン・5(ROB ZOMBIE、ex. MARILYN MANSON)もソングライターとしてだけでなく、ギタリストとしてレコーディングにも参加。かつてのKISSメンバーでもあるブルース・キューリックはベーシストとして3曲でプレイしており、そういった意味ではこれまでの絆と新たな血を交えた実験的な1枚と言えるでしょう。

オープニングを飾る「Live To Win」は“いかにも”なメロディアスハードロックだし、「Everytime I Se You Around」は「Forever」を彷彿とさせるパワーバラード。「Lift」からはモダンなヘヴィロックからの影響が感じられるし、「It’s Not Me」はオールディーズ風のメロディを持ちながらもアレンジは現代的。「Where Angels Dare」あたりはKISSでそのまま演奏すれば間違いなく“KISSの楽曲”になるはずなのに、ここでは“ポールが歌ってるけど、KISSとはまた違ったテイスト”が感じられる。

そう、本作はポール・スタンレーのパブリックイメージそのままの内容なのに、完全にはKISSっぽくなっていない。そのさじ加減がミソなのかなと思うのです。そりゃあソロアルバムを作るんだからKISSとの差別化は考えるでしょう。それがアンドレアス・カールソンやマーティ・フレデリクセンといったモダンなソングライターと、ジョン・5など若手プレイヤーの導入に端的に表れていると。頭ではわかっていても、実はそのへんを理解するのが濃いKISSファンになればなるほど難しさを伴う1枚かもしれません。

ハードロックアルバムとして考えれば、本作は非常によく作り込まれた1枚です。が、KISSファンとして接しようとすると肩透かしを食らう。リスナーのポジションによって若干の評価の違いが生じてしまう、悲しい1枚と言えるでしょう。少なくとも、KISSの新譜に植えていた2006年という時代においては。

けど、リリースから12年経った今聴くとすんなり楽しめる。時代が一周したのもあるし、KISSがその後2枚のオリジナルバムを発表しているのも大きいでしょう。とにかく、KISSのイメージを持ちつつも、ポールひとりでやりたいことをやったらこんなアルバムができるよと。そういう接し方が一番素直に楽しめるのではないでしょうか。



▼PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』
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2018年12月 6日 (木)

KISS『ALIVE III』(1993)

1993年5月発売の、KISS通算3作目のライブアルバム。当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ブルース・キューリック(G)、エリック・シンガー(Dr)の4人。前年1992年に発表したスタジオアルバム『REVENGE』を提げたUS公演から厳選された16曲(日本盤およびデジタル盤は1曲追加の全17曲)で構成されています。

ライブ盤としての前作『ALIVE II』(1977年)から16年ぶりのライブ作品ということで、実は80年代のKISSって1枚もライブ作品を残していないんですよね。だから、ノーメイク時代の正式なライブアルバムは本作のみという(1996年に『KISS UNPLUGGED』も発売されていますが、あれはアンプラグドライブなので割愛します)。

というのも、80年代、特にKISSがメイクを落とし活動していた80年代半ばはMTVの時代。音のみから映像ありきの時代へと移行していったこともあり、KISSもあの時代にしてはいち早くライブビデオ『ANIMALIZE LIVE UNCENSORED』を1985年に発売しているのです。また、1987年にはMVと70年代〜80年代のライブ映像をミックスした『EXPOSED』も発表していますし、そういう意味ではこの2作品を“80年代流の『ALIVE』シリーズ”と捉えることができるかもしれません。

そうやって時代に敏感なKISSが、90年代に入り再びライブアルバムをリリースしたというのが興味深いところなのですが、派手なヴィジュアルを推した80年代からそういったヴィジュアルありきの時代が終わりを告げ、再び音で勝負みたいな世界に戻っていった。特に1993年なんて時代はNIRVANAPEARL JAMがバカ売れしていた時代です。KISS自身も『REVENGE』でヘヴィかつ生々しいサウンドへとシフトチェンジしましたし、ビデオ作品からこうやって再びライブアルバムという手法に変えたのは、ある意味正解だったのかなと。そういう嗅覚だけは異常に冴えてますからね、この人たち(とはいえ、同時期には『ALIVE III』のライブ映像に70年代の秘蔵映像を追加したビデオ作品『KISS DONFIDENTIAL』も発売されているのですが、それはそれということで)。

さて、その本作ですが内容的には『REVENGE』の楽曲を軸にしつつ、70〜80年代のKISSの名曲を織り交ぜた、実にグレイテスト・ヒッツ的な選曲となっています。「Deuce」や「Rock And Roll All Nite」「Detroit Rock City」といった過去の『ALIVE』シリーズにも収録されていたヒット曲はもちろんですが、『ALIVE II』以降に発表された「I Was Made For Lovin' You」や「I Love It Loud」「Heaven's On Fire」「Lick It Up」「Forever」といったヒット曲/代表曲に加え、「I Still Love You」や「Watchin' You」といったレア曲もあったりと、なかなかこの時代らしいセレクト。KISSがヘヴィメタル化した『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から3曲も選ばれているのも、90年代前半のKISSのモードを物語っているのではないでしょうか。

あと、ご存知のとおりKISSはライブ作品のオーバーダブをしたりボーカルやギターを差し替えたりすることで知られていますが(そんなのファンしかしらないって。笑)、本作のサウンドの質感がまさに「スタジオライブ音源にスタジアムでの完成を被せた」ような仕上がりでして。本当に純粋なライブアルバムとは言い難い、非常に“整理された”サウンドなのです。そこを良しとするか否かで、本作に対する評価もまた変わってくるのかなと。ただ、このアルバムが発売された当時、KISSは1988年以来の来日公演がまったく実現していなかったため、日本のファンにとってはあの頃のライブの雰囲気に触れるという意味で非常に重要な役割を果たした1枚だったのではないかと思います(あの頃、誰もが海賊盤に手を出せたわけではないしね)。

僕ですか? そんな小難しいこと考えず、夢中になって聴きまくってましたが(笑)。KISSに関しては、そういう楽しみ方が正しいのではないかと思うのです。踊らされてナンボでしょ?



▼KISS『ALIVE III』
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2018年11月25日 (日)

V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』(2018)

2018年10月リリースの、ゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム。アルバムジャケットにあるように、ゲイリーの諸作品やライブに参加してきたベーシスト、ボブ・デイズリーが中心となって制作された本作には、ニール・カーター(Key)やドン・エイリー(Key/DEEP PURPLE)、エリック・シンガー(Dr/KISS)、グレン・ヒューズ(Vo)に加え、元SKID ROW(「Youth Gone Wild」じゃないほう)のブラッシュ・シールズ(Vo)といったゲイリー・ムーアと馴染み深い面々、ゲイリーの実子であるガス・ムーア(Vo)とジャック・ムーア(G)のほか、豪華ゲストプレイヤーが多数参加しています。

そのメンツもジョン・サイクス(G)やダニー・ボウズ(Vo/THUNDER)、スティーヴ・ルカサー(G/TOTO)、ジョー・リン・ターナー(Vo)、リッキー・ウォリック(Vo/BLACK STAR RIDERS)、スティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE)、デーモン・ジョンソン(Vo, G/BLACK STAR RIDERS)、ダグ・アルドリッチ(G/THE DEAD DAISIES)などなど。とにかく、無駄に豪華です。

選曲的にはブルースに傾倒した『STILL GOT THE BLUES』(1990年)以降の作品にこだわることなく、初期の『BACK ON THE STREETS』(1978年)から『VICTIMS OF THE FUTURE』(1983年)、『WILD FRONTIER』(1987年)の楽曲も収録。ボブ・デイズリー自身が関わっていることもあってか、『POWER OF THE BLUES』(2004年)という晩年の作品から3曲も選ばれていることがちょっと意外でした。

基本的にはどの曲もゲイリー独特の粘っこいギターフレーズを活かしつつ、オリジナルを尊重しながら随所に自身の個性を取り入れていく手法で、またボブが中心となって制作していることもあって統一感も強く、この手のトリビュートアルバムとしてはかなり水準の高いもののように思います。HR/HM系ギタリストが多く参加しているものの、各自そこまで出しゃばることもないので、本当に気持ちよく楽しめる1枚です。

やはり本作最大の聴きどころは、久しぶりにシーン復帰を果たしたジョン・サイクス参加の「Still Got The Blues (For You)」になるかと。ゲイリーからの影響も大きく、彼と同じTHIN LIZZY(=フィル・ライノット)にもお世話になった関係もあり、そりゃあもうディープなソロを聴かせてくれています。まあこの曲自体、基本的にメインフレーズの繰り返しになるのでそこまでアドリブを効かせることは難しいのですが、特に終盤のソロはサイクスらしいもので、フェイドアウトせずにこのままずっと聴いていたい!と思わせられるはずです。

で、この曲を歌うのがTHUNDERのダニー・ボウズというのが、また最高。思ったよりも感情抑え気味ですが、それがギターのエモーショナルさに拍車をかけているように感じました。うん、これ1曲のために購入してたとしても無駄じゃないと思います。

個人的にはこのほか、リッキー・ウォリックが歌い、スティーヴ・モーズがギターを弾く「Parisienne Walkways」、グレン・ヒューズが最高のボーカルパフォーマンスを聴かせる「Nothing's The Same」、思ったよりもゲイリー・ムーア色の強いダグ・アルドリッチのプレイが印象に残る「The Loner」、デーモン・ジョンソンが歌って弾いてと大活躍の「Don't Believe A Word」あたりがお気に入り。もちろん、そのほかの曲も文句なしに良いです。

来年の2月で、亡くなってから早8年。ゲイリー・ムーアというギタリストがどんな存在だったか、改めてロック/ブルース/HR/HMシーンに与えた影響をこのアルバムから振り返ることができたら、と思います。彼の名前しか知らないという若いリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。



▼V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』
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2018年11月24日 (土)

KISS『HOT IN THE SHADE』(1989)

1989年10月リリースの、KISS通算15枚目のオリジナルアルバム。リードシングル「Hide Your Heart」こそ全米66位と低調で終わりましたが、続く「Forever」は最高8位と、「Beth」(1976年/全米7位)以来13年ぶりの全米TOP10ヒットを記録。その後も「Rise To It」(全米81位)のスマッシュヒットが生まれたものの、アルバム自体は最高29位止まりで50万枚程度のセールスという中ヒットで終わっています。

ポップ路線が際立った前作『CRAZY NIGHTS』(1987年)は完成度こそ高かったものの、KISSらしさという点においてはファンから敬遠されてしまった。その反省から、今作ではジーン・シモンズ(Vo, B)&ポール・スタンレー(Vo, G)のセルフプロデュースで原点に立ち返り、時代に合わせてよりタフでハードなスタイルへとシフトチェンジさせています。

ソングライターにはおなじみのデズモンド・チャイルドやボブ・ハリガン・Jr.、ヴィニー・ポンシア、アダム・ミッチェルに加え、BON JOVIやHEARTで名を馳せたホーリー・ナイト、のちに復帰するエース・フレーリーの後釜としてバンドに加わるトミー・セイヤーも名を連ねています。面白いところでは、当時頭角を現していたシンガーのマイケル・ボルトンが「Forever」のソングライターとしてクレジットされているところでしょうか。

シングルカットされた3曲含め、本作収録曲はどれもメロディ自体はKISSらしいメロディアスさやポップさがあるんだけど、サウンドが硬すぎて通して聴くのが疲れるんですよね。全15曲でトータル59分というKISS史上最多曲数のオリジナル作品というのもあってね。ポールVo曲とジーンVoが7曲ずつとバランスよく収まっているものの、15曲中すべて良い曲かと言われると……3〜4曲削って、10〜12曲程度に収めたらもっと聴きやすくて、印象も良くなったんじゃないかと思うんですよ。

ちなみに、「Hide Your Heart」は同タイミングにKISSのほか、ボニー・タイラー(彼女のバージョンが最初にリリース)や、当時元メンバーだったエース・フレーリーもレコーディング。不思議な競演を繰り広げるものの、この曲自体はそこまでヒットにはつながらなかったという。もともとは『CRAZY NIGHTS』制作時に生まれた曲だったようだし、あのタイミングに出していたらもうちょっとヒットしたんじゃないでしょうかね。

本作にはエリック・カー(Dr)がオリジナルアルバムで初のメインボーカルを務めたオリジナル曲「Little Caesar」も収録(先に1988年発売のベストアルバム『SMASHES, THRASHES & HITS』で、「Beth」のVo差し替えバージョンを担当済み)。ダイナミックなハードロックと、クセの強くないストレートな歌声の相性も抜群で、当時はこれが最後のVo曲になってしまうなんて思いもしなかったなあ。

KISSファンにとっては内容的に印象が薄い1枚ですが(ライブでも、もはや「Forever」程度しか演奏されてませんし)、エリック・カー生前ラスト作という点においては忘れられない1枚かもしれません。聴く頻度が低い作品だけに、せめて命日の今日くらいは大音量で鳴らそうではないですか。



▼KISS『HOT IN THE SHADE』
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2018年10月26日 (金)

KISS『HOTTER THAN HELL』(1974)

デビューアルバム『KISS』(1974年)から8ヶ月という短いスパンで発表された、1974年10月発売のKISSの2ndアルバム。前作同様ケニー・カーナー&リッチー・ワイズがプロデュースを手がけているのですが、全体的に軽快な作風だった前作よりも重みのあるサウンドに仕上げられています。

前作はポップでキャッチーなロックンロールがベースにある楽曲が多かったものの、本作はよりタフでハードなノリの楽曲が増えています。エース・フレーリー(G, Vo)作の「Parasite」やジーン・シモンズ(Vo, B)による「Goin' Blind」「Watchin' You」などがその最もたる例と言えるでしょう。

また、全体を通してジーンが10曲中5曲でリードボーカルをとっていることも、ヘヴィさに多少なりとも影響しているのかもしれません。ポール・スタンレー(Vo, G)は以外にも3曲(「Got To Choose」「Hotter Than Hell」「Comin' Home」)しか歌っておらず、残り2曲(「Mainline」「Strange Ways」)はピーター・クリス(Dr, Vo)がリードを担当。以降の作品にも言えますが、ジーンが歌う曲が多いアルバムって作風的に重くなりがちなので、本作はそういった意味ではその先駆け的1枚かもしれませんね。

それもあるのでしょうか、本作は90年代に入ってからグランジ/ヘヴィロック系バンドから高く評価されていたような印象があります。「Let Me Go, Rock 'n' Roll」みたいにKISSのパブリックイメージまんまな楽曲もあるものの、本作でやっぱり印象に残るのは先の「Parasite」や「Goin' Blind」「Hotter Than Hell」「Watchin' You」だったりするのですから。グランジのルーツなんていうのも頷ける話です。

とはいえ、KISS史の中では本作ってそこまで人気の高い1枚とはいえず、人気曲の多いデビューアルバムや、「Rock And Roll All Nite」を生み出した次作『DRESSED TO KILL』(1975年)と比較すると地味と言わざるを得ません。まあ、地味だからこそ玄人好みするというのもありますけどね。

あと、本作は現在の“耳”で聴くと非常にこもった音質に感じられます。『KISS』も『DRESSED TO KILL』も、もうちょっと抜けがよいだけに、それらに挟まれた本作は余計にこもった感が強い気がしてしまうんです。ダークさ、ヘヴィさを演出するという点においては、そこが功を奏している気がしないでもないですが……もうちょっとクリアな音で鳴らされたとき、この楽曲群のイメージがどう変わるのかも興味深いところです。



▼KISS『HOTTER THAN HELL』
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