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カテゴリー「KISS」の46件の記事

2022年8月 3日 (水)

KISS『UNMASKED』(1980)

さて、KISS何度目かの「最後の来日(笑)」が決まったので、本日は当サイトでまだ取り上げていなかったスタジオアルバムを紹介したいと思います。オリジナルアルバムに関しては、これでコンプリートかしら?

本作は1980年5月にリリースされたKISSの8thアルバム。日本では『仮面の正体』の邦題で知られる1枚です(あれ、『地獄の〜』じゃないのか)。

ディスコビートを大胆に取り入れた「I Was Made For Lovin' You」(全米11位)やソウルフルなミディアムナンバー「Sure Know Something」(同47位)のヒットも手伝い、前作『DYNASTY』(1979年)は全米11位、100万枚を超えるセールスを残しました。そこから1年3ヶ月という短いスパンで届けられた次作は、プロデューサーに引き続きヴィニー・ポンシアを起用。前作での成功に気を良くしての続投だと思いますが、これが今回ばかりは悪い方向に導くことになってしまいます。

本作の特徴は、外部の職業作家が手がける楽曲を多数採用していること。80年代半ば以降のHR/HMシーンではもはや当たり前のコライト/楽曲提供という手法ですが、今作においてはそれがあまり良い作用を生み出しておらず、やたらとポップで日和った楽曲で構成されることになってしまいます。

オープニングの「Is That You?」はソングライティングにメンバーが一切関わっていない1曲ですが、この曲はKISSらしいポップロック感を表現することに成功。続くシングル曲「Shandi」(全米47位)も前作の流れを汲んだ作風ですが、少々“甘すぎる”かな?という印象も。ここまでの2曲はポール・スタンレー(Vo, G)が歌唱しています。そこからエース・フレーリー(G, Vo)が歌うストーンズテイストの「Talk To Me」、ジーン・シモンズ(Vo, B)が歌うソウルタッチのミディアムナンバー「Naked City」、再びポール主導のポップロック「What Makes The World Go 'Round」で前半を締めくくります。

後半(アナログB面)はシングルカットされながらもチャートインすらしなかったポール歌唱の「Tomorrow」からスタート。若き日のブライアン・アダムスあたりが歌ったらハマりそうなポップロックですね。続いてエース歌唱の「Two Sides Of The Coin」ですが、この曲はどことなく“ストーンズ meets ニューウェイヴ”みたいな雰囲気もあり、変な浮遊感がところどころから伝わります。その流れでジーン歌唱の「She's So European」、ポール歌唱の「Easy As It Seems」とあまりKISSらしくないヘンテコ(苦笑)な曲が続きます。前者はピコピコしたシンセの音色/アレンジに時代を感じるし、後者はディスコ路線の延長にあるのにアレンジが中途半端。さらに続くエース歌唱の「Torpedo Girl」もその延長線上にあるテイストだけど、エースのヘロヘロボーカルと不思議な調和を生み出しており、嫌いになれない仕上がりに。最後はジーンらしい重厚さも含まれたハードロックチューン「You're All That I Want」でエンディング。

いい曲もあるし、リリースから40年以上経った今聴けばKISSらしいアルバムと受け入れることはできるけど、彼らのキャリアを総括するならば、そこまで重要度の高い1枚ではない。完全に過渡期丸出しで、そりゃあピーター・クリス(Dr, Vo)も脱退するわな、と。

そうそう。ピーターは本作のクレジットに名前を連ねてはいるけど、曲作りやレコーディングには不参加。「Shandi」のMV撮影で久しぶりに姿を見せるも、その直後に正式脱退が発表されます(レコーディングには、『DYNASTY』でも大半のトラックでプレイしたアントン・フィグが参加)。

このテキストを書くために、それこそ10数年ぶりに聴いた1枚ですが、KISS史的には中途半端ながらもひとつのポップロックとして触れると非常に充実した作品ではないでしょうか。もちろん、率先して聴くような重要作ではないですが、これはこれでアリだなと思いました。

 


▼KISS『UNMASKED』
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2022年6月17日 (金)

KISS『OFF THE SOUNDBOARD: LIVE IN DONINGTON 1996』(2022)

2022年6月10日にリリースされたKISSのライブアルバム。

KISSが新たに立ち上げた公式ライブ・ブートレッグ“OFF THE SOUNDBOARD”シリーズの、昨年6月発売の第1弾『OFF THE SOUNDBOARD: TOKYO 2001』(2021年)、今年3月発売の第2弾『OFF THE SOUNDBOARD: LIVE IN VIRGINIA BEACH』(2022年)に続く第3弾。同シリーズではポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, B)、エース・フレーリー(G, Vo)、ピーター・クリス(Dr, Vo)のオリジナルメンバーによる音源はこれが初となり、今回はオリメン再編による最初のワールドツアーから1996年8月17日の『Monsters Of Rock Festival』公演の模様が完全収録されています。

1996年6月からスタートしたオリジナルラインナップでのリユニオンツアー『Alive / Worldwide Tour』は1年以上にわたり192公演開催。そのどれもがソールドアウトという大成功を収めています。このドニントン・パークでの公演は、1980年からスタートした同フェスの最後を飾るもので、当日のヘッドライナーこそオジー・オズボーンでしたが、KISSはコ・ヘッドライナーながらもオジーのあと、つまりこの日の最後に演奏しています。なもんで、演奏時間も約2時間と当時のフルセット同等のもので、オリメンによる70年代の名曲群をたっぷり披露。言われなければ1970年代後半のライブアルバムと勘違いしてしまいそうな内容ですよね。

ジーン歌唱の「Deuce」から始まりポール歌唱の「King Of The Night Time World」へと続くドラマチックな構成も、ポール&ジーンのツインボーカルが楽しめる「Shout It Out Loud」も、エースのヘロヘロボーカルとスリリングなギターソロが楽しめる「Shock Me」も、ピーターのしゃがれたボーカルが味わい深い「Black Diamond」など、この時期ならではの演奏/選曲は意外にも貴重ではないでしょうか。再編当初のフルライブ音源って、公式ではこれが初でしたものね。

KISSのライブ関連では何度も書いていることですが、彼らの公式ライブアルバムは必ずどこかに手が加えられており(ミスの修正やボーカルのリテイクなど)、ライブの生々しさを楽しむというよりは「ライブ音源をベースにした新たな作品」として向き合うのがベストかなと思っていたのですが、この公式ブートレッグ企画はほぼ手を加えらえおらず(音のバランス程度でしょうか、修正を加えているのは)、ボーカルや演奏の荒い部分もそのまま残されている。もっといえば、この作品の場合ベースの音が異常に前に出過ぎていて、序盤はギターの音量が抑えられている。もしかしたらライブ当日のミックスがこんな感じだったのかな?と想像してしまうぐらい、ライブ“作品”としてはアンバランスさも目立つ。だけど、この歪さが生々しさにもつながり、過去の“ALIVE!”シリーズとは異なるワクワク感が楽しめるのではないかなと。そこが今回の“OFF THE SOUNDBOARD”シリーズの魅力だと、個人的には捉えています。

今後もいろいろなライブ音源が発表されることになるとは思いますが、基本的にこのシリーズの音源はコアなKISSマニア向け。ですが、そんな中でも今回のドニントン公演は歴史的価値含め、広く届いてほしい作品だと解釈しています。ロックンロールバンド/ハードロックバンドとしてのKISSの基礎が凝縮された、スタジオ盤ベストアルバムよりも“ベスト”な内容ですしね。

 


▼KISS『OFF THE SOUNDBOARD: LIVE IN DONINGTON 1996』
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2022年3月14日 (月)

KISS『LOVE GUN』(1977)/『LOVE GUN: DELUXE EDITION』(2014)

1977年6月にリリースされたKISSの6thアルバム。

全米11位を記録し、「Hard Luck Woman」(同15位)や「Calling Dr. Love」(同16位)というヒットシングルを生み出した前作『ROCK AND ROLL OVER』(1976年)から約7ヶ月という短いスパンで届けられたスタジオアルバム。1974年2月のデビュー以降、3年強の短期間でスタジオアルバム6枚、2枚組ライブアルバム1作という多作ぶりのKISSですが、本作はついに最高4位と(スタジオアルバムとしては初めて)全米TOP10入りを果たし、「Christine Sixteen」(全米25位)、「Love Gun」(同61位)などのヒットシングルも続出します。

前作から引き続きエディ・クレイマー(ジミ・ヘンドリクスデヴィッド・ボウイLED ZEPPELINなど)を共同プロデューサーに迎えたこともあり、サウンドの方向性的には前作の延長線上にあるタフなハードロック路線。よりライブを意識したドライブ感の強い楽曲が並び、特にオープニングを飾る「I Stole Your Love」の疾走感は、ライブの幕開けにもぴったりな仕上がり。ポール・スタンレー(Vo, G)によると、この曲は「Makin' Love」や「C'mon And Love Me」を下地にしながらも、DEEP PURPLEの名曲「Burn」から多大な影響を受けたそう。そう知ると、なるほどと納得するものがあります。

その後、ジーン・シモンズ(Vo, B)歌唱曲が2曲(「Christine Sixteen」「Got Love For Sale」)続き、さらにエース・フレーリー(G, Vo)歌唱の「Shock Me」が並ぶ構成は、過去数作からすると若干異質に映るのではないでしょうか。とはいえ、「Christine Sixteen」といい「Shock Me」といい当時の、そして以降のライブ定番曲が並ぶという点では本作がいかにライブに特化した取り組みから生まれたものだったかが伺えます。

グラマラスでキャッチーなメロディ&サウンドの「Tomorrow And Tonight」(ポール歌唱)でアナログA面を締めくくると、B面はタイトルトラック「Love Gun」からスタート。CDやサブスクの時代ではA面/B面の価値観がないので、ここでポール歌唱曲が2曲続くと思えば序盤のジーン歌唱連続も納得いくのでは。この「Love Gun」も現在までライブに欠かせない1曲ですし、ここまでの流れは満足感が強いものがあります。

その後、ピーター・クリス(Dr, Vo)歌唱の「Hooligan」あたりから若干トーンダウン気味に。ジーンが歌う「Almost Human」はコンガを強調したリズミカルなダークチューンで、同じくジーン歌唱の「Plaster Caster」も少々地味めな仕上がり。前半の華やかさを思えば、この3曲の流れには息切れ感を覚えずにいられません。そして、アルバムラストを締めくくるのはTHE CRYSTALS「Then He Kissed Me」の改名カバー「Then She Kissed Me」。オールディーズテイストのシンプルなアレンジのこの曲を、ポールが穏やかめなトーンで歌いしっとりとアルバムのラストを飾ります。「Christeen Sixteen」の作風も同系統なのもあり、世界観的には全然アリ。ただ、「Love Gun」で迎えたピークを再度超えることなく終わることで消化不良を起こすかもしれません。

単に時間が足りなかったのか、アイデア切れだったのか。完成度としては『ROCK AND ROLL OVER』よりも劣る結果となってしまいましたが、前半6曲が非常に良い出来だけに失敗作と切り捨てることもできない。特に本作はタイトルトラックが収録されていることで擁護されてる感が強い1愛かもしれませんね。

 


▼KISS『LOVE GUN』
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なお、本作は2014年10月28日にリマスタリング&ボーナスディスクを追加したデラックス・エディションが発売されています。気になるDISC 2にはアルバム本編収録曲(「Plaster Caster」「Love Gun」「Tomorrow And Tonight」)のデモ音源に加え、未収録曲「Much Too Soon」「Reputation」「I Know Who You Are」のデモ(すべてジーン制作&歌唱曲)、1977年当時のジーンの電話インタビュー(約7分)、そして「Love Gun」「Christine Sixteen」「Shock Me」の1977年当時のライブ音源を収録。未発表曲はアルバム本編のカラーとは若干異なるものがありますが、アルバム後半のノリに近いタッチなのでこういう方向性も当時持っていたということが垣間見えます。

また、ポールによる「Love Gun」のコード進行/リフの流れを伝える“Teaching Demo”も収録。きっとメンバー(主にエース)に向けて制作されたものだと思いますが、ギターを弾く人ならポールがこんなに丁寧に教えてくれる音源は貴重に感じられるはず。そこを経て「Love Gun」のデモ音源を続けて聴くと、曲の構成をより深く理解することができることでしょう。なお、この「Love Gun」のデモ音源にはエディ・クレイマーによりシンセも被せてある状態なので、ほぼ完成版に近い仕上がりです。

ライブ音源3曲は大会場で収録されたものがわかるミキシングで、演奏/パフォーマンスの出来は最高とは言い難いものの、編集されまくった『ALIVE II』(1977年)よりも生々しさが伝わる録音は個人的に好み。そういった意味では、現在の“OFF THE SOUNDBOARD”に通ずるものがあるのではないでしょうか。

 


▼KISS『LOVE GUN: DELUXE EDITION』
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KISS『OFF THE SOUNDBOARD: LIVE IN VIRGINIA BEACH』(2022)

2022年3月11日にリリースされたKISSの最新ライブアルバム。

KISSが新たに立ち上げたオフィシャル・ライブ・ブートレッグ・シリーズ“OFF THE SOUNDBOARD”の第2弾。昨年6月発売の第1弾『OFF THE SOUNDBOARD: TOKYO 2001』(2021年)は、そのタイトルからもわかるように2001年3月13日に行われた東京ドームでの日本公演の模様が、余すところなく音源化されました(その当時のレポートはこちら)。続く第2弾はポール・スタンレー(Vo, G)、ジーン・シモンズ(Vo, G)、トミー・セイヤー(G, Vo)、そして2004年にバンドに復帰したエリック・シンガー(Dr, Vo)という現在まで続く編成による初の全米フルツアー『Rock The Nation Tour』から、2004年7月25日にアメリカ・バージニア州のVirginia Beach Amphitheatre公演をフル収録したものです。

2001年の東京公演以降はエース・フレーリー(G, Vo)の再脱退&トミー・セイヤーの加入、ピーター・クリス(Dr, Vo)の出戻り〜再脱退があり、バンドとしては決して順風満帆とは言い難い時期を乗り越えての全米ツアー。『Farewell Tour』として実施された2000〜1年のツアーも意味をなさず、新作リリースも途切れ、ライブアルバムや過去の楽曲をまとめたコンピレーションアルバムの続発で食いつないでいたタイミングでもあり、バンドとしてはアメリカでの起死回生を賭けたツアーだったとも言えます。

そんなタイミングの『Rock The Nation Tour』当時、ポールは52歳、ジーンは54歳、トミーは43歳、エリックは46歳と特にポール&ジーンはシンガーとして下り坂に入り始めたタイミング。たった3年の差とはいえ、『OFF THE SOUNDBOARD: TOKYO 2001』でのパフォーマンスと比べるとそのクオリティの劣化にまず驚かされます。オープニングの「Love Gun」が始まった瞬間に演奏自体もテンポが異常に遅かったり、ポールの歌声がガサガサだったりと、その“変化”に「あれっ?」と思うのではないでしょうか。

しかも、過去のKISSだったら「Love Gun」のエンディングから間髪入れず2曲目の「Duece」へとつなげる印象がありますが、ここでひと呼吸置いて2曲目へと入る構成にんもテンポの悪さを感じずにはいられません。さらに極め付けは、3曲目「Makin' Love」の遅さ&ユルさ……さすがにここまで聴いて、一度は再生をストップしてしまいました。こんなの、自分が好きなKISSじゃないし、聴きたかったKISSのライブ演奏じゃない、と。

もちろん、近年の彼らはずっとこんな感じでしたが、きっとライブ会場で絵付きで聴くとアドレナリンがみなぎり、そういったアラに目を瞑っていたのかもしれません。音だけになると(しかも変に編集が施されていないと)残酷なものですね。

しばらく時間が経ってから、気を取り直して聴くのを再開したのですが、「Christine Sixteen」あたりからこの“ノリ”にも不思議と慣れてきます。「Lick It Up」や「Tears Are Falling」といった80年代の楽曲はさすがにユルいなと感じずにはいられませんでしたが、「She」での(この時期、年齢ならではの)気迫に満ちたプレイは聴きどころだと思いますし、以降もバンドとしての“熱”が上がっていき、最終的にはいつものKISSを堪能できたと満足している自分に気付きました。なにより『OFF THE SOUNDBOARD: TOKYO 2001』では披露されていなかった「Got To Choose」や「I Want You」「King Of The Night Time World」「War Machine」「Unholy」などといった楽曲をライブテイクで楽しめるのも、本作ならでは。「Got To Choose」などは逆にこれくらいのテンション/テンポ感が魅力的に映りますし、「I Want You」はテンポを落とすことで楽曲本来のヘヴィさがよります結果につながっているし、すべてがすべて悪いわけではないのです。

そりゃあ、初期の『KISS ALIVE!』(1975年)『ALIVE II』(1977年)、あるいはノーメイク時代の『ALIVE III』(1993年)あたりと比較してしまうのは酷ですが、50年前後におよぶ歴史の後半を正確に記録したという意味では非常に価値のある作品ではないでしょうか。誰も彼もにオススメする内容ではありませんし、KISSビギナーが真っ先に手に取る代物でもありませんが、かつてKISSに課金しまくって人生を狂わされた 夢中になった世代にはリアルに響く1枚(2枚組)だと思います。

 


▼KISS『OFF THE SOUNDBOARD: LIVE IN VIRGINIA BEACH』
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2022年2月 1日 (火)

BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』(1983)

1983年1月18日にリリースされたブライアン・アダムスの3rdアルバム。

1stアルバム『BRYAN ADAMS』(1980年)、2ndアルバム『YOU WANT IT YOU GOT IT』(1981年)と大きなヒットを飛ばすことができなかったブライアン・アダムス。起死回生とばかりに制作されたこの3作目からは、リードシングル「Let Him Know」こそ不発に終わりましたが、続くリカットシングル「Straight From The Heart」が本国カナダで初のTOP20入り、アメリカでも最高10位という高記録を残すことに。これを受けてアルバムもカナダで9位、アメリカで8位まで上昇し、「Cuts Like A Knife」(カナダ12位、米15位)、「This Time」(カナダ32位、米24位)と続々シングルヒットを飛ばし、続く4thアルバム『RECKLESS』(1984年)メガヒットへの下地を作ることになります。

プロデュースは前作から引き続きボブ・クリアマウンテン(THE ROLLING STONESデヴィッド・ボウイブルース・スプリングスティーンなど)とブライアン本人。音の解像度の良さは次作ほどではありませんが、あの時代のアルバムにしては非常にクリアで、ギターの音の粒もよく聞き取れるミキシングではないでしょうか。ゲートリバーブのかかったドラムサウンドも特徴的で、80年代らしさ満載です。

また、このアルバムのレコーディングから以降長きにわたり活動をともにするキース・スコット(G)が初参加。キース、デイヴ・テイラー(B)、ミッキー・カリー(Dr)、トミー・マンデル(Key)という90年代後半まで続く鉄壁の布陣が完成します。さらに、レコーディングにはルー・グラム(Vo/当時FOREIGNER)がコーラスでゲスト参加しています。

楽曲は『RECKLESS』期よりもラフさが目立つ、よい意味で“野暮ったさ”が感じられる内容。『RECKLESS』も十分ハードロック的側面を持つ作品ですが、本作のほうが80年代初頭的ハードロックさが伝わる楽曲が多く、「Take Me Back」や「Don't Leave Me Lonely」あたりは当時のKISSにも通ずるものがあるのではないでしょうか。それもそのはず、後者はソングライティングにKISSのエリック・カー(Dr, Vo)が参加しているのですから。これはKISSの当時の最新作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)にブライアンと彼の相棒ジム・ヴァランスが「Rock And Roll Hell」「War Machine」にコライトで加わったことへのお返しだったのかもしれませんね。この「Don't Leave Me Lonely」、聴けば聴くほどKISSっぽく思えてくるから不思議です(笑)。

「This Time」「Straight From The Heart」「Cuts Like A Knife」と代表曲が並ぶアナログA面の充実度の高さは、改めて目を見張るものがあります。これらのヒットが続く『RECKLESS』のベースになっていることは間違いないでしょう。「Straight From The Heart」は同じバラードでも、のちの大ヒット曲「Heaven」ほどのダイナミズムはないものの、このシンプルさが良いというファンも少なくないはず。僕自身も「Heaven」や「(Everything I Do) I Do It For You」のようなドラマチックさに磨きがかかったパワーバラードより、素朴さの伝わる「Straight From The Heart」のほうがお気に入り。特にこの曲、ライブバージョンが素晴らしいんですよね。1983年当時、MTVなどでオンエアされていたライブ映像を観て僕は一目惚れ(一耳惚れか)したんですが、この映像は今でもYouTubeで視聴可能なので、ぜひチェックしてみてください(↓)。

同じバラードでも、アルバムラストを飾る「The Best Was Yet To Come」も味わい深くて最高。アナログB面は前半と比べて若干地味さが気になりますが、「Don't Leave Me Lonely」やポップな「Let Him Know」、そしてこの「The Best Was Yet To Come」で帳消しにしてくれるはず。全曲ベストとは言い難いものの、そのアンバランスさ含めて当時23歳のブライアン・アダムスを追体験できる1枚です。

 


▼BRYAN ADAMS『CUTS LIKE A KNIFE』
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2021年11月24日 (水)

KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』(1988)

1988年11月15日にリリースされたKISS通算3作目のコンピレーションアルバム。日本盤は海外から少し遅れ、翌1989年1月25日発売。

公式コンピレーションアルバムとしては『KILLERS』(1982年)以来7年ぶりですが、同作は本国アメリカでは未発売だったこともあり、アメリカでは『DOUBLE PLATINUM』(1978年)以来10年ぶりのベスト盤ということになります。また、日本では1988年5月に来日記念盤として10万枚限定でリリースされた日本限定ベスト盤『CHIKARA』というベスト盤も存在。こちらは80年代の楽曲中心のレアアイテムとなっています(現在は中古屋にて安価で入手可能かと)。

さて、今作の注目ポイントはポール・スタンレー(Vo, G)主導の新曲2曲と、エリック・カー(Dr, Vo)が初めてリードボーカルを担当した「Beth」(もともとはピーター・クリス歌唱曲)、そして70年代〜80年代初頭の楽曲に新たなリミックスが施されている点でしょうか。全15曲で約52分というコンパクトさもあり、かつグラムメタル期の楽曲も複数含まれていることから、80年代のKISSをリアルで感じられる1枚と言えるでしょう。

「Let's Put The X In Sex」「(You Make Me) Rock Hard」の新曲2曲はどちらもポール歌唱曲で、ソングライティングにはポール&デズモンド・チャイルド(後者のみダイアン・ウォーレンも)が関わっています。陽気な前者とマイナーキーの後者、どちらも“KISSのポール・スタンレー”のパブリックイメージどおりの仕上がりで、ヘアメタル期の彼らの平均的な楽曲と言えるでしょう。

また、リミックスバージョンは『DOUBLE PLATINUM』の延長にあるような仕掛けが用意されているものもあり、「Love Gun」なんて終盤のポールのシャウトがカットされてストリングスが強調されていたり、「Shout It Out Loud」のエンディングがカットアウトだったり、「Deuce」など初期曲のドラムに変なリミックスが施されていたり、「Rock And Roll All Nite」なんて別モノ感半端なかったりと、ベスト盤というよりはお遊びの過ぎる魔改造アルバムといったところでしょうか(笑)。

そして、エリック・カーが歌う「Beth」……エリックの歌声はここで初めて耳にするわけですが、本家ピーターとは異なる繊細さが伝わり、この甘さはこれで良しといったところ。僕は嫌いじゃないです。

ちなみにこのベストアルバム。北米および日本盤には直近の最新オリジナルアルバム『CRAZY NIGHTS』(1987年)からのヒット曲が皆無。さすがに「Crazy Crazy Nights」くらいは入れてほしかった……ところが、本作のUK盤は収録内容が一部異なり、「Deuce」がカットされ代わりに「Crazy Crazy Nights」と「Reason To Live」の最新ヒット2曲を追加した全16曲入り(北米・日本盤は全15曲)。特に「Crazy Crazy Nights」はイギリスで4位という好記録を残していますし、入れない理由はないですものね。

なお、ストリーミングサービスで配信されているバージョンですが、Apple Musicは北米・日本バージョン、SpotifyはUKバージョンとそれぞれ異なるのでご注意を。

 


▼KISS『SMASHES, THRASHES & HITS』
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KISS『KILLERS』(1982)

1982年6月15日にリリースされたKISS通算2作目のコンピレーションアルバム。日本盤は同年5月に発売とのこと。

『UNMASKED』(1980年)が全米35位、続くコンセプトアルバム『MUSIC FROM "THE ELDER"』(1981年)は全米75位とKISSのアメリカ国内での人気は低迷。これは海外でも同様で、『MUSIC FROM "THE ELDER"』リリース時はツアーすら行えなかった状態。そのテコ入れとして、すでにアメリカでは『DOUBLE PLATINUM』(1978年)や『ALIVE!』(1975年)『ALIVE II』(1977年)といったコンピ/ライブアルバムが短期間で続発していたことから、レコード会社は日本やオーストラリアなどアメリカ以外で新たなベストアルバムを発表することを決めます。

このベスト盤発売に際して、レーベル側は新曲の制作を要望。ポール・スタンレー(Vo, G)が中心となり、新たに「I'm A Legend Tonight」「Down On Your Knees」「Nowhere To Run」「Partners In Crime」の4曲を制作します。ジーン・シモンズ(Vo, B)は前作『MUSIC FROM "THE ELDER"』を強行リリースした戦犯として干されたのでしょうか……(苦笑)。

実はエース・フレーリー(G, Vo)はすでにこの時点でバンドを離れており、レコーディングにはのちにバンドに加入するブルース・キューリック(G)の実兄ボブ・キューリック(G)がリードギターとして参加。ボブは『ALIVE II』収録の新録曲にも参加していましたので、これが二度目の起用となります(ポールのソロアルバムにも全面参加していたので、その流れもありますよね)。

新曲は約半年後に発表される次作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)寄りというよりも、ポールのソロアルバムの延長線上にあるメロディアスなテイストが活かされたロックチューンが中心。ソングライターのクレジットに目をやると、ソロアルバムにも参加したマイケル・ジャップの名前を見つけることもできます。そのマイケルが参加した「Down On Your Knees」には、当時まだ無名だったブライアン・アダムスの名前も。彼は『CREATURES OF THE NIGHT』にもソングライターとして参加することになるので、この当時は(すでにデビューはしていたものの)修行の身だったということでしょうか。

ここでしか聴くことのできない新曲が4曲も含まれているということ、かつ「Love Gun」や「Shout It Out Loud」「Sure Know Something」「Detroit Rock City」「I Was Made For Lovin' You」「Rock And Roll All Nite (Live)」などのヒットシングルも含まれている。現行バージョンはさらに「Escape From The Island」「Talk To Me」「Shandi」を追加した15曲入り。ベスト盤としては非常に中途半端な選曲ではあるものの、『DOUBLE PLATINUM』以降の補足として、かつ『MUSIC FROM "THE ELDER"』と『CREATURES OF THE NIGHT』を繋ぐ(あるいはリセットさせる)上ではかなり重要な1枚ではないかという気がしています。

あ、ジーン参加曲があまりに少なかったせいか、ライブではお馴染みの「Cold Gin」「God Of Thunder」が追加されているのは、ちょっと微笑ましいな。

最後に。80年代半ば、中高生だった僕は音を弄りまくったリミックスベスト的『DOUBLE PLATINUM』よりも、実はこっちのほうをよく聴いたことを付け加えておきます。レコード盤では14曲入り(「Talk To Me」未収録)で50分強と、コンパクトで聴きやすかったからね。

 


▼KISS『KILLERS』
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KISS『MUSIC FROM "THE ELDER"』(1981)

1981年11月10日にリリースされたKISSの9thアルバム。

ディスコやソウルに傾倒した異色作『DYNASTY』(1979年)、『UNMASKED』(1980年)を経て届けられたのは、KISS初のコンセプトアルバム。当初、ジーン・シモンズ(Vo, B)原案の『THE ELDER』という映画が計画され、その映画のために楽曲制作を行なっていたのですが、映画が頓挫してしまい音楽だけが残った。そこでジーン(とバンドのマネージャー)は残った曲をどうにか生かそうということで、ほかのメンバーの反対を押し切ってアルバムを制作/発表することになった。これがKISS史上もっとも異色なアルバムの成り立ちです。

出世作『DESTROYER』(1976年)を手がけたボブ・エズリン(ALICE COOPERPINK FLOYDHANOI ROCKSなど)を再度プロデューサーに迎えたは、アルバムの冒頭&エンディングや曲間にインストゥルメンタル曲を挟むなどして、ストーリー性を重視したシームレスな作風に仕上げられています。ジーンが再度ボブ・エズリンを起用した理由は、『DESTROYER』でボブが施したファンタジー色の強いドラマチックなアレンジを求めたから。実際、このアルバムではそういったドラマ性が随所から感じられ、バンド本来がもつハードロックテイストと見事にマッチしているように映ります。

ただ、そのハードロックテイストは我々がイメージする“豪快なアメリカンロック”からはほど遠く、繊細さが色濃く表れた、どちらかというとヨーロピアンなテイストかなと。そういう意味では初期のロックンロールとも、『DESTROYER』以降のハードロック路線とも、そして直近のソウル/ポップ路線とも大きくことなる。そりゃあファンは「こんなのKISSじゃない!」と騒ぐわけです。

ただ、完全後追いの我々世代は前情報でイメージが出来上がってしまい、聴くのを躊躇していたものの、こうやって改めて耳を傾けると……意外に良いんです。こういうKISSも悪くない、と素直に思えます。ただ、ジーンがノリノリな一方で、ポール・スタンレー(Vo, G)は影が薄い気がします。

初出時のアナログ盤と現行のCDや配信版とでは、曲順や(短尺のインストを続く歌モノとくっつけてカウントするなどして)曲数が少し異なります。現行版は全11曲でインスト2曲、ジーン歌唱曲が3曲、ポール歌唱曲3曲、エース・フレーリー(G, Vo)歌唱曲1曲、ジーン&ポール歌唱曲2曲という内訳。こうやって数字で見ると均等なんですけど、不思議とジーンの印象が強いのはなぜでしょうね(ポールが声を張り上げず、抑え気味のトーンで歌っている曲が序盤に続くも大きいのかな)。

また、前作制作にほとんど参加していなかったピーター・クリス(Dr, Vo)に代わり加入したエリック・カー(Dr)にとっては、本作が初めてのレコーディング作品。せっかく花形と言えるようなバンドに加入したのに、最初がこれっていうのも可哀想というか……。

シングルカットされた「A World Without Heroes」は『UNMASKED』からの流れを引き継いだテイストも感じられるし、ポールがらしさを発揮するハードロック路線「The Oath」は次作『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)への伏線にも受け取れる。エースが歌う「Dark Light」のヘロヘロぶりも相変わらずだし、インストながらもKISSらしいスリリングな演奏が楽しめる「Escape From The Island」、アルバムを豪快に締め括るラストナンバー「I」など、曲単位でピックアップすれば印象的なものも多い。KISSの名の下で楽しもうとすると変な意識が働いてしまうかもしれないけど、これはこれでよくできたアルバムではないでしょうか。

チャート的には「A World Without Heroes」が最高56位という成績を残してはいますが、アルバム自体は全米75位と惨敗。しかし、そういった記録とは関係なしに、リリースから40年を経た今こそ正当に評価されるべき隠れた良作だと思います

 


▼KISS『MUSIC FROM "THE ELDER"』
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KISS『ASYLUM』(1985)

1985年9月16日にリリースされたKISSの13thアルバム。

前作『ANIMALIZE』(1984年)リリース後のツアー数公演でマーク・セント・ジョーンズ(G)がバンドを脱退。代役としてブルース・キューリックを迎えると、そのままブルースはバンドに正式加入しました。『CREATURES OF THE NIGHT』(1982年)以降安定しなかったギタリストの座が、ここでしばらく安定することになります。

メイクを落とした『LICK IT UP』(1983年)以降、時代に呼応したヘアメタル/グラムメタル的派手なハードロックサウンドを展開してきたKISSですが、今作もその延長線上にあるサウンド/楽曲が中心。ただ、方向性的には前作『ANIMALIZE』でひとつ完成した感があり、そこから1年という短いスパンで届けられた本作はちょっとばかりマンネリかな……と思わされる箇所も少なくありません。

全10曲中ポール・スタンレー(Vo, G)歌唱曲が6、ジーン・シモンズ(Vo, B)歌唱曲が4というポールに偏ったバランスは前作同様。ただ、前作はジーンが映画『未来警察』出演のため途中で制作から離れ1曲少なかったという経緯がありましたが、今回はそういうわけでもなさそうですね。

アルバムはエリック・カー(Dr, Vo/もう30年ですか……改めてR.I.P.)の派手なドラムソロを冒頭にフィーチャーした「King Of The Mountain」からスタート。このオープニングは改めて今聴いてもカッコいいものがあります。ちなみにブルースは早くもこの曲でソングライターとして名を連ねています(ポール/ブルース/デスモンド・チャイルドの共作)。

続くジーン曲「Any Way You Slice It」は実に彼らしいロックンロール調のアップチューン。エンディングがいかにもなアレンジでニンマリです。シングルカットもされた「Who Wants To Be Lonely」はポールらしいメロウなミディアムナンバー。ジーン曲「Trial By Fire」は「Lick It Up」の流れを汲む1曲で、先のマンネリの要因のひとつかな。アナログA面ラストを締め括る「I'm Alive」は激しいドラミングとギターソロをフィーチャーしたメタリックなナンバー。こういう曲はジーンっぽい気がしたけど、何気にポール/ブルース/デズモンドの共作曲。

折り返しの1曲となる「Love's A Deadly Weapon」も、「I'm Alive」と同系統のアグレッシブチューン。ソングライターにはポール&ジーンが名を連ねていますが、こちらはジーンが歌っています。そうそう、このイメージなんですよね。続く「Tears Are Falling」はシングルヒットも記録した、80's KISSの代表曲のひとつ。現在もライブで頻繁に披露されているので、80年代をリアルタイムで通過していないリスナーも耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ジーンが歌う「Secretly Cruel」はインパクトに欠ける、アルバムの穴埋めと思えてしまうありきたりな1曲。ポールによるミディアムヘヴィな「Radar For Love」も同様で、「Uh! All Night」までその中途半端な空気のままエンディングを迎えます。

序盤だってすべての曲がベストというわけではないですが、それにしても「Tears Are Falling」までで息切れしてしまうのはいかがなものかと。リアルタムで本作を聴いたときもA面とB面2曲、そしてラストの「Uh! All Night」の印象しかなくて、アルバムとして通して聴くことが少なかった記憶が。カセットで飛ばして聴いていたのか、もしくはお気に入りの曲だけをダビングしてオリジナルテープを作って聴いていたのか……どちらにせよ、80年代のKISSでは『HOT IN THE SHADE』(1989年)と同じくらい印象の薄い1枚かもしれません。

そのへんのインパクトの弱さはセールスにも影響を及ぼし、100万枚を突破した前2作とは相反し50万枚まで売り上げを落としてしまいます。それでも「Tears Are Falling」が全米51位まで上昇する小ヒットを記録しているので、かろうじて威厳を保つことができましたが……。

 


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2021年6月20日 (日)

KISS『ROCK AND ROLL OVER』(1976)

1976年11月にリリースされたKISSの5thアルバム。

ライブアルバム『ALIVE!』(1975年)およびシングルカットされた「Rock And Roll All Nite」がスマッシュヒットを記録(前者が全米9位、後者が同12位)。続くスタジオアルバム『DESTROYER』(1976年)も全米11位まで上昇し、シングルカットされ「Beth」が最高7位を記録するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いだった当時のKISSは、前作から8ヶ月という短いスパンで次作を届けます。そういう時代だったとはいえ、この頃のKISSの創作意欲(というか創作能力)には相当なものがあったように感じます。

ボブ・エズリンをプロデューサーに迎え、鉄壁なスタジオワークでまとめあげた『DESTROYER』での反動からか、続く今作ではプロデューサーに『ALIVE!』を手掛けたエディ・クレイマー(ジミ・ヘンドリクスデヴィッド・ボウイLED ZEPPELINなど)を迎え、ライブ的な生々しさと躍動感を重視した作風で仕上げられています。そのレコーディングも通常のレコーディングスタジオではなく、ニューヨークの劇場を借り切って行われたとのこと。KISSが本作に何を求めていたかがよくわかるエピソードではないでしょうか。

前作に見受けられたシアトリカルな要素はここでは払拭され、ポップさはそのままに、初期のシンプルなスタイルによりハードさを加えたサウンドに進化。楽曲のキャッチーさ、RAMONESが“パンクロック版BEACH BOYS”だとしたら、本作はそのハードロック版と言えなくもないかな。それくらい1曲1曲の個が立っており、歌、コーラスワーク、演奏どれもが無駄のないアレンジで固められている。だけど、そこには作り込まれた感は皆無で、程よいラフさがライブバンドらしさを見事に表現しているわけです。

シングルカットされた「Calling Dr. Love」(全米16位/ジーン・シモンズ歌唱)や「Hard Luck Woman」(同15位/ピーター・クリス歌唱)のほか、「I Want You」や「Makin' Love」(ともにポール・スタンレー歌唱)などのライブ映えする代表曲、「Take Me」や「Ladies Room」「Love 'Em And Leave 'Em」「Mr. Speed」など隠れた名曲も多く、全編を通してダレることが一切ない完璧な1枚。アイコン的なアートワーク含め、1stアルバム『KISS』(1974年)や前作『DESTROYER』同様、入門者に最適な1枚ではないでしょうか。

実は筆者も、70年代のKISSオリジナルアルバムで最初に手にしたのが、このアルバムでした。自分に中での「初期のKISSらしさ」がもっとも感じられる1枚はこれなのかな……なんて、最近聴き返すたびに感じています。

 


▼KISS『ROCK AND ROLL OVER』
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