KIX『MIDNITE DYNAMITE』(1985)/『MIDNITE DYNAMITE: RE-LIT』(2020)
1985年8月6日にリリースされたKIXの3rdアルバム。当時日本盤は未発売で、次作『BLOW MY FUSE』(1988年)のヒット&初来日(1989年9〜10月)にあわせて廉価版CDが1989年9月10日に発売されています。
初めて全米チャートにランクイン(最高177位)を果たした『COOL KIDS』(1983年)から約2年半ぶりに届けられた本作デは、前作に参加したブラッド・ディヴェンス(G/WRATHCHILD AMERICA、SOULS AT ZERO)に代わりオリジナルメンバーのロニー・“10/10”・ヨンキンス(G)が復帰。新たなプロデューサーにボー・ヒル(RATT、WINGER、WARRANTなど)を迎えた、従来のらしさに“ボー・ヒル的サウンドプロダクション”が加えられた意欲作に仕上がっています。
今作ではソングライターにもテコ入れが施され、メインで曲を制作していたドニー・パーネル(B, Key)をサポートする形で職業作家のボブ・ハリガン・Jr.やジョン・パルンボ、当時ボー・ヒル門下生でアリス・クーパーをサポートし、のちにWINGERを結成するキップ・ウィンガーなどが共作者として名を連ねています。ボブは次作『BLOW MY FUSE』にも参加することになるので、ここでの相性がよほど良かったのでしょう。
実際、以降もライブの定番曲となるタイトルトラック「Midnite Dynamite」や「Layin' Rubber」「Scarlet Fever」などのミディアムテンポのロックンロールは、程よいキャッチーさと相まって気持ちよく楽しむことができます。また、タイトル曲や「Red Hot (Black & Blue)」「Bang Bang (Balls Of Fire)」にはボー・ヒルらしい音作りも見つけることができ、そのへんにちょっとした懐かしさも感じられたり……。あ、でもボー・ヒルというよりもマット・ラングっぽさも強かったりしますけどね。
そんな中、「Walkin' Away」や「Cry Baby」「Cold Shower」の味付けにはニューウェイヴっぽさも見つけることができ、散々“AC/DCフォロワーのワンパターン”と揶揄されてきた彼らがソングライティング面で一皮剥けようと頑張っている姿が見受けられます。個人的には「Cry Baby」「Cold Shower」の2連発は非常によいフックとなっている印象を受けるのですが、いかがでしょう。
かと思えば、終盤にはストロングスタイルの「Lie Like A Rug」「Sex」のパワーチューンが配置されており、やっぱり最後はこれでしょ?というドヤ顔も浮かんでくる(笑)。特に後者は本作で唯一のパーネル&スティーヴ・ホワイトマン(Vo)共作曲とあって、タイトル含め活き活きとした印象も(笑)。1985年という時代性も適度にミックスされた、ブレイク前夜の過渡期作と言えなくもないのかな。ですが、個人的には大好きな1枚です。
▼KIX『MIDNTE DYNAMITE』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3)
『MIDNITE DYNAMITE: RE-LIT』(2020)
本作リリースから35年後の11月20日には、アルバム本編にリマスタリングを施し、ボーナストラックとしてデモトラックや初期ミックスなど未発表音源8曲を追加したデジタルアルバム『MIDNITE DYNAMITE: RE-LIT』も配信されています。
正直、1985年の音は今聴くと音圧含めてショボさを否めなかったので、このリマスタリングは非常にありがたいです。もともとダイナミックなアレンジを要する楽曲で固められた作品だけど、今回の新装版は『BLOW MY FUSE』の30周年盤『FUSE 30 REBLOWN (BLOW MY FUSE 30TH ANNIVERSARY SPECIAL EDITION)』(2018年)同様に好企画だと思いました。
デモ音源は派手な装飾が加わる前の、非常にシンプルな音使いで、これもこれで面白いんじゃないでしょうか。まあオマケ程度ではありますが、著名プロデューサーの腕にかかるとどう変化するのか、その過程も見えてきてファンなら面白がれる代物だと思いますよ。
▼KIX『MIDNITE DYNAMITE: RE-LIT』
(amazon:MP3)