LUCER『GHOST TOWN』(2019)
デンマーク・コペンハーゲン出身の4人組バンド、LUCERが2019年1月(日本では2月)にリリースした2ndアルバム。『BRING ME GOOD NEWS』(2016年)に続く作品となり、これが日本デビューアルバムになるようです。
ベースボーカル、ギター×2、ドラムという編成の彼らは、過去にWHITE LIONのシンガーだったマイク・トランプのバックバンドも勤めた経験があるそうで、本国では彼らの楽曲がビールのCMに採用されるなど、名実ともに確立されたものがあるみたいですね。
実はこのアルバムから現編成になったようで、それ以前はシングルギターのトリオ編成だったとのこと。プロデュースを手がけたのは同郷の名エンジニア、テュー・マドセン(MESHUGGAH、THE HAUNTED、DIR EN GREY、ONE OK ROCKなど)。彼が過去に手がけたメンツから、かなり硬派な音をイメージするかと思いますが、聴いてもらえばわかるようにLUCERのサウンドはハードロック、というよりはポップロックの部類に属するもの。上に挙げたバンドの中ではONE OK ROCKあたりにもっとも近いのかな。
資料の中にはこのアルバムに対して「彼らのルーツと言えるNIRVANA、OASIS、RAMONES、SEX PISTOLSといったプリミティヴでエナジェティックな影響をうかがわせながら、一方でモータウンやディスコ・ミュージックをはじめとした多種多様な音楽ジャンルのエッセンスを採り込んでいる」との説明がありますが、まあOASISはわかるけど、そのほかは……ポップセンスという意味では納得できますが、いわゆるパンク/ガレージロック的なタイトさ/ワイルドさは感じされる、むしろ昨今のヒットチャートを賑わせるモダンなテイストが強く、要所要所で王道ハードロック的なカラーを取り入れている、と説明するほうが正しいのかなと。
1曲1曲はかなり練られ、作り込まれており、プロデュースのみならずミックスも担当したテュー・マドセンの言葉にある「全曲ヒットする可能性を秘めている」というのもあながち間違いではないなと。
北欧らしい哀愁味は若干薄味。かといって能天気なまでに突き抜けるほどの明るくもなく、どこかくぐもった感覚があるのがデンマーク出身のバンドらしさなのか。80年代中盤、ブライアン・アダムスのヒットを筆頭にこの手のサウンドを持つバンドがカナダやイギリスから続発したなあ……なんてことを急に思い出しました。そういう懐かしさすら感じられる、終始安心して楽しめる極上のポップアルバム。40オーバーはすんなりと楽しめるんじゃないでしょうか。逆に若い世代にはこういった音がどう響くのか、非常に気になるところです。
▼LUCER『GHOST TOWN』
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