2018年9月 4日 (火)

ULTRAPHONIX『ORIGINAL HUMAN MUSIC』(2018)

相変わらず次々に新しいバンド/プロジェクトを立ち上げる多作振りを発揮中のジョージ・リンチ。今度はLIVING COLOURのシンガー、コリー・グローヴァーと新たなバンドULTRAPHONIXを結成、今年8月に初のアルバム『ORIGINAL HUMAN MUSIC』をリリースしました。

メンバーはジョージ、コリーのほか、スタジオセッションなどで活躍するクリス・ムーア(Dr)、ファンクバンドWARやデイヴ・ロンバード(元SLAYER、現SUICIDAL TENDENCIES)とのトリオバンドPHILMなどでしられるパンチョ・トマセリ(B)の4人。このバンド、もともとはコリーではなくFISHBONEのアンジェロ・ムーア(Vo)と別の名前でライブを行っていたはずですが……まあ細かいことは気にしないことにしましょう。

ジョージがここでやりたかったことは、上のシンガー変遷とリズム隊のカラーからもわかるように、ハードロックとファンクの融合。ソウルフルだけどハードロック的なコリーのボーカルと、適度にグルーヴィーでタイトなリズム隊、その上でジョージが好き放題弾きまくるという、ファンならなんとなく想像できてしまう構図が、このアルバムの中で展開されているわけです。ここまで聴く前から内容がイメージできてしまうアルバム……さすがジョージ・リンチ。

さて、ジョージのプレイですが、思っていた以上にユルいです。リフもそこまでメタリックではないし、印象に残るものも少ない。ただ、ソロになるといきなりハメを外すんですよ。その落差が面白い。まあ、特に目新しいことはやってないですし、近年のジョージそのものかなと。

楽曲自体はコリーが歌ってることもあって、どこか LIVING COLOUR的。ただ、残念ながらヴァーノン・リードみたいな変態チックなプレイはありません。その“制御された狂気”こそがジョージそのものなんでしょうけど、これはこれで悪くない。個人的にはジョージのほかのバンド(特にKXM)よりは楽しめたかな。

プレスリリースでは、このバンドが目指す方向性について「初期RED HOT CHILI PEPPERS meets JUDAS PRIEST & KING CRIMSON」と記されていますが……後者2つの色、弱くない? KING CRIMSONなんて本編ラストの「Power Trip」ぐらいじゃ(ていうか、まんまなアレンジですけど)……まあ、本人がそう言ってるんだから、そうなんでしょう。たぶん、ライブではそういった要素が強まるんだろうなと、前向きに考えておきます。

このボーカルに対して、もっとメタリックなリフをバシバシぶつければよかったのに、といのが本作に対しての唯一の不満。それ以外は想定内であり、ジョージ・リンチのファンとしては心を広く持っているほうなので、純粋に楽しめる作品でした。



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投稿: 2018 09 04 12:00 午前 [2018年の作品, George Lynch, Living Colour, Ultraphonix] | 固定リンク

2017年12月19日 (火)

V.A.『JUDGEMENT NIGHT: MUSIC FROM THE MOTION PICTURE』(1993)

1993年公開のアメリカのアクション映画『ジャッジメント・ナイト』のサウンドトラックとして、同年秋にリリースされたのが本作。映画自体は未見ですが(ずいぶん前に地上波で深夜に放送されていたようですが、完全に忘れてました)、ここではその内容はどうでもよく。いや、ぶっちゃけ音楽ファン的には映画以上にサントラのほうが重要視されている作品ではないでしょうか。

本作は、曲ごとにヘヴィ/オルタナティヴロックバンドがヒップホップアーティストとコラボレートするという、およそ映画の内容とは関係のない構成。ロックファン的には参加バンドが気になるところですが、このセレクトがかなり謎でして。

以下にコラボレーションの詳細を記します(前者がロック系、後者がヒップホップ系アーティスト)


HELMET / HOUSE OF PAIN
TEENAGE FANCLUB / DE LA SOUL
LIVING COLOUR / RUN DMC
・BIOHAZARD / ONYX
SLAYER / ICE-T
FAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.
・SONIC YOUTH / CYPRESS HILL
MUDHONEY / SIR MIX-A-LOT
DINOSAUR JR. / DEL THE FUNKY HOMOSAPIEN
THERAPY? / FATAL
PEARL JAM / CYPRESS HILL


SLAYERのような大御所メタルバンドやHELMET、FAITH NO MOREといったヘヴィなオルタナティヴバンド、LIVING COLOURみたいな黒人ハードロックバンドもいれば、MUDHONEYやPEARL JAMといったグランジ勢もいる。かと思うと、まだアメリカでは無名に等しいアイルランドのTHERAPY?まで参加しているんだから、本当に謎です。

実際に収録されている楽曲も、それぞれの個性が出た面白いものが多数。1曲目のHELMET / HOUSE OF PAINによる「Just Another Victim」からしてカッコ良いし、続く脱力系なTEENAGE FANCLUB / DE LA SOULの「Fallin'」も意外と悪くない。LIVING COLOUR / RUN DMCの「Me, Myself & My Microphone」なんてそもそも両者黒人なんだから相性が悪いわけがない(しまもRUN DMCはAEROSMITHとの“前科”もあるしね)。

本作の山場となるのが4曲目のBIOHAZARD / ONYX「Judgement Night」と、5曲目 のSLAYER / ICE-T「Disorder」、そして6曲目のFAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.「Another Body Murdered」かな。「Judgement Night」は完全にヒップホップに寄せていて、そこにハードなギターが乗るという。こちらの組合せも非常に自然なものですし、そりゃあこうなるわなと。

で、SLAYER / ICE-Tという組み合わせですよ。ICE-T自身もBODY COUNTというハードコアバンドをやってますし、この組み合わせだったらそりゃあロック寄りになるでしょうね……っていうか、完全にSLAYERの土俵にICE-Tが踏み込んでるし。曲自体はEXPLOITEDのカバー(「War」「UK '82」「Disorder」のメドレー)で、このへんの試みがパンク/ハードコアのカバーアルバム『UNDISPUTED ATTITUDE』(1996年)につながったのかもしれませんね。

FAITH NO MORE / BOO-YAA T.R.I.B.E.という組み合わせも、実際に曲を聴いてしまうと何ら違和感がなく、むしろマイク・パットン先生の土俵ですね、これ。FAITH NO MOREのアルバムにそのまま入っていたとしても、別に不思議じゃない仕上がり。いやあ、面白い。

確かに全部が全部、成功しているとは言い切れないコラボアルバムではありますが、ここでの実験が翌年以降のメタル/ラウドシーンに大きな影響を与えた……というのは言い過ぎでしょうか? でも、それくらい意味のある実験でしたし、重要な作品だと思うんですよね。

ちなみに、数年後に映画『スポーン』のサウンドトラックで、今度はロックバンドとダンス/エレクトロ系アーティストのコラボレーションが実践されましたが、こちらは成功とは言い難い仕上がりでした。柳の下に二匹目のドジョウはいなかったわけですね。わかります。



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投稿: 2017 12 19 12:00 午前 [1993年の作品, Compilation Album, Dinosaur Jr., Faith No More, Helmet, Living Colour, Mudhoney, Pearl Jam, Run D.M.C., Slayer, Therapy?] | 固定リンク

2017年9月25日 (月)

LIVING COLOUR『SHADE』(2017)

2017年9月にリリースされた、LIVING COLOUR通算6枚目のオリジナルアルバム。再結成後3作目、前作『THE CHAIR IN THE DOORWAY』からは実に8年ぶりの新作となります。

ヴァーノン・リード(G)は本作について「ブルースのパイオニア、ロバート・ジョンソンのスピリットから影響を受けている。ブルースとメタルのブレンドが新しい方向性への指針となった」、コリー・グローヴァー(Vo)も「『SHADE』は最終的な結果として、ブルースを解釈したのではなく解体したものとなった」とそれぞれ語っています。

確かにブルースの影響下にあるコード進行、テイストを持った楽曲も多いですが、そこはメンバーが言うとおり、あくまで“LIVING COLOURとしてブルースを独自の解釈で表現したら、結果として今までの自分たちらしいハードロックもありつつ、これまでになかったタイプの楽曲も生まれた”といった程度の影響というのが正しいでしょう。ブルースの一言でちょっと後ずさりして聴き逃してしまったとしたら、非常にもったいない1枚ですよ、これは。

冒頭の「Freedom Of Expression (F.O.X.)」を聴けば、本作がいつもどおりのLIVING COLOURだとご理解いただけるはず。ブラックテイストをまぶした豪快なハードロックは、彼らのイメージそのままですしね。それは続く「Preachin' Blues」もしかり。たしかにブルースの影響下にある楽曲ですが、この流れで聴けば何ら違和感ないし、逆にLIVING COLOURがこういうテイストの楽曲をやるんだ、とちょっと新鮮に感じられるんじゃないでしょうか。

ところが、リードトラックとなっている3曲目「Come On」には少し驚かされるかもしれません。RED HOT CHILI PEPPERSあたりがやりそうなこの曲、途中でエレクトロっぽいテイストも飛び出すのですから。ただ、これも味付け程度で、前面に打ち出すことはないのでご安心を。

以降はファンク、ブルース、ハードロック、そしてときどきヒップホップが入り乱れたLIVING COLOURらしい展開が続きます。クリストファー・ウォレス「Who Shot Ya?」のカバーや、マーヴィン・ゲイ「Inner City Blues」のカバーも、両方とも原曲のテイストを残しつつ、しっかりLIVING COLOUR色に染め上げられており、好印象。“泣きのブルース”を彼ら流に仕上げたラストナンバー「Two Sides」もグッとくる仕上がりで(この曲のみ、ロバート・ジョンソンというよりもジミヘンのイメージが強いかも)、アルバムとして非常によくまとまった1枚だと思います。

正直、再結成後のアルバムはこれ1枚として聴いてなかったので不安があったのですが、そんな心配無用でした。80〜90年代の彼らが気に入っているリスナー、そして初期〜中期のレッチリが好きな人なら間違いなくツボに入りまくりの力作ではないでしょうか。



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投稿: 2017 09 25 12:00 午前 [2017年の作品, Living Colour] | 固定リンク

2017年8月 8日 (火)

LIVING COLOUR『VIVID』(1988)

1988年春に発表された、アメリカの4人組ハードロックバンドによるデビューアルバム。エド・ステイシアム(RAMONES、TALKING HEADS、MOTORHEADなど)が全体のプロデュースを手がけたほか、自身のソロアルバム『PRIMITIVE COOL』(1987年)にヴァーノン・リード(G)が参加したことがきっかけとなり、ミック・ジャガーのプロデュース曲が2曲(「Glamour Boys」「Which Way To America」)含まれているほか、「Broken Hearts」ではブルースハープでゲスト参加も果たしております。

メンバー全員が黒人ということで、当時は“黒いツェッペリン”などと呼ばれておりましたが、メタリックなギターリフとファンキーで跳ね気味なリズムのミックスはまさにその例えにぴったり。まだRED HOT CHILI PEPPERSのブレイク前夜で、いわゆる“ミクスチャー”と呼ばれるようになるバンド群(FAITH NO MOREJANE'S ADDICTIONなど)が日の目を浴びる前のタイミング。そんな中で、LIVING COLOURは当時のHR/HMブームに(幸か不幸か)乗ることができ、その結果アルバムは全米6位、シングル「Cult Of Personality」は全米13位、「Glamour Boys」も全米31位と好成績を残しました。

個人的には、アルバムのオープニングを飾るヒット曲「Cult Of Personality」にこのバンドの個性が集約されているんじゃないかと思うほど、先の“黒いツェッペリン”的要素が存分に楽しめます。もちろん、それ以降の楽曲もよりファンキーさを強めたもの、よりハードロック色を強調したものが次々と飛び出し、またコリー・グローヴァー(Vo)のボーカルもヘヴィメタル特有のハイトーンでなく、かといってR&Bシンガーのようにひたすらうますぎるわけでもない、適度なソウルフルさを持ったロックボーカリストといった印象。これがファンキーだけどハードロック的タイトさを持つリズム隊とリフワーク/ソロワークが個性的なギタープレイの上に乗ることで、当時ほかには見られなかった個性的なサウンドを確立することができたわけです。

と同時に、このバンドにはパンクの香りも漂っており、そこが「黒人だから」「リズムが跳ねてるから」と同じくらいメタルファンから敬遠される要因のひとつになっている気がします。特に旧来のメタルファンってノンポリのイメージが強いですしね!(ひどい偏見)

そうそう、本作収録の「Funny Vibe」にはPUBLIC ENEMYのチャック・Dとフレイヴァー・フレイヴがゲスト参加しています。この3年後にANTHRAXがPUBLIC ENEMYと「Bring The Noise」でコラボすることを考えると、かなり時代を先取りしていたハードロックバンドと解釈することもできそうですね。



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投稿: 2017 08 08 12:00 午前 [1988年の作品, Living Colour, Mick Jagger, Public Enemy] | 固定リンク