カテゴリー「L.A.Guns」の13件の記事

2021年11月19日 (金)

L.A. GUNS『CHECKERED PAST』(2021)

2021年11月12日にリリースされたL.A. GUNSの13thアルバム。

今年7月に発表されたライブアルバム『COCKED AND LOADED LIVE』に続く今作は、『THE DEVIL YOU KNOW』(2019年)から2年8ヶ月ぶりのオリジナルアルバム。その期間にはスティーヴ・ライリー(Dr)&ケニー・ニケルス(B)バージョンのL.A. GUNSによるアルバム『RENEGADES』(2020年)もありましたが、こちらはトレイシー・ガンズ(G)&フィル・ルイス(Vo)バージョン。どっちが本家だとか分家だとかないでしょうけど、やはりバンドの創始者であるトレイシーとバンドの顔(=声)であるフィルが在籍するこちらのほうが本家っぽいですよね。

トレイシーのバンド復帰3作目となる今作。基本的には前2作の延長線上にある作風で、適度にハードで適度にパンキッシュという初期の彼ららしさが伝わる内容に仕上がっています。スピードチューン「Cannonball」で派手に飾ったかと思うと、怪しげなミドルチューン「Bad Luck Charm」、グラマラス&スリージーなロックンロール「Living Right Now」と曲ごとに表情を変えていく。しかし、全体を通して一環しているのは先にも挙げた「適度にハードで適度にパンキッシュ」という痒いところに手が届く感。おそらくリスナーがL.A. GUNSというバンドに求める要素は、この冒頭3曲だけで完璧かと思います。

ところが、そこからサイケデリックなアコースティックロック「Get Along」、ダークなメタルバラード「If It's Over Now」で少し様相が変わっていく。これも2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)や3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991年)あたりで見せていたスタイルであり、先の「適度にハードで適度にパンキッシュ」だけでは収まりきらないバンドの創作欲の表れなのかなと思いました。

全体を通してフィルが以前ほどハイトーンで叫ぶような曲がなく、全体的に中音域中心で穏やかに歌うこともあり、楽器隊のテンションの高の演奏にわりにクールすぎやしないかというチグハグさも、あったりなかったり。まあこのへんは加齢によるものが大きいと思うので、仕方ないのですが。

そんなモヤモヤを感じていると、アルバムは中盤のメタルチューン「Better Than You」で再び空気が激変。まあこの曲のボーカルもトーン抑えめなんですけどね(笑)。以降も緩急に富んだ楽曲がずらりとならび、最後まで飽きさせることなく聴き手を夢中にさせてくれます。

楽曲のバラエティ豊かさは1stアルバム『L.A. GUNS』(1988年)というよりは、そのあとの『COCKED & LOADED』と『HOLLYWOOD VAMPIRES』をベースにしているのかな。ただ、バンドのテンション感は明らかに1stアルバムに倣ったもので、それが「適度にハードで適度にパンキッシュ」につながっていく。結局、このバンドのベースになるものは初期3作で完成されたということなのかもしれません(視点を変えれば、それ以降の実験はある意味失敗だったとも受け取れますが)。

アルバムを聴いたときのインパクトはトレイシー復帰作の『THE MISSING PEACE』(2017年)には及ばず、作品を重ねるごとに“置きにいっている”感が強まっている気がしないでもありません。が、楽曲の完成度は間違いなく過去2作以上。バランスの取り方が難しいところではありますが、今作はデビューから30数年経った彼らが到達した、“大人のスリージー・ハードロック”のひとつの在り方なのかもしれませんね。そう捉えると、非常に完成度の高いハードロックアルバムだと断言できます。

 


▼L.A. GUNS『CHECKERED PAST』
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2021年7月12日 (月)

L.A. GUNS『HOLLYWOOD VAMPIRES』(1991)

1991年6月25日にリリースされたL.A. GUNSの3rdアルバム。日本盤は同年6月27日発売。

最大のヒット曲「The Ballad Of Jayne」(全米33位)を生み出し、アルバム自体も最高38位、全米のみで50万枚以上を売り上げた2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)。グラムメタル/ヘアメタル全盛末期にギリギリねじ込んだこの1枚のおかげで、L.A. GUNS自体も寿命が少しだけ伸びたような気がします。

そんなわけで、フィル・ルイス(Vo)、トレイシー・ガンズ(G)、ミック・クリプス(G)、ケリー・ニッケルズ(B)、スティーヴ・ライリー(Dr)という黄金期布陣でレコーディングに臨んだ2作目にあたる本作では、新たにマイケル・ジェイムズ・ジャクソンをプロデューサーに迎えて制作。前作での路線をさらに整理した作風で、まだまだ若干チープさが残った前作(そこが良かったんだけど)から相当ドーピングが課せられたような(笑)、そんなタフさが備わった初期L.A. GUNSの集大成的1枚に仕上がっています。

いきなり能楽からスタートして意表をつくオープニング曲「Over The Edge」のヘヴィ&シリアスさは、まさしく『COCKED & LOADED』で得た新たな武器をスキルアップさせたもの。思えば2017年の来日公演(LOUD PARK 2017)もこの曲からスタートしましたね(。バラードタイプではありますが、「Crystal Eyes」もこの系統に含まれるでしょう。それ以外にも、スリージーなノリを持つ「Dirty Luv」あたりも前作を経たことで生まれたスタイルでしょうし、ヘヴィロカビリーなんて例えがぴったりな「Snake Eyes Boogie」も然り。

かと思えば、どこまでもキャッチーな「Kiss My Love Goodbye」「My Koo Ka Choo」や王道アコースティックバラード「It's Over Now」「I Found You」もあるし、ストレートなハードロック「Some Lie 4 Love」「Wild Obsession」もある。どれも完成度は非常に高いです。

ただ、L.A. GUNSにここまでの完成度を求めてもいいものか……ファンは求めていましたっけ?(苦笑) このへん、POISONが2ndアルバム『OPEN UP AND SAY...AHH!』(1988年)から3rdアルバム『FLESH & BLOOD』(1990年)へ移行した流れと同じものを感じてしまいます。気張りすぎてしまったんでしょうか。

1991年というとメインストリームを席巻したハードロックが下火になり始め、グランジやオルタナが台頭し始めるタイミング。そのわりに本作は全米42位と前作に匹敵する数字を残し、「It's Over Now」というスマッシュヒットシングル(全米62位)を生み出しています。もう1年早かったら、もうちょっといい結果を出したのかしら……。

なお、このアルバムも『COCKED & LOADED』同様、日本ではストリーミング未配信。機会があれば聴いてもらいたい1枚なだけに、ぜひなんとかしてもらいたいものです。→※2022年1月追記:国内ストリーミング配信、解禁されました。

 


▼L.A. GUNS『HOLLYWOOD VAMPIRES』
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2021年7月11日 (日)

L.A. GUNS『COCKED AND LOADED LIVE』(2021)

2021年7月9日にリリースされたL.A. GUNSのライブアルバム。

現在トレイシー・ガンズ(G)&フィル・ルイス(Vo)組とスティーヴ・ライリー(Dr)&ケリー・ニッケルズ(B)組の2つが同時に存在するL.A. GUNS。どうやらこの春、両者のバンド名権利をめぐる訴訟で和解が成立し、前者はL.A. GUNSのまま、後者はRILEY'S L.A. GUNSとして活動していくようです。ただ、ストリーミングサービスでは今後も「L.A. GUNS」の括りで両バンドの楽曲が表示されるとのこと。紛らわしい(苦笑)。

今回紹介するライブ作品は前者によるもので、昨年11月28日にラスベガスで開催された2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)発売31周年(笑)記念完全再現ライブのもようを収めたもの。完全再現といいながら、当日は「I'm Addicted」に代わり『THE MISSING PEACE』(2017年)のリードトラック「Speed」が披露されていたり、アルバムではオープニングトラック「Letting Go」が省かれているという中途半端ぶり(笑)。まあそこも含めてL.A. GUNSらしいのかも。

オリジナル制作時のオリメンはトレイシー&フィルのみで、記録に間違いがなければジョニー・マーティン(B)、エース・ヴォン・ジョンソン(G)、スコット・クーガン(Dr)という布陣のはず。エースとスコットは『THE DEVIL YOU KNOW』(2019年)完成後に加入したので、これが初参加作品となります。

まず、このライブは有観客で実施されたもので、日本とは異なり観客の歓声もまばらながらも聞こえてきます。日本だとこの歓声が記録として残されてしまうと、あとあと問題になりそうな気がしますが……。それはさておき、中身は良くも悪くもフィルらしい不安定なボーカルと(笑)、原曲をしっかり再現しようとする楽器隊の演奏、そしてリリースから31年(現時点では32年か)経っても色褪せることのない楽曲群をしっかり楽しむことができます。『COCKED & LOADED』は日本では依然ストリーミング配信されていないので(2000年に制作された再録アルバム『COCKED & RE-LOADED』は聴くことができますが)、代用に……とまではいかないものの、先の再録盤よりは楽しめるのではないでしょうか。

やっぱり冒頭の「Slap In The Face」「Rip And Tear」の流れは痺れるし、「The Ballad Of Jayne」は普通にいい曲だし、「Magdalaine」はスリリングだし、「Wheels Of Fire」ってこんなにカッコよかったっけ?という気づきがあったし、いろいろ思い出させてくれる内容だと思いました。けど、一番カッコいいなと思ったのが最新曲の「Speed」だったというのはここだけの話で(笑)。

今年11月にはトレイシー&フィルのコンビが復活してから3作目のスタジオアルバム『CHECKERED PAST』のリリースも控えているとのこと。『THE MISSING PEACE』『THE DEVIL YOU KNOW』といいアルバムが続いているので、こちらにも期待しておきましょう。

 


▼L.A. GUNS『COCKED AND LOADED LIVE』
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2021年5月18日 (火)

SUNBOMB『EVIL AND DIVINE』(2021)

2021年5月14日にリリースされたSUMBOMBの1stアルバム。

このバンドはSTRYPERマイケル・スウィート(Vo, G)とL.A. GUNSのトレイシー・ガンズ(G)による最新プロジェクト。ともに80年代半ばから後半にかけて、LAメタルシーンの第一線で活躍したアーティストですが、正統派サウンドのクリスチャンメタル(STRYPER)とアウトローなUSハードロック(L.A. GUNS)がちょっと結びつかないだけに、最初はこの組み合わせに「?」となりました。が、このアルバムで鳴らされているサウドを聴くと「そうか、2人ともルーツはそこだもんね」と、妙に納得させられるものがありました。

随所で2バンドの要素を感じさせつつも、ここで表現されているのはJUDAS PRIESTBLACK SABBATHからの影響が強いヨーロピアンな正統派ハードロック/ヘヴィメタル。オープニングナンバーの「Life」はSTRYPER的とも受け取れるけど、どちらかというとそのルーツであるJUDAS PRIEST的な香りが強いかな。続く「Take Me Away」は完全にBLACK SABBATHですね。オジー・オズボーン時代ともディオ時代とも受け取れるドゥーミー&ヘヴィなこの曲、昨今のSTRYPERでやっても違和感ないかも。

かと思えば、L.A. GUNSでやりそうな「Better End」もあるんだけど、これもUSハードロック/メタルというよりはヨーロッパの香りが強い。そこにマイケル・スウィートらしい荘厳なハーモニーが加わり、ギターソロでは(おそらくトレイシーによる)豪快さが演出される。うん、こういう曲を歌うマイケル・スウィートも悪くないね。

以降もマイケル&トレイシーの出自やルーツが大胆に表現された王道HR/HMを展開。マイケル・スウィートはソロも悪くないけど、結局パートナーにクセの強いアーティストが付くことでその個性がより際立つので(ジョージ・リンチ然り)、この意外な組み合わせも結果オーライだったと思いました。トレイシーらしいスラッシー&ハードコア的な「Born To Win」も、マイケルの色が加わることで突然変異しているし、かつこんな曲を歌うマイケルも新鮮ですし。作った側も、受け取る我々側もいろいろ得られるものが大きい1枚だと思います。

あと、バラードに関してもマイケル色というよりはトレイシーの色が強いのも、また面白い。「Been Said And Done」は完全にL.A. GUNSでやりそうなテイストですものね。脳内でフィル・ルイスが歌う姿が容易に想像できましたから(笑)。という感じで、STRYPERでもL.A. GUNSでもない(でも、両バンドにもありそうな色もある)面白バンド、どうせならもう1枚くらい作ってほしいなと思います。ここで受けた刺激は、確実に両バンドに持ち帰ることになるでしょうからね。

 


▼SUNBOMB『EVIL AND DIVINE』
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2020年12月12日 (土)

L.A. GUNS『RENEGADES』(2020)

2020年11月13日にリリースされたL.A. GUNSのニューアルバム。日本盤未発売。

昨年3月に発売された『THE DEVIL YOU KNOW』(2019年)に続く新作……と思いきや、あちらはトレイシー・ガンズ(G)&フィル・ルイス(Vo)バージョンのL.A. GUNS。こちらの新作はスティーヴ・ライリー(Dr)&ケニー・ニケルス(B)バージョンのL.A. GUNS(笑)。ややこしいったらありゃしない。一時期のRATTQUEENSRYCHEと一緒ですね。

バンド名の使用権をめぐって、現在もトレイシー側とスティーヴ側とで訴訟の最中らしいのですが、そこを強行してリリースされたスティーヴ・ライリー側のL.A. GUNS、本作が1stアルバムということになります。

メンバーは全盛期メンバーのリズム隊と、スコット・グリフィン(G/ex. ボビー・ブロッツァー側のRATT……ってこっちもややこしい!笑)、カート・フレーリッヒ(Vo)の4人。もともとフィルはこちらのL.A. GUNSに在籍していたものの、仲違いしていたトレイシーと2015年に和解、再びトレイシーと一緒にL.A. GUNSとして活動していくことになるのです……ってややこしい!(苦笑) すべての元凶、フィルちゃうんか? いや、そもそも1stアルバム『L.A. GUNS』(1988年)のレコーディング終了後にバンドに加わり、我が物顔でバンド名使用権を主張するスティーヴもどうかと思うけど(トレイシー・“ガンズ”でL.A. GUNSっていう認識ですからね、我々は)。

まあ、いいや。アルバムの中身について触れていきましょう。同じ名前ということもあり、どうしてもトレイシー側のL.A. GUNSとの比較は避けられないと思うので、ここでも直近2作品と比較しながら話を進めます。

まず、楽曲の出来ですが、非常によく作り込まれたハードロック/スリージーロックといった印象で、個人的には好印象。L.A. GUNSっぽいか?と問われると正直「う〜ん……」と悩んでしまう楽曲も少なくないけど(バラード「You Can't Walk Away」なんてヘアメタル的パワーバラードだけど、決してL.A. GUNSっぽくはないし)、まあ全体の空気感的に「っぽい」ようなイメージも。そこに関しては全盛期のメインソングライターと象徴的な声の持ち主が在籍するトレイシー側に軍配が上がるかな(僕個人の趣味としてもトレイシー側ですし)。

カートのボーカルは良く言えば「上手」「安定感がある」、悪く言えば「個性に乏しい」「印象に残らない」というタイプ。下手だけど個性と存在感に長けたフィルと比べてしまうのがかわいそうになってしまうほど……ここで「あくまで個人の感想です」ってつけて予防線を張るのもいいけど、こればかりは事実だから仕方がない。スリージーロックのわりに品が感じられる本作の楽曲群には最適だけど、じゃあL.A. GUNSにこれを求めるかと問われると、どうしても頭の中に「?」が浮かんでしまう。本当に“扱いに困った”良作です。

そう、アルバムとしては非常にクオリティが高いし、これを往年のヘアメタル/LAメタルバンドの新作として捉えれば両手を上げて絶賛するんだけど、自分がL.A. GUNSに何を求めるか、何が揃っているとL.A. GUNSなのか……そういう観点で向き合うと、やっぱり「NO!」なんですよ、残念ながら。そういった根本的なことを見つめ直すいい機会を与えてくれた1枚。作品として正当な評価は下したいけど、名乗った名前によってネガティブなイメージを与えてしまう罪作りな問題作です。

 


▼L.A. GUNS『RENEGADES』
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2019年11月13日 (水)

MICHAEL SWEET『TEN』(2019)

2019年10月上旬にリリースされた、マイケル・スウィートSTRYPER)の8thソロアルバム。日本盤は1ヶ月遅れて、同年11月上旬に発売されています。

タイトルは10作目を表すってことで『TEN』なのかな。ジョージ・リンチとのSWEET & LYNCH名義の2作を含めると10作目ですしね。にしてもこの人、2013年から毎年何かしらアルバムを発表しているんですよね。2013年はSTRYPERで2作(リメイクアルバム『SECOND COMING』とオリジナルアルバム『NO MORE HELL TO PAY』)、2014年はソロアルバム『I'M NOT YOR SUICIDE』、2015年はSWEET & LYNCHで『ONLY TO RISE』とSTRYPERで『FALLEN』、2016年はソロ名義の『ONE SIDED WAR』、2017年がSWEET & LYNCHでの2作目『UNIFIED』、2018年はSTRYPERの最新作『GOD DAMN EVIL』、そして今年はこのソロアルバム。老いてなお盛ん。

さて、今回のソロアルバムですが、全12曲中11曲にフィーチャリングアーティストとしてゲストプレイヤーを迎えて制作しています。その内訳もジェフ・ルーミズ(G / ARCH ENEMY)、Marzi Montazeri(G / EXHORDER、ex. PHILIP H. ANSELMO & THE ILLEGALS)、ガスG.(G / FIREWIND)、ジョエル・ホークストラ(G / WHITESNAKE、ex. NIGHT RANGER)、トレイシー・ガンズ(G / L.A. GUNS)、リック・ワード(G / FOZZY)、トッド・ラ・トゥーレ(Vo / QUEENSRYCHE)、ウィル・ハント(Dr / EVANESCENCE)などと、とにかく豪華なメンツ。思えば前作『ONE SIDED WAR』にもウィル・ハントやジョエル・ホークストラは参加していたので、おなじみのメンツって感じですかね。

本作、元々は10曲入りの構成が基本で、「With You Till The End」と「Son Of Man」の2曲がボーナストラック扱いだったので、本来は10曲入りだから『TEN』って意味だったのかな。今となってはどうでもいい話ですが。

気になる中身ですが、2曲を除いてすべてマイケル・スウィート単独で書き下ろしたオリジナル曲。残り2曲もマイケルとジョエル・ホークストラとの共作なので、まあ全曲マイケルのオリジナルと言い切っても間違いではないでしょう。なので、従来のソロ作品の延長線上にある“メタリックで、かつポップで親しみやすいHR/HM路線”をキープしています。ファストナンバーやミドルヘヴィ、バラードとバランスよく配分されており、どの楽曲もツボを心得た作風です。が、最近のSTRYPERよりもシンプルさが際立つ楽曲が多い印象も。そこで好き嫌い(いや、嫌いはないな。好みから外れるくらいか)が分かれるかも。

ゲストプレイヤーに関しては……正直、“らしい”ものもあるし、別にクレジットがなければ気づかないといったものもある。セールスのための打ち出し方としては正しいんでしょうけど、個人的にはおまけ程度かな。とにかく曲が良くて、マイケルが力強く歌ってくれたらそれでよし。

そういった意味では、マイケルが関わる作品はどれも好きという人には間違いなく引っかかる1枚だし、STRYPERのように豪華なコーラスを重視するメロハー好きにはちょっと違うかな?と感じるんでしょうか。それはそれとして、純粋によく作り込まれたメロディアスハードロック作品のひとつであることには違いありません。うん、今回も力作でした。

 


▼MICHAEL SWEET『TEN』
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2019年6月 9日 (日)

L.A. GUNS『THE DEVIL YOU KNOW』(2019)

2019年3月発売の、L.A. GUNS通算12作目のオリジナルアルバム。前作『THE MISSING PEACE』(2017年)から1年半という最近としてはかなり短いスパンで届けられた本作は、バンドの今の勢いがそのままパッケージされた力作に仕上がっています。

前作でフィリップ・ルイス(Vo)&トレイシー・ガンズ(G)という往年のフロントが復活。初期3作を思わせる楽曲群を現代的なタッチでアレンジした作風は、比較的好意的に受け入れられたのではないかと思います。また、同作リリース前後には『LOUD PARK』での来日も実現し、その健在ぶりをアピールしたことも記憶に新しいのではないでしょうか。

その後、初期L.A. GUNSを彷彿とさせるルックスのマイケル・グラント(G)が脱退。新たにミッチ・デイヴィスを迎えてバンドを立て直しつつ、この新作の制作に臨みました。

プロデュースは前作同様トレイシーが担当。ソングライティングのクレジットにはメンバー5人の名前が並び、ボーカル・プロダクションにミッチ・デイヴィス、アディショナル・プロダクション&エンジニアリングにシェーン・フィッツギボン(Dr)の名前を見つけることができるなど、こういった面からもいろんな意味で“バンド”感が増している印象を受けました。

さて、気になるサウンドですが、楽曲的には基本的には前作の延長線上にあるものの、質感としては前作にも増して1stアルバム『L.A. GUNS』(1988年)の頃の“危うさ”や“いかがわしさ”が復調しているように感じました。

アップテンポの楽曲よりもミドルテンポ中心のハード&ヘヴィ路線は2ndアルバム『COCKED & LOADED』(1989年)のそれを思い浮かべますが、あの頃と違うのは良い意味で“整理されていない”感をコントロールしていること。サウンドやアレンジ含め、適度なラフさが散りばめられており、とても30年選手とは思えないほどエネルギッシュな躍動感が伝わってくる。オープニングを飾るファストチューン「Rage」はもちろんのこと、ミドルヘヴィの「The Devil You Know」やシンプルなロックンロール「Needle To The Bone」「Don't Need to Win」といった楽曲にもフレッシュさが感じられるのですから不思議なものです。

あと、本作はバラードらしいバラードが終盤の「Another Season In Hell」のみで抑えられているのも良いんじゃないかな。別にバラードが少なければ良いという意味ではなく、それこそ初期2作はそこで戦っていなかったわけだし、そういった意味でも1周回って復調した感がより伝わってくるし。実は「Another Season In Hell」のあとにボーナストラックとして「Boom」も収録されているのですが、個人的にはここまで聴いて完結する作品かなと思っています。この曲もボートラには勿体ないぐらい、初期の“らしさ”を体現していますしね。

まあ、あれです。早く単独で日本に来なさいよと。前作の楽曲も数曲しかライブで体験できなかったですし、この新作からの楽曲と初期の楽曲を織り交ぜたセットリストに期待したいところです。

 


▼L.A. GUNS『THE DEVIL YOU KNOW』
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2019年3月17日 (日)

HOLLYWOOD ROSE『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』(2004)

アクセル・ローズやイジー・ストラドリンが在籍していたGUNS N' ROSESの前身バンド、HOLLYWOOD ROSE。そのバンドのデモ音源を軸にしたコンピレーションアルバムが、2004年にリリースされています。『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』と身も蓋もないタイトルのこのアルバム、当然アクセルは怒り狂い訴えるわけですが、最終的にその訴えを棄却。結果、現在もこうやってストリーミングサービスで手軽に聴くことができるわけです。便利な世の中になったもんだ。

というわけで本作。そのHOLLYWOOD ROSEのメンバーだったクリス・ウェバー(G)が持ち込んだデモテープがもとになっています。クリスといえば、ガンズの1stアルバム『APPETITE FOR DESTRUCTION』(1987年)に収録された「Anything Goes」や、次作『GN'R LIES』(1988年)収録の「Reckless Life」のクレジットにてその名前を見つけることができる知る人ぞ知る存在。小金欲しさに過去の遺産を売ったわけだ。わかりやすいぞ。

そのデモテープに収録されていたのは「Killing Time」「Anything Goes」「Rocker」「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」の5曲。そう、先に挙げたガンズの2作品に収録されている2曲に加え、昨年発売の『APPETITE FOR DESTRUCTION』デラックス盤にも収められた「Shadow Of Your Love」と計3曲のガンズクラシックのオリジナルバージョンが聴くことができるわけです。そりゃファンなら絶対に手を出したくなりますよね。

デモは1984年初頭に録音されたそうで、当時のメンバーはアクセル(Vo)、イジー(G)、クリス(G)、ジョニー・クリーズ(Dr)、スティーヴ・ダロウ(B)という布陣(のはず)。なぜかスティーヴの名前はクレジットに見当たりません。ベースの音はしっかり聴こえるので、もしかしたら別のメンバーが単発で弾いている可能性もありますが、ここでは特に大きな問題はないのでスルーします。

さすがに5曲だけだと商売にならんということで本作、かなりの水増しが施されております。実はCD自体は15曲入りなのですが、その内訳は「オリジナルデモ音源」「オリジナルデモ音源のギルビー・クラーク(ex. GUNS N' ROSES)によるリミックスバージョン」「オリジナルデモ音源のフレッド・コウリー(CINDERELLA)によるリミックスバージョン」というもの。おいおい……。

まず「オリジナルデモ音源」ですが、若々しいアクセルの歌声を聴けるというだけで満足。曲にもその後の片鱗が感じられるほか、「Anything Goes」や「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」のアレンジ違いでは若干拙さも感じられたりして興味深いものがあったりします。あれですね、リフワークがスラッシュが加わってからのものとは全然違っていて、ここにはその後の豪快さがまったくないんですね。こじんまりとしているといいますか。細かく刻むリフワークはクリスによるものなんでしょうかね(イジーっぽくもあるけど)。その違いでこうも雰囲気が変わるか、と。

で、リミックスですが……うん、確かにオリジナルデモより聴きやすく整理されてるわ。ギルビーのやつが一番クオリティ上がってる気がして聴きやすい。特に「Shadow Of Your Love」「Reckless Life」の2曲はトレイシー・ガンズ(L.A. GUNS)がギターを追加しちゃってますからね(笑)。邪道すぎ!

フレッドは自身がドラマーということもあってか、ドラムサウンドが心地よくエッジが効いたミックス。バスドラのペタペタ感が軽減されて、若干メタリックさが増している気も。あと、ボーカルも前に出ていて、一方でギターが少し後ろに下がっている。このへんは完全に趣味なんでしょうね。

というわけで、3者3様のミックス違いを楽しみつつ……1回聴いたら十分なこのアルバム(笑)。それでも数年に1回は引っ張り出したくなる、そんな罪作りな1枚です。



▼HOLLYWOOD ROSE『THE ROOTS OF GUNS N' ROSES』
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2018年7月17日 (火)

L.A.GUNS『COCKED & LOADED』(1989)

1989年8月に発表された、L.A.GUNS通算2作目のオリジナルアルバム。デビューアルバム『L.A. GUNS』(1988年)完成後に加入したスティーヴ・ライリー(Dr)がレコーディングに初参加した作品で、フィリップ・ルイス(Vo)、トレイシー・ガンズ(G)、ミック・クリプス(G)、ケリー・ニッケルズ(B)、スティーヴという全盛期メンバーがレコーディングのみならず曲作りにも本格的に参加した1枚でもあります。

プロデュースを手がけたのは、MOTLEY CRUECHEAP TRICKPOISONDOKKENなどでおなじみのトム・ワーマンと、デュアン・バロン&ジョン・パーデル(オジー・オズボーンアリス・クーパーDREAM THEATERなど)というゴールデンチーム。演奏や音質含め初期衝動の塊だった前作とは異なり、かなり“整理された”ハードロックアルバムに仕上げられています。

パンキッシュな疾走感はできる限り抑えられ、代わりにメロディや演奏面が非常に練りこまれている。1曲1曲の仕上がりは非常に高品質で、かつ楽曲のタイプの幅も広がっている。このへん、上記プロデューサー陣がかなりテコ入れしたんじゃないかと想像できます。

例えば「Rip And Tears」のような曲も、前作に入っていてもおかしくないんだけど、要所要所にフックが仕込まれている。その一番わかりやすい形が、エンディングですね。こういった仕掛けはMOTLEY CRUEの楽曲にも存在しましたが、ライブ感を強めるという意味でもこの仕掛けは成功しと言えるでしょう。

アレンジという点においては、「Malaria」や「Magdalaine」といった楽曲が生まれたことも、このバンドにとって非常に大きかったと思います。ヘヴィさやサイケデリック感を打ち出したこれらの楽曲は、アルバムの中でも異彩を放っているし、ライブにおいても見せ場のひとつになったのは間違いありません。事実、前者はいまでもライブで披露される機会が多いですし、そういう意味でも本作中盤、「Never Enough」〜「Magdalaine」の流れは以降の“L.A.GUNSらしさ”にもつながる重要な要素になったのではないでしょうか。

また、この時期のHR/HMバンドにとって重要なファクターだった“パワーバラード”、“アコースティックテイスト”もしっかり備わっており、その2つを効果的に用いた「The Ballad Of Jayne」というヒットシングル(全米33位)も生まれました。これを受けてアルバムも最高38位まで上昇し、無事ミリオンセールスを記録したわけですから。

さて、L.A.GUNSのメジャー時代(80年代後半〜90年代前半)の諸作品って、一切デジタル配信&ストリーミング配信されてないんですね。しかも、本作に関しては国内外で廃盤状態みたいですし(5年くらい前に、ボーナストラックが追加されたものが再発レーベルRock Candy経由で流通していましたが、今はどうなんでしょう)。つい先日、1枚目のほうは国内盤が1000円で限定再発されましたが、むしろこっちのほうを再発してほしいんですよね。同企画の第2弾の際にはぜひお願いします!(いや、むしろあの企画の選盤に関わりたいくらいですけどね)→※2022年1月追記:1stアルバムから3rdアルバムまでの3枚が、国内でもストリーミング解禁となりました。



▼L.A.GUNS『COCKED & LOADED』
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2017年10月18日 (水)

『LOUD PARK 17』DAY 1@さいたまスーパーアリーナ(2017年10月14日)

Loudpark172年ぶりに『LOUD PARK』に行ってきました。2015年は2日目のみの参加でしたが、今回は本当に久しぶりの2日通しでの参加。いつ以来だろうと振り返ってみたら、なんと2009年(JUDAS PRIESTSLAYERがヘッドライナー)以来だったみたいです(笑)。2011年から1日のみ開催が2年続きましたが、それもあってか1日のみ参加というのも結構あったんですよね。

というわけで、せっかくなので久しぶりにメモ程度のレポを残しておこうかと思います。基本はSNS等でつぶやいたコメントが基になっていますので、がっつりしたレポートは各メディアでの本格的なレポートにてご確認ください(笑)。

では、このエントリーでは初日について書いていきたいと思います。

 

<DAY 1:10月14日(土)>
当日朝6時まで原稿を書いていたため、オープニングアクトAldiousからの参加は断念。せめてL.A.GUNSは観たい……ということで、頑張って9時台に起床。ギリギリ12時開始のL.A.GUNSには間に合いました。

 

L.A.GUNS
1曲目が3rdアルバム『HOLLYWOOD VAMPIRES』のオープニングトラック「Over The Edge」で面喰らう。勢いよく始めるかと思ったら、このエモいヘヴィロックからかよ、と。ステージをよく見ると、左に昔のトレイシー・ガンズっぽいコスプレしたギタリスト、右に……アメリカ南部のモダンヘヴィネス系バンドにいそうなむさ苦しいギタリスト。あれ、どっちがトレイシーだ?……残念ながら右側でした(笑)。以降は新作『THE MISSING PEACE』から「Speed」やったり1stアルバムから「No Mercy」やったりしましたが、「Killing Machine」みたいな曲もあったりで、特に初期にこだわった感じではなし。あ、2nd『COCKED & LOADED』の曲が多かったです。ラストは「Rip And Tear」。あれ、「Sex Action」は? ということで、個人的には物足りないセトリでした(もともとのセトリには中盤に「Sex Action」、入ってたんですけどね)。

ANTHEM
いきなり「Bound To Break」始まりはズルい! そりゃあ盛り上がりますよ。以降は新し目の曲が続き、中盤「Hunting Time」から怒涛の流れ。ラストは“ANTHEM版「Painkiller」”こと「Onslaught」で締めくくり。短かったけど、久しぶりに堪能できました。

BRUJERIA
あのBRUJERIAが来日!ってだけでも大興奮。そりゃあ開始前から、観客の熱も上がりますよね。メンバーは当然覆面なんですが、ベースの方がどう見てもNAPALM DEATHの……いやなんでもないです(笑)。ゴリゴリ&大音量のグラインドコアと、サークルモッシュで暴れる血気盛んなオーディエンス、それを遠目で眺める自分。ああ、ラウパーに帰ってきたんだなと改めて実感しました。MCは基本スペイン語(という設定)ですが、ところどころに英語が混じっているのに苦笑。“Fuck ドナルド・トランプ”コールで会場の気持ちがひとつになったり、このバンドらしいマリファナコールにニヤニヤしたりと、改めて面白いバンドだなと思いました。

WINGER
たぶん生で観るのは『IN THE HEART OF THE YOUNG』(1990年)のツアー以来だから……いやいや、深く考えるのはやめましょう。メンバーは3枚目『PULL』(1993年)からの編成なので、キーボードは抑えめでギター中心のサウンドメイキング。キップ・ウィンガー(Vo, B)に白髪が混じっていて時の流れを感じさせますが、演奏や歌自体はそこまで衰えを感じさせず。序盤は最近の楽曲〜代表曲〜新曲〜代表曲みたいな流れで、セットリストのバランスはまずまず。中盤、結成30周年に触れてからはデビューアルバム『WINGER』からの楽曲が連発されるのですが、「Heading For A Heartbreak」みたいなシンセ曲ではキップがシンセを弾きながら歌い、ギターのジョン・ロスがベースにシフトするんですね。なるほど納得です。あ、このジョンのギタープレイがレブ・ビーチとはまた違ったタイプのバカテクで好印象。本当に演奏がうまいバンドですね。ただ、BRUJERIAの後という出番はいただけません。最初、音が小さくでビックリしたし(実際BRUJERIAがデカすぎて、WINGERは序盤から音を作っていった感じ。終盤にはその音のバランスの良さに驚きました)。後半の「Heading For A Heartbreak」「Can't Get Enuff」「Madalaine」「Seventeen」の流れ、最高でした。が、スピーカーの音が途中で飛んだり、レブのギターソロでアンプが飛んだりとハプニングも連発。そこだけが勿体なかったです。

OPETH
グラインドコア(BRUJERIA)、AOR的ハードロック(WINGER)からの流れだと、プログレッシヴロック的志向のOPETHはよりソフトに感じられました。長尺の楽曲を演奏で起伏をつけていくのはWINGERにも通ずるものがあるのですが、いかんせんタイプが違う。最近の楽曲は特にソフト志向なので、途中で眠気も……が、ラストの13分超におよぶ「Deliverance」でデス声登場。大好きなアルバムのタイトルトラックに大興奮ですよ。ここで一気に気持ちが持ち返しました。なんにせよ、長丁場のフェスに寝不足で挑むのはよくないですね(苦笑)。

OVERKILL
ここ10年くらい、出すアルバムがことごとく力作でキラーチューンも多い彼ら。実際のライブも往年の代表曲以上に新曲で盛り上がっていたのが印象的でした。にしても、このバンドも35年近いキャリアの持ち主(しかも一度も解散、活動休止なし)なのに、このテンションの高さには驚かされます。初めてライブを観たのはもう30年近く前ですが、基本的に印象はまったく変わらず。逆に観客の彼らに対する盛り上がりは、年々高くなってるように感じました。ラストの「Fuck You」含め、「ああ、そうそうこれ。スラッシュメタルだね!」っていう最高のステージでした。

ALICE COOPER
アリスも2008年以来の来日以来9年ぶり。1990年の初来日以降、毎回観てますが、一番時間が短かったにも関わらず正直今回が一番良かったと思いました。1曲目の「Brutal Planet」には驚いたものの、以降はいつもどおりヒット曲連発。まさか序盤に「Poison」を持ってくるとは思ってもみませんでしたし、「Feed My Frankenstein」ではジャンボマックス(死語)ばりの巨大アリスが登場して爆笑(しかも歌声も身長に合わせてか低くなってる!)。おなじみのギロチンショーもあり、ラストは「I'm Eighteen」「School's Out」で大団円。オールドスクールなロックンロールや60分に凝縮されたショーはラウパーっぽくないのかもしれませんが、それでも最高と言わざるをえない究極のエンタテインメントショーでした。

EMPEROR
二度目の来日となる今回は、2ndアルバム『ANTHEMS TO THE WELKIN AT DUSK』発売20周年を記念した完全再現ライブを披露。緑を基調とした照明はジャケットの世界観そのもので、この日出演したバンドの中でもサウンド的にはかなりオールドスクールなブラックメタルに括られるものの、存在感や説得力はほかにはない特別なものが感じられました。最初こそ「うおー!」と盛り上がっていたものの、気づいたら無言になっており、その世界観にじっくりと浸る自分がいるという。イーサーン(Vo, G)の知的な感じも素敵でしたし、あの佇まいがそのまま音になったかのような、プログレッシヴなブラックメタルサウンドは20年経った今も有効であることも強く実感させられました。アルバムを曲順どおりに再現し終えると、そこからは「Curse You All Men!」「I Am The Black Wizards」「Inno A Satana」と代表曲を連発。「I Am The Black Wizards」まではスタンド席でじっくり観ていたのですが、「Inno A Satana」が始まった瞬間我慢できずにアリーナまで走ったのはここだけの話です(笑)。

SLAYER
2年ぶりのSLAYERですが、前回はラウパーのほうが日程的に観られなかったため、STUDIO COASTでの単独公演を観たのでした。最新作『REPENTLESS』を軸にしたセットリストは前回に似た感じですが、なぜでしょう、今回のほうが良かった気がします。いや、もっと言うと……ここ10数年観た中で一番良かったんじゃないでしょうか。ゲイリー・ホルト(G)が加わって時間が経ち、編成としてもかなり安定したのもありますし、『REPENTLESS』の楽曲が今のバンドに馴染んだというのもあるんでしょうけど、なんていうか……僕らがよく知ってる“あの”SLAYERが戻ってきたといいましょうか……非常に抽象的な表現で申し訳ないですが、そうなんですよ。完全に戻ってるんですよ、今のSLAYER。帝王って言葉がぴったりな、あのSLAYERに。セットリストもよかったなぁ。90分のセットで20曲くらい詰め込まれていて、特に終盤、「Seasons In The Abyss」から「Hell Awaits」「South Of Heaven」「Raining Blood」「Chemical Warfare」「Angel Of Death」という怒涛の流れは文句なしでした。ぶっちゃけ、首がもげましたもん(笑)。

 


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