カテゴリー「KISS」の26件の記事

2019年3月 3日 (日)

ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』(2019)

2019年1月に発表された、ARCH ENEMYのカバーアルバム。バンド初期からシングルのカップリングやアルバムのボーナストラックとして収録されてきた歴代のカバー曲を1枚にパッケージした作品で、その内訳も初期3作のヨハン・リーヴァ時代、ブレイクのきかっけを作ったアンジェラ・ゴソウ時代、現在のアリッサ・ホワイト=グラズ時代と3世代にわたる、ある種のオールタイム“裏”ベストアルバムとなっています。

取り上げられているカバーはIRON MAIDENJUDAS PRIESTEUROPEMEGADETH、MANOWAR、QUEENSRYCHEPRETTY MAIDSSCORPIONSKISSなど彼らのルーツにあるHR/HMバンドからG.B.H.、DISCHARGEといったハードコアバンド、SKITSLICKERS、ANTI-CIMEX、MODERAT LIKVIDATIONという地元スウェーデンのハードコア/クラストコアバンド、マイケル・アモット(G)がかつて在籍したCARCASS、そしてTEARS FOR FEARSやマイク・オールドフィールドといったポップ寄りまで、バラエティに富んだもの。JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、EUROPE、SKITSLICKERSはボーカリスト違いで複数選ばれているものもあります。

全24曲中、M-1「Shout」からM-11「City Baby Attacked By Rats」までがアリッサ時代、M-12「Warning」からM-20「Symphony Of Destruction」までがアンジェラ時代、ラスト4曲がヨハン時代としっかりブロック分けされているので、そこまで違和感を感じることはないかと。特にアリッサ時代はM-5「Nitrad」から「City Baby Attacked By Rats」までのパンク/ハードコアのカバーが続く流れで統一感を作るなど、構成も考えられていますしね。

ARCH ENEMYの活動を追っているリスナーには、すべて既出で所持している音源ばかりでしょう。しかし、こういった“ファン”アルバムは出すことに意味があるので、そこに文句をつけるのは野暮というもの。そんな中、M-1「Shout」は昨年発売されたアナログボックスセット『1996-2017』やアナログ7インチ盤「Reason To Believe」に収録されていたものですが、CD化はこれが初めて。原曲をよりヘヴィにしたアレンジはどことなくツェッペリン「Immigrant Song」に似ていて、DISTURBEDのカバーバージョンとは違った味わい深さがあります。

そのほかのカバーに関しては原曲まんまのものから凝ったアレンジのものまでさまざまですが、基本的には原曲に対する愛情が強いものが多い印象です。個人的にはPRETTY MAIDS「Back To Back」、EUROPE「Wings Of Tomorrow」、CARCASS「Incarnated Solvent Abuse」、IRON MAIDEN「Aces High」がお気に入りです。

ちなみに、CDブックレットにはマイケル・アモットによる各曲の解説入り。残念ながら日本盤はおろか、配信&ストリーミングもなしの本作ですが、特にストリーミングに関しては過去作もゼロなので、これを機に動いてほしいものです。



▼ARCH ENEMY『COVERED IN BLOOD』
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2018年12月11日 (火)

PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』(2006)

2006年10月(日本では11月)リリースの、KISSのフロントマンであるポール・スタンレー(Vo, G)通算2作目のソロアルバム。『PAUL STANLEY』(1978年)から28年ぶりのソロ作となりますが、前作は当時のKISSメンバー4人同時ソロアルバムリリースという企画の一環だったので、純粋なソロアルバムという意味ではこの『LIVE TO WIN』が今のところ唯一の作品と言えるかもしれません。

2000年代半ばはKISSとしての新作が途絶えていた時期で、その2年前にはジーン・シモンズ(Vo, B)も2ndソロアルバム『ASSHOLE』(2004年)をリリースしています。そちらに対するフラストレーションも多少なりともあったと思うのです(事実、本作リリース後にはソロでショートクラブツアーも行っていましたし)。

さて、内容ですが、我々がイメージするポール・スタンレーそのままの、メロディアスなハードロックアルバムに仕上がっています。80年代のHR/HMテイストのKISSをよりモダンな質感にして、ゼロ年代のアレンジでアップデートした、と書けばよりイメージしやすいかもしれません。

そういった楽曲を手がけるのは、ポールのほかにデズモンド・チャイルド、アンドレアス・カールソン、マーティ・フレデリクセン、ホーリー・ナイトなどといった80年代〜ゼロ年代を代表する職業作家たち。さらにジョン・5(ROB ZOMBIE、ex. MARILYN MANSON)もソングライターとしてだけでなく、ギタリストとしてレコーディングにも参加。かつてのKISSメンバーでもあるブルース・キューリックはベーシストとして3曲でプレイしており、そういった意味ではこれまでの絆と新たな血を交えた実験的な1枚と言えるでしょう。

オープニングを飾る「Live To Win」は“いかにも”なメロディアスハードロックだし、「Everytime I Se You Around」は「Forever」を彷彿とさせるパワーバラード。「Lift」からはモダンなヘヴィロックからの影響が感じられるし、「It’s Not Me」はオールディーズ風のメロディを持ちながらもアレンジは現代的。「Where Angels Dare」あたりはKISSでそのまま演奏すれば間違いなく“KISSの楽曲”になるはずなのに、ここでは“ポールが歌ってるけど、KISSとはまた違ったテイスト”が感じられる。

そう、本作はポール・スタンレーのパブリックイメージそのままの内容なのに、完全にはKISSっぽくなっていない。そのさじ加減がミソなのかなと思うのです。そりゃあソロアルバムを作るんだからKISSとの差別化は考えるでしょう。それがアンドレアス・カールソンやマーティ・フレデリクセンといったモダンなソングライターと、ジョン・5など若手プレイヤーの導入に端的に表れていると。頭ではわかっていても、実はそのへんを理解するのが濃いKISSファンになればなるほど難しさを伴う1枚かもしれません。

ハードロックアルバムとして考えれば、本作は非常によく作り込まれた1枚です。が、KISSファンとして接しようとすると肩透かしを食らう。リスナーのポジションによって若干の評価の違いが生じてしまう、悲しい1枚と言えるでしょう。少なくとも、KISSの新譜に植えていた2006年という時代においては。

けど、リリースから12年経った今聴くとすんなり楽しめる。時代が一周したのもあるし、KISSがその後2枚のオリジナルバムを発表しているのも大きいでしょう。とにかく、KISSのイメージを持ちつつも、ポールひとりでやりたいことをやったらこんなアルバムができるよと。そういう接し方が一番素直に楽しめるのではないでしょうか。



▼PAUL STANLEY『LIVE TO WIN』
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2018年12月 6日 (木)

KISS『ALIVE III』(1993)

1993年5月発売の、KISS通算3作目のライブアルバム。当時のメンバーはポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、ブルース・キューリック(G)、エリック・シンガー(Dr)の4人。前年1992年に発表したスタジオアルバム『REVENGE』を提げたUS公演から厳選された16曲(日本盤およびデジタル盤は1曲追加の全17曲)で構成されています。

ライブ盤としての前作『ALIVE II』(1977年)から16年ぶりのライブ作品ということで、実は80年代のKISSって1枚もライブ作品を残していないんですよね。だから、ノーメイク時代の正式なライブアルバムは本作のみという(1996年に『KISS UNPLUGGED』も発売されていますが、あれはアンプラグドライブなので割愛します)。

というのも、80年代、特にKISSがメイクを落とし活動していた80年代半ばはMTVの時代。音のみから映像ありきの時代へと移行していったこともあり、KISSもあの時代にしてはいち早くライブビデオ『ANIMALIZE LIVE UNCENSORED』を1985年に発売しているのです。また、1987年にはMVと70年代〜80年代のライブ映像をミックスした『EXPOSED』も発表していますし、そういう意味ではこの2作品を“80年代流の『ALIVE』シリーズ”と捉えることができるかもしれません。

そうやって時代に敏感なKISSが、90年代に入り再びライブアルバムをリリースしたというのが興味深いところなのですが、派手なヴィジュアルを推した80年代からそういったヴィジュアルありきの時代が終わりを告げ、再び音で勝負みたいな世界に戻っていった。特に1993年なんて時代はNIRVANAPEARL JAMがバカ売れしていた時代です。KISS自身も『REVENGE』でヘヴィかつ生々しいサウンドへとシフトチェンジしましたし、ビデオ作品からこうやって再びライブアルバムという手法に変えたのは、ある意味正解だったのかなと。そういう嗅覚だけは異常に冴えてますからね、この人たち(とはいえ、同時期には『ALIVE III』のライブ映像に70年代の秘蔵映像を追加したビデオ作品『KISS DONFIDENTIAL』も発売されているのですが、それはそれということで)。

さて、その本作ですが内容的には『REVENGE』の楽曲を軸にしつつ、70〜80年代のKISSの名曲を織り交ぜた、実にグレイテスト・ヒッツ的な選曲となっています。「Deuce」や「Rock And Roll All Nite」「Detroit Rock City」といった過去の『ALIVE』シリーズにも収録されていたヒット曲はもちろんですが、『ALIVE II』以降に発表された「I Was Made For Lovin' You」や「I Love It Loud」「Heaven's On Fire」「Lick It Up」「Forever」といったヒット曲/代表曲に加え、「I Still Love You」や「Watchin' You」といったレア曲もあったりと、なかなかこの時代らしいセレクト。KISSがヘヴィメタル化した『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)から3曲も選ばれているのも、90年代前半のKISSのモードを物語っているのではないでしょうか。

あと、ご存知のとおりKISSはライブ作品のオーバーダブをしたりボーカルやギターを差し替えたりすることで知られていますが(そんなのファンしかしらないって。笑)、本作のサウンドの質感がまさに「スタジオライブ音源にスタジアムでの完成を被せた」ような仕上がりでして。本当に純粋なライブアルバムとは言い難い、非常に“整理された”サウンドなのです。そこを良しとするか否かで、本作に対する評価もまた変わってくるのかなと。ただ、このアルバムが発売された当時、KISSは1988年以来の来日公演がまったく実現していなかったため、日本のファンにとってはあの頃のライブの雰囲気に触れるという意味で非常に重要な役割を果たした1枚だったのではないかと思います(あの頃、誰もが海賊盤に手を出せたわけではないしね)。

僕ですか? そんな小難しいこと考えず、夢中になって聴きまくってましたが(笑)。KISSに関しては、そういう楽しみ方が正しいのではないかと思うのです。踊らされてナンボでしょ?



▼KISS『ALIVE III』
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2018年11月25日 (日)

V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』(2018)

2018年10月リリースの、ゲイリー・ムーアのトリビュートアルバム。アルバムジャケットにあるように、ゲイリーの諸作品やライブに参加してきたベーシスト、ボブ・デイズリーが中心となって制作された本作には、ニール・カーター(Key)やドン・エイリー(Key/DEEP PURPLE)、エリック・シンガー(Dr/KISS)、グレン・ヒューズ(Vo)に加え、元SKID ROW(「Youth Gone Wild」じゃないほう)のブラッシュ・シールズ(Vo)といったゲイリー・ムーアと馴染み深い面々、ゲイリーの実子であるガス・ムーア(Vo)とジャック・ムーア(G)のほか、豪華ゲストプレイヤーが多数参加しています。

そのメンツもジョン・サイクス(G)やダニー・ボウズ(Vo/THUNDER)、スティーヴ・ルカサー(G/TOTO)、ジョー・リン・ターナー(Vo)、リッキー・ウォリック(Vo/BLACK STAR RIDERS)、スティーヴ・モーズ(G/DEEP PURPLE)、デーモン・ジョンソン(Vo, G/BLACK STAR RIDERS)、ダグ・アルドリッチ(G/THE DEAD DAISIES)などなど。とにかく、無駄に豪華です。

選曲的にはブルースに傾倒した『STILL GOT THE BLUES』(1990年)以降の作品にこだわることなく、初期の『BACK ON THE STREETS』(1978年)から『VICTIMS OF THE FUTURE』(1983年)、『WILD FRONTIER』(1987年)の楽曲も収録。ボブ・デイズリー自身が関わっていることもあってか、『POWER OF THE BLUES』(2004年)という晩年の作品から3曲も選ばれていることがちょっと意外でした。

基本的にはどの曲もゲイリー独特の粘っこいギターフレーズを活かしつつ、オリジナルを尊重しながら随所に自身の個性を取り入れていく手法で、またボブが中心となって制作していることもあって統一感も強く、この手のトリビュートアルバムとしてはかなり水準の高いもののように思います。HR/HM系ギタリストが多く参加しているものの、各自そこまで出しゃばることもないので、本当に気持ちよく楽しめる1枚です。

やはり本作最大の聴きどころは、久しぶりにシーン復帰を果たしたジョン・サイクス参加の「Still Got The Blues (For You)」になるかと。ゲイリーからの影響も大きく、彼と同じTHIN LIZZY(=フィル・ライノット)にもお世話になった関係もあり、そりゃあもうディープなソロを聴かせてくれています。まあこの曲自体、基本的にメインフレーズの繰り返しになるのでそこまでアドリブを効かせることは難しいのですが、特に終盤のソロはサイクスらしいもので、フェイドアウトせずにこのままずっと聴いていたい!と思わせられるはずです。

で、この曲を歌うのがTHUNDERのダニー・ボウズというのが、また最高。思ったよりも感情抑え気味ですが、それがギターのエモーショナルさに拍車をかけているように感じました。うん、これ1曲のために購入してたとしても無駄じゃないと思います。

個人的にはこのほか、リッキー・ウォリックが歌い、スティーヴ・モーズがギターを弾く「Parisienne Walkways」、グレン・ヒューズが最高のボーカルパフォーマンスを聴かせる「Nothing's The Same」、思ったよりもゲイリー・ムーア色の強いダグ・アルドリッチのプレイが印象に残る「The Loner」、デーモン・ジョンソンが歌って弾いてと大活躍の「Don't Believe A Word」あたりがお気に入り。もちろん、そのほかの曲も文句なしに良いです。

来年の2月で、亡くなってから早8年。ゲイリー・ムーアというギタリストがどんな存在だったか、改めてロック/ブルース/HR/HMシーンに与えた影響をこのアルバムから振り返ることができたら、と思います。彼の名前しか知らないという若いリスナーにこそ聴いてほしい1枚です。



▼V.A.『MOORE BLUES FOR GARY: A TRIBUTE TO GARY MOORE』
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2018年11月24日 (土)

KISS『HOT IN THE SHADE』(1989)

1989年10月リリースの、KISS通算15枚目のオリジナルアルバム。リードシングル「Hide Your Heart」こそ全米66位と低調で終わりましたが、続く「Forever」は最高8位と、「Beth」(1976年/全米7位)以来13年ぶりの全米TOP10ヒットを記録。その後も「Rise To It」(全米81位)のスマッシュヒットが生まれたものの、アルバム自体は最高29位止まりで50万枚程度のセールスという中ヒットで終わっています。

ポップ路線が際立った前作『CRAZY NIGHTS』(1987年)は完成度こそ高かったものの、KISSらしさという点においてはファンから敬遠されてしまった。その反省から、今作ではジーン・シモンズ(Vo, B)&ポール・スタンレー(Vo, G)のセルフプロデュースで原点に立ち返り、時代に合わせてよりタフでハードなスタイルへとシフトチェンジさせています。

ソングライターにはおなじみのデズモンド・チャイルドやボブ・ハリガン・Jr.、ヴィニー・ポンシア、アダム・ミッチェルに加え、BON JOVIやHEARTで名を馳せたホーリー・ナイト、のちに復帰するエース・フレーリーの後釜としてバンドに加わるトミー・セイヤーも名を連ねています。面白いところでは、当時頭角を現していたシンガーのマイケル・ボルトンが「Forever」のソングライターとしてクレジットされているところでしょうか。

シングルカットされた3曲含め、本作収録曲はどれもメロディ自体はKISSらしいメロディアスさやポップさがあるんだけど、サウンドが硬すぎて通して聴くのが疲れるんですよね。全15曲でトータル59分というKISS史上最多曲数のオリジナル作品というのもあってね。ポールVo曲とジーンVoが7曲ずつとバランスよく収まっているものの、15曲中すべて良い曲かと言われると……3〜4曲削って、10〜12曲程度に収めたらもっと聴きやすくて、印象も良くなったんじゃないかと思うんですよ。

ちなみに、「Hide Your Heart」は同タイミングにKISSのほか、ボニー・タイラー(彼女のバージョンが最初にリリース)や、当時元メンバーだったエース・フレーリーもレコーディング。不思議な競演を繰り広げるものの、この曲自体はそこまでヒットにはつながらなかったという。もともとは『CRAZY NIGHTS』制作時に生まれた曲だったようだし、あのタイミングに出していたらもうちょっとヒットしたんじゃないでしょうかね。

本作にはエリック・カー(Dr)がオリジナルアルバムで初のメインボーカルを務めたオリジナル曲「Little Caesar」も収録(先に1988年発売のベストアルバム『SMASHES, THRASHES & HITS』で、「Beth」のVo差し替えバージョンを担当済み)。ダイナミックなハードロックと、クセの強くないストレートな歌声の相性も抜群で、当時はこれが最後のVo曲になってしまうなんて思いもしなかったなあ。

KISSファンにとっては内容的に印象が薄い1枚ですが(ライブでも、もはや「Forever」程度しか演奏されてませんし)、エリック・カー生前ラスト作という点においては忘れられない1枚かもしれません。聴く頻度が低い作品だけに、せめて命日の今日くらいは大音量で鳴らそうではないですか。



▼KISS『HOT IN THE SHADE』
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2018年10月26日 (金)

KISS『HOTTER THAN HELL』(1974)

デビューアルバム『KISS』(1974年)から8ヶ月という短いスパンで発表された、1974年10月発売のKISSの2ndアルバム。前作同様ケニー・カーナー&リッチー・ワイズがプロデュースを手がけているのですが、全体的に軽快な作風だった前作よりも重みのあるサウンドに仕上げられています。

前作はポップでキャッチーなロックンロールがベースにある楽曲が多かったものの、本作はよりタフでハードなノリの楽曲が増えています。エース・フレーリー(G, Vo)作の「Parasite」やジーン・シモンズ(Vo, B)による「Goin' Blind」「Watchin' You」などがその最もたる例と言えるでしょう。

また、全体を通してジーンが10曲中5曲でリードボーカルをとっていることも、ヘヴィさに多少なりとも影響しているのかもしれません。ポール・スタンレー(Vo, G)は以外にも3曲(「Got To Choose」「Hotter Than Hell」「Comin' Home」)しか歌っておらず、残り2曲(「Mainline」「Strange Ways」)はピーター・クリス(Dr, Vo)がリードを担当。以降の作品にも言えますが、ジーンが歌う曲が多いアルバムって作風的に重くなりがちなので、本作はそういった意味ではその先駆け的1枚かもしれませんね。

それもあるのでしょうか、本作は90年代に入ってからグランジ/ヘヴィロック系バンドから高く評価されていたような印象があります。「Let Me Go, Rock 'n' Roll」みたいにKISSのパブリックイメージまんまな楽曲もあるものの、本作でやっぱり印象に残るのは先の「Parasite」や「Goin' Blind」「Hotter Than Hell」「Watchin' You」だったりするのですから。グランジのルーツなんていうのも頷ける話です。

とはいえ、KISS史の中では本作ってそこまで人気の高い1枚とはいえず、人気曲の多いデビューアルバムや、「Rock And Roll All Nite」を生み出した次作『DRESSED TO KILL』(1975年)と比較すると地味と言わざるを得ません。まあ、地味だからこそ玄人好みするというのもありますけどね。

あと、本作は現在の“耳”で聴くと非常にこもった音質に感じられます。『KISS』も『DRESSED TO KILL』も、もうちょっと抜けがよいだけに、それらに挟まれた本作は余計にこもった感が強い気がしてしまうんです。ダークさ、ヘヴィさを演出するという点においては、そこが功を奏している気がしないでもないですが……もうちょっとクリアな音で鳴らされたとき、この楽曲群のイメージがどう変わるのかも興味深いところです。



▼KISS『HOTTER THAN HELL』
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2018年6月13日 (水)

KISS『ALIVE II』(1977)

1977年10月にリリースされた、KISS通算2作目のライブアルバム。1975年に発表された初のライブアルバム『KISS ALIVE!』は彼らにとっての出世作となり、それに続く“二匹目のドジョウ”として本作が制作されたのは間違いないでしょう。また、前作が1stアルバム『KISS』(1974年)から3rdアルバム『DRESSED TO KILL』(1975年)までのベスト選曲だとしたら、今作はブレイク後の3枚……1976年の4th『DESTROYER』から1977年の6th『LOVE GUN』までのベスト選曲。つまり、実際のライブでは演奏されている「Rock And Roll All Nite」をはじめとする初期3作からの代表曲は意図的に外された、ある種の“擬似セットリストによるライブ作品”となっています。

さらに、本作では大掛かりな手直し(オーバーダブ)も積極的に行われており、「大歓声をあとから被せる」「ポール・スタンレー(Vo, G)のボーカルをスタジオで録り直す」「かといって元のライブテイクも生かされており、微妙なダブルボーカルになっている箇所が見受けられる」など、ライブ作品として考えると絶対にありえない、あっちゃいけない編集ポイントがそのまま残っていいたりします。ちょっとお粗末すぎないか。

でも、だからこのアルバムがダメかというと、まったくそんなことはなく。前作『KISS ALIVE!』ではブレイク寸前のKISSの勢いが凝縮されていましたが、本作ではアリーナクラスでライブを連発する売れっ子バンドとなったKISSの“今”が凝縮されており、そういった意味では両作を聴き比べてみると非常に面白いのではないでしょうか。

ちなみに本作、アナログ/CDともに2枚組仕様で、ライブ音源15曲のほか、本作のために新たに制作されたスタジオ音源5曲を加えた全20曲収録。アナログだとディスク1のA/B面、ディスク2のA面(C面)にライブ音源、ディスク2のB面(D面)に新曲が収められています。ライブ作品にスタジオ音源が入っているというちぐはぐ感は、初めて聴いた高校生の頃「?」と思ったものの、その後こういったボーナストラック的にスタジオ音源を加えることは、いろんなバンドがやってますよね。そういった意味では先駆者だったのかしら(それ以前にもいるような気がしますが)。

新曲はポール歌唱曲2(「All American Man」「Any Way You Want It」)、ジーン・シモンズ(Vo, B)歌唱曲2(「Rockin' In The U.S.A.」「Larger Than Life」)、エース・フレーリー(G, Vo)歌唱曲1(「Rocket Ride」)という内訳。あれ、ピーター・クリス(Dr, Vo)は? ちなみに、5曲中3曲のリードギターはエースではなく、ボブ・キューリックが弾いています。あれ、もうこの頃から怪しい雰囲気だった?

『KISS ALIVE!』にあった生々しさはここには存在しないものの、良くも悪くも“作り込まれた”バンド・KISSならではの“らしさ”が色濃く表れた、良曲満載のライブベスト。ぜひ『KISS ALIVE!』とあわせてお楽しみあれ。



▼KISS『ALIVE II』
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2018年5月19日 (土)

KISS『DYNASTY』(1979)

昨日のQUEENで「70年代末からのディスコブーム」について少々触れましたが、この波はロックバンドにも大きな影響を与えました。QUEENの大ヒットの前にも、THE ROLLING STONESが1978年に「Miss You」という全米No.1ヒットを生み出しており、それに続いて1979年にはKISSが「I Was Made For Lovin' You」というヒット曲(全米11位)を発表しております。

ということで、今回紹介するのはそのKISSのヒット曲が収録された1979年5月発売の7thアルバム『DYNASTY』(邦題『地獄からの脱出』)です。

1977年の『LOVE GUN』以来の新作となった本作は、間にライブアルバム『ALIVE II』(1977年)、ベストアルバム『DOUBLE PLATINUM』(1978年)、そしてメンバー4人のソロアルバム4作品を挟んで発表された2年ぶりのオリジナルアルバム。ヴィニー・ポンシアを迎えて制作され、全米9位を記録するヒット作となりました。

ディスコビートを導入したのは「I Was Made For Lovin' You」のほか、ピーター・クリスが歌う「Dirty Livin'」の2曲のみ。ポール・スタンレーが歌うミディアムテンポの「Sure Know Something」「Magic Touch」もソウルテイスト強めで、黒っぽさという点においては先の2曲の枠に入るものかもしれません。

が、それ以外の楽曲はKISSらしいポップなロックンロール満載の通常運転モード。アルバム2曲目にTHE ROLLING STONESの「2,000 Man」カバーが飛び出したり(ボーカルはエース・フレーリー)、いかにもジーン・シモンズらしい「Charisma」「X-Ray Eyes」、エース・フレーリーの頑張りが生かされた「Hard Times」「Save Your Love」といったナンバーを楽しむことができます。

こうやって振り返ると、流行に乗ったのはポールひとりだったことが伺えます。あ、ピーターもか。でもピーター、このアルバムでは自身が歌う「Dirty Livin'」以外ではドラムを叩いておらず、代わりにアントン・フィグが参加しています。結局本作をもってバンドを脱退するわけですが(1980年発売の次作『UNMASKED』にもドラマーとしてクレジットされていますが正しくは不参加。こちらもアントン・フィグがすべてプレイしています)、結局はソロアルバムが大きな引き金になってしまったんでしょうね。

また、エースVo曲が3曲も含まれているという点も非常に興味深いところ。エースは続く『UNMASKED』でも3曲歌ってますが、結局ピーターが歌わないなら……ってことなんでしょうか。そんなエースも、数作後にはバンドを離れるわけですが。

ディスコに走ったりピーターがあまり参加していなかったりとネガティブ要素が強い印象がありますが楽曲自体は“らしさ”満載なので、偏見なしに聴いてもらいたい1枚です。



▼KISS『DYNASTY』
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2018年2月 3日 (土)

SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』(1992)

SKID ROWが1992年秋に発表した5曲入りカバーEP。前年初夏に発表した2ndアルバム『SLAVE TO THE GRIND』が全米チャート初登場1位という快挙に輝き、同作を携えたツアーも1年以上継続。そのファイナルを控えたタイミングでのリリースだったのですが、収録曲の大半は過去のシングルにカップリングで収録されたものばかり。ですが、こうやって彼らのルーツナンバーを彼らのサウンドで楽しめるというのは、ファンにとっては少なからず嬉しいものがあるのではないかと思います。

カバーされているのは、RAMONESKISSJUDAS PRIESTRUSHジミ・ヘンドリックスと、彼らのサウンドからすれば何にひねりもないセレクト。RUSHに多少こだわりが感じられたりしますが、ピックアップしたのが1stアルバムからというあたりにこだわりがあまり感じられないのでは……という話も(苦笑)。まあ、いいじゃないですか、微笑ましくて。

とにかく、どの曲も原曲に忠実で素直なアレンジ。オープニングのRAMONES「Psycho Therapy」(ボーカルはベースのレイチェル・ボラン)も若干ヘヴィにはなっているものの、基本的なアレンジはまんま。KISS「C'mon And Love Me」は原曲にあったアコースティカルな色合いが消えてしまったものの、メロの良さは完全に生かされており、これはこれでグッド。プリースト「Delivering The Goods」はご本家ロブ・ハルフォードがゲスト参加したライブテイクをそのまま収録。そりゃあまんまですよね(笑)。

で、RUSH「What You're Doing」ですが、実はこれを聴くと「なぜ『SLAVE TO THE GRIND』というアルバムが完成したのか?」という、その理由の片鱗が見えてくるんじゃないかという気がするんです。そして、ここから次作『SUBHUMAN RACE』(1995年)へとつながっていく理由もね。結局、こういうグルーヴィーなハードロックをJUDAS PRIEST的方法論で表現したかったんですね。

最後のジミヘン「Little Wing」のみ、本作で初出のカバー。これも、まぁまんまっちゃあまんまですが、ギタリスト2人が本家に無理やり近づこうと頑張っております。残念ながらそこには到達できてないのですが、いい線いってるんじゃないかなと。これを聴くと、『SLAVE TO THE GRIND』での泣きのバラード(「Quicksand Jesus」「「In A Darkened Room」「Wasted Time」」のルーツも垣間見えるという。なるほどですね。

たった5曲、20分にも満たないEPですが、もしあの当時のSKID ROWがのちのGUNS N' ROSESみたいにフルカバーアルバムを作ったとしたら、ほかにどんなアーティストを取り上げたんでしょうね。



▼SKID ROW『B-SIDE OURSELVES』
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2018年2月 2日 (金)

KISS『KISS』(1974)

アメリカ本国で1974年2月に発売された、KISSの記念すべきデビューアルバム。もともとKISSはポール・スタンレー(Vo, G)とジーン・シモンズ(Vo, G)が在籍したWICKED LESTERというバンドが前身としてあり、そこにエース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)という“歌えるプレイヤー”を迎えたことで完成。『WITH THE BEATLES』をパロッたデビューアルバムのジャケットからもわかるように、“ハードロック版ビートルズ”をどこかで目指していたところがあったんでしょうね。

今でこそハードロックの権化だとかグランジの元祖だとかいろいろ言われていますが、このアルバムで展開されているのは若干ハードだけど軽やかなロックンロール。ジョン・レノンポール・マッカートニーのように、大半の楽曲でポール・スタンレーとジーン・シモンズがメインボーカルを務め、2人のツインボーカルがあったり4人のハーモニーがあったり、さらにピーター・クリスもいい味わいの歌声を聴かせてくれたりと、それ以前のハードロックバンドでは考えられないフレキシブルなボーカルスタイルを見せてくれます(初期の時点ではエースはまだ歌ってないわけですね)。

それにしても、こうやって曲目を眺めてみると「Strutter」「Firehouse」「Cold Gin」「Deuce」「Black Diamond」などなど、今でもライブで披露される機会の多い楽曲ばかり。つまり、KISSにとっては変わらぬ原点なわけですね、このアルバムは。もちろん、その都度その都度で軸になるアルバムというのは他にも生まれてはいますが、最終的にはここにたどり着く、そういう帰着点でもある。それはKISSというロックバンドにとってだけでなく、多くのロックバンドにとっても原点回帰的重要さを持つ1枚と言えるかもしれません。それくらい、「演奏がシンプルでカッコイイ」「メロディとハーモニーがキャッチー」「キャラの立つ歌声」など参考になるポイントが多いのですから。

ちなみに本作には「Love Theme From Kiss」というインストナンバーもあれば、それに続くハードブギー「1000,000 Years」もあり(後半のギターソロのカッコ良さといったら!)、そこから強弱がしっかりしたアレンジの「Black Diamond」(かつてYOSHIKIもクラシックアレンジでカバーしましたが、完全にX JAPAN「紅」などの雛形となった1曲ですよね)へと続く最高の流れが終盤に待ち構えています。軽やかな前半とは一線を画するヘヴィな後半は一聴の価値が大アリ。たった35分という短い時間の中にロックバンドのカッコ良さが凝縮された本作を聴かずして、KISSの魅力は語れません。

AEROSMITHがルーツロックからの影響を色濃く表したデビュー作だったのに対し、KISSはポップさをとことん追求しているあたり、両者のカラーの違いが1stアルバムの時点で浮き彫りになっているのも面白いところです。



▼KISS『KISS』
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