カテゴリー「Korn」の20件の記事

2019年10月18日 (金)

KORN『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005)

KORNが2005年12月に発表した、通算7作目のスタジオアルバム。

前作『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003年)では、新曲音源がリリース前にネット上にリークされてしまったことで、急遽当初の発売日から前倒しで発表。そういった事情も災いしてか、チャート的には2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)以降でもっとも低い全米9位(100万枚)という数字で落ち着いてしまいました。

また、同作を携えたツアーを終えた2005年にメンバーのヘッド(G)がバンドを脱退。さらに、デビュー以来10年近くにわたり在籍してきたレーベルEpic Recordsを離脱と、この時期はネガティブな要素が相次いて起こり、バンドにとって危機的状況だったのではないでしょうか。

そんな中、KORNは新たにEMI / Virgin Recordsと契約。新ギタリストを補充することなく、ニューアルバム制作に突入します。プロデューサーにはジョナサン・デイヴィス(Vo)とアッティカ・ロス(『WITH TEETH』以降のNINE INCH NAILSおよびトレント・レズナーの相方的存在)、そしてアヴリル・ラヴィーンやブリトニー・スピアーズ、クリスティーナ・アギレラなどを手がけてきたTHE MATRIXという異色のプロデュース・チームを迎え、KORN史上もっともバラエティに富んだ1枚が完成します。

初期のゴリゴリしたヘヴィ路線へと回帰した前作でしたが、今作では全前作『UNTOUCHABLES』(2002年)で実践した実験の延長線上にあり、さらにモダンなテクノロジーを駆使したエレクトロ/インダストリアル要素を導入することにより(このへんはアッティカの仕事かな)、ヘヴィロックやメタルの枠では収まりきらない自由度の高い楽曲が揃いました。

オープニングを飾る「Twisted Transistor」のポップさ含め、このアルバムには良くも悪くも「わかりやすい」楽曲が並んでいるような印象を受けます。いや、サウンド的にはかなり遊んでいますし、ところどころでゴリっとした音像やジョナサンのグロウルやスクリームもフィーチャーされています。が、整理されたサウンドのせいもあって、非常に聴きやすいのです。そこが『UNTOUCHABLES』との大きな違いかな(まあ、あのアルバムも今となっては非常に聴きやすいですが)。

5、6分ある楽曲も複数含まれているものの、全体的には3分適度のコンパクトな楽曲が多いのも印象的。このへんもTHE MATRIXというヒットメイカーの手腕によるものなんでしょうか。初期の“跳ねた”リズムとヘヴィさが好きだったというリスナーには受け付けられない路線かもしれませんが、本作を起点に現在まで続いているスタイルもあるわけで、そういった意味では初期メンバーをひとり欠いた彼らが新たな戦いに挑んだ“KORN第二章”の幕開けにふさわしい力作だと思います。個人的にもお気に入りの1枚です。

ただ、本作は内容以上の大きな問題をはらんでいます。そう、悪しきCCCDの存在です。最初に触れたネット上への音源リークやファイル交換ソフトなどの影響(と言われていますが)から、国内外のレコード会社の多くが「コピーコントロールCD(=CCCD)」と呼ばれる“パソコンでリッピングできなCD”が市場に出回ることになります。特に大手レコード会社のEMIは海外のみならず日本でもこのシステムを導入し、本作は初出時CCCDでのリリースでした。

しかし、このCCCDというのもかなり脆い存在でして、Windows PCではNGでもMacではコピーできてしまう、同じ作品でも国によって通常のCD(CD-DA)が出回るなど抜け道がいくつもあったのです。本作も日本盤やはCCCD仕様でしたが、確か一部の海外盤はCD-DA仕様。なので、僕自身はAmazonを通じて輸入盤を購入して本作を楽しみました。その後、CCCD自体が撤廃されたことで、海外盤の新品でCCCD仕様にかち合うことはほぼなくなりましたが、本作の日本盤はCD-DA仕様での再発は過去に一度のみ。しかも、現在は廃盤状態なので、ぜひとも来年の来日に合わせて過去作の廉価版再発に踏み切ってもらいたいところです。

最後に。本作は全米3位(100万枚)と数字的には前作以上の成功を収め、「Twisted Transistor」(全米64位)、「Coming Undone」(同79位)と珍しくシングルヒットも連発しています。

 


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2019年9月21日 (土)

KORN『THE NOTHING』(2019)

2019年9月13日に全世界同時リリースとなった、KORN通算13作目のオリジナルアルバム。

前作『THE SERENITY OF SUFFERING』(2016年)から3年ぶりの新作となりますが、昨年初夏にジョナサン・デイヴィス(Vo)が初のソロアルバム『BLACK LABYRINTH』を発表していたので、実はそこまで“空いた”感も飢餓感もなかったんですよね。ですが、いざリリースが決まるとなるとその仕上がりが楽しみになるのもまた本音でして。

特に、昨年8月にジョナサンの奥さんが亡くなったこともあり、そこから短期間で本作完成にこぎつけたことで、そういった出来事が作品にどのような影響を及ぼしたのかとゲスな考えも湧いてくるわけです。ホント最低ですね。

前作から引き続きニック・ラスクリネクツ(HALESTORMALICE IN CHAINSMASTODONなど)をプロデューサーに器用した本作ですが、基本的な作風は近作の延長線上にあるもの。特段驚きはないのですが、ひんやりとしたシリアスさの奥底にある熱力が過去数作とは異なるもののようにも感じられます。それをジョナサンを襲った不幸と結びつけるのはまた違うのかもしれませんが……。

それでも、冒頭のイントロダクション「The End Begins」の終盤に挿入されるジョナサンの嗚咽は否が応でもそういった現実を思い浮かべさせますし、その意味深なタイトルを冠した単尺曲から「Cold」というこれまた意味深なタイトルの楽曲へとつながる構成には、やはりハッとさせられます。

初期3作にあったようなヒップホップ的要素こそもはや感じられませんが、それでも「Idiosyncrasy」や「Gravity Of Discomfort」「H@rd3r」「This Loss」あたりからはそことも異なるグルーヴ感が伝わってくる。むしろ、そういった80年代以降のブラックミュージックからの影響というよりも、そのルーツといえるソウルやファンク、ブルースからの直接的影響が色濃く表れた作風にシフトしているような印象も受けます。

その象徴的な1曲と言えるのが、終盤に登場する「This Loss」かなと。この曲では後半、3連ビートの上にブルースにも通ずるエモーショナルなボーカルを聴かせてくれます。前半こそひんやりとした中に青い炎を灯していたろころ、最後にこうした“エモさ”が直接的に表れるのはKORNの作品として考えても非常に興味深いなと。そこからラストナンバー「Surrender To Failure」へと続いてアルバムは幕を降ろすわけですから……そして、再びオープニングの「The End Begins」へとリピートさせると、まるで明けない悪夢を見ているような、そんな感覚に落ち入れるはずです。さらに言えば、「This Loss」の前に終盤ブルータルさを増す「H@rd3r」が配置されているのも計算なのかなと。本当に面白いアルバムです。

近作の中でもっとも強い主張が感じられながらも、何気に一番聴きやすい(集中して楽しめる)作風というのも非常に面白いですよね。うん、ここ10年の彼らの作品の中では、実験的な内容だった10thアルバム『THE PATH OF TOTALITY』(2011年)にも匹敵する傑作だと断言させてください。久しぶりにチャート上でも大健闘するんじゃないでしょうか。

 


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2019年8月 1日 (木)

KORN『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003)

2003年11月にリリースされた、KORN通算6作目のオリジナルアルバム。

マイケル・ベインホーン(SOUNDGARNDENRED HOT CHILI PEPPERSオジー・オズボーンなど)をプロデューサーに迎え制作した前作『UNTOUCHABLES』(2002年)で、メロディアスかつプログレッシヴな作風へとシフトして賛否両論を巻き起こしたKORN。同作から1年弱という短期間で、今度は初のセルフプロデュース(ジョナサン・デイヴィスがメイン、フランク・フィリペッティがサポート&ミックス)に乗り出します。

アルバム発売の数ヶ月前には映画『トゥーム・レイダー2』のテーマソングとして、新曲「Did My Time」を提供。リリース当時のレビューにも書きましたが、この曲を聴く限りでは『UNTOUCHABLES』の延長線上にある作風になるのかなと思っていました。

で、実際に届けられたアルバム。オープニング「Right Now」のギターリフを聴いて「お、原点回帰?」と若干期待したものの、確かにヘヴィだけど基本的には前作の延長線上にあるスタイルで間違いないのかなと。確かにボーカルスタイルは若干初期の歌唱法を取り戻しつつありますが、それもアルバム全体においてはスパイスといったほうがいいのかな。やっぱり全体を通して耳に残るのは、ジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱力・表現力の向上と、その彼が扱うキャッチーなメロディなのですから。

KORNらしい危うさはちゃんと残しつつ、どこか整理された楽曲構成・アレンジに初期の無軌道さを求めるのは、もはや死んだ子の歳を数えるようなもの。バンドとしてどんどん進化していく姿を冷静に受け入れつつ、彼らがどこへ進んで行きたいのか、何をしたいのかを当時は冷静に考えたりしたものです。

あ、「全体を通して耳に残る」のは何もキャッチーな側面だけではありません。そういった楽曲を表現するサウンドのえげつなさは、もしかしたら過去イチかもしれません。低音の鳴りやそれらを生々しい感触でパッケージしたミキシングは、初期2作のそれとは異なるものの非常に現代的で、こりゃあ日本人には真似できないは……と驚いたこともよく覚えています。

今聴き返すと、「結局は1stアルバム『KORN』(1994年)や2ndアルバム『LIFE IS PEACHY』(1996年)の衝動はもはや取り戻せないものの、その表現方法になるべく近づけつつ、セールス的に大成功を収めた3rd『FOLLOW THE LEADER』(1998年)や4th『ISSUES』(1999年)のスタイルをベースに、5th『UNTOUCHABLES』で試みた実験の成果を詰め込む」という最初の10年の集大成だったのかなと。そう考えると、本作を最後にヘッド(G)が脱退したのも、次作『SEE YOU ON THE OTHER SIDE』(2005年)でさらなる変化の時期を迎えたのも納得できるかなと。もちろん、長い歴史を経た今だからこそ言える話ですが。

ちなみに本作、当初の予定よりも前倒しでリリースされたんですよね。というのも、アルバム収録曲がネット上でリークされてしまったので、バンドやレーベル側が慌てて正規品を世に送り出したという。結果、全米チャート初登場19位、最高9位(ミリオンセールス)というこれまでの作品では低調な数字で終了するという不運な1枚となってしまいました。いや、いいアルバムなんだけどね。

 


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2019年4月 4日 (木)

KORN『KORN III: REMEMBER WHO YOU ARE』(2010)

2010年7月にリリースされた、KORN通算9枚目のスタジオアルバム。前作『UNTITLED』(2007年/正しくはタイトルなしの無題)からまる3年ぶりの新作であり、Roadrunner Records移籍第1弾アルバム。チャート的には前作同様に全米2位を記録しますが、セールス的には前作まで続いたゴールドディスク/プラチナディスクに満たない、50万枚以下で終わっています。

現在までバンドに参加しているレイ・ルジアー(Dr)が本作から正式参加(前作はテリー・ボジオ、ブルックス・ワッカーマンの2名がゲスト参加)。ジョナサン・デイヴィス(Vo)、マンキー(G)、フィールディー(B)の4人体制での初作品となります。

プロデューサーに初期2作(1994年の1st『KORN』、1996年の2nd『LIFE IS PEACHY』)を手がけたロス・ロビンソンを迎えており、3rdアルバムではないのに『KORN III』と冠したアルバムタイトル含め、原点回帰がコンセプトとしてあった本作。直近数作にあったデジタル的なカラーを排除し、レコーディングも1stアルバム時代のサウンドを追求しようとアナログトラックで録音/マスタリングを敢行。メンバー自身、当時は「このアルバムのKORNにとって真の3rdアルバム」と発言していたこともあり、特に初期ファンは歓喜したのではないでしょうか。

実際、サウンドの質感に初期の生々しさが戻ってきていると思いますし、楽曲的にも「Move On」や「Lead The Parade」「Let The Guilt Go」あたりには初期作にあった狂気性がそこはかとなく感じられます。

ですが、全体を通して思ったのは……サウンドこそ初期作的なものながらも、歌メロなどベーシックな部分は実際の3rdアルバム『FOLLOW THE LEADER』(1998年)や4thアルバム『ISSUES』(1999年)、そして新境地を見せた5thアルバム『UNTOUCHABLES』(2002年)の3作を下地にしているなと。なので、1曲1曲のメロがしっかり耳に残るんですよね。そういった意味では、3rd〜5thを受けて制作された6thアルバム『TAKE A LOOK IN THE MIRROR』(2003年)にも通ずるものがある気がします。もちろん、同作よりも今作のほうが思いっきり振り切れてはいるのですが。

良くも悪くも、大人になってしまったんだな……そんな1枚かもしれません。初期衝動を取り戻そうと無理くり狂気性を演出するのですが、それすらもコントロールされている気がするし。ある意味では、それができるってことはものすごい才能だと思うんです。でも、そのへんが作為的になってしまうと、急に嘘っぽくなってしまうのも事実でして。このアルバムに関しては初期作みたいな即効性こそあるものの、それがあまり長続きしない。「良いんだけどなぁ……」止まりの1枚という気がします。

だからこそ、続く10thアルバム『THE PATH OF TOTALITY』(2011年)での(別の意味での)振り切れっぷりは素晴らしかったんですよね。そんな、過渡期的作品。実に勿体ない。

 


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2019年3月 2日 (土)

MARK MORTON『ANESTHETIC』(2019)

2000年代を代表するUSヘヴィロック/ヘヴィメタルバンドLAMB OF GODのギタリスト、マーク・モートンによる初のソロアルバム。全10曲すべてが歌モノで、それぞれ異なるシンガーを迎えて制作されたものとなっています。そういう意味ではギタリストのエゴが前面に打ち出されたものではなく、あくまでソングライター/表現者としてバンドとは異なるアプローチで作り上げた1枚と言えるでしょう。

参加シンガーはチェスター・ベニントン(LINKIN PARK)、ジャコビー・シャディックス(PAPA ROACH)、マーク・ラネガン(ex. SCREAMING TREES)、チャック・ビリー(TESTAMENT)、ジェイク・オニ(ONI)、マイルス・ケネディ(ALTER BRIDGESLASH)、マーク・モラレス(SONS OF TEXAS)、ジョシュ・トッド(BUCKCHERRY)、ネイマー・マドックス、アリッサ・ホワイト-グルーズ(ARCH ENEMY)、そしてLAMB OF GODのフロントマンであるランディ・ブライとマーク自身という豪華かつバラエティに富んだ面々。演奏面ではギターをマークがすべて担当したほか、STONE SOURのロイ・マイヨルガ(Dr)、MEGADETHのデイヴィッド・エレフソン(B)、KORNのレイ・ルジアー(Dr)、ALICE IN CHAINSのマイク・アイネズ(B)、TRIVIUMのパオロ・グレゴリート(B)&アレックス・ベント(Dr)、CLUTCHのジャン・ポール・ガスター(Dr)、元THE BLACK CROWESのスティーヴ・ゴーマン(Dr)&マーク・フォード(G)といったジャンルの垣根を超えた布陣が顔を揃えています。

アルバムはマークとジェイク・オニ、そしてLAMB OF GODのプロデューサーとして知られるジョシュ・ウィルバーとの共同制作によるもの。楽曲自体はマークが「いつかバンドとは別の形で発表したい」と長年書き溜めてきたものなのですが、各シンガーの個性が強いこともあってか、それぞれのシンガーに合った手法で書き下ろされたものと錯覚してしまいそうになります(もちろんそういう曲も含まれていますが)。

チェスターが亡くなる数ヶ月前に制作されたオープニングトラック「Cross Off」はLINKIN PARKをよりモダンヘヴィネス寄りにした良曲ですし、ジャコビーが歌う「Sworn Apart」もPAPA ROACHのアルバムに入っていたとしても不思議じゃない1曲。かと思えばマーク・ラネガンが歌う「Axis」ではアーシーさが前面に打ち出されているし、チャック・ビリー&ジェイク・オニによる「The Never」のスラッシュ&王道メタルなノリもひたすらカッコいい。

マイルス・ケネディ歌唱による「Save Defiance」は完全にマイルスのノリだし、マーク・モラレス参加の「Blur」はSONS OF TEXAS寄りのスモーキーさが表出している。ジョシュ・トッドが歌う「Back From The Dead」なんてBUCKCHERRYをヘヴィにさせたノリで好印象だし、ネイマー・マドックスによる「Reveal」はどこかファンキー。マーク本人が歌唱する「Imaginary Days」は正統派ハードロックの香りが感じられ、ラストを飾るランディ&アリッサによる「The Truth Is Dead」は2人の声の対比も良いし、なにより楽曲がLAMB OF GODの延長線上にあるのが良い。

マークのギタリストとしての非凡さも随所に感じられるし、何よりも曲のバラエティ豊かさに驚かされる。このひと、こんなに多才だったんだと驚き連発の1枚です。

LAMB OF GOD本体は、昨年BURN THE PRIEST名義のカバーアルバム『LEGION: XX』を発表したりと若干リラックスモードかもしれませんが、こういったガス抜きを経て次にどんなオリジナルアルバムを届けてくれるのか、今から楽しみでなりません。まずは奇跡の共演が実現した(特に、貴重なチェスターの声が残された)この意欲作をじっくり聴き込みたいと思います。



▼MARK MORTON『ANESTHETIC』
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2019年2月20日 (水)

KORN『UNTOUCHABLES』(2002)

2002年6月に発表された、KORN通算5作目のスタジオアルバム。プロデューサーは前作のブレンダン・オブライエンからマイケル・ベインホーン(SOUNDGARDENRED HOT CHILI PEPPERSMARILYN MANSONなど)に交代。リードシングル「Here To Stay」が初めて全米TOP100入り(72位)したことも手伝い、アルバムは最高2位と3作連続1位こそ逃すものの150万枚程度のヒットを記録しています。セールス的には前作『ISSUES』(1999年)の2分の1程度まで落ち込んでいますが、これは発売前に音源がネット上でリークされてしまったことが悪影響を及ぼしたと言われています。

実はマイケルのプロデューサー起用は一度、3rdアルバム『FOLLOW THE LEADER』(1998年)のときに試みたものの、当時は良い関係を築けずに制作初期に決裂。しかし、バンド側から新たな挑戦としてマイケルとの再タッグが提案され、このコラボレーションが実現しました。

聴いてもらえばわかるように、本作は前作のメロウな路線をさらに進化させ、表現方法的にもさらに幅を広げた相当な実験作。まず驚くのは、ジョナサン・デイヴィス(Vo)の歌唱力の向上でしょう。前作まではあくまでアジテーターかつ楽器のひとつとして存在していたボーカルが、ここではしっかり“歌”として独立した表現が確立されているんです。

それにあわせて、バンドアンサンブルも非常に凝ったものとなっており、ラップメタル的な側面は減退。代わりに、その後のサウンドにより色濃く表れることになるニューウェイヴからの影響が見え始めます。この要素はのちの彼らにとって新たな武器になると同時に、のちのジョナサンのソロ作『BLACK LABYRINTH』(2018年)にもつながっていく重要な側面。そういった要素をヘヴィロック/ラップメタルに寄せるのではなく、むしろ新要素側からヘヴィロック側へと接近させる手法を取っているのではないか。そう思わせられる、非常に聴きごたえのある内容に仕上げられています。

聴きようによっては、当時主流だったニューメタルに近いものも感じられますが、もとはそのニューメタルバンドがKORNから影響を受ける側だったはず。でも、ここではKORNがただ流行に乗ったというより、それまで見せてこなかったルーツを露わにすることで格の違いを見せつけた、そう受け取ることはできないでしょうか。

発売当初こそ賛否両論あった本作ですが、今聴くと非常に完成度が高いし、このプログレッシヴかつサイケデリックな要素はのちのラウドロックにも通ずるものがある……いわば、現在のシーンにおける新たなルーツ、教科書的な1枚と言えるのではないか。そういった意味でもKORNの歴史を語る上で、また2000年代のラウドシーンを語る上で欠かせない作品だと断言できます。今こそ再評価されるべき1枚です。



▼KORN『UNTOUCHABLES』
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2019年1月26日 (土)

KORN『ISSUES』(1999)

1999年11月に発表された、KORNの4thアルバム。『FOLLOW THE LEADER』(1998年)からわずか1年3ヶ月という短いスパンで発表された本作は、前作に続いて全米1位を獲得。前作の500万枚にはさすがに及ばないものの、それでもアメリカだけで300万枚以上を売り上げ、キャリア2番目のヒットを記録しています。

ロス・ロビンソンが手がけた初期2作、スティーヴ・トンプソン&トビー・ライトという80〜90年代の名エンジニアによる前作と、アルバムごとにプロデューサーとともにカラーを変えながら進化を続けるKORN。今作ではヒットメイカーのブレンダン・オブライエン(PEARL JAMAEROSMITHSTONE TEMPLE PILOTSなど)とダッグを組み、メジャー感の増した『FOLLOW THE LEADER』から少し世界観を再構築します。

音質的にかなりクリアで抜けの良かった前作から一転、今作は初期2作にあった濁った質感が復活。全体を覆うヘヴィで不穏で、底なし沼のようなダークさは初期のファンが彼らに求めるものすべてではないかと。かといって、楽曲のスタイルやメロディの組み立て方においては初期作とは別モノで、明らかに“『FOLLOW THE LEADER』以降”のそれ。つまり、過去3作のハイブリッド作と言えるでしょう。そこを良しとするか否かで、本作に対する評価はかなり変わってくるんじゃないかと思います。

シングルカットされた「Falling Away From Me」「Make Me Bad」などはヘヴィだけどかなりキャッチーで、明らかに“『FOLLOW THE LEADER』以降”の流れを汲むもの。その中に「It's Gonna Go Away」のようにサイケデリックな楽曲があったり、グルーヴィーな「Wake Up」があったり、ダークなファンクメタル「Hey Daddy」やラストの砂嵐を含め8分近くもある「Dirty」があったりと、全体的にヘヴィ一辺倒というわけではなく、かなりバラエティに富んだ内容になっていると思います。また、全16曲で53分と長尺な作品ですが、そのうちオープニングの「Dead」など1〜2分のインタールード的短尺曲が5曲なので、実質11曲と普段のアルバムと同程度のボリュームだったりもします。イメージ的には散漫かもしれないけど、意外と通して聴きやすい1枚でもあるかな。全体のバランス感も非常に優れていますし。

ただ、爆発的ヒットを記録した前作ほどのインパクトはないし、初期2作より衝撃は薄いので、そういった点でこのアルバムの評価が低いというのは致し方ないかな。優等生すぎるがあまり、かえって印象が地味になってしまったのかな。久しぶりに聴いてみたけど、すごく聴きやすくて良い作品なんですけどね(まあKORNに“聴きやすさ”を求めるリスナーがどれだけいるのかって話ですが)。



▼KORN『ISSUES』
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2019年1月13日 (日)

祝ご成人(1998年4月〜1999年3月発売の洋楽アルバム20選)

新成人の皆さん、おめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今回で5回目となります。毎年この時期にこの企画をやることで、温故知新というよりは「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に重要なコンテンツになりつつあります。

しかも、今回は当サイトの前身サイトがスタートした時期(1998年12月)が被っていることから、選出時もいろいろ感慨深いものがあります。いやあ、長く続けるもんだ。

さて、この企画の説明です。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に1998年4月〜1999年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れがある作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能な作品を20枚ピックアップしました。今年度は残念ながら、選出した20枚すべてがSpotifyおよびApple Musicに揃っているものではありませんでした(各サービスともに1枚足りないという)。

でも、どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちらです)


ASIAN DUB FOUNDATION『RAFI'S REVENGE』(1998年11月発売)(Spotify

AT THE DRIVE-IN『IN/CASINO/OUT』(1998年8月発売)(Spotify)(レビュー

BEASTIE BOYS『HELLO NASTY』(1998年7月発売)(Spotify

BLUR『13』(1999年3月発売)(Spotify)(レビュー

BOARDS OF CANADA『MUSIC HAS THE RIGHT TO CHILDREN』(1998年4月発売)(Spotify

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2018年6月24日 (日)

JONATHAN DAVIS『BLACK LABYRINTH』(2018)

KORNのフロントマン、ジョナサン・デイヴィスによる初のソロアルバム。バンドとしての最新作『THE SERENITY OF SUFFERING』が2016年の作品だったので、そろそろ新作を聴けるのかなと思っていたら、昨年くらいからジワジワ噂になり始めていたソロ作を先に出したのですね。まあ、この春にはバンドとして『VANS WARPED TOUR JAPAN 2018』で来日公演も行なったばかりなので、まだそこまでの飢餓感はありませんが。

さて、ソロ作ということで、本作はバンドサウンドにこだわらない縦横無尽かつ自由度の高い楽曲/サウンドで聴き手を楽しませてくれます。ジョナサンがあの声で歌っていれば、確かにそれはKORNそのものですし、過去にはバンドとしてEDMにも挑戦している(2011年の『THE PATH OF TOTALITY』)くらいですから、本作も抵抗なく、違和感なく接することができました。

アルバムにはLIMP BIZKITのウェス・ボーランド(G)やジャズミュージシャンのマイルズ・モズリー(B)、KORNとのコラボレーションでも知られる音楽家のザック・ベアード(Key)、そしてKORNのメンバーでもあるレイ・ルジアー(Dr)など気心知れた面々が参加。ジョナサン自身もギターやキーボードやプログラミングのほか、バイオリンやシタールなどを披露する多才ぶりを見せています。

「Happiness」や「Your God」などちいったヘヴィな楽曲も存在するものの、もちろんKORNとは異なるアプローチが取られており、変態性は薄いかも。プログラミングによるリズムを同期させたドラムビートには非常にダンサブルなものが多いし、低音を強調したヘヴィなギターサウンドと同じくらいスペーシーなシンセが被せられている。KORNでも似たようなことに挑戦しているものの、やはり表現するメンツが変わればこうも違うんだなと。とにかく、聴きやすさがKORNのそれとはまったく違います。

近年のKORNは初期のようなダークさとは異なる世界観が展開されていますし、そのへんがいまだに好きで近年の諸作が苦手という人には今作もダメかもしれません。が、最近のKORNに対して好意的なリスナーなら、本作も“その延長として”楽しめるのではないでしょうか。僕みたいに『THE PATH OF TOTALITY』を前のめりで楽しめた方なら、間違いなく取っつきやすい1枚だと思います。

あ、あとダークはダークでもどこかニューウェイブ風ダークさの漂う本作は、DEPECHE MODEとかあのへんのアーティストが好きな人にも引っかかる内容ではないかと。KORNに対して偏見を持っているリスナーにこそ聴いてもらいたい、隠れた名盤です。純粋に好き。

あと、本作も日本盤未発売。最近、本当に増えましたね、こういうケースが。そりゃあ某フェスも開催なくなるはずだ……(それだけが理由じゃないだろうけど)。



▼JONATHAN DAVIS『BLACK LABYRINTH』
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2017年12月18日 (月)

KORN『KORN』(1994)

1994年秋にリリースされた、KORNの1stアルバム。KORNっていわゆるラップメタル/ニューメタルと呼ばれるヘヴィ系バンドのハシリ的存在だったのかなと、今になってみて思うのですが、実は当時はそういう感覚がまったくなかったんですよね。

自分の肌感覚的には「周りのバンドマン、国内メタル系アーティストがざわざわ騒ぎだし、よく名前を挙げるバンド」という存在でした、KORNって。たぶんPANTERAが1992年に一気にブレイクして、それに続くようにSEPULTURAがグルーヴィーでヘヴィなアルバム『CHAOS A.D.』を1993年にリリースして……その間には、メタルというよりはハードコアサイドにいたBIOHAZARDのようなバンドや、ちょっと変態チックなオルタナバンドFAITH NO MOREもいた。結局、KORNはその延長線上から誕生した印象だったんですよね。

そうそう、1993年にはもう1枚、重要な作品があった。映画『JUDGEMENT NIGHT』のサウンドトラック。あそこでメタル/ヘヴィ系バンドとヒップホップアーティストがコラボレーションしたことは、KORNの誕生(デビュー)にも大きく影響しているんじゃないかなと。そういう土壌ができつつあったところにデビューしたわけですから。

で、実際にこのアルバムを当時聴いたとき……1曲目「Blind」のオープニングに鳥肌を立て、一発でハマったことをよく憶えています。が、それもこの1曲だけで、実のところ他の曲に関しては理解できるものと理解が追いつかないものが半々ぐらい。正確に理解/評価できていたかと言われると、非常に微妙なのです。

そりゃあ、今のKORNと比べたら本作でやってることは多少難易度が高いかもしれません。だからこそ3枚目の『FOLLOW THE LEADER』(1998年)が出たときは「やたらと聴きやすくなったな」と驚いたんですが。

7弦ギターを使った独特のサウンドと、スラップを多用しバキバキいうベース、METALLICA 『...AND JUSTICE FOR ALL』(1988年)での電子音的ドラムサウンドをさらにデッドにして進化させたようなリズム、そして変幻自在なジョナサン・デイヴィス(Vo)の、歌とも叫びとも取れる表現方法。あの頃、みんながこのアルバムに嫉妬したし、みんなが真似したがった。本当にズルいアルバムだと思います。

久しぶりにじっくり聴いてみたけど、20年前に感じた難易度はそこまで感じなくなっていました。ああ、当時は考えすぎてたのか、それともこういう音に慣れてしまったのか。ただただ、大きな音で聴くと気持ち良いアルバム。今はそれで十分かなと思います。

そういえば、リリース当初は本作、歌詞も対訳も付いてなかったんですよね。それが、2011年の国内盤再発の際に、聞き取りによる歌詞とその対訳が付くようになったので、それだけのためにも国内盤を購入する意味があると思いますよ。



▼KORN『KORN』
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