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カテゴリー「Manic Street Preachers」の46件の記事

2022年1月 1日 (土)

2021年総括

昨日のエントリー(2021年総括:HR/HM、ラウド編)にも書いたように、2021年は前年から引き続き新型コロナウイルスの影響が響いた1年でした。夏くらいまでは一喜一憂の日々を過ごしてきたものの、ワクチン接種など少しずつ動きもあったことで、秋から年末にかけて感染者数も1年前と比べると少し落ち着きを見せています。そういったポジティブな要素が影響し、エンタメ界も少しずつ明るい兆しを見せ始めています。もちろん、2年前と比べたら明らかに違った日常にはなってしまいましたが、それでも新たなスタンダードを確立させようと我々も日々奮闘し続けているところ。さて、この状況が春、そして夏場のフェスシーズン、年末までにどう変わっていくのか、じっくり見届けたいと思います。

2021年の総括に関してです。今年も昨年同様に「アルバム/シングル/楽曲と枠にこだわらず、20作品に縛る」形でまとめさせてもらいました。また、サブスクの普及により、数年がかりでヒットする(リスナーにまで浸透する)ケースも顕著になってきているので、セレクトする作品に関しても特に2021年発売には拘っておりません。それと、ヘヴィ/ラウド系は先に紹介したエントリーにて総括しているので、こちらでは省いております。

こちらも特に順位付けをせず、アルファベット→50音順で掲載しております。

 

ABBA『VOYAGE』(Apple Music)(アルバム/レビュー

 

THE ANCHORESS『THE ART OF LOSING』(Apple Music)(アルバム/レビュー

 

ARLO PARKS『COLLAPSED IN SUNBEAMS』(Apple Music)(アルバム)

 

BTS「Butter」(Apple Music)(楽曲)

 

DAVE GAHAN & SOULSAVERS『IMPOSTER』(Apple Music)(アルバム/レビュー

 

FAYE WEBSTER『I KNOW I'M FUNNY HAHA』(Apple Music)(アルバム)

 

Liella!「始まりは君の空」(Apple Music)(楽曲)

 

Little Glee Monster「REUNION」(Apple Music)(楽曲)

 

MÅNESKIN「I Wanna Be Your Slave (with IGGY POP)」(Apple Music)(楽曲)

 

MANIC STREET PREACHERS『THE ULTRA VIVID LAMENT」(Apple Music)(アルバム/レビュー

 

SUPER BEAVER『アイラヴユー』(Apple Music)(アルバム)

 

WAVVES『HIDEAWAY』(Apple Music)(アルバム)

 

WEEZER『OK HUMAN』(Apple Music)(アルバム/レビュー

 

ウマ娘「うまぴょい伝説」(Apple Music)(楽曲)

 

からあげ姉妹「1・2・3」(Apple Music)(楽曲)

 

楠木ともり『narrow』(Apple Music)(EP/レビュー

 

櫻坂46「流れ弾」(Apple Music)(楽曲)

 

鞘師里保『DAYBREAK』(Apple Music)(EP)

 

ドレスコーズ『バイエル』(Apple Music)(アルバム)

 

22/7「ヒヤシンス」(Apple Music)(楽曲)

 

海外アーティストに関しては、メタル/ラウド以外は相変わらず女性ボーカルものを聴く機会が多く、あとは旧譜のリイシューばかり。最新のポップスはヒットチャートものをまとめたプレイリストなどで触れているものの、やっぱり耳に残ったのはBTSと、それ以外だとMÅNESKINあたりかな。DRY CLEANING『NEW LONG LEG』は最後までギリギリ入れるか悩みましたが。

特に国内アーティストに関してもいろいろ悩みましたが、こんな感じでしょうか。楠木ともりさんは上半期総括では2nd EP『Forced Shutdown』をセレクトしましたが、常に最新作がベストを更新している印象もあるので(かつ年末のライブも素晴らしかったので)3rd EPを選出。日向坂46「君しか勝たん」もギリギリまで悩みましたが、それ以外の楽曲/アルバムが素晴らしすぎてこういう結果となりました。ここから漏れた作品だとGuilty Kiss『Shooting Star Warrior』(アルバム)、INORAN『ANY DAY NOW』、鈴木愛奈『Belle révolte』、矢野顕子『音楽はおくりもの』、和田彩花『私的礼讃』、楽曲単位だとOfficial髭男dism「Universe」、toku「ずるいよ、桜 feat. 神田沙也加」、アネモネリア「巣立ちの歌」、伊藤美来「No. 6」、乃木坂46「最後のTight Hug」などなど。

明日は、本サイトのエントリーにおける総括を実施予定。年末年始はこういう形の更新で、ここ1年を振り返ることができたらと思います。

 

2021年12月11日 (土)

MANIC STREET PREACHERS『I LIVE THROUGH THESE MOMENTS AGAIN AND AGAIN: DUETS 1992-2021』(2021)

2021年11月30日に公開されたMANIC STREET PREACHERSのオフィシャルプレイリスト。Spofifyのみで配信中。

メジャーデビュー30周年という記念すべきタイミングであった2021年、マニックスは最新オリジナルアルバム『THE ULTRA VIVID LAMENT』をリリースするのみにとどまりました。しかしその結果、同作は『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998年)以来23年ぶりに全英1位を獲得することとなりました。

そういったアニバーサリーイヤーに記念碑的作品を生み出すことができたバンドは、あえてフィジカルアイテムを制作するのではなく、サブスクリプションサービスのプレイリストを複数制作するという今ならではの手法で30年のまとめに入ることになります。

その1作目として発表されたのが、このデュエット曲/コラボ楽曲をひとまとめにしたコンピレーションアルバム的プレイリスト。1stアルバム『GENERATION TERRORISTS』(1992年)における「Little Baby Nothing」(withトレイシー・ローズ)を筆頭に、THE CARDIGANSのニナ・パーソンを迎えたヒット曲「Your Love Alone Is Not Enough」やECHO & THE BUNNYMENのイアン・マカロックをフィーチャーした「Some Kind Of Nothingness」、最新作からの「The Secret He Had Missed」や「Blank Diary Entry」(前者はジュリア・カミング、後者はマーク・ラネガンが参加)など、バンドの歴史をコラボレーションという側面から総括する内容に仕上がっています(収録曲の詳細はオフィシャルサイトにて確認を)。

この中には、マニックスのオリジナルアルバム未収録だった貴重なテイクも複数存在します。その中にはトム・ジョーンズのアルバム『RELOAD』(1999年)でジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo, G)がゲスト参加した「I'm Left, You're Right, She's Gone」、サラ・クラックネルのアルバム『RED KITE』(2015年)でニッキー・ワイヤー(B, Vo)が客演した「Nothing Left To Talk About」といったマニックスの作品外の楽曲や、SUPER FURRY ANIMALSのグリフ・リース(Vo)がリードボーカル&アコースティックギターで参加したライブ音源「Let Robeson Sing」のようなレアテイクも含まれており、アルバム以外にまで手を伸ばせなかったライト層にもうれしい内容となっています。

この中には特筆すべき1曲も含まれています。それが、ウェールズ人アーティストのグウェノーをフィーチャーした「Spectators Of Suicide」です。同曲はもともと1991年のシングル「You Love Us」のHeavenlyバージョン(インディーズ盤)に含まれていたもので、のちに『GENERATION TERRORISTS』で別アレンジにて収録されています。今回のコラボバーバージョンは昨年12月に海外で出版された書籍『BELIEVE IN MAGIC: THE FIRST 30 YEARS OF HEAVENLY RECORDINGS』のために新たにレコーディングされた音源で、このプレイリスト公開にあわせてサブスクでも聴けるようになりました。この非常にレアな再録バージョンを聴けるだけでも、本プレイリストの価値はかなり高いと言えるでしょう。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『I LIVE THROUGH THESE MOMENTS AGAIN AND AGAIN: DUETS 1992-2021』

 

 

 

マニックスはこれ以外にも、最新作『THE ULTRA VIVID LAMENT』のイスパイア元となる楽曲を集めたプレイリスト『THE ULTRA VIVID LAMENT - INSPIRATIONS & INFLUENCES』も公開中。ABBAやラナ・デル・レイ、THE GO-BETWEENS、サイモン&ガーファンクル、BIG THIEF、ニーナ・シモン、NICK CAVE & THE BAD SEEDSなどバラエティに富んだ28曲を楽しむことができます。こちらも新作の副読本として、あわせて楽しんでおきたいところです。

 

2021年9月23日 (木)

MANIC STREET PREACHERS『NATIONAL TREASURES - THE COMPLETE SINGLES』(2011)

2011年10月31日にリリースされたMANIC STREET PREACHERSのコンピレーションアルバム。日本盤は同年10月26日発売。

本作は『FOREVER DELAYED: THE GREATEST HITS』(2002年)『LIPSTICK TRACES: A SECRET HISTORY OF MANIC STREET PREACHERS』(2003年)に続く3作目のコンピアルバム。1作目は1stアルバム『GENERATION TERRORISTS』(1992年)から10年のタイミングに発表されたシングルコレクション、2作目はアルバム未収録のシングルカップリング曲をオリジナル/カバーで分けて収録した2枚組コンピでしたが、今回はバンドの知名度を(良くも悪くも)広める結果となった記念碑的シングル「Motown Junk」(1991年)から数えて20年という節目に制作された、文字通り“コンプリート・シングル集”となっております。

……が、いきなりですが。本作、すべてのシングル曲を網羅しているわけではありません。例えば、「Motown Junk」の前に発表しているEP『NEW ART RIOT』(1990年)や、正真正銘の1stシングル「Suicide Alley」(1989年)はスルーされていますし、「You Love Us」の“Heavenly Version”と呼ばれるインディーズバージョン(1991年)、「Love's Sweet Exile」との両A面曲「Repeat」(1992年)、「Faster」との両A面曲「P.C.P.」(1994年)や、日本限定シングルの「Further Away」(1996年)、「Nobody Loves You」(1998年)、突如無料配布された幻のEP『GOD SAVE THE MANICS』(2005年)、デジタル配信された「Underdog」(2007年)なども除外されています。要は、「全英チャートにランクインしたフィジカルシングル、かつ両A面曲の場合はリードトラックとなる1曲目」という基準で選ばれたようですね(本作のツアーではここらへんの楽曲もサービスでプレイされていましたが)。

というわけで、本作には「Motown Junk」や「Stay Beautiful」といった初期の楽曲から当時の最新シングル「Postcards From A Young Man」まで、および本作のために用意された新録曲「This Is The Day」(THE THEのカバー)の計38曲が収録された2枚組CDとなっています。本作からのリード曲として「This Is The Day」もシングル化されているので、結果収録曲すべてがシングル曲ということになるわけですね。なお、日本盤のみボーナストラックとして新曲「Rock 'n' Roll Genius」を追加収録。この曲はシングル「This Is The Day」HMV限定盤にのみ収録されていた貴重な1曲で、今作のストリーミング/デジタル盤には未収録。迷わず日本盤CDを手に入れておきたいところです。

ですが、このベスト盤。海外盤には2CD+DVDというデラックス盤も用意されていて、こちらの付属DVDには2CDに収められた全38曲のMV+ボーナス映像(「You Love Us (Heavenly Version)」「Autumn Song (Alternative Version)」、そして未シングル曲「Jackie Collins Existential Question Time」)を網羅。現在では希少価値の高いコレクターズアイテムとなっていますが、こちらもぜひとも手に入れておきたいところです。

『FOREVER DELAYED: THE GREATEST HITS』では一部楽曲がシングルエディットで収録されていましたが、こちらはたっぷり2枚組ということもあり、すべてオリジナルバージョン(アルバムサイズ)で楽しむことができます。すべてのアルバムを楽しんできたコアなファンには不必要っちゃあ不必要かもしれませんが、特に2000年代前半まではアルバムごとにスタイルを変化させ続けてきたマニックスの音楽的変遷を、時代を追って楽しめる手軽な内容ではないでしょうか。「マニックスの代表曲を押さえておきたい」というビギナーにはうってつけの入門盤だと断言しておきます。

ここ10年でシングルの価値がほぼなくなり、カップリングという言葉自体が死後となりつつある中、今年でメジャーデビュー30周年を迎えるマニックスが今後それを祝したベスト盤を制作するのかどうかは不明です。が、もし可能ならCD3枚組くらいでシングル曲/リードトラックを網羅した“真のコンプリート・シングルズ”に期待したいところです。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『NATIONAL TREASURES - THE COMPLETE SINGLES』
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2021年9月12日 (日)

MANIC STREET PREACHERS『THE ULTRA VIVID LAMENT』(2021)

2021年9月10日にリリースされたMANIC STREET PREACHERSの14thアルバム。当初は9月3日発売予定でしたが、制作上の都合で世界的に1週間遅れでリリースされることになりました。

オリジナルアルバムとしては『RESISTANCE IS FUTILE』(2018年)から約3年半ぶりの新作。この期間には5thアルバム『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998年)20周年記念盤(2018年)および同作を伴う来日公演(同年)、2ndアルバム『GOLD AGAINS THE SOUL』(1993年)デラックスエデション(2020年)などアニバーサリー企画が複数あったので、意外と空いた感覚がないんですよね。それに、ジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo, G)の2ndソロアルバム『EVEN IN EXILE』(2020年)もありましたしね。

レコーディングは2020〜21年にかけて、長年のコラボレーターであるデイヴ・エリンガととも実施。その後、デヴィッド・レンチがミックスを手がけることで完成に至っています。本作に対して、ニッキー・ワイヤー(B, Vo)は事前に「Like The Clash playing Abba」「The Clash when you felt they play in any style」というキャッチフレーズを掲げていました(そのへんについてはリード曲「Orwellian」発表時のレビューにてご確認を)。

ここ20年くらいのマニックスにはABBA的要素、そしてTHE CLASH的な音楽的編成は当たり前のように存在していました。しかし、なぜここでABBAという名前を改めて挙げたのか。その理由のひとつとして、楽曲制作時に使った楽器の大半がギターではなくピアノだったころが挙げられるでしょう。ジェイムズがピアノを覚えたことで、そのまま作曲にも用いられたことで、メロディやコードの運びはこれまでのギター中心の楽曲群と異なる形に。結果として、全体を通して穏やかで優しく、温かみの強いアルバムに仕上がったような気がします。

マニックスもメジャーデビューして今年で30年。もはや初期のようなパンキッシュな音楽スタイルを求めることはありませんが、ここからは「どう枯れていくか」がポイントになると思っています。そんな中で、あえて「ただ枯れる」のではなく、大人になったからこその懐の深さ、豊かさを前提に、「老いていくのも悪くない」と提示していく。それがここ数作のマニックスだったような気がします。

そして、その境地……50代に入り「生きること、年を取ることは悪いもんじゃない」と高らかに宣言したのがこの14作目なのかなと。しかも、その過程で曲作りの手法をちょっと変えることで、さらなるフレッシュさも手に入れた。こうなったのは昨今のコロナ禍も少なからず影響しているとはいえ、これは良い進化ではないかと個人的にも感じています。

とにかく、どの曲もメロディがより練り込まれていて、ライブ云々よりも音源としての作品性が高いものばかり。コロナ禍でツアーが思うようにできなくなったこともあり、スタジオにこもってじっくり制作と向き合えたことも、この完成度の高さに大きな影響を与えていることは間違いありません。

歌詞は相変わらずただ甘いだけではない、現在の社会情勢を見据えた上での50代の彼らの目線が刻まれています。もちろん、ただ甘ったるいだけのアルバムを彼らに求めることはありませんし、だからこそこのスウィートなメロディに辛辣な歌詞が載るのもいかにもマニックスだなと。うん、いつもどおりすぎ(笑)。

そんな中で、オープニングを飾る「Still Snowing In Sapporo」が醸し出すセンチメンタルさには胸を締め付けられます。これがオープニングトラックか……と最初に聴いたときはびっくりしましたが、このタイミングにリッチー・エドワーズ(G)を含む編成での最後のジャパンツアー(1993年)に訪れた札幌のことを歌にするなんて……オッサンたち、ノスタルジーに浸ってるんじゃねえよ(笑)。最高かよ。

近年は90年代の初期6作のアニバーサリー関連での来日が続き、純粋なニューアルバムのサポートツアーでの日本公演は皆無。アニバーサリー抜きの純粋なライブ、2014年のフジロックが最後じゃないでしょうか。このご時世でなかなか難しいものはありますが、できることなら早くこの新曲群を生で聴きたいものです。そして、「A Design For Live」「You Love Us」を大合唱できる日はいつ戻ってくるのでしょうか……2022年、少しでも状況がよくなっているといいな。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『THE ULTRA VIVID LAMENT』
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2021年5月15日 (土)

MANIC STREET PREACHERS『ORWELLIAN』(2021)

MANIC STREET PREACHERSの通算14作目となるニューアルバム『THE ULTRA VIVID LAMENT』が、9月3日に海外でリリースされることが決定しました。今のところ日本盤の情報は確定していないものの、おそらく同日かその少しあとには国内でも発売されるのではないかと思っています。

この3年半ぶりの新作発売アナウンスにあわせて、同作からのリードトラック「Orwellian」がデジタルリリース。各配信サービスでのデジタルリリース&ストリーミングに加え、YouTubeにはリリックビデオも公開中です。

今年4月、音楽誌『MOJO』に掲載されたニッキー・ワイヤー(B)のインタビューでは、(当時制作途中だった)ニューアルバムに対して「Like The Clash playing Abba」というキャッチフレーズを掲げていました(「The Clash when you felt they play in any style」という補足を付けて)。ここでニッキーが掲げるTHE CLASHは初期ではなく、間違いなく中後期の彼らであることは想像に難しくなく、またABBAを挙げるのも想定の範囲内。さらに、インタビューには「It's the usual thing, miserable lyrics and great pop」という言葉も見つけられ、個人的には「ああ、いつもどおりのマニックスだな(笑)」と安心したことを覚えています。

今回りリースされた「Orwellian」という楽曲も、前作『RESISTANCE IS FUTILE』(2018年)の流れを汲む落ち着いたポップチューン。連作となった11thアルバム『REWIND THE FILM』(2013年)および12thアルバム『FUTUROLOGY』(2014年)以降、落ち着いた作風とデジタル色を散りばめたロックをバランスよく配合させ、前作でそのスタイルがひとつ完成の域に達した感がありましたが、今作もその延長線上にあるスタイルになりそうなことは、この新曲と前後して公開されたトレーラー映像(で断片を耳にすることができる新曲群)からも想像に難しくありません。

ジョージ・オーウェルが著作で描いた極端な監視社会を意味するタイトルが、もはや近未来的というよりも現在とリンクするリアリティの強いものになっているのは皮肉以外の何ものでもありませんが、リリックビデオに掲載された歌詞もまたニッキーらしさに満ち溢れた内容で、メジャーデビュー30周年を迎えた現在もなお変わらぬ姿勢を貫いていることが窺えます。そうそう、これだよこれ。

前作はアルバムリリースまでに数ヶ月かけて新曲を小出しに配信しましたが、今作でも4曲前後の新曲を月イチペースで届けてくれそうな気がしています。あと、トレーラー映像では女性シンガー(SUNFLOWER BEANのジュリア・カミング)の歌声も耳にできるので、こちらにも注目したいところです。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『ORWELLIAN』
(amazon:MP3

 

2021年3月16日 (火)

THE ANCHORESS『THE ART OF LOSING』(2021)

2021年3月12日にリリースされたTHE ANCHORESSの2ndアルバム。日本盤(輸入盤の国内流通仕様)は3月31日発売予定。

THE ANCHORESSはウェールズ出身のマルチ・インストゥルメンタリスト、キャサリン・アン・デイヴィスのソロプロジェクト。2013年から同名義での活動を開始し、2016年には初のアルバム『CONFESSIONS OF A ROMANCE NEVELIST』をリリースし、音楽誌『Prog』主催の音楽賞で新人賞を受賞しました。また、2017年にはポール・ドレイパー(ex. MANSUN)の1stアルバム『SPOOKY ACTION』で5曲を共作したほか、エンジニアとしても同作に参加。2018年にはキャサリン・AD名義でSIMPLE MINDSにも加入し、『WALK BETWEEN WORLDS』(2018年)でアルバムデビューも果たしました。

特に日本の音楽ファンの間で彼女の名前をよく目にする機会となったのが、彼女が長年にわたり熱狂的ファンだと公言してきたMANIC STREET PREACHERSの最新アルバム『RESISTANCE IS FUTILE』(2018年)収録曲「Dylan & Caitlin」にフィーチャリング・アーティストとして名を連ねたことでしょう。昨年は元SUEDEバーナード・バトラーとのコラボアルバム『IN MEMORY OF MY FEELINGS』(2020年)も発表しており、個人的にも大好きなMANICSやSUEDE、そしてMANSUNに関連するアーティストということで、その名前を常に意識していました。

プログ・ミュージック専門レーベルKscope Recordsから発表された本作は、キャサリン自身のプロデュースに加え、MANICSでお馴染みのデイヴ・エリンガと、マリオ・マクナルティ(デヴィッド・ボウイプリンス、MANICS)の2名をミキシングエンジニアに迎えて制作。全体的にダークさの漂う、ニューウェイヴ以降のアーティスティックなプログ・ロック/ポップという印象の1枚に仕上がっています。

レコーディングにはDURAN DURANやデヴィッド・ボウイとの共演で知られるスターリング・キャンベル(Dr)や、彼女が敬愛するMANICSのジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo)がゲスト参加。ジェイムズの歌は「The Exchange」にてしっかり楽しむことができます。シンセを多用したキラキラしたニューウェイヴ風ポップと、ピアノや弦楽器などの生音を全面に打ち出した耽美な楽曲が共存する世界観は、広意義でプログ・ロック/ポップと呼ぶに相応しい内容。かつ、90年代以降のオルタナロック/ブリットポップに触れてきたリスナーにはしっくり来る、「一聴して難しそうなことをやっているのに、実は非常に親しみやすい」楽曲で埋め尽くされており、良い意味で聴き手を選ばない1枚と言えるのではないでしょうか。

キャサリンの歌声も適度な色気と気だるさが共存しており、非常に心地よく響く。刺々しさこそ皆無ですが、不思議と刺さるものがあるのは、その洗練されたサウンドによるものが大きいのかもしれません。先に触れたMANICSやMANSUN(およびポール・ドレイパー)、そしてバーニー在籍時の初期SUEDEを通ってきたリスナーなら、間違いなくハマる1枚だと断言できます。中でもMANICSファンは同じウェールズ出身アーティストということもあり、必ず引っかかるものがあるはずです。

このアルバムでさらに知名度を高めることになるであろう傑作、ぜひこのタイミングに一度触れてみてほしいです。

 


▼THE ANCHORESS『THE ART OF LOSING』
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2020年8月22日 (土)

JAMES DEAN BRADFIELD『EVEN IN EXILE』(2020)

2020年8月14日にリリースされた、MANIC STREET PREACHERSジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールド(Vo, G)の2ndソロアルバム。日本盤未発売。

2017年に映画『THE CHAMBER』のオリジナル・サウンドトラックをリリースしているジェイムズですが、あちらはインスト盤ということで、歌モノ・アルバムは2006年に全英22位のヒットを記録した『THE GREAT WESTERN』以来、実に14年ぶり。こちらのサイトでも取り上げた配信シングル「There'll Come A War」「Seeking The Room With The Three Windows」を6月末に発表したかと思うと、続いて7月初頭には「The Boy From The Plantation」を配信リリース。そこから1ヶ月強を経て、満を辞してのアルバム発売となりました。

本作は新たに立ち上がったレーベルMontyRayからの第1弾作品。ディストリビュートはインディーズのThe Orchardが行なっており、だから日本盤が出ないのか……と思ったのですが、よくよく調べるとこのThe Orchard、親会社はSonyのようなので、日本盤発売も夢ではないのかな?

さて、肝心の内容について……作品の成り立ちや概要はシングルのレビューで触れているので割愛。全11曲中1曲のみ、アルバムの題材となったヴィクトル・ハラの「La Partida」がカバーされています。また、本作は先の「There'll Come A War」を筆頭に「Under The Mimosa Tree」「La Partida」とインストナンバーが複数収録されているのも特徴で(厳密には完全なるインスト曲ではなく、〈Ah Ah Ah〉などのコーラス入り。歌詞・歌がないという意味でのインスト曲と捉えていただければ)、かつラテンやフォルクローレの要素が強い。これもヴィクトル・ハラの音楽性を考えれば至極納得のいく流れだと思います。

そういわれると、マニックス経由のリスナーは「ちょっとハードルが高いのでは?」と不安に駆られるかもしれません。心配ご無用、ちゃんとジェイムズらしさやマニックスの香りは存分に残されております。オープニングを飾る「Recuerda」や「The Boy From The Plantation」からは『EVERYTHING MUST GO』(1996年)『THIS IS MY TRUTH TELL ME YOURS』(1998年)を筆頭に、2000年代半ば前後のマニックス的要素が存分に感じられ、ちょっとしたフレージングやハーモニーに「あ、マニックス!」とニンマリできるはずです。

だって、マニックスのメロディメイカーが作っているんだもん。そこから外れるわけがない。シングルレビューにも書いたように、要所要素の味付けに70年代末のニューウェイヴからの影響が感じられるのも、マニックスでいったら『LIFEBLOOD』(2004年)前後の感触を思い出させることでしょう。と同時に、しっかりソロとしての前作『THE GREAT WESTERN』との共通項も見つけられる。思えば、この1stソロアルバムがあったから、その後のマニックスが『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)へとたどり着いたわけですから、すべてがつながっているわけですよ。

ヴィクトル・ハラの生涯に触発された楽曲はもちろんですが、できることならニッキー・ワイヤー(B)の実兄パトリック・ジョーンズが書いた歌詞もじっくり理解したいところです。そういう意味でも、ぜひ対訳の付いた日本盤発売に期待したいところですが……いつまでも待っています!

ミュージシャンとして、ソングライターとして、そしてボーカリストとしてさらなる成熟期を迎えたジェイムズ。こんなディープで味わい深い傑作を経て、次はバンドでどんな作品を届けてくれるのか。コロナ禍もあり、おそらく新作は来年以降になるかと思いますが、少なくともこのソロアルバムを聴いたらみんな無駄に期待したくなるんじゃないでしょうか。うん、素晴らしい1枚です。

 


▼JAMES DEAN BRADFIELD『EVEN IN EXILE』
(amazon:海外盤CD / 海外盤アナログ / MP3

 

2020年6月28日 (日)

JAMES DEAN BRADFIELD『THERE'LL COME A WAR / SEEKING THE ROOM WITH THE THREE WINDOWS』(2020)

MANIC STREET PREACHERSのフロントマン、ジェイムズ・ディーン・ブラッドフィールドの最新デジタルシングル。

ジェイムズはこれまでソロとして、歌モノアルバム『THE GREAT WESTERN』(2006年)と2016年公開のサバイバル映画『THE CHAMBER』(原題)のサウンドトラックアルバム(2017年)を発表しており、『THE GREAT WESTERN』に続く2ndソロアルバムを今年後半にリリース予定。このデジタルシングルに収められた2曲は、その新作アルバムからのリードトラックになるそうです。

事前情報によると、今回の2ndソロアルバムはMANICSでの盟友ニッキー・ワイヤー(B)の実兄であり、有名なウェールズ出身の詩人および劇作家のパトリック・ジョーンズが作詞を担当し、その他の楽曲制作やプロデュースはジェイムズが担当。アルバムはチリのミュージシャンであり演劇家・演出家、政治活動家のビクトル・ハラの生涯に触発されたもので、今回リリースされた2曲についてジェイムズは「ひとつはビクトル・ハラの喜びを示し、もうひとつは彼の恐れを示している」と語っています。

「There'll Come A War」はピアノの印象的なフレーズを軸に進行していく非常にシリアスな作風で、楽曲の質感やサウンドのテイストを過去のMANICS作品で示すと『LIFEBLOOD』(2004年)にもっとも近いのかなと。前作『THE GREAT WESTERN』は、続くMANICSの『SEND AWAY THE TIGERS』(2007年)に与えた影響が大きかったですし、ここでのスタイルがその後のMANICSにとっての大枠になったことを考えると、その対比も興味深いものがあります。ジェイムズも声を張り上げて歌うというよりは、厳かなサウンドスケープをバックに、囁くように歌う。大人になったというか、良い意味で“老いた”、“老成した”ジェイムズを味わうことができると思います。

一方、「Seeking The Room With The Three Rooms」はバンドサウンドとシンセのメロディが印象的なインストナンバー。このへんはMANICSのアルバムにポツンと置かれていても違和感なさそうなテイストですが、ジェイムズらしい直線的なギターロックとニューウェイヴ経由のひねくれ感、彼ならではのポップでキャッチーなメロディ(をギターで奏でる)、この3つが融合することで70年代後半のデヴィッド・ボウイ的な印象も与えてくれます。

この2曲だけでも、新作がかなり意欲的な内容であることが伺えます。2ndソロアルバムの正式なリリース日程は今のところ明かされていませんが、おそらく9〜10月くらいになるのかなと。てっきりMANICSの新作に取り掛かると思い込んでいたので、このソロ新作はうれしい誤算。無駄に期待を大きくして、リリースを待ちたいと思います。

 


▼JAMES DEAN BRADFIELD『THERE'LL COME A WAR / SEEKING THE ROOM WITH THE THREE WINDOWS』
(amazon:MP3

 

2020年6月14日 (日)

MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』(2014)

2014年12月にリリースされた、MANIC STREET PREACHERSの3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の20周年記念エディション。日本盤未発売。

1994年8月に発売された『THE HOLY BIBLE』は、オリジナルメンバーのリッチー・エドワーズ(G)を含む4人編成としては最後の作品。2004年12月には本作のリリース20周年を祝して、最新リマスター盤+当時完全未発表だったUSリミックスバージョンの『THE HOLY BIBLE』+未発表のデモやライブ音源の2枚組CDと、ライブ映像やテレビ出演時の映像を含むDVDからなる3枚組エディションが発売されており、『THE HOLY BIBLE』のデラックス盤としてはこれが2作目にあたります(日本盤限定で2009年、シングルC/W曲を追加した2枚組紙ジャケ・エディションも発売されています)。

20周年盤は『THE HOLY BIBLE』の最新リマスター盤(DISC 1)、『THE HOLY BIBLE』USリミックスの最新リマスター盤(DISC 2)、シングルのカップリング&リミックス集(DISC 2)、ライブ音源やBBCセッションなどをまとめたライブ集(DISC 4)のCD4枚組に『THE HOLY BIBLE』最新リマスターのアナログ盤、写真集を同梱したボックスセットとなっており、これさえあれば『THE HOLY BIBLE』期のマニックスの音源は完璧!と呼べる内容……だと思っていたんです。ところが、10周年エディションに含まれていたデモやライブ音源は20周年ボックスには未収録。ありゃりゃ……と思ったら、最近気づいたんですが、デジタル版およびストリーミング版には新たにDISC 5が追加されており、こちらに10周年エディションのみで聴くことができた音源がまとめられており、映像を除けば確実にこのデジタル版で網羅することができます。

ということで、豪華な箱やアナログ盤、写真集などが欲しい人はフィジカル(ボックスセット)で購入し、音源だけあればいいという方はiTunesやAmazon Musicなどでデジタル版を購入すればいいかなと(Amazon Musicは6000円ですべて手に入りますしね)。

名盤『THE HOLY BIBLE』に関しては、19年前に熱と愛がこもったテキストを残していますので、そちらに譲ります。最新リマスターでは音の生々しさとダイナミズムはより極まっているんじゃないでしょうか。1994年当時の若干チープなサウンドも、実はこのスタイルにはぴったりなので、どちらが最高とは断言し難いのですが……。

で、今回はUSリミックスを中心に書いていこうかなと思います。このUSリミックス、その名のとおり1994年当時にアメリカでのリリースに向けてトム・ロード・アルジがリミックスを担当したもの。最終的には契約などの関係でUSリリースが実現せず、2004年までお蔵入りされていたわけですが、当時はオリジナル版よりもリバーブが効いてウェットさが増したリミックスに「!?」と疑問を感じたものですが、何度か聴いていると意外と悪くないことにも気づきます。質感的には前作『GOLD AGAINST THE SOUL』(1993年)で展開したアリーナロック的なものに若干近づけたかったのかな。でも、グランジ全盛だった1994年だからこそ、オリジナル版の『THE HOLY BIBLE』は光り輝いたわけで、そこの読みは実際のところどうだったんだろう?と思わざるを得ません。結果、リリースは叶わなかったわけですが、もしUSリミックス版があの当時世に放たれていたら、少しは歴史が変わったのでしょうか。

ギターの音像/押し引きがオリジナル版以上にメリハリが効いていて、ドラムのタイトさも嫌いじゃないし、「Yes」のエンディングや「She Is Suffering」のエフェクトなどオリジナル版にはないものも追加されており、そのへんの聴き比べも非常に面白いんじゃないでしょうか。

DISC 3にはシングルのカップリングで聴くことができた「Too Cold Here」や「Love Torn Us Under」などの隠れた名曲などを網羅。このへんは続く『EVERYTHING MUSG GO』(1996年)への布石だったんだなと気づかされる部分もあるので、改めて興味深いものがあると思います。このほか、オリジナル・リリース時の日本盤にボーナストラックとして収められたライブ音源や、バーナード・バトラー(G)がゲスト参加したSUEDE「The Drowners」のカバーライブ音源、THE CHEMICAL BROTEHRSなどによるリミックス音源、さらには「Revol」の未発表バージョンも聴くことができます。

DSIC 4はリリース当時、英BBCで収録されたAstoriaでのライブ音源や、2014年にBBC Radio 4のために収録されたスタジオライブ音源4曲を収録。Astoriaでのライブはフルスケール収録ではありませんが、それでも全13曲とかなりボリューミーな内容となっています。そして、新録のスタジオライブはすべてアコースティックアレンジを施されたもので、「This Is Yesterday」といったいかにもな楽曲のほか、「Faster」や「P.C.P.」などパンキッシュな楽曲が日和ることなくアコースティックバージョンで生まれ変わっています。これはこれで今のマニックスらしくて、個人的には嫌いじゃないかな。

『THE HOLY BIBLE』をこれから初めて聴く人には、まず13曲入りのオリジナル版をオススメします。ストリーミングなら1994年のオリジナル版も2014年のリマスター版も両方聴けますので、どちらから入ってもいいかな。で、本作を気に入ってマニックスというバンドを十分理解した上で、このボックスを存分に味わうといいんじゃないでしょうか。なので、まずは10数枚におよぶオリジナルアルバムを先に堪能して、デラックス・エディションは余生のお楽しみとして残しておいてもいいと思いますよ(笑)。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『THE HOLY BIBLE 20』
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2020年6月13日 (土)

MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL: DELUXE EDITION』(2020)

1993年6月にリリースされたMANIC STREET PREACHERSの2ndアルバム『GOLD AGAINST THE SOUL』。本作から発表されたシングルに収められたカップリング曲、アルバム収録曲の未発表デモトラックなどをCD2枚にまとめ、未公開写真からなる豪華なフォトブックレット形式のパッケージで2020年6月12日に発売されたのが本デラックス・エディションです(日本盤は1ヶ月少々遅れ、同年7月22日にリリース予定)。

現在のマニックスしか知らない方々のために説明しておくと、デビューアルバム『GENERATION TERRORISTS』(1992年)にて世界中で1位を獲得して解散、獲得できなくても解散と大口を叩いてデビューした彼らでしたが、アルバムは当初予定していた「30曲入り2枚組」には10数曲及ばない形で発表され(CDは1枚ものでしたが、アナログなら2枚組)、全英最高13位、当然ほかの国でも1位には程遠い結果のみを残して、このまま解散するのかと思われていました。しかし、複数枚のメジャーアルバム契約を残していた彼らは解散宣言を撤回し、素直にこの2ndアルバムを制作、リリースしたのでした(このへんの経緯については、過去に執筆した1stアルバムのレビューや、その前後の作品のレビューをご確認ください)。

そんな敗者の十字架を背負った中で完成させたこのアルバムですが、いろんな意味で自由奔放なデビューアルバムと、マニックスの過激さが創作面で最大限に発揮された3rdアルバム『THE HOLY BIBLE』(1994年)の間に挟まれた今振り返ると、ちょっと優等生すぎる印象を受けます。いや、好意的に評価すれば「やっと肩肘張らずに、好きな音楽を表現できた」と捉えることもできるでしょう。

このアルバムはその後のマニックスにおけるひとつの基準になったのも事実でして、サウンド的にはハードにもポップにも寄せられる、だけど軸にあるメロディは常にわかりやすくて親しみやすいものでなければいけない、と。本作があったから『THE HOLY BIBLE』に振り切ることができたし、その後の『EVERYTHING MUST GO』(1996年)へとつなぐこともできた。『GENERATION TERRORISTS』が“可能性のおもちゃ箱”であり“真のデビューアルバムへの処女作”だとしたら、この『GOLD AGAINST THE SOUL』こそがバンドにとって真のデビューアルバムだった。リリースから27年を経て振り返ると、そう捉えることもできるのではないでしょうか。

さて、そんな本作の最新デラックス・エディション。アルバム本編には最新リマスタリングが施されており、楽器1つひとつの粒の際立ちが非常によい形で再現されており、各楽器の主張がオリジナル盤以上に感じられる仕上がりになっています。もともとエッジは効いてるけど全体のバランスがよかった本作でしたが、より今の時代に合った聴きやすい形に生まれ変わったのではないでしょうか。

カップリング曲にはハード&メロウなアルバム本編よりもパンキッシュなものが多く、続く『THE HOLY BIBLE』への布石が見え隠れするのも興味深い……なんていうのは言い尽くされていますよね。改めて捨て曲なしのカップリングも存分にお楽しみいただければと思います。

で、肝心のDISC 2=アルバムデモですね。音質は決して優れたものではありませんが、アルバムよりもラフな演奏で、かっちり作り込まれる前の楽曲群は「これはこれで悪くないじゃん」と思わされるものばかり。ドラムのモタる感じとか、その後のライブにも通ずるものがありますし、そこも含めてマニックスのグルーヴ感が存分に伝わってきます。

曲によってはデモ音源が存在しなかったのか、ライブテイクでお茶を濁している曲もありますが(「Yourself」のみですが)、大まかなアレンジは完成バージョンと大差がないのも興味深いところ。とはいえ、中には完成バージョンと異なるアレンジ(ストリングスの代わりにハミング)の「From Despair To Where」、異なるアレンジのデモが複数存在する「Drug Drug Druggy」や「Roses In The Hospital」など、新たな気づきを与えてくれるものも少なくありません。個人的には「Nostalgic Pushed」はデモのほうが好きだなとか、完成バージョンよりもダークさ、ダーティさが際立つ「Symphony Of Tourette」や生ドラムバージョンの「Gold Against The Soul」など完成版よりも好印象を与えてくれたりと、27年前に受け付けられた記憶やイメージを更新させてくれました。

デモ音源のあとに収められたTHE CHEMICAL BROTHERSらによる「Roses In The Hospital」「La Tristesse Durera (Scream To A Sigh)」のリミックスも、久しぶりに聴いたら面白かったなあ。90年代前半から半ばにかけて、マニックスの輸入盤シングルを買い集めていた頃の自分をふと思い出し、懐かしくなりました。

90年代に発表されたアルバム5作についてはすべてデラックス・エディションが発売されたので、もうこれ以上新たな未発表音源が発掘されることはないかと思いますが、これを機に改めて『GENERATION TERRORISTS』から未発表音源集を振り返ってみようかと思います。

 


▼MANIC STREET PREACHERS『GOLD AGAINST THE SOUL: DELUXE EDITION』
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