2018年4月28日 (土)

LENNY KRAVITZ『ARE YOU GONNA GO MY WAY』(1993)

あら、『自由への疾走』も今年で25周年ですか……意外と名盤が多いのね、1993年って。

ということで、今回紹介するのはレニー・クラヴィッツが1993年3月に発表した通算3枚目のオリジナルアルバム。前作『MAMA SAID』(1991年)からのシングル「It Ain't Over 'til It's Over」が全米2位を記録し、アルバムも全米で200万枚を超えるヒット作に。デビューアルバム『LET LOVE RULE』(1989年)時の“黒いジョン・レノン”なんていう(良くも悪くも)印象的なフレーズを払拭し、ようやくスターダムにのし上がり始めたタイミングに放たれた、決定打となった1枚がこの『ARE YOU GONNA GO MY WAY』でした。

前作にもスラッシュ(GUNS N' ROSES)をフィーチャーした「Always On The Run」のようなロックチューンはあったものの、あくまで“黒人によるハードロック”的な解釈が強かったように思いますが、本作では黒っぽさは残るものの、それ以上にインパクトの強いオールドスクールなロックが展開されています。

オープニングを飾る「Are You Gonna Go My Way」なんて完全にジミ・ヘンドリクスですし、そこから続く「Believe」でのメランコリックな世界観は中期LED ZEPPELINにも通ずるものがある。シンプルなリズムとリフのみで構成された「Come On And Love Me」はファンクロック、「Just Be A Woman」はビートルズチックなバラードと、とにかくクラシックロックの黄金パターンがこれでもか!と言わんばかりに詰め込まれているのです。

後半もLED ZEPPELINばりに豪快なハードロックをプリンスのごとくひたすらファルセットで歌う「Is There Any Love in Your Heart」や、ソウルフルなミディアムチューン「Black Girl」、前作における「It Ain't Over 'til It's Over」的なオシャレソウル、7分にもおよぶサイケデリックバラード「Sister」、緩やかなレゲエナンバー「Eleutheria」など、個性的な楽曲ばかり。聴いてるうちに過去の偉人たちの顔が思い浮かびますが、それらをすべてレニクラ流に消化して自分のものにした、いかにも“ヒップホップ以降”のロックアルバム。それがこのアルバムの強さなんじゃないでしょうか。

アメリカでは12位と過去最高順位に達し、200万枚以上を売り上げた。イギリスでは初の1位も獲得しており、ここ日本でもアホほど売れました。表題曲はこれまでさまざまなテレビCMに使用されてきたので、どれだけ売れたのかと思いきや、実はアメリカではBillboard Hot 100入りしていないという事実にびっくり(方やイギリスでは最高4位を記録)。アルバムのヒットに反して、シングルは「Believe」(全米60位、全英30位)、「Heaven Help」(全米80位、全英20位)と意外に低調なのも興味深いですね。



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投稿: 2018 04 28 12:00 午前 [1993年の作品, Lenny Kravitz] | 固定リンク

2018年2月 1日 (木)

V.A.『KISS MY ASS: CLASSIC KISS REGROOVED』(1994)

1994年6月にリリースされた、KISSのトリビュートアルバム。ちょうどKISS結成20周年を記念して、当時のメンバーも制作に携わった1枚で、レニー・クラヴィッツガース・ブルックスANTHRAXGIN BLOSSOMSTOAD THE WET SPROCKETDINOSAUR JR.EXTREMETHE LEMONHEADSTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONESといったメタル/オルタナ/カントリーなどKISSに影響を受けた幅広いジャンルのアーティストに加え、ここ日本からもYOSHIKI(X JAPAN)が参加。さらに、メイナード・キーナン(TOOL)、トム・モレロ&ブラッド・ウィルク(RAGE AGAINST THE MACHINE)、ビリー・グールド(FAITH NO MORE)からなるスペシャルユニットSHANDI'S ADDICTION(JANE'S ADDICITONをKISSの楽曲「Shandi」にひっかけてもじったもの)まで参加しております。

まあKISS愛に溢れた……というよりは、各アーティストが平常運転でKISSの楽曲をカバーしたといったほうが正しいのかもしれませんね。だって、1曲目の「Deuce」からレニー・クラヴィッツ、直球勝負でカバーしつつも彼らしく味付けしてますから。ちなみにこの曲、ハーモニカでスティーヴィー・ワンダーもゲスト参加してます。

かと思えば、KISSご本家が演奏で加わったガース・ブルックス「Hard Luck Woman」は、カバーというよりもコピー。本家がいつもどおりに演奏して、ポール・スタンレーがハーモニーで加わっているんだから、そりゃあ“まんま”になっても仕方ないですよね(笑)。ANTHRAXの「She」も平常運転、というか途中まで“まんま”すぎて、後半に彼らならではのこだわりのアレンジが加わるという。この時期の彼らは、ボーカルがジョン・ブッシュ時代なので、こういったジーン・シモンズ色の強い曲はピッタリですね。

そういえば、1994年というとグランジブーム末期というタイミングで、KISSから影響を受けたと公言するグランジバンドも少なくありませんでした。そういうこともあって、GIN BLOSSOMS、TOAD THE WET SPROCKET、DINOSAUR JR.あたりのグランジ/オルタナロックバンドのKISSカバーは良い味を醸し出しています。GIN BLOSSOMS「Christine Sixteen」こそストレートなカバーですが、TOAD THE WET SPROCKET「Rock And Roll All Nite」のアコースティックスローカバー、DINOSAUR JR.「Goin' Blind」のヘヴィで泣きまくり、かつ脱力系なカバーは完璧すぎるほどの素晴らしい仕上がり。1994年という時代感を見事に反映した、本作の中でもベストテイクと言えるでしょう。

そして、本作中もっとも異色のカバーがSHANDI'S ADDICTION「Calling Dr. Love」。トム・モレロの変態ギターを存分に活かしたテイクで、参加メンバーの各バンドの個性が見事に反映されたアレンジは、最高の一言。のちのヘヴィロック/ラウドロック一大革命を先取った1曲と言えるかもしれません。

その他にも、EXTREMEらしくファンクロック的“ハネた”ミディアムナンバーへと昇華させた「Strutter」、あの有名なツインリードギターをブラスで再現した爆笑モノのTHE MIGHTY MIGHTY BOSSTONES「Detroit Rock City」、いかにもYOSHIKI、というかまんまX JAPANな「Black Diamond」のオーケストラバージョン、ボーナストラックとして追加されたドイツのバンドDIE ÄRZTEの「Unholy」ドイツ語カバー(途中でディスコな“あの曲”も飛び出したり)など、聴きどころ満載。トリビュートアルバムとしては、かなり力の入った1枚ではないでしょうか。そりゃまあ、アーティスト本人が尽力してるんだもんね。

ちなみに本作、今のようにKISSがメイク時代に戻る前の作品ながらも、全米19位まで上昇。50万枚を超えるヒット作となりました。今思えば、このへんの成功が数年後のオリメン&メイク復活の布石になったんでしょうね。

なお、本作はストリーミング配信はおろか、デジタル配信自体が行われておりません。勿体ないったらありゃしない。



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投稿: 2018 02 01 12:00 午前 [1994年の作品, Anthrax, Compilation Album, Dinosaur Jr., Extreme, Faith No More, Garth Brooks, Gin Blossoms, KISS, Lemonheads, the, Lenny Kravitz, Mighty Mighty Bosstones, the, Rage Against The Machine, Toad the Wet Sprocket, Tool, X JAPAN] | 固定リンク

2003年11月20日 (木)

LENNY KRAVITZ『MAMA SAID』(1991)

レニー・クラヴィッツが'91年春に発表した、通算2作目となるアルバム「MAMA SAID」はいろんな意味で彼にとってのターニングポイントとなった1枚。ほぼ宅録に近い状態のままリリースされた'89年のファースト「LET LOVE RULE」でマニアックな音楽ファンを魅了し、このセカンドではとうとうセールス的にも成功を収めたわけですよ。本格的な大ブレイクとなると次作「ARE YOU GONNA GO MY WAY」ってことになりますが、この「MAMA SAID」は所謂「密室系」作品集としては最後となり、またその後の「バンド系拡散方向」へと移行する直前の、正にクロスポイントとなった作品でした。

基本的な音楽スタイルや制作過程はファーストの頃‥‥つまりデビュー前と殆ど変わっていないわけですが(逆にそれだけデビュー前からクオリティーが高い音楽を作っていたわけですよ)、やはり制作費だとか時間のかけ方等に余裕が持てるようになったのか、前作以上に精神的にゆったりとしたイメージを受けます。通常、セカンドアルバムってのはアーティストにとって鬼門となる作品で、1作目で話題をさらったり成功を収めてしまうと、2作目で苦労するなんて話を耳にします。ファーストアルバムはデビュー前の長期間に渡って練られてきた楽曲ばかり。これ以上のクオリティーとなる作品を短期間で制作せねばならないプレッシャー等、とにかく新人にとっては半端じゃないでしょうね。ところがレニーの場合、ファーストアルバム制作時と全く同じスタジオ/スタッフということもあり、成功云々は関係なしに制作を楽しんだのがアルバムの端々から伺えます。とにかくユルい。全体的にダウナーで緩い印象が強く、特にサイケ調の色合いが加わったことでよりダウナーなイメージを受けます。「黒いジョン・レノン」なんていう比喩がファーストリリース時によく囁かれましたが、そのイメージを更に増長させるようなサイケでアシッド風味の音像/サウンド。かと思えばカーティス・メイフィールドを彷彿させるムーディーな "It Ain't Over 'Til It's Over" という大ヒット曲もあるし、ジミ・ヘンドリクス 的ハードロック・チューン "Always On The Run" まである(この曲には当時GUNS N'ROSESのギタリストだったスラッシュが参加しています)。ロックでありポップでありファンクでありサイケである‥‥というと、どうしても同じ黒人アーティストであるプリンスを思い浮かべるわけですが、彼よりも浮世離れしていない点、あざといまでの「狙ってる感」が色濃く表れている点等が大きな違いでしょうか。同じ天才でも「天然」と「計算」の差は大きいなぁ、と。

最初に書いたように、このアルバムは基本的に宅録の延長であり、そこにゲストや外部からのインプット(如何にもレノン的な "All I Ever Wanted" ではその実子であるショーン・レノンと共作しているし、上記の "Always On The Run" もスラッシュとの共作)やゲストプレイヤーの参加が、彼にこれまでになかったような刺激を与えているのは明らか。またこの頃、彼はかのマドンナに "Justify My Love" という曲を書き下ろしているし、丁度同じ年の1月に勃発した湾岸戦争に対する抗議としてピーター・ガブリエルやシンディ・ローパー、オノ・ヨーコといったミュージシャン達と共にレノンの名曲 "Give Peace A Chance" をレコーディングしてるんですね。直接作品には影響はしなかったかもしれないけど、明らかに何らかの刺激にはなっただろうな、と。そういう意味でこの「MAMA SAID」は初期のレニーと、我々がよく知る「自由への疾走」以降のレニーとの架け橋となる作品だったんじゃないかな、と思うわけです。その後のLED ZEPPELINにも通ずるような直接的なハードロック路線はまだそれ程見られませんが(このセカンドにおける「ハードロック」は、あくまでブラックミュージックの範疇における「ハードロック」という意味合いが強いですよね。ファンク色も非常に強いし)、明らかにそっち方向にも進みつつあるのが、ファーストとの大きな違いでしょうね。それにこのアルバムを聴く限り、「オールドロックの再生」的な側面はそこまで強く感じられないし。リフ主体の楽曲も少ないし、やはり「ノリで曲を書く」というよりは「そこに座ってじっくりと曲を煮詰める」といったイメージの方が強いよなぁ、と。勿論、両方ともレニーの持ち味であるんですが、このアルバムと次作を比較すると本当にその振り幅が大きいんですよ、面白いくらいに。ま、だからこそこのセカンドがより光って見えるわけですが。

またレニーがこういう作品を作るなんてこと、ちょっと今は想像できませんが、こういうユルユルなレニーもまた味わってみたいものですね。個人的には一時期バイブル的なアルバムだったんですよね、これ。曲を書くという行為に対して、真剣に考えさせられたのがこの作品でした。忘れた頃に聴くと、やはり初心に戻してくれますね。今日もたまたま引っ張り出して聴いてみたんですが、さっきからずっとリピートしっぱなし。まだ聴いたことのないという若い音楽ファン、悪いこと言わないから聴いてみて。今巷に溢れてる「ロック」や「ポップス」の、ひとつの流れを作った作品なんだからさ。



▼LENNY KRAVITZ『MAMA SAID』
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投稿: 2003 11 20 03:36 午前 [1991年の作品, Lenny Kravitz] | 固定リンク