MADBALL『FOR THE CAUSE』(2018)
80年代後半から活躍するニューヨーク出身のハードコアバンドMADBALLの4年ぶり、通算9作目のスタジオアルバム。前作『HARDCORE LIVES』(2014年)同様、メタル系レーベルのNuclear Blast Recordsからのリリースとなっております。
90年代半ばの本格的デビュー時、Roadrunner Recordsからのリリースだったこともあり、またメタリックなNYHCバンド(SICK OF IT ALLやBIOHAZARDなど)に注目が集まっていたこともあり、当時はその一環として僕も聴いておりました。そこから早20年強経ち、偶然手にしたこの1枚。久しぶりにMADBALLのアルバムをこうして聴いてみたわけですが……シンプルかつストレートな作風はそのままに、より強度を増したそのサウンドはHR/HM耳にも十分に楽しめるものだと思いました。
バンドとティム・アームストロング(RANCID)との共同プロデュース、MESHUGGAH、THE HAUNTED、SICK OF IT ALL、そしてDIR EN GREYなどを手がけてきたチュー・マドセンがミックス&マスタリング。ゲストにアイス-T(BODY COUNT)とティムが参加しているなど、想像以上にバラエティに富んだ作りでしたが、それも一回聴き終わって冷静になってからデータを見て気づいたこと。要するに、そういった要素は“オマケ”くらいの気持ちで、とにかく最初から最後まで爆音で楽しめる1枚です。むしろ、頭を空っぽにして聴け!ぐらいの勢いで。
確かにドラムの抜けやギターの歪み&ザクザク感が心地よい&聴きやすいのは、チュー・マドセンの手腕によるものが大きいと思います。が、それ以上に楽曲が聴きやすい。正直、最初の1、2枚しか聴いてない耳なので、近作がどうだったかは知りません。なので、ずっと聴いてきたファンには「いつもと一緒じゃん」と思われるかもしれませんが、自分のようなリスナーでもスッと入っていけるという意味では、初めて彼らに触れるビギナーにも入門編としてぴったりなんじゃないかと思いました。
ちなみにMADBALL、現在はフレディ・クリシエン(Vo)、ホヤ(B)、マイク・ジャスティン(Dr)の3人編成。昨年ギタリストのミッツが脱退したばかりで、本作のレコーディングには1992〜2000年に在籍したマット・ヘンダーソンが参加しています(ツアーには参加しないとのこと)。それもあって、初期を知る自分のようなリスナーにも取っつきやすいのかしら。
適度にグルーヴィーでヘヴィ、そして疾走感も伴っている(最後の最後にレゲエのユルさもあり)。“あの頃”の記憶が20数年ぶりによみがえってくる、そんな好盤です。