2003/11/20

LENNY KRAVITZ『MAMA SAID』(1991)

レニー・クラヴィッツが'91年春に発表した、通算2作目となるアルバム「MAMA SAID」はいろんな意味で彼にとってのターニングポイントとなった1枚。ほぼ宅録に近い状態のままリリースされた'89年のファースト「LET LOVE RULE」でマニアックな音楽ファンを魅了し、このセカンドではとうとうセールス的にも成功を収めたわけですよ。本格的な大ブレイクとなると次作「ARE YOU GONNA GO MY WAY」ってことになりますが、この「MAMA SAID」は所謂「密室系」作品集としては最後となり、またその後の「バンド系拡散方向」へと移行する直前の、正にクロスポイントとなった作品でした。

基本的な音楽スタイルや制作過程はファーストの頃‥‥つまりデビュー前と殆ど変わっていないわけですが(逆にそれだけデビュー前からクオリティーが高い音楽を作っていたわけですよ)、やはり制作費だとか時間のかけ方等に余裕が持てるようになったのか、前作以上に精神的にゆったりとしたイメージを受けます。通常、セカンドアルバムってのはアーティストにとって鬼門となる作品で、1作目で話題をさらったり成功を収めてしまうと、2作目で苦労するなんて話を耳にします。ファーストアルバムはデビュー前の長期間に渡って練られてきた楽曲ばかり。これ以上のクオリティーとなる作品を短期間で制作せねばならないプレッシャー等、とにかく新人にとっては半端じゃないでしょうね。ところがレニーの場合、ファーストアルバム制作時と全く同じスタジオ/スタッフということもあり、成功云々は関係なしに制作を楽しんだのがアルバムの端々から伺えます。とにかくユルい。全体的にダウナーで緩い印象が強く、特にサイケ調の色合いが加わったことでよりダウナーなイメージを受けます。「黒いジョン・レノン」なんていう比喩がファーストリリース時によく囁かれましたが、そのイメージを更に増長させるようなサイケでアシッド風味の音像/サウンド。かと思えばカーティス・メイフィールドを彷彿させるムーディーな "It Ain't Over 'Til It's Over" という大ヒット曲もあるし、ジミ・ヘンドリクス 的ハードロック・チューン "Always On The Run" まである(この曲には当時GUNS N'ROSESのギタリストだったスラッシュが参加しています)。ロックでありポップでありファンクでありサイケである‥‥というと、どうしても同じ黒人アーティストであるプリンスを思い浮かべるわけですが、彼よりも浮世離れしていない点、あざといまでの「狙ってる感」が色濃く表れている点等が大きな違いでしょうか。同じ天才でも「天然」と「計算」の差は大きいなぁ、と。

最初に書いたように、このアルバムは基本的に宅録の延長であり、そこにゲストや外部からのインプット(如何にもレノン的な "All I Ever Wanted" ではその実子であるショーン・レノンと共作しているし、上記の "Always On The Run" もスラッシュとの共作)やゲストプレイヤーの参加が、彼にこれまでになかったような刺激を与えているのは明らか。またこの頃、彼はかのマドンナに "Justify My Love" という曲を書き下ろしているし、丁度同じ年の1月に勃発した湾岸戦争に対する抗議としてピーター・ガブリエルやシンディ・ローパー、オノ・ヨーコといったミュージシャン達と共にレノンの名曲 "Give Peace A Chance" をレコーディングしてるんですね。直接作品には影響はしなかったかもしれないけど、明らかに何らかの刺激にはなっただろうな、と。そういう意味でこの「MAMA SAID」は初期のレニーと、我々がよく知る「自由への疾走」以降のレニーとの架け橋となる作品だったんじゃないかな、と思うわけです。その後のLED ZEPPELINにも通ずるような直接的なハードロック路線はまだそれ程見られませんが(このセカンドにおける「ハードロック」は、あくまでブラックミュージックの範疇における「ハードロック」という意味合いが強いですよね。ファンク色も非常に強いし)、明らかにそっち方向にも進みつつあるのが、ファーストとの大きな違いでしょうね。それにこのアルバムを聴く限り、「オールドロックの再生」的な側面はそこまで強く感じられないし。リフ主体の楽曲も少ないし、やはり「ノリで曲を書く」というよりは「そこに座ってじっくりと曲を煮詰める」といったイメージの方が強いよなぁ、と。勿論、両方ともレニーの持ち味であるんですが、このアルバムと次作を比較すると本当にその振り幅が大きいんですよ、面白いくらいに。ま、だからこそこのセカンドがより光って見えるわけですが。

またレニーがこういう作品を作るなんてこと、ちょっと今は想像できませんが、こういうユルユルなレニーもまた味わってみたいものですね。個人的には一時期バイブル的なアルバムだったんですよね、これ。曲を書くという行為に対して、真剣に考えさせられたのがこの作品でした。忘れた頃に聴くと、やはり初心に戻してくれますね。今日もたまたま引っ張り出して聴いてみたんですが、さっきからずっとリピートしっぱなし。まだ聴いたことのないという若い音楽ファン、悪いこと言わないから聴いてみて。今巷に溢れてる「ロック」や「ポップス」の、ひとつの流れを作った作品なんだからさ。



▼LENNY KRAVITZ『MAMA SAID』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2003 11 20 03:36 午前 [1991年の作品, Lenny Kravitz] | 固定リンク