カテゴリー「KISS」の35件の記事

2021年3月20日 (土)

PAUL STANLEY'S SOUL STATION『NOW AND THEN』(2021)

2021年3月19日にリリースされたPAUL STANLEY'S SOUL STATIONの1stアルバム。

このバンドはKISSポール・スタンレー(Vo, G)がここ数年の間にスタートさせた、15人編成のR&B/ソウルミュージック・バンド。過去の偉大な名曲群に敬意を表してカバーしており、2018年には日本のブルーノートでの来日公演も実現しています。ある種、KISSを終えた後のライフワークにしようとしているのが見えますね。

今回制作されたデビューアルバムは、ポールのソロワークとしては『LIVE TO WIN』(2006年)以来約15年ぶりの新作。全14曲のうち、9曲が60年代前後のR&B/ソウルの往年の名曲カバーで、5曲が今作のためにポールが書き下ろしたオリジナル新曲となります。制作開始当初はカバー曲のみで構成される予定だったアルバムでしたが、ポール曰く「バンドも曲も、過去だけに頼っていてはいけないと思い始めたんだ。それで、過去と現在とを継ぎ目なく滑らかに結び付けるような曲を書くことを目標に、新曲作りに着手した」そうです。

アルバムで取り上げられたカバー曲はTHE SPINNERS「Could It Be I'm Falling In Love」、SMOKEY ROBINSON & THE MIRACLES「Ooo Baby Baby」、FIVE STAIRSTEPS「O-O-H Child」、THE TEMPTATIONS「Just My Imagination (Running Away With Me)」、スモーキー・ロビンソン「The Tracks Of My Tears」、アル・グリーン「Let's Stay Together」、THE DELFONICS「La-La – Means I Love You」、THE STYLISTICS「You Are Everything」、FOUR TOPS「Baby I Need Your Loving」とロックリスナーにも比較的わかりやすいセレクト。アレンジも特にヘンテコな味付けをすることなく、ゴージャスなバンドセクションにより原曲の魅力を大切にカバーされています。

で、その間に配置されたオリジナル新曲の数々ですが、これらの仕上がりも先のカバー曲に引けを取らないものばかり。ぶっちゃけカバーの原曲を知らない人が聴いたら、どれがオリジナルでどれがカバーか気づかないくらい違和感なく楽しめるものばかりです。かつ、“あのKISSのポール・スタンレー”が書いたと納得できる、KISSの匂いが節々から感じられる内容と言えるでしょう。もともとポールの書くKISSナンバーには、初期からソウルの影響が感じられるメロディラインや節回しが多かったですし、そういった意味でも想定内の完成度だと言えます。

KISSやロックテイストのソロ作では必要以上に力み過ぎた歌唱で、逆にそれが爽快感につながっていました。が、時々聴かせるファルセットなど繊細な表現も彼の魅力のひとつであり、このSOUL STATIONではその側面をより強調させた作風となっています。楽曲や演奏は悪いわけがない、ボーカルも御年69歳のわりに張りがありながらも穏やかさが伝わる、非の打ちどころがないゴージャスな1枚。刺激的な内容ではないけど、ずっと楽しめる良作です。

 


▼PAUL STANLEY'S SOUL STATION『NOW AND THEN』
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2020年11月23日 (月)

KISS『ANIMALIZE』(1984)

1984年9月にリリースされたKISS通算12作目のスタジオアルバム。それまで『地獄の〜』シリーズが多かった邦題も、ようやく本作からは原題をそのままカタカナ化することで落ち着くことになりました。

前作『LICK IT UP』(1983年)でメイクをやめて素顔をさらけ出し、さらにそのサウンドも当時勃発し始めたHR/HMブームに便乗したもので、話題性もあり成功を収めました。そういった意味では、続く今作で真価が問われるわけですが、2代目ギタリストのヴィニー・ヴィンセントが脱退。代わりに加入したマーク・セント・ジョンが唯一参加したのが、本作『ANIMALIZE』になります。

このアルバムは50年近いKISSのキャリア史上、唯一のポール・スタンレー(Vo, G)単独プロデュース作品。というのも、相方のジーン・シモンズ(Vo, B)が本作制作時期に映画『未来警察』に俳優として参加していたことで、制作途中で離脱してしまうのです。

全9曲中ポール歌唱曲が5、ジーン歌唱曲が4というバランスですが、もしジーンに余裕があったらもう1曲彼が書き下ろしたんでしょう。なお、ポール書き下ろし曲ではデズモンド・チャイルドが3曲に参加。リードシングル「Heaven's On Fire」などキャッチーな楽曲を提供しています。エリック・カー(Dr, Vo)もドラムのみならず、「Under The Gun」でポール&デズモンドと共作を果たしています。

前作『LICK IT UP』はそのひとつ前の『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)の延長線上にありながらも、初期のKISSらしいキャッチーさが復調し始めていましたが、今作ではそこに80年代前半ならではのゴージャスさ、ふくよかな質感が加わり、ある意味では“LAメタル/ヘアメタル版KISS”と言えなくもないHR/HMサウンドが展開されています(当時のファッションもまんまLAメタルですし)。オープニングを飾る「I've Had Enough (Into The Fire)」や「Under The Gun」なんて、まさに時代を意識したメタルチューンですものね。

そんな中にも、先の「Heaven's On Fire」や「Lonely Is The Hunter」のように初期を彷彿とさせるテイストの楽曲も含まれており、やっぱり“餅は餅屋”と再認識させられます(といっても、アレンジや音の質感は完全に80年代のそれですけどね)。個人的には、のちのスタイルへとつながっている「Thrills In The Night」のような楽曲がお気に入りです。

本作からは「Heaven's On Fire」が全米49位というまずまずのヒットとなり、アルバム自体も全米19位まで上昇。前作並みのヒット(プラチナム獲得)となりました。とはいえ、KISSの80年代史の中では軽んじられる傾向の強い1枚でもあり、そのへんはマーク・セント・ジョンという印象の薄いメンバーのせいもあるのかなと。マークは本作を携えたツアー開始から数公演で脱退、代わりに本作で3曲ソロを披露しているブルース・キューリックがそのままバンドに加わり、以降10年以上にわたりバンドを支えることになりあす。

 


▼KISS『ANIMALIZE』
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2020年10月 2日 (金)

ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.2』(2020)

2020年9月18日にリリースされた、エース・フレーリーのカバーアルバム第2弾。

スタジオ作品としては『SPACEMAN』(2018年)から2年ぶりの新作となるこのアルバムは、2016年発売の『ORIGINS VOL.1』の続編。第1弾にはエースのルーツにあたるロックバンド/アーティストのカバーに加えKISS時代のセルフカバー3曲を含む全12曲が収録されていましたが、今回KISSナンバーはボーナストラックとして切り分けられ、本編11曲ではLED ZEPPELINDEEP PURPLECREAMTHE BEATLESTHE ROLLING STONES、THE KINKS、MOUNTAIN、HUMBLE PIE、ジミ・ヘンドリクス、PAUL REVERE & THE RAIDERS、THE ANIMALSといった(一部、日本人には印象の薄いものが含まれていますが)ロッククラシックと呼ぶにふさわしい名曲たちを取り上げています。

ボーナストラックを含む全12曲中、エースがメインボーカルを務めるのは10曲。前作ではKISS時代の盟友ポール・スタンレーがゲストボーカルとして参加していましたが、今回はリタ・フォードが「Jumpin' Jack Flash」で、ロビン・ザンダー(CHEAP TRICK)が「30 Days In The Hole」でそれぞれ“らしい”歌声を聴かせてくれます。そのほか、前作から引き続きジョン・5(G/ROB ZOMBIE、ex. MARILYN MANSON)が「I'm Down」「Politician」、エースと同じく元KISSのブルース・キューリック(G)が「Manic Depression」、ピーター・フランプトンやSIMON & GARFUNKELとの演奏でも知られるロブ・サビーノ(Organ)が「Space Truckin'」がゲスト参加。本編11曲ではMR. BIGのサポートなどで知られるマット・スター(Dr)がプレイしています。

セレクトされているアーティストの前作との被りを見ると、エース自身がそこまで広く、いろんなジャンルを聴いているわけではないことが伺えますし、視点を変えればクラシックロックと呼ばれる60〜70年代の音楽にそれだけ強く影響を受けたという現れなのでしょう。まあ、エースが今さらパンク以降の音楽をカバーしても説得力がありませんけどね。

おなじみのヘタウマ・ヘロヘロボーカルはここでも健在で、激ウマシンガーが歌うことで知られる「Good Time Bad Times」や「Space Truckin'」でもこれまで同様に歌うことで自身の個を強くアピール。もはや伝統芸能の域に達しつつあります。逆に脱力系「I'm Down」は、これはこれでいい味を出しているんじゃないかと。そう、味は深いんですよ。なので、テクよりも感性に訴えかけるシンガーなんだと思います(たぶん)。

リタ・フォードは前作にも参加していたので割愛しますが(するなよ)、注目のロビン・ザンダーは相変わらずの説得力でMR. BIGファンにおなじみの「30 Days In The Hole」を歌唱。ぶっちゃけ、エリック・マーティンよりも(以下割愛)。最近カバーづいているCHEAP TRICKおよびロビン・ザンダーですが、ここまできたら一度カバー集を制作してみるというのはいかがでしょうか。まあそれはそれで普通すぎるか。

個人的に気になった(気に入った)のが、終盤3曲……ジミヘン「Manic Depression」、PAUL REVERE & THE RAIDERS「Kicks」、THE ANIMALS「We Gotta Get Out Of This Place」の流れ。前半〜中盤の大衆的な選曲/仕上がりと比べると、この3曲にはエースの真髄/魂がより濃く表現されている気がしてなりません。この3曲のためだけに本作をゲットすべしと断言したいくらいです。だからこそ、ボーナストラック扱いのKISS「She」セルフカバーは蛇足な気がするのですが(だからボートラなんだろうけどね)。

第1弾ほどのインパクトはないものの、KISSファンやCHEAP TRICKファン、そしてクラシックロック・リスナーには十分に楽しめる内容だと思います。

 


▼ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.2』
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2020年9月 3日 (木)

ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』(2016)

2016年4月にリリースされたエース・フレーリーのカバーアルバム。スタジオ作品としては通算7作目のソロアルバムとなります。

本作はエースに多大な影響を与えてきたアーティストたち(CREAMTHE ROLLING STONESジミ・ヘンドリクスFREETHIN LIZZYLED ZEPPELIN、THE TROGGS、STEPPENWOLF、THE KINKSと無難なセレクト)の名曲に加え、KISS時代の楽曲も3曲収録。自身が作詞作曲した「Parasite」および「Cold Gin」(ともにジーン・シモンズVo曲)はわかりますが、彼がレコーディングにほぼ関わっていない『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から「Rock And Roll Hell」(ジーン、ブライアン・アダムス、ジム・ヴァランス作)をセレクトしているのには思わず「?」となってしまいました(苦笑)。

全12曲中11曲でエースがリードボーカルを担当しており、「White Room」と「Bring It On Home」ではドラマーのスコット・クーガン(L.A. GUNS、ex. BRIDES OF DESTRUCTIONなど)がコ・リードボーカルを披露しています。エースのボーカルは今さら述べるまでもなく(笑)、味わい深いヘタウマぶりで、もはや安定感すら漂っています。うん、もうこれはこれでアリだし、これじゃなきゃいかんわな。

で、本作の注目点はもうひとつ、多彩なゲスト陣が挙げられると思うのです。先に述べたボーカル曲のうち、エースが歌っていない「Fire And Water」ではKISS時代の盟友ポール・スタンレーが参加。なにやら最初はジーンに声をかけたんだけどスルーされ(笑)、続いてポールに声をかけたらOKをもらえたんだとか。かわいそうだけど(苦笑)、結果いいコラボレーションが楽しめたので良しとしましょう(その後、ジーンは次作『SPACEMAN』にソングライティング&ベースで1曲参加しているので、めでたしめでたし)。

このほかにもスラッシュGUNS N' ROSES)が「Emerald」でエースとツインリードを披露し、リタ・フォードは「Wild Thing」でツインボーカル&リードギター、ジョン・5(ROB ZOMBIE)は「Spanish Castle Magic」と「Parasite」でリードギター、マイク・マクレディ(PEARL JAM)は「Cold Gin」でギターソロを聴かせてくれます。「Emerald」は意外とエースのボーカルがハマっているのと、スラッシュが良い仕事をしてくれていることで、個人的にもベストテイクかな。KISSナンバーの数々はさすがにボーカル含め小慣れた感強し(笑)。そんな中で、やはり「Rock And Roll Hell」だけはジーンのクセの強さが脳裏に焼き付いているので、ちょっとした違和感が。でも、慣れると悪くないですよ(実はギターソロがなかなかエースらしさ満載で、良テイクではないかと)。

今年9月にはカバー集第2弾『ORIGINS VOL.2』のリリースも控えており、すでに「Space Truckin'」(DEEP PURPLE)が公開中。こちらも楽しみにしております。

 


▼ACE FREHLEY『ORIGINS VOL.1』
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2020年8月16日 (日)

KISS『DRESSED TO KILL』(1975)

昨日のSHARPTOOTHのレビューで触れた「そもそもロック黎明期はそれくらい(アルバムは10数曲で30分前後)のトータルランニングが当たり前」という話題から、今日はKISSが1975年3月にリリースした3rdアルバムについて紹介したいと思います。

……え、もう45年も前のアルバムなの?(笑) ほぼ半世紀前じゃん! 初めてこのアルバムに触れたタイミングが、オリジナル盤リリースから10数年後だったことを考えると、自分がいかに歳取ったかを思いしらされます(苦笑)。

ビートルズをハードロック化させたかのような1stアルバム『KISS』(1974年)、ヘヴィさに比重を置くも録音状態のせいでのちのグランジロック的な不思議な仕上がりになった2nd『HOTTER THAN HELL』(1974年)を経て、半年という短いスパンで届けられた今作は、KISSにとって大きなターニングポイントとなった1枚。なにせ、本作からは「Rock And Roll All Nite」(全米68位)というヒットシングルを生み出し、その効果もあってアルバム自体も初のTOP40入り(全米32位)を果たしたわけですから。ちなみに「Rock And Roll All Nite」は、続くライブアルバム『ALIVE!』(1975年)からシングルカットされたライブテイクがさらなるヒット(全米12位)を記録しており、ファンにはこちらのバージョンのほうが有名かもしれません。

さて、本作ですが基本的には1stアルバムをより軽やか、かつしなやかにバージョンアップさせた内容と言えるでしょう。いかにもKISSらしいドラマチックなイントロを持つ「Rock Bottom」や、どこか泣きメロ的にも聞こえてくる名曲「C'mon And Love Me」、過去2作で見せたヘヴィさを強調させた「She」などの楽曲が印象に残るものの、やはり今作は「Room Service」や「Anything For My Baby」「Love Her All I Can」、そして「Rock And Roll All Nite」に見られるシンプル&ストレートなロックンロールナンバーが聴きどころではないでしょうか。この軽やかさは過去2作にはなかったものだと思いますし、この勢いがのちの『ALIVE!』へとつながっていくわけですから、KISSの成功を語る上でも本作での進化は特筆すべきポイントだと思っています。

とにかく、どの曲もコンパクトでシングルライクなものばかり。このへんの作りからも、当時の彼らが起死回生の一撃を狙っていたことが伺えるのではないでしょうか。ポール・スタンレー(Vo, G)が5曲、ジーン・シモンズ(Vo, B)が3曲、ピーター・クリス(Vo, Dr)が1曲、そしてポール&ジーン&ピーターで歌い分ける1曲というボーカルバランスも絶妙ですしね(そんな作品から、ジーンVo曲の「Rock And Roll All Nite」がシングルヒットするというのも興味深いですし)。

『ALIVE!』で一区切りをつけたKISSは、4作目のスタジオアルバム『DESTROYER』(1976年)でロックンロールバンド的なラフさよりも「作品」を「作り込む」作風へとシフトしますが、そういった意味ではバンド初期の勢いがストレートに感じられるスタジオアルバムは本作までと言ってもいいかもしれません。

 


▼KISS『DRESSED TO KILL』
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2020年1月29日 (水)

DESMOND CHILD『DESMOND CHILD LIVE』(2019)

2019年10月末にリリースされた、デズモンド・チャイルドのライブアルバム。日本盤未発売(2020年1月末時点)。

ご存知のとおり、デズモンド・チャイルドは職業作家としてBON JOVIAEROSMITHKISSアリス・クーパーなどに楽曲提供および共作を続けてきたアーティスト。さらにプロデューサー業のほか、自身もシンガーとして70年代にDESMOND CHILD & ROUGE名義で2枚のアルバム、90年代にはソロアルバム『DISCIPLINE』(1991年)をリリースするなど音楽家としても知られています。

その彼が、『DISCIPLINE』以来28年ぶりにソロ名義でのアルバムを発表しました。本作は2018年3月1〜3日にニューヨークで行われた、40年以上にわたるデズモンドのミュージシャン人生を祝すスペシャルライブの模様を収めたもの。当日は彼が過去に手がけた楽曲のほか、DESMOND CHILD & ROUGEの楽曲、さらにはローラ・ニーロ「The Man Who Sends Me Home」、ジョージ・マイケル「Fast Love」といったフェバリット・ナンバーのカバーも披露sれています。

アルバムにはこのうち、デズモンドの作家人生を総括するようなヒットナンバー、隠れた名曲などをピックアップ。彼自身が歌うナンバーもあれば、ハウスバンドのギタリストや女性コーラスが歌うものも含まれており、原曲の良さをできる限りベストな状態で伝えようとする意思が伝わってきます。

内訳的にもBON JOVIから「Livin' On A Prayer」「You Give Love A Bad Name」「(You Want To) Make A Memory」、AEROSMITH「Dude (Looks Like A Lady)」「Angel」、KISS「I Was Made For Lovin' You」、JOAN JETT & THE BLACKHEARTS「I Hate Myself For Loving You」、HANSON「Weird」、マイケル・ボルトン「How Can We Be Lovers?」、シェール「We All Sleep Alone」、リッキー・マーティン「The Cup Of Life」「Livin' La Vida Loca」「Shake Your Bon-Bon」「She Bangs」(以上、4曲メドレー)、そしてDESMOND CHILD & ROUGEの「Love On Rooftop」(のちにシェールもカバー)、ブロードウェイ・ミュージカル『CUBA LIBRE』から「Where Do I Go From You」と実に幅広い選曲。ここにエアロ「What It Takes」「Crazy」やアリス・クーパー「Poison」、BON JOVI「Keep The Faith」あたりも入っていたら最高だったんですけどね(笑)。

まあ、バンドメンバーがハードロック畑の人ではなくAOR流れの人たちなんでしょうか。演奏はエッジが効いた感じではなく心地よさを重視した、悪く言ってしまえば「毒にも薬にもならない」安パイなもの。まあ曲の良さを伝えるという点においては、この形がベストなんでしょうね。それに、デズモンドもすでにいい年齢(この時点で64歳)ですから、これくらいのヌルさがちょうどいいのかもしれませんし。

にしても、本当にいい曲を書くソングライターだなと改めて実感。もちろん、どの曲も彼ひとりで書いたものではなく、それぞれのアーティストとの化学反応あってこそですが、仮に楽曲の骨格をアーティスト自身が作ったものであったとしても、そこにデズモンドが一手間加えることでスペシャルなものになるわけですからね。そのセンス、才能は飛び抜けたものがあるってことなんでしょう。じゃなかったら、ここまで知ってる曲連発のライブアルバムなんて作れないわけですから。

あと、BON JOVIの中でも比較的地味なヒット曲に含まれる「(You Want To) Make A Memory」をアルバムラストに選ぶあたりに、彼のこだわりやセンスが感じられるかも。この曲、派手さは皆無だしジワジワ盛り上がっていく構成といい本当に地味なんですけど、変な中毒性があるんですよね。

以前、こんな職業作家の記事を書きましたが、今回の記事とあわせて読んでいただくことで、デズモンドを含む職業作家の面白さに気づいてもらえたら幸いです。

 


▼DESMOND CHILD『DESMOND CHILD LIVE』
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2019年11月24日 (日)

KISS『LICK IT UP』(1983)

1983年9月に発表された、KISS通算11作目のオリジナルアルバム。日本盤は『地獄の回想』という邦題で、オリジナルの“被せジャケット”付きで同年11月にリリースされています。90年代に復活する“地獄”シリーズ、ひとまず本作で一度完結したようです。

当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ヴィニー・ヴィンセント(G)、エリック・カー(Dr)。オープニングトラック「Exciter」のリードギターでリック・デリンジャーがゲスト参加しています。「Lick It Up」(全米66位/全英31位)、「All Hell's Breakin' Loose」がシングルカットされ、アルバム自体は全米24位、全英7位という好成績を残しています。

本作で初めてメイクを落とし、素顔で活動を始めたことも話題となり、そのままセールスに反映されたようですね。と同時に、1983年というとQUIET RIOT『METAL HEALTH』DEF LEPPARD『PYROMANIA』とったHR/HMメガヒット作が誕生した記念すべき年。前作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)でHR/HM化したKISSにとってこのムーブメントは“満を辞して”と言えるものだったはずです。先見の明があったのか、ただ商売っ気が強かっただけなのか(主にジーンの)。

作風的には『CREATURES OF THE NIGHT』の延長線上にあるハード路線ですが、かっちりしすぎ&重すぎた前作よりも軽やかさ、しなやかさが増しているのが本作の特徴かな。また、先に挙げた「Lick It Up」のように“本来のKISS”らしいポップ&キャッチーな楽曲が含まれていることも、アルバム全体のバランスに良い作用を与えています。

全10曲中、ポールとジーンのリードボーカル曲の割合は半々。特にアナログA面(M-1「Exciter」からM-5「Gimme More」)はポールとジーンのボーカル曲が交互に置かれているので、素直に“楽しい”と思えるのでは。

一方で、アナログB面(M-6「All Hell's Breakin' Loose」からM-10「And On The 8th Day」)ポール曲2曲、ジーン曲3曲とまとめて置かれており、CDで考えると「Gimme More」からポール曲3曲、「Fits Like A Glove」からジーン曲3曲とかたまってしまっているのがちょっと……エゴなんですかね(笑)。ただ、ヘヴィメタル的なファストチューン「Gimme More」とロックンロール的ファストチューン「Fits Like A Glove」とそれぞれの色や姿勢の違いが楽しめるという点においては非常に興味深い内容。なにより、1曲1曲の出来が非常にクオリティ高いですしね。

また、ヴィニーのギタープレイも前作以上に自由度が高い(まあ前作はエース・フレーリーの影武者的存在でしたしね)。ソングライターとしても非常に優れておりましたし、本作をもってバンドを脱退してしまうのは非常に勿体ないと改めて思います。

ロックを聴き始めた時点で、すでにKISSはノーメイク期だったわけで、そんな自分にとってこのへんの作品はど定番中の定番なわけです。今となっては“70年代のロックンロール期こそKISS”と声高に言われ続けていますが、いえいえ。これこそ自分にとってのKISS原体験ですから。忘れちゃいけない良盤のひとつです。

 


▼KISS『LICK IT UP』
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2019年7月15日 (月)

KISS『DESTROYER』(1976)/『DESTROYER: RESURRECTED』(2012)

1976年3月にリリースされた、KISS通算4作目のオリジナルアルバム。

前作『DRESSED TO KILL』(1975年)から1年ぶりの新作に当たりますが、同作が初の全米TOP40入り(最高32位)。続いて発表されたライブアルバム『ALIVE!』(1975年)がさらに全米10位という高記録を残したことで、このオリジナルアルバム『DESTROYER』に対する期待も高く、最高11位まで上昇(アメリカのみで200万枚以上の売り上げを記録)。「Shout It Out Loud」(全米31位)、「Flaming Youth」(同74位)、「Beth」(同7位)とヒットシングルも多数生まれました。

本作ではアリス・クーパーAEROSMITHルー・リード、Dr.ジョンなどとの仕事で名を上げてきたボブ・エズリンが初めてプロデュースを担当。それまでのシンプルで小気味良いロックンロールスタイルから一歩踏み出し、非常に手の込んだ楽曲が増えています。

例えばアルバムオープニングの「Detroit Rock City」ですが、冒頭のSE(車に乗ってカーステでKISSを聴き始める)から曲に入っていく構成、そして同曲の重厚なアレンジ、ラストに事故を起こしてエンド→そのまま「King Of The Night Time World」へと続いていく流れは圧巻の一言。2曲ともドラマチックなツインリードソロが入っているのも印象的で、思わずコピーしたくなるフレーズが満載なんですよね。

ジーン・シモンズ(Vo, B)の魔王感がハンパないミディアムヘヴィの「God Of Thunder」(もともとはこの曲、アップテンポだったんですよね。そのデモ音源は2000年代前半にリリースされたボックスセットで試聴可能)、そのジーンが続けて歌うストリングスと児童合唱団をフィーチャーした「Great Expectations」と、とにかくバラエティ豊か。

ここまでがアナログA面で、B面は軽快でキャッチーな「Flaming Youth」「Sweet Pain」で初期3作をアップデートさせた感を提示し、ポール・スタンレー(Vo, G)&ジーンのツインボーカルが最高な「Shout It Out Loud」で最高のキャッチーさを見せつける。

そこからピーター・クリス(Dr, Vo)がリードボーカルを担当したドラマチックなバラード「Beth」、シンプルでキャッチーなロックチューン「Do You Love Me」でクライマックスへ。さらにシークレットトラックとして、「Great Expectations」使ったリフレイン「Rock An Roll Party」で締めくくり。トータルで34分少々と今の感覚だと短いように思いますが、非常に濃厚な1枚なんですよね。

どの曲もボブ・エズリンが曲作りに関与しており、その結果バンドとしてひと皮剥けたのは間違いないでしょう。このアルバムをKISSの代表作として挙げる人も多いんじゃないでしょうか。事実、僕も本作と1stアルバム『KISS』(1974年)の2枚を「最初に聴くべきKISSの名盤」としてプッシュするでしょうし。

 


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2019年7月14日 (日)

KISS『SONIC BOOM』(2009)

2009年10月発売の、KISS通算19作目のオリジナルアルバム。

ポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナル編成で制作された前作『PSYCHO CIRCUS』(1998年)から11年ぶりとなる新作で、新たに設立された自主レーベルKiss Recordsからのリリース(海外ではRoadrunner Records流通)。しかしながら、ここ日本では契約上の問題などもあり2019年7月現在まで一度も日本盤が発表されていないKISS唯一のオリジナル作品となります。

レコーディング参加メンバーはポール&ジーンにトミー・セイヤー(G, Vo)、エリック・シンガー(Dr, Vo)という2019年現在のラインナップと同じ編成。アルバムのプロデュースも現時点での最新作『MONSTER』(2012年)同様にポール&グレッグ・コリンズが担当しています。

KISSのオリジナル作品では現時点で最高となる全米2位まで上昇した本作。いかにもブルース・フェアバーン的キラキラサウンドと従来のKISSらしさがいびつな形でミックスされた『PSYCHO CIRCUS』とは異なり、今作では我々がイメージする“メイキャップ時代のKISS”をモダンにした作風にシフトしています。つまり、ご機嫌かつ適度にハードなロックンロールが最初から最後まで展開されている、文句なしの内容なわけです。

全11曲中、ボーカルの内訳はポール4曲、ジーン4曲、ポール&ジーン1曲、さらにトミー1曲、エリック1曲と非常に良いバランス。特にポールとジーンが一緒に歌う「Stand」は70年代のKISSの“あの”感じが見事に再現されており、なかなかの良曲なんですね。トミーのギターソロも耳に残るフレージング多数で、後半のドラマチックなアレンジ含め、KISSオールタムベストでも上位に入るべき1曲ではないかと思うのですが、いかがでしょう。

オープニングの「Modern Day Delilah」こそ彼らにしては地味な楽曲ですが、以降はどこをどう切り取ってもKISS。ジーンも2曲目の「Russian Roulette」こそヘヴィ路線ですが、こちらはモダンヘヴィというよりは70年代のハード&ヘヴィ寄りなので問題なし。9曲目の「I'm An Animal」も一緒ですね。そうそう、こういうジーンが観たい(聴きたい)んだよ我々は。

エリックの歌う「All For The Glory」はポール&ジーンが書き下ろした、どこかTHE HELLACOPTERSを思わせる哀愁味の強い1曲。まあTHE HELLACOPTERSがKISSをなぞっているので逆っちゃあ逆ですが、ここではなんとなくその関係性が逆転してしまっているような。エリックのしゃがれ声もあって、余計にそう感じさせるんですよね。うん、良曲。

トミーの歌う「When Lightning Strikes」はトミー&ポール書き下ろしによる、ミドルテンポのご機嫌なロックンロール。エースのようなヘロヘロボーカルとは違う、芯のある太い歌声に最初こそ戸惑いますが、これはこれであり。

全体的にインパクトの強い作品というわけではないですが、平均点以上の仕上がりで文句のつけどころも見当たらない。実は、90年代以降のKISSオリジナル作品の中では非常に高品質な1枚ではないでしょうか。そういった良作がいまだ国内リリースなし(しかもストリーミングサービスにもなし)というのは悲しい話です。ただ、「Modern Day Delilah」や「Say Yeah」など一部楽曲は最近のベストアルバムでも聴くことができるので、まずはそちらで試してからアルバムに触れてみてもいいのかな。

なお、本作の初回限定盤は3枚組仕様で、2008年に日本限定リリースされた再録ベストアルバム『地獄烈伝』と、2009年4月のブエノス・アイリス公演から6曲を収めたDVDが同梱されています。今でも中古で見つけることができるので、これから購入する人はこちらでもいいかもしれませんね。

 


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2019年3月 3日 (日)

ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』(2019)

2019年1月に発表された、ARCH ENEMYのカバーアルバム。バンド初期からシングルのカップリングやアルバムのボーナストラックとして収録されてきた歴代のカバー曲を1枚にパッケージした作品で、その内訳も初期3作のヨハン・リーヴァ時代、ブレイクのきかっけを作ったアンジェラ・ゴソウ時代、現在のアリッサ・ホワイト=グラズ時代と3世代にわたる、ある種のオールタイム“裏”ベストアルバムとなっています。

取り上げられているカバーはIRON MAIDENJUDAS PRIESTEUROPEMEGADETH、MANOWAR、QUEENSRYCHEPRETTY MAIDSSCORPIONSKISSなど彼らのルーツにあるHR/HMバンドからG.B.H.、DISCHARGEといったハードコアバンド、SKITSLICKERS、ANTI-CIMEX、MODERAT LIKVIDATIONという地元スウェーデンのハードコア/クラストコアバンド、マイケル・アモット(G)がかつて在籍したCARCASS、そしてTEARS FOR FEARSやマイク・オールドフィールドといったポップ寄りまで、バラエティに富んだもの。JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、EUROPE、SKITSLICKERSはボーカリスト違いで複数選ばれているものもあります。

全24曲中、M-1「Shout」からM-11「City Baby Attacked By Rats」までがアリッサ時代、M-12「Warning」からM-20「Symphony Of Destruction」までがアンジェラ時代、ラスト4曲がヨハン時代としっかりブロック分けされているので、そこまで違和感を感じることはないかと。特にアリッサ時代はM-5「Nitrad」から「City Baby Attacked By Rats」までのパンク/ハードコアのカバーが続く流れで統一感を作るなど、構成も考えられていますしね。

ARCH ENEMYの活動を追っているリスナーには、すべて既出で所持している音源ばかりでしょう。しかし、こういった“ファン”アルバムは出すことに意味があるので、そこに文句をつけるのは野暮というもの。そんな中、M-1「Shout」は昨年発売されたアナログボックスセット『1996-2017』やアナログ7インチ盤「Reason To Believe」に収録されていたものですが、CD化はこれが初めて。原曲をよりヘヴィにしたアレンジはどことなくツェッペリン「Immigrant Song」に似ていて、DISTURBEDのカバーバージョンとは違った味わい深さがあります。

そのほかのカバーに関しては原曲まんまのものから凝ったアレンジのものまでさまざまですが、基本的には原曲に対する愛情が強いものが多い印象です。個人的にはPRETTY MAIDS「Back To Back」、EUROPE「Wings Of Tomorrow」、CARCASS「Incarnated Solvent Abuse」、IRON MAIDEN「Aces High」がお気に入りです。

ちなみに、CDブックレットにはマイケル・アモットによる各曲の解説入り。残念ながら日本盤はおろか、配信&ストリーミングもなしの本作ですが、特にストリーミングに関しては過去作もゼロなので、これを機に動いてほしいものです。



▼ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』
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