2019年3月14日 (木)

LYNCH MOB『LYNCH MOB』(1992)

1992年4月(日本では5月)にリリースされた、LYNCH MOBの2ndアルバム。デビューアルバム『WICKED SENSATION』(1990年)から1年半という比較的短いインターバルで発表されましたが、実はその間にボーカリストがオニー・ローガンからロバート・メイソンへと交代するというハプニングが発生しています。そういう人事異動があったからこそ、早く“次”を見せたかったのかもしれませんね。

オニーは決してテクニカルなシンガーではなかったけど、1stアルバムで表現されていたアグレッシヴなハードロックには最適だったと思います。しかし、新人ということもあってか、パワーで押し切るだけといった武器の少なさも見え隠れしていました。実際、初来日公演を観たときもそのへんの未熟さが露呈し、評価は微妙かな……と思いましたし。

ところが、2代目シンガーのロバートは(同じく無名ながらも)どんなタイプの楽曲でも無難にこなすタイプ。良く言えば器用、悪く言えば突出した個性に欠ける。なもんで、このアルバムも最初に聴いたときは『WICKED SENSATION』ほどのパンチが感じられませんでした。

しかし、ジョージ・リンチ(G)にとってはようやく「エゴを出しすぎず(ドン・ドッケン)、未熟さの感じられない(オニー)プロフェッショナル」なシンガーを手に入れられたわけで、なもんだから楽曲の幅も一気に広がっている。攻撃性は若干影を潜め、ギターも曲によっては少し引っ込むことを覚え始めました(笑)。

が、このバランス感が本当に絶妙で、よくやくここで“バンド”になれたのかな、と今聴くと感じるわけです。でなければ、ブラスセクションをフィーチャーした歌モノ「Tangled In The Web」やムーディーな「Dream Until Tomorrow」のような楽曲はやれなかったと思いますし。

いや、本当にどの曲もよくできているんですよ。オープニングの「Jungle Of Love」からして前作の路線をより洗練させ、そこにEXTREME的な“ハネ”を加えた新しさがあったり、「Heaven is Waiting」なんてDOKKENでもやれそうだし、前作にはなかったアップチューン「I Want It」もあるし。さらに、QUEENのカバー「Tie Your Mother Down」まである(タイミング的にフレディ・マーキュリーへのトリビュートなんでしょうか)。全10曲、非常にバランスが良くて、構成も練られている。ブルース色が減退したのも大きいのかな。この洗練された感にDOKKENでいうところの3rdアルバム『UNDER LOCK AND KEY』(1985年)に近いものがあると思うのは僕だけでしょうか。

チャート的にも前作の全米46位に次ぐ最高56位を記録。グランジ勢が台頭し始めたタイミングとはいえ、なかなか検討したと思うんです……なのに、このアルバムで一度解散するんですよね(苦笑)。その後、ジョージとミック・ブラウン(Dr)はDOKKEN再結成に参加することになるわけです。



▼LYNCH MOB『LYNCH MOB』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD / MP3


投稿: 2019 03 14 12:00 午前 [1992年の作品, George Lynch, Lynch Mob] | 固定リンク

2017年1月18日 (水)

LYNCH MOB『WICKED SENSATION』(1990)

1989年のDOKKEN解散後、ジョージ・リンチ(G)とミック・ブラウン(Dr)は新たにLYNCH MOBと命名したバンドを始動。DOKKENって名前がいかにも「ドン・ドッケンのワンマンバンド」的に見えてしまうのが嫌だったんでしょうかね、今度はジョージが自身の名前をバンド名に入れてるわけですから(苦笑)。

オニー・ローガン(Vo)、アンソニー・エスポジート(B)という若きアーティストを迎え制作されたのが、1990年秋に発表されたデビューアルバム『WICKED SENSATION』。プロデューサーには“ギターサウンドならおまかせ”なマックス・ノーマンを迎え、DOKKENのラスト作『BACK FOR THE ATTACK』(1987年)を推し進めたギターオリエンテッドなアルバムを完成させます。

興味深いのは、常にDOKKENをまとっていたヨーロピアンな湿り気のある作風がばっさりと消えたこと。あれこそ、ドン・ドッケンの持ち味だったことは、彼が中心となり結成されたDON DOKKENのアルバム『UP FROM THE ASHES』で証明済みです。となると、豪快なアメリカンハードロックはジョージの持ち味ということになるわけですが、今作を聴くと単なるアメリカンハードロックでは終わっていない。実はこれ、ミック・ブラウンの功績が大きいと思うんですよね。

また、オニー・ローガンがドン・ドッケンとは異なるタイプのシンガーだったことも良い方向に作用した気がします。この時点ではド新人で、すべてを器用に歌いこなしていたわけではないですが、ドンみたいにのっぺりしたボーカルには出せない味が随所に感じられ、適度に土臭さを持ったこのハードロックサウンドには合っている。一番DOKKEN寄りかなと感じる「Hell Child」のような曲にも、サイケデリックな新境地ナンバー「She's Evil But She's Mine」にも適応できているんだから、デビュー作にしては及第点だと思います。あと、アルバムラストの「Street Fighting Man」は、DOKKEN『BACK FOR THE ATTACK』のインスト曲「Mr. Scary」をバージョンアップさせた歌モノ。こういうところからも、LYNCH MOBが『BACK FOR THE ATTACK』が地続きであることが伺えます。

それにしてもこのアルバム、全12曲で57分と意外に長いんですよね。そういえば……『BACK FOR THE ATTACK』が13曲で63分だったことを考えると、曲を長くしていた要因はジョージのギターソロだったんじゃないか、そう思えなくもないなと。これ、もうちょっとコンパクトに、せめて50分くらいで収まったら完璧なアルバムなんですけどね。そう考えると、やっぱり10曲で勝負するのがベストなのかなぁ。

ちなみに、同時期に発売されたDON DOKKEN『UP FROM THE ASHES』とLYNCH MOB『WICKED SENSATION』。チャート的には前者が全米50位、後者が31位とジョージ・リンチの勝利。これでどっちの作品が優れていると判断するのは危険ですが、少なくとも1990年当時のアメリカに求められていた音はLYNCH MOBのほうってことなのかもしれないですね。



▼LYNCH MOB『WICKED SENSATION』
(amazon:国内盤CD / 海外盤CD

投稿: 2017 01 18 12:00 午前 [1990年の作品, Dokken, George Lynch, Lynch Mob] | 固定リンク