カテゴリー「Linkin Park」の24件の記事

2024年4月18日 (木)

LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2023)

2023年4月7日にリリースされた、LINKIN PARKの2ndアルバム『METEORA』(2003年)の20周年記念デラックス盤。全43曲入りのCD3枚組と、全89曲で構成されたボックスセットおよびデジタルエディション、アナログボックスセットの3仕様が用意されています。

アメリカで1000万枚以上、全世界で約3000万枚を売り上げたデビュー作『HYBRID THEORY』(2000年)に続く2作目ということで、相当なプレッシャーの中で制作されたかと思いますが、結果はご存知のとおり。初の全米1位を獲得したほか、アメリカのみで800万枚以上、全世界で2700万枚というメガヒットを記録し、前作にも劣らない成績を残す代表作のひとつとなりました。

ボックスセットにはリマスタリングされたアルバム本編(CD&アナログ)のほか、2003年11月に発売されたバンド初のライブアルバム『LIVE IN TEXAS』(CD版未収録曲含む)と未発表ライブ音源集『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』(ともにアナログ)、過去にファンクラブ経由で発表された『METEORA』期のデモ音源をまとめた『LPU RARITIES 2.0』(CD)、『METEORA』期の貴重なライブ音源をコンパイルした『LIVE RARITIES 2003-2004』(CD)、「Lost」「Fighting Myself」といった未発表曲や本邦初公開となるデモ音源をまとめた『LOST DEMOS』(CD)、そしてアルバム制作ドキュメンタリー映像『THE MAKING OF METEORA』(DVD)やソウルやマイアミなど2003〜4年のライブ映像(DVD)をひとまとめに。

一方、3枚組バージョンはDISC 1に『METEORA』+未発表曲「Lost」、DISC 2に『LPU RARITIES 2.0』、DISC 3に『LIVE RARITIES 2003-2004』という構成。今回の再発において重要になってくるのは、おそらくボックスセットのみで聴ける『LOST DEMOS』と、ライブコンパイル盤『LIVE RARITIES 2003-2004』になると思っているので、本稿では『LOST DEMOS』と『LIVE RARITIES 2003-2004』中心に解説していきます。

『LOST DEMOS』

「Lost」は新たに手が加えられ、アルバム本編に含まれていても不思議ではない仕上がりにまで到達。それによって、未発表曲というよりも“新曲”のイメージが強いかも。初期の彼らに対してのイメージどおりの1曲ではないでしょうか。ただ、アルバムに含まれていたら“つなぎ”の1曲で終わっていたかもしれません。

「Fighting Myself」は『METEORA』で描かれている世界観の延長線上にある、ヒップホップマナーの1曲。「Lost」がチェスター・ベニントンのクリーンボーカル中心だとしたら、こっちはマイク・シノダのラップを軸にしたグルーヴィーな仕上がりです。「Resolution」あたりもこの流れにあるのかな。一方、「More The Victim」「Massive」「Healing Foot」はテイスト的に『HYBRID THEORY』寄りで、『METEORA』への通過点的な内容。アルバム本編から漏れるのも仕方ないかな。もちろん、もっとブラッシュアップできたらアルバム本編に含まれていても不思議じゃないんですが、当時はそこまでの魅力が見出せなかったのかもしれませんね。

そのほか、「Faint」や「Lying From You」のデモバージョンも含まれており、ブラッシュアップされる前の原石ぶりを確認することができます。『LPU RARITIES 2.0』に収録されたバージョンとはそれぞれ異なるので、完成版含めた聴き比べもできそうです。


『LIVE RARITIES 2003-2004』

ライブをまるまる1本収めた『LIVE IN TEXAS』や『LIVE IN NOTTINGHAM 2003』とは異なり、こちらは『METEORA』期の象徴的なツアー/フェスのハイライト的内容で、全10曲と非常にコンパクト。自身のツアーのほか、『Reading Festival 2003』や『Rock Am Ring 2004』での記念碑的音源も含まれています。

この中で特筆すべきはラスト3トラックかなと。初期の「Step Up」から「Nobody's Listening」へのメドレー、そこにE-ECUTIONERSの「It's Goin' Down」をミックスしたスペシャルバージョンは、ライブならではの特別感があります。また、NINE INCH NAILS「Wish」のカバーや、KORNジョナサン・デイヴィスをゲストに迎えた「One Step Closer」もスペシャル感が強く、当時のバンドの勢いがダイレクトに伝わります。どれもシングルやファンクラブ経由では既発音源ですが、こうして手軽に聴けるようになったのはありがたい限りです。

 


▼LINKIN PARK『METEORA: 20TH ANNIVERSARY EDITION』
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2024年4月16日 (火)

LINKIN PARK『PAPERCUTS: SINGLES COLLECTION 2000-2023』(2024)

2024年4月12日にリリースされたLINKIN PARKのコンピレーションアルバム。

チェスター・ベニントン(Vo)の急逝以降、デビューアルバム『HYBRID THEORY』(2000年)20周年盤(2020年)や2ndアルバム『METEORA』(2003年)20周年盤(2023年)といったボックスセットで未発表曲を公開してきたLINKIN PARK。本作はバンドのキャリアにおいて、初にして唯一のシングルコレクションアルバム/グレイテストヒッツアルバムとなります。

アルバムに収録されているのは全20曲。内訳的には

オリジナルアルバム
1st:『HYBRID THEORY』(2000年):4曲(Crawling、Papercuts、In The End、One Step Closer)
2nd:『METEORA』(2003年):4曲(Faint、Breaking The Habit、Somewhere I Belong、Numb)
3rd:『MINUTES TO MIDNIGHT』(2007年):3曲(Bleed It Out、What I've Done、Leave Out All The Rest)
4th:『A THOUSAND SUNS』(2010年):1曲(Waiting For The End)
5th:『LIVING THINGS』(2012年):2曲(Castle Of Glass、Burn It Down)
6th:『THE HUNTING PARTY』(2014年):0曲
7th:『ONE MORE LIGHT』(2017):1曲(One More Light)

EP、ファンクラブ限定EPなど
『COLLISION COURSE』(2004年):1曲(Numb/Encore)
『UNDERGROUND 6』(2006年):1曲(QWERTY)

サントラ、コンピ盤など
『TRANSFORMERS: REVENGE OF THE FALLEN - THE ALBUM』(2009年):1曲(New Divide)
『METEORA20』(2023年):1曲(Lost)

となり、ここに『ONE MORE LIGHT』制作時のアウトテイク(未発表曲)「Friendly Fire」が追加されています。いわゆる代表曲はほぼ網羅されている印象があり、特に3rd『MINUTES TO MIDNIGHT』あたりまでのヒットシングル(「New Devide」含む)まではほぼ楽しむことができます。意外だったのは4th『A THOUSAND SUNS』からのヒット曲「The Catalyst」(全米27位)が外されていたこと、6th『THE HUNTING PARTY』からは1曲も選出されていないこと、最終作『ONE MORE LIGHT』からは唯一のヒット曲「Heavy」(全米45位)ではなくタイトル曲が選ばれていることなどでしょうか。20曲収録しても67分程度と、CDでもまだ2〜3曲追加するだけの余白があったものの、あえて20曲と区切りのいいところでまとめているは潔いのかもしれませんね。

こうやってシングル曲/リード曲中心で彼らの作品を振り返ると、大半の尺が3分前後とかなりコンパクトであることに気付かされます。いわゆるハードロックやヘヴィメタルにおける「インストパートをフィーチャーすることで5分を軽く超える」という概念があまり感じられず、ボーカルやラップを軸にして、そこに味付けとしてほかの楽器が入るという姿勢は、もしかしたらほかの同時代のニューメタルバンドと並べたときに特異に映るかもしれません。そういった点からも、彼らはHR/HMの枠だけでは語り尽くせない稀有な存在だったと認識できるはずです。

本作における注目ポイントは、先に触れた未発表曲「Friendly Fire」、そしてファンクラブ限定で聴くことができた「QWERTY」の存在でしょうか。「QWERTY」は日本でもCDリリースされているので耳にしたことのあるファンは多いことでしょう。こうして久しぶりにサブスクを通じて楽しめるようになったのはありがたい限り。かつ、『ONE MORE LIGHT』の世界線の“続き”である「Friendly Fire」では、あのアルバムの物語はまだ完結していないことを思い出させてくれる(だって、予定されていた日本公演が中止になってしまったわけで、我々日本人は『ONE MORE LIGHT』収録曲をナマで体験していないわけですから)。この曲をアルバムラストに置くことで、不完全な終わり方をしたこのバンドの“If”の世界線を描いているようにも受け取ることができ、なんとも言えない余韻を残してアルバムは終了します。

LINKIN PARKの真の魅力はこの1枚だけでは伝わりきらないと思います。これはまだ彼らに出会えていなかった人たちへの新たな入り口であり、かつて彼らと同じ道を歩んでいた同胞たちと数年ぶりに思い出を共有するため(そして、未発表曲を通して新たな思い出を生み出すため)のアイテムでしかないわけですから。ここを起点に、各オリジナルアルバムに初めて触れたり、あるいは久しぶりに引っ張り出してみたりして、ここにはない名曲にも触れてみる、そのきっかけ作りにほかならない。けど、その「ほかならないきっかけ作り」が実は大切なんですよね。

 


▼LINKIN PARK『PAPERCUTS: SINGLES COLLECTION 2000-2023』
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2023年1月 9日 (月)

2002年4月〜2003年3月発売の洋楽アルバム20選

2015年から毎年この時期に用意してきたこの成人企画。ちょうど昨年から成人年齢が18歳へと引き下げされ、現在は成人式の概念も崩れつつあります。が、この企画はこの企画として毎年やっていってはどうかと思い直し、タイトルから「祝ご成人」の文字を外し、20年前を振り返る企画として残すことにしました。

通常なら1月はじまりでカウントするところを、これまで同様4月はじまりの翌年3月終わりという年度縛りで進めるのは、ちょっと日本的なのかな。とはいえ、今さらこのフォーマットを崩すのも何かなと思い、このまま続けさせていただきます。

この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2002年4月〜2003年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップする……というのが本来の趣旨。20年って結構節目にもなると思うので、改めて「ああ、自分が生まれた頃はこういうアルバムがヒットしていたのか」とか「これってもう20年前の作品なのか」とか、いろいろ浸っていただいたり驚いていただけるとうれしいです。

 

では、サブスクを通して20年前の名盤20枚をお楽しみください。

 

AVRIL LAVIGNE『LET GO』(2002年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

BECK『SEA CHANGE』(2002年9月発売)(Spotify

 

COLDPLAY『A RUSH OF BLOOD TO THE HEAD』(2002年8月発売)(Spotify

 

EMINEM『8 MILES: MUSIC FROM AND INSPIRED BY THE MOTION PICTURE』(海外:2002年10月発売、日本:2003年4月発売)(Spotify

 

EVANESCENCE『FALLEN』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

FOO FIGHTERS『ONE BY ONE』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

JURASSIC 5『POWER IN NUMBERS』(2002年10月発売)(Spotify

 

KILLSWITCH ENGAGE『ALIVE OR JUST BREATHING』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE LIBERTINES『UP THE BRACKET』(2002年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

LINKIN PARK『METEORA』(2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

MAROON 5『SONGS ABOUT JANE』(2002年6月発売)(Spotify

 

MASSIVE ATTACK『100TH WINDOW』(2003年2月発売)(Spotify)(レビュー

 

MOBY『18』(2002年5月発売)(Spotify

 

THE MUSIC『THE MUSIC』(2002年9月発売)(Spotify

 

RED HOT CHILI PEPPERS『BY THE WAY』(2002年7月発売)(Spotify)(レビュー

 

SIGUR ROS『( )』(2002年10月発売)(Spotify

 

STONE SOUR『STONE SOUR』(2002年8月発売)(Spotify)(レビュー

 

SUM 41『DOES THIS LOOK INFECTED?』(2002年11月発売)(Spotify

 

t.A.T.u.『200 KM/H IN THE WRONG LANE』(海外:2002年12月発売、日本:2003年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

UNDERWORLD『A HUNDRED DAYS OFF』(2002年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

このほかにも、以下の作品を候補に挙げていました。

ASIAN DUB FOUNDATION『ENEMY OF THE ENEMY』
BEN HARPER『DIAMONDS ON THE INSIDE』
BON JOVI『BOUNCE』(レビュー
BRUCE SPRINGSTEEN『THE RISING』
DAVID BOWIE『HEATHEN』(レビュー
DISTURBED『BELIEVE』(レビュー
EMINEM『THE EMINEM SHOW』
FEEDER『COMFORT IN SOUND』(レビュー
HANOI ROCKS『TWELVE SHOTS ON THE ROCKS』(レビュー
THE HELLACOPTERS『BY THE GRACE OF GOD』(レビュー
IN FLAMES『REROUTE TO REMAIN』
KING CRIMSON『THE POWER TO BELIEVE』
KORN『UNTOUCHABLES』(レビュー
MESHUGGAH『NOTHING』
OASIS『HEATHEN CHEMISTRY』(レビュー
OK GO『OK GO』
OPETH『DELIVERANCE』
PET SHOP BOYS『RELEASE』
PETER GABRIEL『UP』
PRIMAL SCREAM『EVIL HEAT』(レビュー
QUEENS OF THE STONE AGE『SONGS FOR THE DEAF』
ROYKSOPP『MELODY A.M.』
RUSH『VAPOR TRAILS』(レビュー
SPARTA『WIRETAP SCARS』(レビュー
THE USED『THE USED』(レビュー
THE VINES『HIGHLY EVOLVED』

 

2022年6月20日 (月)

GREY DAZE『THE PHOENIX』(2022)

2022年6月17日にリリースされたGREY DAZEの最新アルバム。

GREY DAZEはチェスター・ベニントン(Vo)がLINKIN PARK結成前に参加していたバンドで、1990年代に2枚のオリジナルアルバムを発表しています。チェスターは晩年、このバンドの再結成を夢見ていたそうですが、そんな彼の意志を継いで残されたバンドメンバーが、10代のチェスターのボーカルをそのままに、バックトラックを最新のアレンジに差し替えたものが前作『AMENDS』(2020年)でした。今作はそれに次ぐ第2弾アルバムで、若き日のチェスターのボーカルが再び現代によみがえることとなりました。

基本的には『AMENDS』の延長線上にある内容で、“プレLINKIN PARK”的な楽曲も少なくない。ヒップホップの要素を排除した、ポストグランジ的な方向性とでも言えばいいのでしょうか、時に豪快にシャウトし、時に繊細に歌うチェスターの若々しいボーカルを堪能することができます。前作を気に入った方なら、本作も間違いなく受け入れることは容易いはずです。

今作は2枚目ということもあり、ゲストも複数参加しています。「Holding You」にはデイヴ・ナヴァロ(G/JANE'S ADDICTION)、「Believe Me」にはリチャード・パトリック(Vo/FILTER)がそれぞれフィーチャーされており、前者ではいかにもデイヴらしいギターソロを楽しむことができます。一方、後者ではチェスターとリチャードによる夢のデュエットが実現しており、両アーティストから強い影響を受けたチェスターも向こうで喜んでいるのか、はたまた「生きてるうちにコラボしてよ!」と文句を言っているのか……。

さらに、「Hole」ではチェスターの実娘リリー&ライラが冒頭での童謡歌唱と本編でのコーラスを披露。これもこういう機会でもなければ実現しなかったコラボレーションのひとつでしょう。娘さんたちの心情を思うとなんとも言えないものがありますが……あなたたちの父上は10代の頃からすごいシンガーだったんだぞ、ってことはしっかり伝わるのではないでしょうか。

楽曲のストック的には、おそらく今作でリメイクは最後になるのかな。あとは、前作発表後に追加制作されたアコースティックEP『AMENDS... STRIPPED』(2021年)の手法も残されていますが、こうしたまとまった形は間違いなくラストでしょう。GREY DAZEという存在を世に知らしめる意味では非常に意味のあったリメイクでしたが、バンドとしての未来がないだけになかなか評価の難しい作品です。

 


▼GREY DAZE『THE PHOENIX』
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2021年2月 8日 (月)

GREY DAZE『AMENDS... STRIPPED』(2021)

2021年1月29日にデジタルリリースされたGREY DAZEの最新EP。同年4月9日にはアナログ盤のリリースも予定されています。

本作は2020年6月にリリースされた、チェスター・ベニントン(Vo)がLINKIN PARK結成前に在籍していたバンドの最新作『AMENDS』収録曲のアコースティックバージョンなどをまとめた5曲入りEP。『AMENDS』を発表後、昨年10月に再びスタジオに戻ったGREY DAZEのメンバーは、チェスターの別ボーカルトラックをセレクトし、このアコースティックセッションに用いたとのことです。

このEPのアイデアは『AMENDS』リリース前からメンバー間で話し合われていたとのことで、改めてチェスターのシンガーとしての才能をより広く知らしめることが目的だったんだとか。前回のレビューにも書きましたが、『AMENDS』というアルバムで使用されたチェスターのボーカルトラックはすべて90年代のもの。つまり、今回のようなアコースティックアレンジを目的として録音されていないため、若干のこじつけ感は否めません。

しかし、バックトラックがハードだろうがソフトだろうが関係なく、20代前半のチェスターから発せられるエモーショナルな歌声は非常に響くものがあり、もとからこういうアレンジだったんじゃないかと思えるほど自然なテイクに仕上がっています。

チェスターって歪み系の歌い方のイメージが強いかもしれないけど、実はかなり繊細な歌声の持ち主で、そのへんは生前ラスト作となった『ONE MORE LIGHT』(2017年)を聴けばよくわかると思うんです。このEPでも熱が高まる場面ではおなじみのディストーションボイスを耳にすることができるものの、大半は繊細さを伴う優しく温かみのある歌声。そういった魅力をアコースティックアレンジで、しかも歌声を前面に押し出す形で楽しむことができるのは、ファンとしても非常にありがたいかぎりです。

とはいえ、もうこれ以上は素材もないだろうから、GREY DAZEとしての新作は今回が最後かな。むしろそれでいいと思います(そもそも前回のアルバム自体も無理矢理完成させたようなものなわけですから)。

 


▼GREY DAZE『AMENDS... STRIPPED』
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2021年1月 3日 (日)

祝ご成人(2000年4月〜2001年3月発売の洋楽アルバム20選)

少し気が早いですが、新成人の皆さんおめでとうございます。2014年度に初めて執筆したこの“洋楽版成人アルバム”企画、今年で7回目を迎えます。いつもは成人の日前後に掲載しているのですが、今年は書けるうちに……と思い、3が日に企画記事を固めてみました。

この企画は「自分の20年前の音楽ライフはどんなだったか」を思い返す上で非常に貴重な機会でもあり、同時に「どれを20枚に含めるか?」というセレクトにおいても非常に頭を悩ます良いタイミングとなっています。

改めて趣旨説明を。この1月に成人式を迎えたの皆さんが生まれた年(学年的に2000年4月〜2001年3月の期間)にリリースされた洋楽アルバムの中から、個人的思い入れが強い作品のうちSpotifyやApple Musicで試聴可能なものを20枚ピックアップしました。

どれも名盤ばかりですし、もしまだ聴いたことがないという作品がありましたら、この機会にチェックしてみてはどうでしょう。特に、現在20歳の方々は「これ、自分が生まれた年に出たんだ」とかいろいろ感慨深いものがあるような気もしますし。ちなみに、作品の並びはすべてアルファベット順です。(2014年度の新成人編はこちら、2015年度の新成人編はこちら、2016年度の新成人編はこちら、2017年度の新成人編はこちら、2018年度の新成人編はこちら、2019年度の新成人編はこちらです)

 

AEROSMITH『JUST PUSH PLAY』(2001年3月発売)(Spotify)(レビュー

 

AT THE DRIVE-IN『RELATIONSHIP OF COMMAND』(2000年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE AVALANCHES『SINCE I LEFT YOU』(2000年11月発売)

 

BJÖRK『SELMASONGS』(2000年9月発売)(Spotify

 

BON JOVI『CRUSH』(2000年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

COLDPLAY『PARASCHUTES』(2000年7月発売)(Spotify

 

DAFT PUNK『DISCOVERY』(2001年2月発売)(Spotify

 

DEFTONES『WHITE PONY』(2000年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

EMINEM『THE MARSHALL MATHERS LP』(2000年5月発売)(Spotify)(レビュー

 

ERYKAH BADU『MAMA'S GUN』(2000年11月発売)(Spotify

 

GORILLAZ『GORILLAZ』(2001年3月発売)(Spotify

 

GREEN DAY『WARNING』(2000年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

THE HIVES『VENI VIDI VICIOUS』(2000年9月発売)(Spotify

 

LIMP BIZKIT『CHOCOLATE STARFISH AND THE HOT DOG FLAVORED WATER』(2000年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

LINKIN PARK『HYBRID THEORY』(2000年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

MADONNA『MUSIC』(2000年9月発売)(Spotify

 

PAPA ROACH『INFEST』(2000年4月発売)(Spotify)(レビュー

 

QUEENS OF THE STONE AGE『RATED R』(2000年6月発売)(Spotify)(レビュー

 

RADIOHEAD『KID A』(2000年9月発売)(Spotify)(レビュー

 

U2『ALL THAT YOU CAN'T LEAVE BEHIND』(2000年10月発売)(Spotify)(レビュー

 

残念ながらセレクトから漏れた作品も多く。以下に主だった作品をピックアップしておきました。

A PERFECT CIRCLE『MER DE NOMS』(レビュー
AMERICAN HI-FI『AMERICAN HI-FI』(レビュー
BACKSTREET BOYS『BLACK & BLUE』
BLACK LABEL SOCIETY『STRONGER THAN DEATH』(レビュー
BRITNEY SPEARS『OOPS!... I DID IT AGAIN』
FATBOY SLIM『HALFWAY BETWEEN THE GUTTER AND THE STARS』
DECKARD『STEREODREAMSCENE』(レビュー
GODSMACK『AWAKE』
HALFORD『RESURRECTION』(レビュー
THE HELLACOPTERS『HIGHT VISIBILLITY』(レビュー
IN FLAMES『CLAYMAN』(レビュー
IRON MAIDEN『BRAVE NEW WORLD』(レビュー
JACK JOHNSON『BRUSHFIRE FAIRYTALES』(レビュー
KYLIE MINOGUE『LIGHT YEARS』
MANIC STREET PREACHERS『KNOW YOUR ENEMY』(レビュー
MARILYN MANSON『HOLY WOOD (IN THE SHADOW OF THE VALLEY OF DEATH)』(レビュー
MARVELOUS 3『READY SEX GO』(レビュー
MOTÖRHEAD『WE ARE MOTÖRHEAD』(レビュー
RAGE AGAINST THE MACHIE『RENEGADES』(レビュー
SiLVER GiNGER 5『BLACK LEATHER MOJO』(レビュー
UNDERWORLD『LIVE: EVERYTHING, EVERYTHING』(レビュー
ZEBRAHEAD『PLAYMATE OF THE YEAR』
V.A.『M:I-2 SOUNDTRACK』

2000年って振り返ると、サマソニが富士急ハイランドで初開催された年なんですよね。個人的にはあそこで観たMUSEとAT THE DRIVE-INの印象が(良くも悪くも)強く。あと、RAGE AGAINST THE MACHINEがその年の6月に単独来日を果たしているのですが、家庭の事情で参加できず。で、その年の11月に突如解散してしまった……なんてことも記憶に残っています。ちょうどこのサイトの前身(『とみぃの宮殿』)を始めて2年目から3年目というタイミングで、実は2000〜2001年頃に一度休止した記憶も。プライベートでも先の家庭の事情(家族の死)などもあって、バタバタしたタイミングで、実は音楽をそこまで真剣に聴いていたかと問われると……な時期でもあったことが思い出されます。

ということもあって、印象に残っているアルバム/20枚に残しておきたいアルバムのHR/HM比重が低くなっているのも印象的な1年かもしれません。そういえばこの時期、そんなに真剣に新興勢力(LINKIN PARKやPAPA ROACHなど)をリアルタイムでは聴いていなかったもんなあ。

まあ、個人的事情はさておき。国内に目を向けてもBLANKEY JET CITYの解散やLUNA SEAの終幕などありましたが、フジロックでそのブランキーやTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTがトリを務めたり、エレカシが「ガストロンジャー」以降のファイティングスタイル集大成としてアルバム『GOOD MORNING』を完成させたり、Mr.Childrenが大傑作『Q』を発表したりと、いろいろ記憶に残る1年だったことも付け加えておきます。あと、2001年3月には宇多田ヒカル『DISTANCE』VS 浜崎あゆみ『A BEST』メガセールス対決っていうのもありましたね。

これら20枚からプレイリストも作ってみたので、よろしければ連休中の暇つぶしとして、あるいは成人式の合間の時間つぶしとしてお楽しみください。

 

2020年10月10日 (土)

LINKIN PARK『HYBRID THEORY: 20TH ANNIVERSARY EDITION』(2020)

2020年10月9日にリリースされた、LINKIN PARKの1stアルバム『HYBRID THEORY』(2000年)の20周年記念デラックス盤。全24曲入りのCD2枚組と、全80曲で構成されたボックスセットおよびデジタルエディションの2仕様が用意されています。

内訳は、CD2枚組仕様が『HYBRID THEORY』本編(DISC 1)と当時のシングルC/W曲やライブ音源、マリリン・マンソンによるリミックスなどを含む12曲入りレアトラック集(DISC 2)で構成。ボックスセットは『HYBRID THEORY』(DISC 1)、2002年発売のリミックスアルバム『REANIMATION』(DISC 2)、CD2枚組仕様のDSIC 2と同内容のBサイド・レアトラック集(DISC 3)、18曲入りファンクラブ・Linkin Park Underground(LPU)限定レアトラック集(DISC 4)、貴重な12曲入りデモ音源集(DISC 5)、アナログ盤で『HYBRID THEORY』と『REANIMATION』(2枚組)、メジャーデビュー前にリリースされた『HYBRID THEORY EP』(6曲入り/1999年)、そしてMVや2001〜2002年の貴重なライブ映像をまとめた2枚組DVDからなり、デジタル版ではCD DISC 1〜5に『HYBRID THEORY EP』を加えた80曲を一気に楽しむことができます。

この機会にアルバム『HYBRID THEORY』を改めて聴き返しましたが、本当によく作り込まれた、完成度の高いデビューアルバムだなと再確認できました。そりゃ時代が動きますわな。このアルバムが与えた影響は海外のみならず、日本のバンドにも非常に大きなものがあるし、今でも本作はロックファンなら必ず通るべき教科書的な1枚として愛されているんじゃないか……いや、そうであってほしい、そう思わずにはいられない傑作。当時この手のニューメタルバンドを毛嫌いしていたリスナーにこそ、20年経った2020年という時代に触れてほしい1枚です。

レアトラックの中には「Pictureboad」や「She Could'nt」など完全未発表曲も多数収録。これらの多くは1999年前後に録音されたデモ音源とのことですが、中には前身バンドのXERO時代のものも含まれています。この中にはアルバム『HYBRID THEORY』の完成度に近いものもあり、しっかりとした録音状態だったらもっと早くに何らかの形でリリースされていたんじゃないかと思えるほど。とはいえ、『HYBRID THEORY』でのメジャー感と比べると若干アンダーグラウンド色が強いので、これはこれで間違ってなかったのかなと。

こういった『HYBRID THEORY』以前の音源はこれまでもLPU経由で発表されていたり、日本盤限定ミニアルバムなどでも公開されていましたが、今回こうやってまとまった形で聴くことができたことで、いろいろなブラックアップを経て到達できた答えが『HYBRID THEORY』という傑作だったんだと知ることができ、20年前には気づけなかったことも多く見つけることができました。

チェスター・ベニントン(Vo)が現在も健在なら、今頃『ONE MORE LIGHT』(2017年)に続くオリジナルアルバムを発表していたでしょうし、それをメジャーデビュー20周年という節目の2020年にリリースしていたんじゃないでしょうか。もちろん、これにあわせて本作のような企画盤も用意していたかもしれませんが……なんにせよ、『ONE MORE LIGHT LIVE』(2017年)以来3年ぶりのフィジカルリリースとあってファンにはたまらないものがありますよね。難しいことは考えず、今は本作をフラットな気持ちで楽しめたらと思います。

 


▼LINKIN PARK『HYBRID THEORY: 20TH ANNIVERSARY EDITION』
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2020年8月 9日 (日)

MIKE SHINODA『DROPPED FRAMES VOL.2』(2020)

2020年7月31日にデジタルリリースされたマイク・シノダLINKIN PARK)の3rdソロアルバム。

今年7月10日に『DROPPED FRAMES VOL.1』と題した2作目のソロアルバムを配信リリースしたばかりの彼ですが、そこから3週間というハイペースで届けられた今作はタイトルどおりその続編に当たる内容。コロナ禍により外出自粛期間が続く中、動画配信プラットフォームTwitchで多くのファンと交流しながら音楽とアートを制作し始めたマイクが、毎日決まった時間に動画配信を行い、視聴者らの意見も取り入れながら音楽とアートワークを作り上げ完成に至ったという、まさにファンとの共同作業で生まれた1枚です。

前作ではオープニングトラック「Open Door」のみが歌モノで、それ以外の11曲はインストゥルメンタルという実験色の強い内容でしたが、今回に関しては歌モノ皆無。前作よりもモダンなエレクトロミュージックやダンスミュージック、ダウナーなヒップホップなどの要素が強まった、より遊び心の強い1枚に仕上がっています。

どの曲も1分台から最長で3分台半ばと短尺のものばかりで、完璧に作り込まれた完成品というよりは、その完成品へと至る過程をそのまま凝縮した「ネタの宝庫」的短編集と呼ぶほうが最適な内容かもしれません。本来なら、これらを元ネタに壮大な楽曲を作り上げていくのでしょうが、このプロジェクトはそこまでが目的ではなく、あくまでファンと楽しみながらひとつの作品を作っていくことを主軸としている以上、こういったプレイリスト的な形で世に放たれるのが正解なのでしょうね。肩肘張って作り込んでいないからこそ、聴く側も緩くリラックスして楽しむことができる。このシリーズに関してはこれでいいんだと思います。

今回は「Isolation Bird」でマニー・マーク、「Astral」でイリース・トルー、前作収録曲の続編にあたる「Channeling, Pt. 2」にダン・マヨがそれぞれフィーチャーリングアーティストとしてクレジットされています。イリース・トルーはループステーションを巧みに操る女性シンガーソングライター/マルチプレイヤーで、ダン・マヨは知る人ぞ知るイスラエル出身のジャズ/エレクトロニカ系ドラマー。マニー・マークに関してはここで説明するまでもないでしょう。こういったコラボ相手の人選からも、マイクがこの企画を通して何を表現したかったかがなんとなく伺えるのではないでしょうか。

ゲーム音楽的な8ビット風ダンスミュージックから、どこかモンド風のオサレ・ヒップホップ、さらにはエレクトロニカへと通ずるエレクトロミュージックまで、幅広いように見えて実は焦点がしっかり定まっている。全12曲で30分強というトータルランニングも手伝って、スルッと聴けてしまう1枚です。

 


▼MIKE SHINODA『DROPPED FRAMES VOL.2』
(amazon:MP3

 

2020年7月14日 (火)

MIKE SHINODA『DROPPED FRAMES VOL.1』(2020)

2020年7月にデジタルリリースされた、マイク・シノダLINKIN PARK)の2ndソロアルバム。

ソロ名義では『POST TRAUMATIC』(2018年)に続く2年ぶりの新作。本作はコロナ禍により外出自粛期間が続く中、マイクは動画配信プラットフォームTwitchで多くのファンと交流しながら、音楽とアートを制作し始めます。そして毎日決まった時間に動画配信を行い、視聴者らの意見も取り入れながら音楽とアートワークを作り上げ、本作完成に至ったという、まさにファンとの共同作業で生まれた1枚なのです。

即時性を意識したからなのか、それとも思いつきから生まれた楽曲だけで構成されているからなのか、ある種イレギュラーな形で生まれた本作はボーカルトラックはオープニングの「Open Door」1曲のみ。全12曲中11曲がインストゥルメンタル・ナンバーという異色の内容に仕上がっています。

プレスリリースによると「マリアッチ、ボリウッド・ヒップホップ、90年代のボーイズ・バンド・ポップ、など幅広いテーマをマイク・シノダがマッシュアップして1曲完成させる、という制作方法を取ってきた。『Super Galaxtica』はゲームのピコピコ音、『Osiris』はフルートの音色など、実に幅広いサウンドに挑戦しており、『Open Door』ではファンたちのボーカルも採用されている」そうです(「Open Door」の制作過程は同曲のMV↑で確認できます)。

ヒップホップというよりはエレクトロ/クラブミュージックの色合いが全体的に強いのも、そういったファンからの声を反映させた結果なのでしょうか。もちろん、マイク自身が持ち合わせている要素であることは間違いないのですが、この「アルバムというよりもプレイリスト」的な作風は民意が反映された結果であることは間違いないでしょう。

そういえば、ちょっと前に友人同士でTHE 1975の最新作『NOTES ON A CONDITIONAL FORM』についてLINEで感想合戦をしたと、僕はこのアルバムを「プレイリストみたい」と評しましたが、マイクの今作は同じプレイリスト的でも統一感を持ったプレイリストなんですよね。むしろTHE 1975のほうはアラカルト色が強い。そこの違いは意外と大きい気がします。

無理してフィジカルで発表する必要もなく、できたものをダイレクトにデジタル配信していく。シングルだとかEPだとかアルバムという形にもこだわらず、好きな形態で好きなタイミングに発信できる。しかも、制作過程を見せることで、民意をどんどん反映させられる。すごい時代になったものですね。かつ、本作は「〜VOL.1」と題されているので、今後ある程度曲がまとまった段階で第2弾、第3弾と続いていくんでしょうか。

すごく肩の力が抜けた、この時期だからこそのファンサービス。これを正式な2ndソロアルバムと呼んでしまっていいのかは気になりますが、まあ難しいことを考えずにリラックスして楽しみたい、そんな1枚です。

 


▼MIKE SHINODA『DROPPED FRAMES VOL.1』
(amazon:MP3

 

2020年6月29日 (月)

GREY DAZE『AMENDS』(2020)

チェスター・ベニントン(Vo)がこの世を去って3年が経とうとする2020年6月下旬、彼がLINKIN PARK加入前に在籍したバンドGREY DAZEのニューアルバムがリリースされたました。

GREY DAZEはチェスターと、晩年まで彼のビジネス・パートナーでもあったシーン・ダウデル(Dr)を中心に結成された4人組ポスト・グランジ・バンド。1993年にデモ音源を発表したのち、『WAKE ME』(1994年)、『...NO SUN TODAY』(1997年)と2枚のオリジナルアルバムを発表しています。しかし、チェスターが1998年にバンドを脱退。マイク・シノダ(Vo, G, Key)らが在籍したXEROに加わり、HYBRID THEORYへと改名したのちに現在のLINKIN PARKへとバンド名が落ち着くことになります。以降の歴史については皆さんご存知のとおり。

チェスターは亡くなる直前まで、このGREY DAZEの再結成を夢見ていたそうで、以前はリソースが不足していた部分などをメンバーとともに再構築、再録音する形で新作を発表しようと計画していました。が、その夢は叶わぬまま彼はこの世を去ってしまいます。しかしGREY DAZEのメンバーはチェスターの家族、友人たち、そしてLINKIN PARKのメンバーからのサポートを受けて、チェスター最後の夢を実現させるわけです。

カウント的には3rdアルバムとなる本作は、過去2作のオリジナルアルバムに収録された楽曲を再録音したもの。2作のオリジナル・マスターテープからチェスターのボーカルのみを使用し、新たにバックトラックを再録音することで、チェスターが目指した「GREY DAZEの本当の姿」を2020年によみがえらせています。レコーディングにはKORNのヘッド(G)とマンキー(G)、そして元ORANGE 9MM、元HELMET、元BUSHのクリス・トレイナー(G)もゲスト参加しているそうです。

チェスターの歌声は彼が10代後半から20歳くらいまでのものが使われていますが、パワフルなロングトーンやハイトーンなどにはすでに彼らしさが随所からにじみ出ており、そこまで別モノを聴いている感はありません。むしろ、本作からLINKIN PARKの『HYBRID THEORY』(2000年)を続けて聴けば、その流れや進化がパーフェクトな形で味わえるはずです。

サウンド的には初期LINKIN PARKにも通ずるカラーも見受けられますが、基本的にはポスト・グランジ以降のヘヴィロックといったところでしょうか。まだニューメタルなんて言葉が誕生する前の楽曲ですが、それよりはもっと90年代的な陰鬱としたテイストが強く、個人的には非常に好みの音だったりします。チェスターは生前、STONE TEMPLE PILOTSスポット参加したことがありましたが、あれもGREY DAZEでの活動を考えると自然な流れだったんでしょうね。

あ、そういえばチェスターは2000年代後半にDEAD BY SUNRISEというプロジェクトを立ち上げ、『OUT OF ASHES』(2009年)というアルバムを残していますが、あれも“この”流れにある音でしたよね。なんだかいろいろつながってきましたね。

この『AMENDS』というアルバムで聴くことができるサウンドが、果たして本当にチェスターが思い描いたものと寸分違わぬ形かどうかはさておき、大枠は間違っていないはず。彼が生きていたらもっと早くに発表されていたであろうこのアルバムを経て、もしかしたら書き下ろし新曲で構成された新作も……なんてこともあったかもしれませんよね(もちろん、その前にはLINKIN PARKの次なるアルバムも)。「たられば」話を始めたらきりがありませんが、今日くらいはそんな想像をしながらこのアルバムの音に浸りたいと思います。

 


▼GREY DAZE『AMENDS』
(amazon:国内盤CD / 国内盤CD+DVD / 海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

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