LITTLE ANGELS『JAM』(1993)
1993年1月31日にリリースされたLITTLE ANGELSの3rdアルバム。日本盤は同年1月25日発売。
前作『YOUNG GODS』(1991年)が全英17位と、本国でスマッシュヒットを記録。また、同作からは「Boneyard」(33位)、「Product Of The Working Class」(40位)、「Young Gods」(34位)、「I Ain't Gonna Cry」(26位)とTOP40入りシングルが4作も生まれ、着実に知名度を高めていきます。
そんな成功の一方で、アルバム完成後にオリジナルドラマーのマイケル・リーが脱退し、THE CULTへ加入することに。リーに代わり、新たにマーク・リチャードソン(のちにSKUNK ANANSIE、FEEDERにも加入)が加わり、ツアーを乗り切ります。そして、新たな布陣で完成させた勝負作となる3rdアルバム、なんと初の全英1位を獲得することになります。
前作で感じさせたハードロックの枠からの脱却、それがこのアルバムでは一気に開花しています。よりポップで華やか、それでいてサイケデリック調でオルタナティヴロック的な側面も強く感じさせるカラフルさは、当時国内専門誌で酷評されたことが記憶に残っています。いや、そんな狭い枠に捉われさえしなければ、本作は非常に完成度の高いロックアルバムとして評価できるはずなんですが。
過去作で見受けられたブラスをフィーチャーするスタイルは、リードシングル「Too Much Too Young」(全英22位)を筆頭に本作でも積極的に取り入れられています。しかもこの曲、コーラスでかのブライアン・アダムスもゲスト参加。コーラスというより、もはやサブボーカルと言ったほうがぴったりな目立ち具合なんですけどね。
このほかにも、適度な枯れ具合が心地よいミディアムチューン「Soapbox」(同33位)、ヒップホップ以降のファンキーさが活かされた「Don't Confuse Sex With Love」、ビートルズ調のサイケナンバー「Womankind」(同12位)、アコースティック色の強いバラード「The Colour Of Love」や「Sail Away」(同45位)、泣きメロっぽい湿り気がたまらないストレートなロック「I Was Not Wrong」、パワフルなギターリフとビートが気持ちよく響く「Tired Of Waiting For You」など、とにかく佳曲揃い。前作ほどのハード&ヘヴィさは皆無ながらも、ブラスを要所要所にフィーチャーした豪快なポップロックの数々で、最後まで飽きさせることなく楽しませてくれます。
グランジ全盛かつブリットポップ前夜の過渡期的時期に、こういった正統派サウンドで1位を獲ったこと自体奇跡的ですし、その成功もあって今作を携えたツアーではVAN HALENやBON JOVIのサポートで本国を回るなど、名実ともにトップバンドの仲間入りを果たそうとします。が、1位を獲得したものの、セールス的には期待以上の成績を収めることができず、彼らは続くベストアルバム『A LITTLE OF THE PAST』(1994年/全英20位)をもってメジャーのPolydor Recordsと契約終了。解散の道を選ぶこととなるのでした。
ちなみに、本作を含むLITTLE ANGELSのPolydor時代の3作品は2022年3月に国内廉価盤が再発されたものの、ストリーミングは国内未配信。できれば配信を通じてより多くの人に届くよう、お願いしたいところです。
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