LAST DAYS OF APRIL『IF YOU LOSE IT』(2004)
スウェーデンといえばひと昔前はスウェディッシュ・ポップ、今ではガレージ/リバイバルロックの宝庫とされる、音楽ファン要注目なお国なわけですが、そこにこのLAST DAYS OF APRILも加えておきたいですよね。前作「ASCEND TO THE STARS」から約2年振り、通算5作目となるこの「IF YOU LOSE IT」。初期の頃に顕著だった「エモ」の要素は完全に後退し、もっとギターポップ寄りのサウンドへと進化してます。この辺の流れ、同じ時期にリリースされたTHE GET UP KIDSの新作にも同じものを感じます。歳を重ねることで、エモをやってた頃みたいな若々しさが後退してしまったのか、それとも円熟味が増しているのか‥‥その辺はミュージシャンによってまちまちでしょうけど、このバンドの場合はいい具合に成長してると思いますね。
個人的にはエモも嫌いじゃないし、むしろライヴとかで聴いたら弾けちゃうんだろうけど‥‥でも趣味でいったら完全に今の路線の方が好みなんですよ。ギターポップ/ギターロック‥‥なんならインディーギターロックでもいいや(っていうかこの辺のジャンルの枠組みってどうでもいいんですけどね!)。で、このアルバムを聴いていて凄く感じたのが上のようなGET UP KIDSとの共通点だったりするんですが‥‥それ以上にピッタリ符合するサンプルが先駆者にいるじゃないの。いや、エモじゃないけどさ‥‥そう、TEENAGE FANCLUBよ! 彼らも初期は轟音ギターに甘美なメロディーを絡めた独自の路線で登場したものの(しかもアメリカでのグランジと微妙に被ったりしてね)、アルバムを重ねていくにつれ、初期の色合いを完全に消し去り、楽曲指向で味わい深い路線へと移行していきましたよね。俺、最初にこの「IF YOU LOSE IT」というアルバムを聴いた時、そういったTFCの中期諸作を思い浮かべたんですよ‥‥「GRAND PRIX」とか、あの辺を。楽曲自体は初期の作品に通ずるのに、その表現方法が当時とは違う、新しい手段を用いている。TFCにしろGET UP KIDSにしろこのLAST DAYS OF APRILにしろ、そいういう見事な進化をしてるように思います。
楽曲自体は本当によく練られたものが多く、特別「ここが凄い!」とか「ここがサイコー!」っていうポイントは少ないんですが、むしろこのアルバムはそういったポイント、ポイントを楽しむよりも全体の雰囲気/空気感を楽しむのが一番だな、と。トータルで聴いた時の爽快感というか‥‥いや違うな。安心感とか温かみとか、そういった方が合ってるかな。そんな印象を受けるのね、このアルバム。メロディーも温かいし、演奏も激しすぎず、それでいてダラダラしすぎてもない。人肌の温かみ、適温‥‥そんなイメージがピッタリ。北欧的な冷たさは皆無。いや、スウェーデンのギターポップバンドにそんなものを求める輩は少ないよな。
これはもうね、夜のアルバムですよ。トータルで34分というトータルランニングも良いし(俺は輸入盤を買ったのですが、日本盤には更にボーナストラックが入ってるのかな?)、激しすぎないから適度な音量で深夜に流していても気が散らない。むしろ夜に聴きたい、ちょっと肌寒いこの時期に、温かい布団にくるまってね。ホントは隣に女の子がいればいいんだろうけど‥‥違うのよ、このアルバムは一人で聴くべきなのよ。一人で孤独を噛み締めながら、アルバムの温かみを実感する‥‥それがこのアルバムの正しい楽しみ方なのではないでしょうか? っていうか、そんな空気がひしひしと伝わってくるのよね、このバンドからは‥‥
そんな所謂「負け犬」感というか、弱者的要素を感じさせるのも、TFCと共通するかな。ま、とにかくTFC辺りが好きな人なら間違いなく気に入る1枚。勿論、スウェーデンものが好きな人もね。