LIMP BIZKIT『STILL SUCKS』(2021)
2021年10月31日にリリースされたLIMP BIZKITの6thアルバム。現時点ではデジタルリリースのみで、日本盤未発売。
9月30日に突如配信された7年ぶりの新曲「Dad Vibes」を経て早くも登場した本作は、リリース数日前に「ハロウィーンに配信」されることがアナウンス。前作『GOLD COBRA』(2011年)から10年ぶりのフルアルバムが、思いもよらないタイミングに我々の手元に届けられることとなりました。
全12曲で32分という比較的短い尺の本作には、リード曲「Dad Vibes」は含むものの、それ以前に発表された「Lightz (City Of Angels)」「Ready To Go」「Endless Slaughter」、そしてMINISTRYのカバー「Thieves」は未収録。つまり、「Dad Vibes」以外の11曲はここで初めて耳にする完全新曲であり、噂されていた『STAMPEDE OF THE DISCO ELEPHANTS』とは別モノのようです。そりゃ前作から10年も要したんだから、曲はいくらでもあるだろうしね。
プロデューサーは初期3作などを手がけたロス・ロビンソン。「Out Of Style」「Dirty Rotten Bizkit」と冒頭2曲は黄金期のLIMP BIZKIT(2ndアルバム『SIGNIFICANT OTHER』(1999年)や3rdアルバム『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』(2000年))の流れを汲むニューメタルサウンドで、期待通りの仕上がり。そこから「Dad Vibes」で流れを変え、ジャジーなヒップホップ調「Turn It Up, Bitch」、アコースティックの歌モノバラード「Don't Change」、サイケデリックメタル「You Bring Out The Worst In Me」とバラエティ豊かな楽曲が続きます。
1stアルバム『THREE DOLLAR BILL, Y'ALL$』(1997年)でみせた狂気性は薄らいでいるし、なんなら『SIGNIFICANT OTHER』や『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』での無敵感からも遠のき始めている。でも、どの曲も聴けばLIMP BIZKITそのもの。そりゃあブレイクしていた頃から20年も歳月を重ねているんだから、誰しも歳は取ります。フレッド・ダースト(Vo)だってあの風貌ですし。だけど、ウェス・ボーランド(G)の鋭角的なギタープレイは変わらずクールだし、ダム・リヴァース(B)&ジョン・オットー(Dr)が繰り出すヘヴィ&グルーヴィーなリズムも最高で、DJリーサル(Turntables)も随所で“らしさ”をアピールしている。フレッドはラップよりも歌うことに比重を置いているものの、聴けば彼だとわかるボーカルを楽しむことができる。つまり、どこからどう切り取ってもLIMP BIZKITにほかならないのです。
『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』のあとにこのアルバムが届けられていたらちょっと動揺するけど、ウェス不在の『RESULTS MAY VARY』(2003年)や、ウェス復帰後のEP『THE UNQUESTIONABLE TRUTH (PART 1)』(2005年)などを経たからこそ、今作を素直に受け入れることができる。軸となるスタイルは変えることなく、少しずつ幅を広げた結果、「ニューメタルの20年後」みたいなこのアルバムが完成したわけですから、至極真っ当な「進化の続き」なんだと思います。
うん、個人的には全然アリな1枚。今作から『RESULTS MAY VARY』や『GOLD COBRA』に戻っていったら、実は素直に受け入れられることができるんじゃないか。そんなきっかけを作ってくれそうな良作です。
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