LED ZEPPELIN『THE SONG REMAINS THE SAME』(1976/2007)
1976年10月にリリースされたLED ZEPPELIN初のライブアルバム。
同作はアルバム発売と同タイミングに劇場公開された映画『レッド・ツェッペリン狂熱のライヴ(THE SONG REMAINS THE SAME)』のサウンドトラック的立ち位置の2枚組作品で、1976年3月発売の7thアルバム『PRESENCE』から約半年という短いスパンでリリースされたにも関わらず同作以上の売り上げを記録しました(全英1位、全米2位)。
映画のほうは1973年7月末に行われたマディソン・スクエア・ガーデンでのライブ映像を軸に、メンバー4人のイメージ映像などがフィーチャーされたサイケデリックさを併せ持つ内容。80年代前半にVHSにて販売され、当時は唯一手に入れることができる「ツェッペリンの公式ライブ映像」としてかなり重宝しました。と同時に、このライブアルバムもスタジオワークとは異なる、生々しい演奏と歌を味わうことができるという点で、オリジナルアルバム以上にリピートしたというリスナーも少なくなかったと思います(筆者も含む)。
サントラとはいえ、収録曲の曲順は映画の流れに沿ったものではなく、中には映画で使用されていない「Celebration Day」も含まれている。かつ、映画にはアルバムには未収録の「Black Dog」「Since I've Been Loving You」「Heartbreaker」も(フルではないものの)収録されている。つまり、どちらも実際のライブをフル収録したものではないことが伺えます。とはいえ、1973年当時(時期的には5thアルバム『HOUSES OF THE HOLEY』リリース後)のベスト選曲的なライブ音源を楽しむことができるし(選曲は5枚目に偏ってますけどね)、なによりも「弾けているようで弾けていないジミー・ペイジ」や「どんどん高音域が出なくなっているため初期の楽曲をうまくごまかしながら歌うロバート・プラント」「ライブでキーボード主体の曲を演奏するときは、ベースはフットペダルで対応するジョン・ポール・ジョーンズ」「どんなときでもすごいジョン・ボーナム」という奇跡の4人(笑)の実力を思う存分堪能できるので、90年代半ばまではかなり重要な作品だったと言えます。
それこそ、よく言われる「ライブだとインプロヴィゼーションが加わり、1曲の長さがどんどん延びていく」という現象も「Dazed And Confused」や「Moby Dick」「Whole Lotta Love」で存分に理解できるはず。「Dazed And Confused」なんて27分にもおよぶ熱演で(それでも編集されて若干短くなっているわけですが)、アナログ盤では片面で1曲使うほどでしたからね(笑)。
さて、そんな本作ですが、2007年11月にはリリース30周年を記念したリミックス/リマスター/再編集盤を発表。こちらは映画でのみ聴くことができた3曲のフルバージョンと、2003年発売のDVD『LED ZEPPELIN DVD』で初公開された「Misty Mountain Hop」「The Ocean」と、これまで未公開だった「Over The Hills And Far Away」の6曲が追加された全15曲入り作品としてリパッケージされたもので、2020年現在流通しているのはこちらのバージョンとなります。つまり、旧オリジナルバージョンは現時点では廃盤状態というわけです(まあ中古で簡単に手に入りますけどね)。
リマスタリングされたのは非常にありがたいのですが、ペイジお得意のリミックス(音の足し引き・編集)が随所に発揮されており、「Dazed And Confused」のように30分近くにまで引き延ばされた(実際の演奏に近づけた)ものもあれば、「No Quarter」や「Moby Dick」「Whole Lotta Love」みたいにオリジナル盤から1〜2分ほど短く編集されたものもあるので、オリジナル盤を数十年にわたり聴きまくった耳には違和感が残ります(それ以上に、リミックスによる違和感が大きいわけですが)。
さらに、オリジナル盤に未収録だった6曲が加わったことで、曲順も再構成。もともとは序盤に収められていた「The Rain Song」や「Dazed And Confused」が終盤に置かれているなどの変化に、リマスター盤発売から13年経った今も追いつけていません(苦笑)。そりゃあ一長一短ありますわな。
現在各種ストリーミングサービスで聴くことができるのは、この2007年バージョンのほうのみ。なので、このバージョンから触れたというリスナーには逆に1976年盤は耳馴染みの悪い内容なんでしょうね。まあ、あれです。要は両方聴いてくれと。今でこそ公式リリースされたライブCDや映像作品が複数存在しますが、活動現役期間は本作しかなかったわけですから。バンドが意図してリリースした、唯一のライブ作品としていろんな楽しみ方をしてみては如何でしょう。
▼LED ZEPPELIN『THE SONG REMAINS THE SAME』
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