KXM『CIRCLE OF DOLLS』(2019)
2019年9月中旬に発表されたKXMの3rdアルバム。日本盤は同年11月上旬にリリース。
ダグ・ピニック(Vo, B/KING'S X)、ジョージ・リンチ(G/LYNCH MOB、ex. DOKKEN)、レイ・ルジアー(Dr/KORN)という異色のトリオバンドも、気づけば結成から6年が経過。デビューアルバム『KXM』(2014年)から次作『SCATTERBRAIN』(2017年/日本未発売)まで3年以上もの歳月を要しましたが、今回は2年で完成までこぎつけています。何事もやる気があるのは良いことです(主にジョージに、でしょうけど)。
さて、このバンド。過去2作は正直曲がそこまで魅力的ではありませんでした。良く言えばジャムセッションをもとに作られたグルーヴ重視の楽曲で固められている、悪く言えば日本人には大味すぎて平坦に聞こえてしまう。ぶっちゃけ、日本人じゃなくても後者の意見のほうが多かったんじゃないかという気がしています(特に1stアルバムはね)。
毎回12〜3曲収録されていて、トータルランニングも60分を超えている。なのに、比較的似たような楽曲ばかりで1枚通して聴くのも疲れる。前作では楽曲のバラエティが少し広がったおかげでだいぶマシになりましたけど、それでも13曲はキツイ、せめて9曲くらいで収めてくれたらというのが本音でした。
さて、本作はどうでしょう。オープニングの「War Of Words」のアッパー感にいきなりノックアウトされ、サイケデリックな「Mind Swamp」に魅せられ、パーカッシヴな「Circle Of Dolls」でノセられる。うん、掴みは成功していると思います。
4曲目「Lightning」の気怠さに少々不安を覚えますが、続く「Time Flies」で息を吹き返す。この曲、ダグの節回しといいジョージの緩急の効いたギタープレイといい、新境地なんじゃないでしょうか(ちょっと日本のV系に近いものがあるサウンドですしね)。
LYNCH MOB meets KING'S Xという表現がぴったりな「Twice」、KORNのビート感にカラフルなKING'S X節を散りばめた「Big As The Sun」など、中盤も聴かせる曲が続くけど、不思議と退屈さを感じることなくスルスル聴き進めてしまう……のですが、やっぱり9曲目「A Day Without Me」あたりからちょっとキツくなり始めます。ラストの「The Border」にちょっとだけ救われますが、正直ここらへんは蛇足感の強い曲も少なくないかなと。うん、過去イチ良かっただけに勿体ない。
やっぱり13曲って多すぎなんですよね。アルバムの輪郭がぼやけてしまっている。せっかくダグのサイケ感&ソウルフィーリングを生かした良曲が増えているだけに、それをミドルテンポの退屈な曲で帳消しにしてしまうのだけは本当にいただけない。ジョージのプレイも激しいものからいぶし銀の味わい深いものまでいろいろ楽しめるんだから、作った曲を全部詰め込むんじゃなくてせめて最長10曲まで絞ってほしいな。
それこそ、「A Day Without Me」「Wild Awake」「Shadow Lover」あたりを削って50分前後のアルバムとしてまとめたらこのバンドの評価、もっと上がると思うんだけどねえ。
▼KXM『CIRCLE OF DOLLS』
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